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医療経営情報(2017年8月24日号)

◆ 費用対効果評価制度、予定どおり来年度から本格導入へ 年内に制度の骨子を取りまとめ 支払い意思額調査は事実上棚上げ

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会
8月23日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会が開かれ、費用対効果評価制度を予定どおり来年度から本格導入することを確認。今年末までに制度化に向けて骨子を取りまとめる方針を示した。評価の基準とするために実施が検討されてきた「支払い意思額調査」は、明確な実施時期が示されず、事実上棚上げの格好となった。

費用対効果評価制度は、高度先進医療機器を用いる高額医療などを保険収載するにあたって適正な価格を設定することを目的とした仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待されている。2012年5月から導入が検討されており、2016年度の診療報酬改定時に試行的導入が決定。現在、すでに保険収載されている13品目(医薬品7、医療機器6)を対象として分析が進められている。

評価は「対象品目の選定」「企業によるデータ提出」「再分析」「総合的評価(アプレイザル)」「価格調整」の順に実施することが決まっており、「再分析」までは2016年度診療報酬改定時に決定。その後、同部会で「総合的評価(アプレイザル)」について検討を行ってきたが、そこで大きくつまずき、議論が長引いている。

問題となったのは、アプレイザルにおける増分費用効果費(ICER)の評価基準の設定方法。ICERは、患者の健康状態を改善するために必要な追加費用だが、その基準値を決めなければアプレイザルすることができない。基準値を決めるには、ICERの効果の単位にあたるQALY(質調整生存年)に関わる「支払い意思額」を算出する必要がある。

「支払い意思額」の調査は、無作為に抽出した3000人以上に対して面接を実施し、「この治療法にはいくらまで支払えるか」を聞くというもの。ところが厚労省は、7月12日に提示した調査票案に「公的医療保険から支払われる治療法の費用に応じて、あなたが負担する保険料は増加する可能性があります」と記載。医療保険の仕組みに詳しくない人が多いことや、面接対象者の年齢幅が広いことを考えれば、先入観を与えるおそれもあるとの指摘が相次ぎ、再検討を余儀なくされた。

その後、現時点で調査票の修正案は提示されていない。厚労省は、次回以降の同部会で修正案を提示するとしたが、この日示されたスケジュール案には時期の明記はされておらず、調査の実施から集計・分析には最短4カ月程度要するとの見込みを示したのみ。11月に開始すれば来年2月末から3月に結果が得られるとしたが、時期的に制度の骨子に盛り込めないことは明らかであり、そもそも11月に調査開始できるかも危うい状況だ。まずは制度の考え方や運用方法を取りまとめることを優先したい意向を示したが、早くも骨抜きの制度となるリスクを抱えたと言える。試行的導入で分析が進められている13品目は、過去の研究データや諸外国の状況を参考にしてアプレイザルを行い、価格調整の雛形を整えることになっているが、本格導入後にその雛形がどのように影響するか注視していく必要があるだろう。

 

◆ 一般病棟入院基本料の評価手法、見直しの方向 「重症度」「医療・看護必要度」はDPCデータへの置換えも視野に

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
8月24日、厚生労働省の入院医療等の調査・評価分科会が開かれ、一般病棟入院基本料の評価手法を見直す方向性が確認された。また、一般病棟入院基本料の施設基準評価項目にある「重症度」「医療・看護必要度」については、DPCデータとの置き換えも視野に、相関性を検証していく方針を固めている。

一般病棟入院基本料の施設基準は、「看護職員配置」「平均在院日数」「重症度」「医療・看護必要度」などがある。7対1でも病床数200床以上の10対1でも、算定要件としてDPCデータの提出が義務付けられているため、相関性がある部分を置き換えて事務作業の効率化、合理化を図るのが狙いだ。とりわけ、「重症度」「医療・看護必要度」については、看護職員が毎日測定する必要があり、入力作業などで大きな負担がかかっている現状がある。

しかし、DPCデータの提出は3カ月に1度であり、薬剤の使用量や手術の評価期間などの測定において定義が異なる部分もある。そこで厚労省は、定義や算出方法の違いを洗い直し、どの程度置き換えることが可能なのか、一定の条件を設定することで解決可能なのかなどを検証したい考えを明らかにした。

また、「重症度」「医療・看護必要度」は、7対1と10対1で活用方法が異なる。7対1の場合は、カットオフの基準として該当者が25%以上いることが算定要件となっており、10対1の場合は該当患者の割合に応じて「看護必要度加算」の算定が認められる。しかし、10対1でも該当患者の割合や平均在院日数が7対1とほとんど変わらないケースがあるため、厚労省は評価手法自体を見直すべきだとした。検証を深めて、より適切な方法を打ち出したい方針だ。

具体案は今後出される見通しだが、政府としては医療費を抑制するのが第一の目標であるだけに、カットオフ基準をさらに低く設定して基本報酬を引き下げ、加算に重きを置く可能性もある。そうなると、必然的に7対1の入院基本料引き下げにつながるだけに、今後の同分科会での議論がどのように展開していくか注目が集まる。

 

◆ 「救急・在宅等支援病床初期加算」を見直す可能性も       糖尿病重症化予防のアウトカム評価は第2ラウンドで検討

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
8月24日に開かれた厚生労働省の入院医療等の調査・評価分科会では、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料についても議論を展開。「在宅からの入院患者」に対する加算を設ける方針が明らかになった。

地域包括ケア病棟では「救急・在宅等支援病床初期加算」(14日まで、1日150点)が設けられている。これは、「在宅からの入院患者」であっても「急性期病棟からの転棟・転院患者」であっても変わらない。しかし、昨年度の厚労省の調査によれば、「在宅からの入院患者」のほうが、尿・血液などの検体検査や超音波・内視鏡などの生体検査、CT、MRIを実施した割合が高いことがわかった。

また、「在宅からの入院患者」のほうが不安定な状態であることが多く、退院の見通しが立たないケースも多い。これらを総合すると、「在宅からの入院患者」のほうが「急性期病棟からの転棟・転院患者」よりも現場に負荷をかけていることは明らかであり、同分科会に出席した委員からは、加算で評価するべきとの意見が相次いだ。

現段階では、具体的にどのような加算を設けるかまでは議論が深まっていない。ただし、厚労省は昨年6月分の算定状況データを提示。このデータによれば、「救急・在宅等支援病床初期加算」の算定状況は、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料の算定回数のうち36%にとどまっている。つまり、「救急・在宅等支援病床初期加算」の活用が少ないことから、「在宅からの入院患者」のみを対象にするよう要件を見直す可能性もある。そうなると、事実上「急性期病棟からの転棟・転院患者」に対する評価が引き下げられる結果になるが、在宅復帰を促すのが医療政策の基本方針であるだけに、現実味のある選択肢ではないだろうか。

 

◆ 東日本大震災、熊本地震の被災地特例措置は
来年3月末まで延長 対象は継続利用のみ 

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会
8月23日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会の総会が開かれ、東日本大震災および昨年の熊本地震に伴う被災地特例措置は、今年9月30日までの予定を変更して来年3月31日まで延長することが決まった。新規の届出は認めず、継続利用の場合のみの適用となる。

被災地特例措置は、震災の影響で診療報酬の算定要件や医療法上の基準を満たせなくなった場合に適用される。とりわけ、保険医療機関の建物が全半壊してしまったケースが多い。引き続き保険診療ができるようにするほか、他院からの受け入れなどで許可病床数を超えて患者を入院させた「定数超過入院」の場合も、入院基本料や特定入院料の減額措置の対象としない。また、看護師および准看護師、看護補助者の数が減少して看護配置に変動が生じた場合も変更の届出の必要はなく、震災前の入院基本料を算定できる(これは月平均夜勤時間数についても同様)。

東日本大震災の場合、震災が起こった翌年の2012年7月1日時点で、134の保険医療機関が特例措置を利用していた。今年7月の時点では5施設まで減っているが、まだ地域によっては医療体制が正常化していないところもあり、仮設状態での診療を続けている医療機関もあるため、特例措置の継続が必要と判断された。熊本地震の場合、今年1月のアンケート調査では特例措置を利用している保険医療機関および保険薬局は22施設あった。7月時点では5施設まで減っているが、東北同様に新たな建物の再建に時間がかかっているケースがあり、やはり継続が必要となっている。

特例措置の延長は定期的に行われている。今回も、「今後、被災者や被災医療機関等の状況に変化があり、必要がある場合には、別途対応を検討する」としており、必要とする保険医療機関がある限りは延長される見通し。ただし、東日本大震災については発生から6年が経過していることを踏まえ、「特例措置解消の時期について一定の目処を示していただく」ことを求めた。熊本地震についても同様の取り扱いをしていく方針だ。

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