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医療経営情報(2017年4月20日号)

◆首相、遠隔診療の診療報酬増額を明言 2018年度の次期改定で 対面診療との組み合わせが前提か

――未来投資会議
4月14日に首相官邸で開催された未来投資会議で、安倍晋三首相は遠隔診療の診療報酬を2018年度の次期改定時に増額させる方針を明らかにした。首相自身が潰瘍性大腸炎に苦しんでいた経験を語りつつ、重症化を防ぎ回復を早めるためには「かかりつけ医による継続的な経過観察が大切」とし、対面診療とオンラインでの遠隔診療を組み合わせれば無理なく効果的に経過観察が受けられるとの認識を示した。

この日の会議では「新たな医療・介護・予防システムの構築」について議論を展開。遠隔診療については、まず、プレゼンテーターの1人でありシンガポールでも医療事業を展開している医療法人社団鉄祐会の武藤真祐理事長から明確な診療報酬が定まっていないとの指摘があった。

それを受けて、塩崎恭久厚労相も「医療の質や生産性が向上するよう、診療報酬上の評価を行っていきたい」と発言。糖尿病などの生活習慣病患者への指導・管理や、血圧、血糖、心臓ペースメーカーなどを遠隔モニタリングすることで重症化を予防するほか、遠隔画像診断や遠隔病理診断といった医師同士のコミュニケーションも含めて活用していきたいとした。また、診療報酬上の評価については、2018年度の次期改定で見直すだけでなく、有効性・安全性などに関する知見を集積したうえで、2020年度以降のでもさらに反映させていく意向を示している。

ただし、安倍首相も言及したように、現段階では対面診療を補う運用が前提となっており、生活習慣病を始めとする慢性疾患が診療報酬改定の対象となる可能性が高い。一方で、経済産業省は、昨年の11月に禁煙外来や引きこもりなどにも遠隔診療を適用すべきと提言。さらに、「禁煙外来は目的・診断内容が明らか」「引きこもりは初診の通院も困難」として、オンライン診療のみの適用も視野に入れるべきだとしている。

今回の未来投資会議の議論および安倍首相の発言を踏まえ、これから厚労省内で具体的な検討が進められていく。前述した経産省の提言を含め、どこまでを遠隔診療の適用範囲としていくのかが今後の焦点となるのではないか。

◆高齢者への「薬の過剰処方」を防ぐガイドライン作成へ
特に糖尿病、循環器、認知症、不眠での対策を強化

――厚生労働省
4月17日、厚生労働省で「高齢者医薬品適正使用検討会」の第1回会合が開かれ、高齢者への多剤投与(ポリファーマシー)を防止するためのガイドラインを作成することが決まった。ガイドラインは医療機関や薬局向け。来年度中(2019年3月)にまとめられる方針だ。

同検討会の開催が決定した背景には、13年連続で過去最高を更新している医療費の問題があることは間違いない。医療費の伸びの半分を締めているのは薬剤料であり、処方せん1枚あたりの調剤技術料は、医科1件あたりの入院外医療費よりも伸び率が高いからだ。昨年11月に発表された日本医師会総合政策研究機構の調査によれば、外来医療費のうち医科技術料が占める割合は2001年度が50.6%だったのに対して、2015年度は44.2%と縮小傾向にある。翻って、薬剤料の占める割合を見ると、2001年度が29.0%だったのに対し、2015年度には36.2%まで拡大しているのである。

この傾向がより顕著に表れているのが、1施設あたりの保険収入。薬局は2005年度が9,926万円だったが、2015年度には1億4,051万円と4,000万円以上も増加。医療機関が9,337万円から1億188万円と851万円の増加に留まっているのに比べれば、その伸び率の高さがわかるだろう。医薬分業の拡大によって、薬局のチェーン化が進んでいることも拍車をかけていると言える。

こうした状況を改善するには、全体的に薬の処方量を減らすのが早道。年齢の上昇に従って処方される薬剤数が上昇しており、60歳以上の併用薬が平均して1剤程度多いデータもあるため、高齢者の減薬に取り組もうとしているのである。

もちろん、高齢者へのポリファーマシーが問題となっている現状があるのも確かだ。加齢によって生理機能が低下するため、薬剤の血中濃度は高くなりやすく、「薬の効きすぎ」によって低血圧や脱水、電解質以上、便秘、排尿障害などの症状が出ることもある。運動機能低下などの副作用が出るリスクも高いため、適正な使用が必要だ。

しかし、厚生労働省の調査によれば、2つ以上の慢性疾患を持つ高齢者や認知症高齢者に対して平均約6剤の処方が行われているのが現状。さらに、複数の医療機関から合計10種類以上の投薬を受けている調査結果もある。薬剤数や服薬回数が増えることで、正しい服用がなされなくなる傾向が高まるのは明らかであるため、ガイドラインを作成することでより適切な処方を促そうというわけだ。

今後、同検討会では処方や副作用の実態を把握するとともに、特に糖尿病、循環器(血栓、心疾患)、認知症、不眠などの領域で対策を行っていく意向。果たして、医療費の削減につながるような減薬・残薬対策を講じることができるのか注目される。

◆がんゲノム医療の懇談会、「遺伝外来」の診療報酬化を提言
人材不足解消のため「遺伝カウンセラー」の国家資格化も求める

――厚生労働省
4月14日、厚生労働省で「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」が開催。遺伝カウンセリング体制の整備の重要性が確認されるとともに、「遺伝外来」運営の診療報酬化の必要性が提言された。また、がんゲノム医療に携わる人材が圧倒的に不足していることも指摘され、「遺伝カウンセラー」などの関連資格を国家資格とすることを求める声もあがった。

現在、保険収載されている遺伝子検査は、網膜芽細胞腫と甲状腺髄様癌で各3,880点。懇談会に参考人として出席した静岡がんセンター総長の山口建氏は、アメリカの臨床遺伝学会で開示推奨対象となっている遺伝性腫瘍症候群16疾患と非がん遺伝性疾患8疾患の遺伝子検査について、健康保険の対象とすることを求めた。

山口氏は、遺伝子内の変異位置・変異内容と病態との厳格な紐付けが十分になされていないことも指摘。日本人のがんにおけるゲノム解析データと、臨床データを融合させたデータベースの構築が必要だとした。

また、生殖細胞系列の遺伝子変異に伴う疾病について、医療スタッフの知識や理解が十分とはいえないとし、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなどの育成が必要だとした。人材不足に関しては、懇談会の構成員である全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長も言及。認定遺伝カウンセラーなどを国家資格とするとともに、遺伝カウンセリングでの患者説明をスムーズに行うために、認定資格を別途認定すべきと提言している。

がんゲノム医療については、日本は遅れをとっている状況だ。一部のがんでは、原因となる遺伝子を特定したうえで治療方針や治療薬を決定しているが、すべての患者には対応できていない。一方、海外では国家プロジェクトとして実用化への取り組みを進めている国が多く、アメリカでは3年間で1100億円の予算を投じている。

昨年12月に開かれた「がんゲノム医療フォーラム2016」では、安倍晋三首相も「健康先進国としてゲノム医療の実用化を進め、人工知能などの科学技術も駆使してがんとの闘いに終止符を打たなければならない」とメッセージを寄せており、2018年度の次期診療報酬改定で検討される可能性は高いと言えよう。

◆糖尿病診療に特化した電子カルテが登場 診療経過表など長期治療サポートの機能を搭載

――アートクレイ株式会社
4月17日、臨床検査機器メーカーのアークレイ株式会社は、糖尿病専門クリニック向け電子カルテ「CLINICATION(クリニケーション)」の発売を開始した。チーム医療を支える情報プラットフォームとして設計されており、患者の長期治療をサポートするための診療補助機能を備えている。

糖尿病は、長期にわたって治療を行う必要があるため、常に診療経過を確認しつつ計画を立てていかなければならない。また、医師や看護師だけでなく、栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士など複数の専門職がチームとして取り組むため、診療情報を迅速に共有することが求められる。しかし、ほとんどの電子カルテはレセプト作成をベースに設計されているため、チーム医療に活用するのは難しく、別途情報共有のための手立てを講じる必要があった。

糖尿病検査システムや血糖自己測定器、糖尿病開発アプリなどの開発・提供を通じ、半世紀近くにわたって糖尿病診療をサポートしてきたアークレイは、より診療の質や効率化を向上するため「CLINICATION」を開発。医療情報システムの基点として、検査データ管理システムなどさまざまなシステムとの連携も可能となっている。

まず、1つのカルテを複数のスタッフが同時に参照・記入できるのが特徴。「診療付箋」機能もあるため、重要事項を視覚的にリアルタイムで共有できるのも便利だ。診療経過を時系列で一元表示できる機能もあるため、バイタルや検査結果、処方内容なども一目で把握できる。グラフ機能も充実させているほか、生検結果や画像などをワンクリックで拡大表示することも可能となっている。もちろん、会計や予約機能とも連携している。

糖尿病診療に必要な内容が集約されているため、教育ツールとして活用可能なのも魅力。日常の診療の中で知識やスキルを効率的に修得できるため、糖尿病診療のプロフェッショナル育成にも役立ちそうだ。

電子カルテを始め、今後ますます医療現場でのICT化が進んでいく。しかし、複数のシステムが混在し、把握するだけで一仕事という状態になる可能性も高い。そのため、今後はいかに効率的に情報を集約し、活用するかが求められるようになる。そうした意味でも、この「CLINICATION」のように一元管理できるシステムの重要性は高まっていくのではないだろうか。

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