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医療経営情報(2019年9月5日号)

◆厚労省の概算要求、今年度当初予算から6,593億円増の32兆6,234億円        社会保障費が初の30兆円突破 一般会計総額は105兆円規模に

――厚生労働省
来年度(2020年度)の予算編成に向けた各省庁の概算要求が8月30日、締め切られた。一般会計総額は、2年連続で過去最大を更新する105兆円規模となった。省庁別でもっとも多いのは厚生労働省で、今年度当初予算と比べて6,593億円増となる32兆6,234億円。年金、医療、介護、福祉などの社会保障費にあたる「年金・医療等に係る経費」は、初めて30兆円を突破し、30兆5,269億円となった(今年度当初予算と比べて5,353億円増)。

重点要求を見ていくと、医療の分野では「医師偏在対策」「働き方改革」「健康寿命延伸」関連で今年度当初予算よりも手厚い配分がなされている。まず「地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者働き方改革の推進」は、今年度の844億円から135億円増の979億円となった。そのうち、「医師偏在対策」は81億円増の190億円となっており、新規の推進枠として「認定制度を活用した医師少数区域等における医師の勤務環境改善等」に23億円を充てている。これは、来年度から開始される医師少数区域で勤務した医師の認定制度に合わせたものだ。そして、地域において幅広い領域の疾患を総合的に診る「総合診療医等の養成支援」は、今年度の3.6億円から大幅に積み増しした47億円となっている。

「医療従事者働き方改革の推進」は、今年度の35億円から64億円を積み増しした99億円。とりわけ、「ICT活用やタスク・シフティング等の勤務環境改善・労働時間短縮に取り組む医療機関の支援」は今年度の3.9億円から42億円となっており、時間外労働の上限規制が適用される中小規模の医療機関を手厚く支援しようとする姿勢を示した。具体的には、今年度から各都道府県で開始されたモデル事業を拡大するためのコストとなる。

「健康寿命延伸」関連で目立つのが、歯科への配分が厚くなったことだ。「歯科保健医療提供体制の推進」には1.5億円(今年度は6,800万円)、ライフステージごとの特性を踏まえた歯科口腔保健施策を推進するための市町村支援や、後期高齢者医療広域連合が実施する高齢者向け歯科健診の実施支援には21億円(今年度は14億円)を盛り込んでいる。また、感染症対策では風しん対策の推進に48億円(今年度は12億円)を充てているのが目立つ。

一方で、「データヘルス改革、ロボット・AI・ICT等の実用化推進」は今年度から116億円減の607億円となった。これは、医療保険のオンライ資格確認に伴う中間サーバーの改修が今年度中にほぼ終了するためで、厚労省は173億円削減できると見込んでいる。「ロボット・AI・ICT等の実用化推進」は新規の推進枠として設けられており、32億円の予算を要求している。

◆回復期リハ入院料1~4の要件が見直される可能性も
「退院時の日常生活機能評価」はほとんどの病棟がクリア

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会
厚生労働省は、8月28日の中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会で、回復期リハビリテーション病棟における重症者の「退院時の日常生活機能評価」の実態に言及。回復期リハビリテーション病棟入院料1~4を算定しているほとんどの病棟が、「3割以上が4点以上改善」をクリアしていると指摘した。これを受けて支払側委員からは、基準値の妥当性を検討すべきとの声が上がっており、「4点以上」から引き上げられる可能性が浮上した。

回復期リハビリテーション病棟入院料は、昨年度の診療報酬改正で従来の3区分から6区分に再編された。従来は、1日6単位以上の手厚いリハビリを行っている病棟を評価する「リハビリテーション充実加算」(以下充実加算)が基本部分に上乗せできる形だったが、充実加算を廃止。実績をより評価する設計に変更された。点数は旧入院料1が2,065点、2が1,851点、3が1,697点(いずれも充実加算を含めた数字)だったが、改定後は入院料1が2,085点、2が2,025点、3が1,861点、4が1,806点、5が1,702点、6が1,647点となっており、入院料3まで従来よりも点数が高くなる仕組みだ。

実績は、入院料1および2に相当する要件を勘案したもので、「入院料1相当の実績」は「重症割合3割以上」「重症者(における退院時の日常生活機能評価)の4点以上回復が3割以上」「自宅等退院7割以上」、「入院料2相当の実績」は「重症割合2割以上」「重症者(における退院時の日常生活機能評価)の3点以上回復が3割以上」「自宅等退院7割以上」となっている。

つまり、重症者割合と日常生活機能評価が肝となるわけだ。重症者割合に関しては、設計どおりに入院料1・2を算定している病棟がほぼ30%以上、入院料3・4が20%以上となっているものの、日常生活機能評価の「3割以上が4点以上改善」入院料1~4のほとんどの病棟がクリア。想定よりも基準が甘かったといえる結果となっている。効果的なリハビリを各病棟が展開している証でもあるが、裏を返せばクリアしやすい基準であるともいえるため、より質の高いリハビリに対して手厚い評価ができるよう設計し直す意向を暗に示したともいえよう。今後、さらに高齢者が増加することで、回復期リハビリテーション病棟の需要が増していくことも踏まえれば、支出の引き締めを図るため要件を厳しくするのは必然的な流れであり、次期改定を前に布石を打ったと見るべきだろう。

◆東日本大震災の被災地特例利用状況、福島がゼロに 残り3院 「平成30年7月豪雨」での利用はなくなり、9月末で終了

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、8月28日の中央社会保険医療協議会総会で、被災地特例措置を利用している保険医療機関の状況を報告。2011年3月の東日本大震災に伴う特例措置を利用している保険医療機関は残り3院となった。福島県はゼロとなり、残りは岩手県が1、宮城県が2となっている。西日本で起こった「平成30年7月豪雨」に伴う特例措置を利用している保険医療機関はゼロとなり、予定通りこの9月末で特例措置は終了することとなった。

被災地特例措置は、震災の影響で診療報酬の算定要件や医療法上の基準を満たせなくなった場合に適用される。引き続き保険診療ができるようにするほか、他院からの受け入れなどで許可病床数を超えて患者を入院させた「定数超過入院」の場合も、入院基本料や特定入院料の減額措置の対象としない。また、看護師および准看護師、看護補助者の数が減少して看護配置に変動が生じた場合も変更の届出の必要はなく、震災前の入院基本料を算定できる(月平均夜勤時間数についても同様)。

東日本大震災の場合、震災が起こった翌年の2012年7月1日時点で、134の保険医療機関が特例措置を利用していた。今年1月時点でも、4つの医療機関が特例措置を利用している。内訳は岩手県が1(歯科)、宮城県が2、福島県が1。福島県の医療機関は、福島第一原子力発電所事故の影響を大きく受けている相双地区にあり、帰還困難地域の患者が今も入院しているほか、同地区の精神科医療機関が正常化していなかったり、介護施設や福祉施設、それらのスタッフの体制も不十分だったりで、本来の規模を超えた受け入れ状態が続き、「特例措置の利用終了の目途を立てることができない状況」とされていたが、状況が改善されたこととなる。

なお、岩手県の1院は歯科医院で、震災による津波で医院が全壊し流出。昨年12月に移転先の土地造成工事が終了しており、今年5~6月には着工、12月には特例措置利用が終了する予定だ。
宮城県は2つとも石巻市の医療機関で、1つは石巻市内に2院しかない精神病院の1院。「石巻圏域の精神科病床が減少した影響により、入院先がなく新たな入院患者を受け入れなくてはならない状況が続いている」ことから、特例措置の利用継続が必要としている。現在、来年3月末までの状況改善を目指しているという。

 宮城県のもう1院は、慢性期急性憎悪の患者を受け入れてきた医療機関。「今なお石巻市には仮設住宅58戸150人の被災者」がおり、被災による親族の減少によって在宅でのケアが困難とした。現在、同院は「在宅療養支援診療所として在宅医療に取り組み、平成29年3月より在宅看取り等も」取り組んでおり、仮設住宅に住む被災者にとってなくてはならない存在となっていることが窺えよう。

昨年の「平成30年7月豪雨」や2016年の熊本地震、そして2018年の北海道胆振東部地震に伴う被災地特例措置がいずれも終了を迎えたことを踏まえると、東日本大震災の爪痕の深さを改めて感じさせられる。厚労省は、来年度予算の概算要求で、「災害医療体制の充実」に今年度当初予算より40億円積み増しした98億円を要求しているが、今年の台風15号によって甚大な被害を受けたことも勘案すれば、被害への対応だけでなく、さらにきめ細かい整備を行って有事に備えることが必要ではないか。

◆厚労省、増税前の“駆け込み仕入れ”を控えるよう要請 「過大な値引き交渉」も 医療用医薬品の安定供給のため

――厚生労働省
 厚生労働省は8月19日、「医療用医薬品等に係る消費税率引上げへの対応等について」と題した通知を発出。通知は医療関係団体向けと医療用医薬品の製造販売業者および卸売販売業者向けの2種。医療関係団体向けの通知では、10月1日に消費税率が8%から10%へ引き上げられることを踏まえ、医療機関に対して卸売販売業者への「過大な値引き交渉」や大量の“駆け込み仕入れ”を控えるよう要請した。販売業者向けの通知では、税抜きの仕切価を適切に設定して消費税への転嫁を適正に行うよう伝えている。

 この通知の目的は、医療用医薬品の安定供給を確保することだ。長期収載品は薬価が下がるものが多いが、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出加算)は薬価が上がるため、増税前のタイミングで大量購入すればコスト面でのメリットがある。しかし、特定の医療機関のみに供給が偏れば、一時的に入手できなくなる医療機関が出てくる可能性もある。多くの病棟や関連病院を抱える大手医療法人であればなおさらだ。

 また、供給数の多い医療機関の場合、医薬品の価格交渉で消費税増税分を値引くよう要求するケースがあることも想定される。この点について、通知では「消費税の転嫁を拒否する行為については、規制の対象となることに留意されたい」と言及。さらに、日本医薬品卸売業連合会と日本医療機器販売業協会では、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」の規定に基づき、医療機関との納入価の交渉の際は税額の表示方法を業者間で取り決める「表示カルテル」に基づく交渉を行うとしており、その点についても理解を求めている(表示カルテルについては、販売業者向けの通知で、その実施を徹底するよう呼びかけている)。

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