介護事業の特徴と留意点

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6. 介護老人保健施設の特徴と留意点は?

介護老人施設の概要

介護老人保健施設(通称老健)とは、三つの介護保険制度の施設サービスの一つで、1986年の老人保健法改正により創設されました。その後、2000年の介護保険制度施行により、介護保険法に基づく施設として、改編されました。

介護保険法では、要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設と定義されています。

老健には、本来型の老健と、介護療養病床の転換後の受け皿として新設された療養型老人保健施設があります。老健は医療法上の医療提供施設に位置づけられ、設置するためには、都道府県の開設許可を得たうえで、介護保険の規定による指定を受けることになります。

事業主体は、医療法人又は社会福祉法人に限られ、営利法人が老健を開設することはできません。事業所数は全国で約4000施設、定員数は約40万人です。

人員基準・施設基準

人員基準としては、医師(常勤1人以上、100人対1人以上)、実情に応じた適当数の薬剤師、入所者3人に1人以上の看護・介護職員(うち看護職は2/7程度)、支援相談員(1人以上、100人対1人以上)、PT・OT・ST(100人対1以上)、栄養士(入所者100人以上の場合は1人以上)、ケアマネジャー(1人以上)となっています。特養やグループホームと異なり、医療スタッフが手厚く配置されています。

設備基準としては、療養室1室当り定員4名以下、入所者1人当り8㎡以上、機能訓練室は1㎡×入所定員数以上、食堂は2㎡×入所定員数以上、廊下幅は1.8m以上(中廊下は2.7m以上)、その他浴室となっています。ユニット型の場合は、療養室は10.65㎡以上で共同生活室の設置が必要となります。

収入

ユニット型介護老人保健施設サービス費(Ⅰ)の介護報酬単価は従来型多床室で要介護4の場合、928単位となっています。

定員100名で2級地の場合、収入は以下のとおりとなります。

月当り介護報酬は 100人 × 単位数(928)× 30日 × 10.68 = 2973万3120円

厚生労働省の介護事業経営実態調査(平成23年)によりますと、老健の1ヶ月当り収入は介護報酬が2954万円、保険外の利用料収入等のその他収入を加えると収入合計3464万円に対し介護事業費用3017万円を控除し、介護外費用を差引すると344万円の黒字になっています。

老健の問題点

老健は、病院から在宅へ復帰するための「中間施設」として、創設されましたが、各機関の調査によりますと、平均在所日数は300日を超えて、要介護4・5の入所者の比率も高くなっています。

このような実態に鑑み、2012年度の介護報酬改定では、入所者の在宅復帰に力を入れる老健(在宅強化型老健)を評価する基本報酬が新設されました。強化型老健に移行するためには、直近6ヶ月の在宅復帰率50%以上、ベッド回転率10%以上、直近3ヶ月の要介護4・5の入所者割合35%以上などが要件とされました。

この要件を満たすためには、在宅復帰のためのポイントである、たとえば「自宅における自力でのトイレ使用」の訓練などリハビリ強化が必要となります。また、自施設で居宅介護支援や訪問看護、デイケア、ショートステイ等の機能をもつか、もしくは連携による対応が必要となります。サービス付高齢者住宅等の併設をする施設もあります。2013年の在宅強化型老健の老健全体における構成率は、第105回社会保障審議会介護給付費分科会の資料によりますと9.1%で、移行があまりすすんでおりません。在宅強化型に取り組むとベッド稼働率が落ち総収入が減少します。さらにリハビリスタッフ等を多く配置すると給与費率が上がり、採算が悪化するから移行を見送る施設があるといわれています。

また、老健では、通常の投薬・注射・検査・処置の報酬は介護報酬に包括化されています。重度の入所者の割合が増えているにもかかわらず、必要な医療提供に制限が生じているという問題が指摘されています。そのため、2015年の介護報酬改定では、さらに老健の在宅復帰機能を高めるため、リハビリ専門職の配置を評価しました。また、老健から訪問介護サービスの事業所を併設する場合は、老健の看護・介護職員に係る専従常勤要件が緩和されました。