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医療経営情報(2017年3月30日号)

2017/4/10

◆2018年度の診療報酬改定、生活習慣病の重症化予防が中心に 「透析予防」推進のため、自治体とかかりつけ医の連携強化が課題

――厚生労働省
3月29日、厚生労働省で中央社会保険医療協議会の総会が開かれ、2018年度の診療報酬改定について議論が進められた。この日の中心議題は「生活習慣病の重症化予防」。特定健診や特定保健指導に力を入れる一方で、とりわけ糖尿病性腎症の患者に着目し、重症化による人工透析導入を防ぐことを重視。自治体などの行政とかかりつけ医との連携をさらに強化していく方針が確認された。

生活習慣病の中でも、糖尿病予備軍と言われる人たちの割合は年々増加している。2012年の「国民健康・栄養調査」では、「糖尿病が強く疑われる者と糖尿病の可能性を否定できない者の推計人数は約2,050万人にのぼった(20歳以上、男女計)。しかし、同調査では「ほとんど治療を受けたことがない」人が全体の29%と、3割近くにのぼることもわかっている。今から20年前の1997年には47.9%だったことを考えると、改善傾向にあることは確かだが、600万人以上の糖尿病予備群が何の対処もしていない現状は異常事態とも言えよう。社会保障費が膨らみ続け、医療費が40兆円と国家予算の4割以上を占めていることを考え合わせれば、早急に対策を打たなければならないことは明らかだ。

もちろん、政府も手をこまねいてきたわけではない。2008年度からは特定健診および特定保健指導を導入し、2014年度からは特定健診とレセプトデータなどを活用した保健事業(データヘルス)も開始している。しかし、特定健診こそ2014年度時点で平均実施率が約50%に達し、毎年100万人規模で受診者が増加しているものの、特定保健指導の平均実施率は18%と目標の45%には遠く届いていない。

また、医療費削減のためには、糖尿病の重症化に伴って導入されることが多い人工透析導入数を抑制することも重要だが、予防の取り組みがしっかりなされているとは言えない状況となっている。29日の中医協総会では、厚生労働省から「糖尿病透析予防指導管理料」「糖尿病合併症管理料」「慢性維持透析患者外来医学管理科」の算定対象となっている患者について、「医療機関からの情報提供を行った」との回答がそれぞれ1%未満であると指摘。さらに、同患者が特定健診・特定保健指導を受けているかどうかもほとんどが把握していないとしている。

こうした状況を改善するには、自治体などの行政と医療機関との連携が不可欠。しかし、中医協総会に出席した委員からは「特定健診などの情報がかかりつけ医に届いていない」「保健師の数が足りていないため保健指導が十分に進んでいない」といった声もあがっており、今後連携強化を進めていくための施策が検討される可能性が高い。同時に、生活習慣病の重症化を予防するための事業が活発化することも予想される。かかりつけ医としては、適切な診療報酬を受け取るためにも、今後の推移を見守りつつ情報収集に務めることが求められよう。

◆「医療ICT意識調査」、遠隔診療に関心を持つ人が8割以上
年収400万円未満が治療中断する最大の理由は「費用」との結果

――NPO法人日本医療政策機構
3月28日、NPO法人日本医療政策機構は「2016年医療ICTに関する意識調査」の結果を発表。「何らかの遠隔診療を受けてみたい」と回答した人が全体の8割以上に達したほか、生活習慣病などの慢性疾患と指摘されながら治療を開始していない人の6割近くが遠隔診療に関心を持っていることが明らかとなった。

遠隔診療に関心を持った理由としてもっとも多く選ばれたのは「通院の手間」。中国地方、四国地方がそれぞれ66%、62%と高かったほか、他地域もすべて5割以上の人が理由として挙げているのが特徴的だ。遠隔診療は、過疎地域など医療資源の乏しい場所でも医療を受けやすくできる手法だとされてきたが、医療環境に関わらず潜在的な需要があることが窺えよう。

実際の診療スタイルに関しては、「テレビ電話をメインとして、チャットを補助的に用いる」と答えた人が48%と約半数。「テレビ電話のみ」と答えた人が15%いるため、テレビ電話による診療を望んでいる人が6割以上ということになる。逆に、「チャットをメインとしてテレビ電話を補助的に用いる」と答えた人が28%、「チャットのみ」と答えた人は9%。個々人がどのような端末を所有しているかにもよるため一概には言えないが、医師とフェイス・トゥ・フェイスでの診療を望む人が多いことが推測できる。

また、同調査では生活習慣病の治療中断理由も聞いている。生活習慣病は定期的な受診が必要なため、継続して治療を受けることができずに中断してしまう人も少なくないが、同調査ではその最大の理由が「通院の手間」となっているのである。「費用面の負担」を挙げている人も全体の4分の1程度と多く、世帯年収400万円未満では中断する最大の理由となっていることも判明している。

遠隔診療は、2015年に全面解禁されたが、現行の診療報酬制度はそれを考慮した内容になっていないため、対面診療と比べて診療報酬加算が少ないとの指摘も多い。しかし昨年11月には、経済産業省が遠隔診療の報酬を対面診療と引き上げるべきだと提言。禁煙外来や引きこもりなどへのカウンセリング療法も遠隔診療として適用する方針となっている。少なくとも、移動にかかる費用が必要ないことを考えれば、多少なりとも費用軽減につながるため、受診者が増える可能性は高いといえる。医療機関側としては、いきなり診療のメインに据えるのはリスクもあるが、まだ一般化していないうちにオプションとして組み込んでおき、運用に慣れておくことがそろそろ必要かもしれない。

なお、この調査は、全国20歳以上の男女を対象にインターネットで行われた。有効回答数は1,191で、男女比率は50%ずつ。年代別では39歳以下が35%、60歳以上が24%以上。地域別では関東地方が36%ともっとも多く、次いで近畿地方の20%、中部地方の17%となっている。

◆スタッフ間の迅速な情報共有を可能にする
デジタルサイネージ「MEDIP VISION」の新バージョンが登場

――株式会社医療情報基盤
3月22日、株式会社医療情報基盤は病院内情報共有システム「MEDIP VISION」(メディップビジョン)Ver.2.0をリリースしたと発表した。

「MEDIP VISION」は、医療機関のスタッフエリアにデジタルサイネージ(電子掲示板)を設置し、迅速な情報伝達・共有をサポートするシステム。医局やナースステーション、スタッフが使用する廊下や事務スタッフのオフィス、スタッフ専用エレベーター横などにすでに全国約120施設に導入されており、研修会などの参加率がアップしたほか、アクシデントおよびインシデント事例の共有ができるなど、スタッフへの教育ツールとしての活用例も多い。

医師や看護師、スタッフが多く出入りする病院や診療所では、情報の共有は決して簡単ではない。入院施設を備える場合は、勤務時間帯も異なるためなおさら共有が難しくなる。通常のビジネスであれば、メールなどで共有を図るところだが、日常業務に追われているためメールを随時チェックするのは現実的ではない。貼り紙やホワイトボードなどを活用するケースも多いが、視認性が高いとは言いがたく、共有漏れのリスクがあるのは否めない。

その点、デジタルサイネージは視認性が高いのが特長。常に出入りする場所に大きなモニターを設置しておけば、一瞬で情報を入手できるため、日常業務の妨げにもならない。さらに、「MEDIP VISION」はコンテンツテンプレートを約200種類用意。医療安全情報、病院経営情報、地域医療情報、医薬品・医療機器情報、病院機能評価など、医療現場で役立つコンテンツがそろっているため、簡単に必要な情報を効果的に配信できる。PC上のマウス操作のみで直感的な配信ができるので、事務スタッフの手間も必要以上にかかることがない。

また、地震などの災害や不審者情報などを割り込みで配信できるエマージェンシー機能や、たとえばナースステーションのみに配信するなど、部門別にグループ配信できる機能も備えており、用途に合わせて多彩に活用できる。スタッフが経営意識を持つようになったとの声もあり、組織力向上を目指している医療機関にとっても、導入を検討する価値があるシステムだと言えるのではないだろうか。

◆歯科クリニックのカルテを1箱から保管
月額保管料は1箱98円と格安 模型の保管も可能

――株式会社歯愛メディカル
株式会社歯愛メディカルは、3月15日からカルテの保管サービスを開始した。カルテのほか、歯型の石膏模型なども預けることができる。同社の主要顧客である歯科クリニックが対象だが、他の医療機関も対応していく方針。電子カルテを導入しておらず、カルテの保管場所に困っている小規模の診療所は検討する価値がありそうだ。

歯愛メディカル社は、医療機関向けの通信販売事業を展開。メインで取り扱っているのは歯科用品だが、一般医院向けの用品も扱い、約70,000件の顧客を持つ。2016年度の売上高は203億円に達し、昨年6月には東証のプロ投資家向け市場「TOKYO PRO Market」にも上場している。新たなニーズを開拓することで、さらに事業を拡大していく意向。

今回のカルテ保管サービスは、同社の本社がある石川県白山市の物流拠点を活用する。セキュリティに配慮した保管スペースを確保しており、すでに倉庫業としての認可も取得済み。特徴的なのは料金で、月額保管料を1箱98円(税込)と格安。配送料は1箱698円(税込)で、箱は専用のものを使用する。返却や再保管を依頼することも可能なため、万一開示請求があった場合も安心だ。

まだ電子カルテを導入していない医療機関にとって、カルテの保管は頭を悩ませる問題のひとつ。カルテは歯科医師法23条(医師法は24条)により、診療後5年間は保存しておかなければならないが、紙のカルテはかさばるため、特に小規模な診療所の場合は保管場所を確保するのが難しい。さらに、保存期間が過ぎたら廃棄しなければならないが、シュレッダーにいちいちかけるのは手間もかかる。歯愛メディカル社は、もちろんその点もカバーし、1箱698円(税込)で廃棄処分も請け負う。保管から廃棄までワンストップで依頼できるため、業務にかかる負担を軽減できる。

同種のサービスとしては、宅配大手ヤマトホールディングスの子会社、ヤマトロジスティクス社が4月からカルテ保管サービスを開始するが、当初は首都圏のみの展開。歯愛メディカル社は、料金が格安なだけでなく、沖縄や離島を除く日本全国から受け付けるのも強みだと言えよう。

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