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医療経営情報(2018年3月8日号)

2018/3/22

◆インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」の保険適用を承認
「1回飲むだけ」で治療できる 薬価は10mgで約1500円

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 3月7日に厚生労働省で中央社会保険医療協議会総会が開催され、インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」(塩野義製薬)が保険適用の承認を受けた。3月14日から保険適用される。薬価は10mgが1507.50円、20mgが2394.50円。1錠は20mgで、12歳以上の場合原則として1回2錠服用するため、患者負担額は約1,440円となる(3割負担の場合)。当初のスケジュールでは5月に保険適用される予定だったが、インフルエンザの流行に対処するため緊急薬価収載された。

 既存のインフルエンザ薬としてはタミフルやイナビルがある。しかし、タミフルはウイルスの増殖を抑える効果がないため、1日2回、5日間服用を続ける必要があり、イナビルもウイルス排出までに2~3日程度を要するとされている。しかし、「ゾフルーザ」はウイルスの増殖を直接抑えるため、タミフルやイナビルに耐性をもったウイルスにも効力を発揮する。口から飲む錠剤タイプで、1回の服用で治療が完了するため高齢者などへの身体的負担軽減や飲み忘れを防止する効果も期待できる。

 1回の服用で効果があるということは、すなわち1日程度でインフルエンザウイルスが排出されることを意味する。インフルエンザでは家族や学校、会社などのコミュニティへの感染も懸念されるところだが、短期間でウイルス排出できることで、感染防止効果も期待できる。そうした点が評価されて5%の有用性加算IIがなされたほか、革新的な医薬品に加算される「先駆け審査指定制度加算」(10%)の適用も受けた。

 「先駆け審査指定制度加算」は2015年に創設されたもので、画期的な医療機器や医薬品の早期実用化のため審査機関の短縮を図っている。これまで甲状軟骨形成術に用いられる医療機器「チタンブリッジ」(ノーベルファーマ)のみが適用を受けていたが、「ゾフルーザ」が医薬品としては初めて適用を受けることとなった。

◆DPC病院の合併・分割時の取り扱いルールが決定
病床数が「200床以上増減」「2分の1以下」などの場合も

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 3月7日に厚生労働省で中央社会保険医療協議会総会が開催され、DPC病院の合併・分割時のルールが決められた。大幅な病床数変更があった場合の取り扱いについても方針が明らかとなっている。

 DPC制度(DPC/PDPS、診断群分類別包括支払い制度)は、より効率的な医療を目指して2003年に導入された。病名や手術などの診療行為を、手術や合併症の有無、処置の状況、重症度などに応じて分類し、1日あたりの定額点数を算出する包括評価方式を採用している。看護配置10対1以上、1カ月あたりの病床比0.875以上といった基準を満たした病院のみが対象となっている。2月に厚労省が発表した「平成28年度病院機能別制度別医療費等の状況」によれば、1日あたり医療費はDPC対象外病院と比べて約2倍であり、DPC対象病院として指定されることは収益面で大きなメリットにつながる。

 最近は民間企業の参入などによってM&Aによる病院の合併・統合・再編成が増えており、大規模な病床数の増減が起こりうるほか、機能自体も変わる可能性がある。そのため、継続してDPC制度に参加できるかを中央社会保険医療協議会で審査を行っている。しかし、医療機関側からの申請手続きに不備が生じることが続いたことから、昨年6月に改めてルールを明確化する方針を固めていた。

 まずDPC病院同士の合併については、急性期医療を提供することが変わらないと考えられるほか、提出されるDPCデータから内容の推測も可能であるため、特に審査は行わずに参加継続できることとなった。もちろん、合併後もDPC制度に参加できる要件を満たしていることが条件だ。基礎係数は合併前の「主たる病院」が所属していた医療機関群のものが適用される。機能評価係数IIおよび激変緩和係数は、合併前の加重平均値(症例数ベース)を適用する。

 DPC病院が分割する場合は、機能がまったく変わる可能性があることから、従来どおり個別に審査を行う。審査の結果、複数のDPC病院となった場合、いずれもDPC標準病院群の基礎係数が適用される。機能評価係数IIおよび激変緩和係数は、分割前の病院のものを適用する。

 「病床数が増減する場合」として対象となるのは、同一年度内に「200床以上増減」「2倍以上」「2分の1以下」の場合。基礎係数、機能評価係数II、激変緩和係数とも増減前の医療機関群のものが適用される。ただし、激変緩和係数は病床増減した次の診療報酬改定時に最大値が0となる。

◆費用対効果評価、試行的導入の3品目で価格調整を実施
「支払い意思額調査」は最優先課題として実施有無を検討

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会
費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会
 厚生労働省は、3月7日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会の合同部会で、費用対効果評価の試行的導入の対象となっている13品目のうち、3品目の価格調整を実施。費用対効果評価の本格導入に際して焦点となってきた「支払い意思額調査」については、実施有無を最優先課題として検討すべきとの確認がなされている。

 費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたり、適正な価格設定を行うための仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待され、2012年5月から導入が検討されてきた。2016年度の診療報酬改定時に試行的導入が決定し、現在、すでに保険収載されている13品目(医薬品7、医療機器6)を対象として分析が進められている。2018年度からの本格導入を目指してきたが、医薬品や医療機器などの費用対効果を導き出すための「総合的評価(アプレイザル)」を行う基準値を決めるのに必要な「支払い意思額」を算出するための調査が行えず、昨年12月に本格導入が見送られた。

 そこで、ひとまずは13品目の分析を進めた結果が、この日発表されたというわけだ。価格調整の対象となったのは、悪性黒色腫や非小細胞肺がんなどの治療薬「オプジーボ」(小野薬品工業)、HER2陽性乳がん治療薬「カドサイラ」(中外製薬)、遠位弓部大動脈瘤治療に用いられる「カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム」(川澄化学工業)。

 「オプジーボ」と「カドサイラ」は価格引き下げ、「カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム」は価格を引き上げることが決まった。「オプジーボ」と「カドサイラ」の費用対効果が低く、「カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム」の費用対効果が高いということだ。「カドサイラ」が対象となった根拠については、費用対効果の指標となる増分費用効果費(ICER)が1,000万円以上であると示されたが、「オプジーボ」および「カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム」については「両分析結果併記」とのみ発表されている。

 「両分析結果併記」とは、メーカーの分析結果と第三者による再分析結果に乖離が生じていることを意味する。乖離が生じた場合は、価格変動の小さいほうの結果をもとに暫定的な価格調整を行うというルールが中医協で決められている。つまり、「オプジーボ」および「カワスミ Najuta 胸部ステントグラフトシステム」に関しては、価格変動が小さいほうを選んだとしても、引き下げもしくは引き上げに該当するほど費用対効果が明らかだということになる。

 なお厚労省は、対象品目のより詳細な分析が必要として、臨床の専門家などを構成員とするワーキンググループを設置することも提案。費用対効果評価制度の本格導入に、改めて意欲を示した形だが、「支払い意思額調査」の実施が決まらなければ、費用対効果算出のための指標が決まらないため、絵に描いた餅となる可能性もある。すでに診療側の委員は、この日の合同部会で「支払い意思額調査」の実施に反対を表明。先行きが明るいとはいえない状況だ。

◆医師臨床研修、必修診療科が現在の3科から7科に増加
臨床研修病院の指定・募集定員設定は都道府県実施 2020年度から

――厚生労働省 医道審議会医師分科会医師臨床研修部会
 3月7日、厚生労働省で医道審議会医師分科会医師臨床研修部会が開かれ、医師臨床研修の必修診療科を現在の3科から7科へと増加させることが確定した。7科必修となるのは2009年度以来となる。臨床研修病院の指定や募集定員設定を都道府県が行うことも決まった。いずれも2020年度からの実施。

 7科の内訳は、内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、救急、地域医療。現在、医師臨床研修の必修診療科は内科(6カ月以上)、救急(3カ月以上)のみで、研修2年目に1カ月以上の地域医療研修を受ける仕組みとなっている。そのほか2つの診療科で研修を受ける必要があるが、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の中から選べるようになっており、制度見直しによって、現在選択制となっている診療科が、麻酔科を除いてすべて必修となる形だ。

 現在の「3科必修+2科選択必修」スタイルは、2010年度の見直しによって決まったもの。短期間に一律の研修を行うことによって、専門医の育成を妨げているとの判断からだった。しかし、地域包括ケアシステムの構築を推進している現在、医師には総合的な診療能力が求められるようになってきている。医師臨床研修制度は5年に1回見直されているが、2020年度の見直しで設けられた到達目標においては、チーム医療の実践やコミュニケーション能力の向上が盛り込まれたほか、「新たに経験すべき症候・疾病」として「成長発達の障害、妊娠・出産、統合失調症」などが加わったこともあり、必修科目を増やすべきとの判断に至った。ただし、柔軟な研修が可能となるように、研修期間は従来の月単位から週単位へと変更される。

 評価方法についても改善策が盛り込まれている。これまでは、臨床研修病院に委ねられていたためばらつきがあると指摘されていたため、標準化させるため「研修医評価票」を導入。到達目標の達成度を評価する。達成度については、少なくとも年に2泣き、プログラム責任者・研修管理委員会委員が形成的評価を実施。研修医と評価者それぞれの負担を軽減するとともに、制度見直しが研修の質確保につながったかどうかを評価するため、インターネットを活用。そのデータは次回の制度見直しの資料として用いられる。

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