介護事業の特徴と留意点

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3. 小規模多機能型居宅介護の特徴と留意点は?

小規模多機能型居宅介護の概要

小規模多機能型居宅介護とは、2006年4月に地域密着型サービスとして創設されたサービスで、「通い」を中心として、訪問介護、ショートステイの三つのサービスを組み合せて一つの事業所で行うものです。地域密着型サービスなので、利用者は事業所のある市町村に居住する者に限定されます。

なお、要介護者に対しては、介護予防小規模多機能型居宅介護サービスが提供されます。2012年4月の介護保険法改正により、このサービスに医療サービス機能を追加するために訪問看護を提供できる複合型サービス事業所が創設されました。

小規模多機能型居宅介護は利用定員が定められていて、一つの事業所につき29人以下の登録制となっています。1日に利用できる通所サービスの定員は15人以下、泊まりは9人以下となっています。事業所の指定権限は市町村にあり、市町村の介護保険事業計画に基づく公募に応募し、人員基準・施設基準等の充足について審査ののち指定を受けることになります。

国としても普及させたい事業ですので、自治体によってはグループホームを開設する場合、小規模多機能型居宅介護を併設することを条件としているところもあります。法人でなければ指定を受けることはできず、土地建物はグループホームと同様、所有しているか賃借の場合は長期・安定的な賃借契約があることが前提となります。

人員基準・施設基準と設置に要する費用

人員基準としては介護業務従事の経験があるか、所定の研修を修了した代表者が必要であり、経験があるか研修を修了した常勤の管理者が必要です。訪問介護職員は常勤換算で1人以上、通所介護職員は常勤換算で通所介護利用者3人に1人以上(看護師又は准看護師1名を含む)配置が必要となります。夜間は常時、交替勤務者2人以上を配置することになっています。

計画作成担当者にはケアマネジャーを配置しなければなりません。 設備基準としては、事務室、通所介護者定員1人当り3㎡以上の居間・食堂、台所、浴室、ショートステイ定員1人当り7.43㎡以上の宿泊室が必要となります。

小規模多機能型居宅介護施設の床面積は、定員25名、通い15名、泊まり5名で300㎡前後となりますので、それに建築単価を乗じて、建築代価を試算します。古民家や既存の寄宿舎等を活用し、リノベーションを行うことで、施設整備にかかる費用を縮減することができます。

また、市町村によっては、新築整備、既存建物の増築・改修による整備、いずれの形態でも施設整備に必要な費用を助成しています。厚生労働省の「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」は平成26年度末まで延長されています。スプリンクラーについてはグループホームと同じように設置義務が課せられています。

収入

要介護1  10,320 単位/月

要介護2  15,167 単位/月

要介護3  22,062 単位/月

要介護4  24,350 単位/月

要介護5  26,849 単位/月

平成27年度介護報酬では小規模多機能型居宅介護の報酬は次のとおりです。
(同一建物居住者以外の登録者に対して行う場合)

初期増加や認知症加算、看護職員配置加算等各種加算はありますが、計算を単純にするため加算を除くと基本報酬は、定員25名で2級地の場合、以下のとおりとなります。

平均要介護度1

月当り介護収入 = 25人 × 単位数(10,320)× 10.88 = 280万7040円

平均要介護度3

月当り介護収入 = 25人 × 単位数(22,062)× 10.88 = 600万864円

小規模多機能型居宅介護の場合、介護報酬の単位数は要介護3以上と要介護1・2で、かなりの開きがあるため、軽度の利用者を中心に運営すると、採算が取りにくくなっております。

小規模多機能型居宅介護の問題点

国は、このサービスを地域包括ケアの中核的サービスの拠点として整備に力を入れ、人員基準や設備基準の緩和なども検討していますが、それほど普及しておりません。これまで整備が伸び悩んでいたことには、以下のような理由があるといわれています。

会計検査院は、2013年、厚生労働大臣宛に、整備交付金が、地域密着型施設に活用されていない理由として以下の指摘をしました。

  • 小規模多機能事業所は、通所を中心に需要を想定していたが、宿泊を望む利用者が多く、事業所運営が難しい
  • 住民が小規模多機能型居宅介護のサービス内容を十分に理解していない。

このサービスは、利用者がケアプランを組み変えずに自由に「通い」「泊り」「訪問」の三つのサービスを選べ、「通い」と「泊り」が同じ場所で認知症の方の特性にも合います。また、料金も月当りの定額で窓口も一つというメリットがあります。しかし逆に、このサービスを選んでしまうと訪問介護や訪問入浴といった他のサービスが使えなくなってしまいます。ケアマネジャーが、小規模多機能型居宅介護を利用者に紹介すると、自らは仕事がなくなってしまい、利用者からみても今まで馴染んできたケアマネジャーの支援が受けられなくなることも、制度が普及しない原因であるといわれています。

2015年の介護報酬改定では小規模多機能型事業所と同一建物(サービス付高齢者住宅等)に居住する利用者に対してサービスを提供する場合に、同一建物以外に行う場合に比べて、かなり低い基本報酬が新たに新設されました。また、訪問サービスの機能を強化するため、訪問を担当する従業者を一定程度配置し、1ヶ月当たり延べ訪問回数が一定数以上の事業所を評価して、新たに訪問体制強化加算を設けました。

小規模多機能型居宅介護を広域型の特養や老健との併設することは、同じ法人が別棟ですることは可能でしたが、同一建物の併設は禁止されていました。

しかし、特別養護老人ホームを地域福祉の拠点として積極的に地域貢献させる必要性の観点から、同一建物の併設も市町村の判断でできるようになりました。