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介護経営情報(2017年1月6日号)

2017/1/10

◆介護事業所の利益が「中小企業並み」の数値に落ち着く
収益額に対する給与費額の割合は、多くの介護サービスで上昇

――厚生労働省
昨年12月28日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、2016年度の「介護事業経営概況調査結果」が公表された。介護事業所の利益にあたる「収支差率」については、介護報酬改定前の2014年度と比べて多くの介護サービスで低下し、平均3.8%となった。2014年3月には全体の収支差率が平均8%だったため、一般の中小企業の利益水準である2~3%まで下げることを目的とし、9年ぶりに介護報酬をマイナス改定とした成果が出た格好だ。

介護事業経営概況調査結果は、3年に1度行われている。介護報酬改定の議論に生かすのが主目的で、今回は前回の改定の影響を分析するため、初めて前後の2年間(2014年度、2015年度)を対象に行われた。今回の調査は、昨年5月に全国の16,280事業所を対象に実施し、7681事業所から有効回答が得られている(有効回答率は47.2%)。
調査項目は「サービス提供の状況」「居室・設備などの状況」「職員配置・給与」「収入の状況」「支出の状況」など。調査結果によれば、居宅介護支援を除く20種の介護サービスで収支差率はプラスとなった。
とはいえ、2014年度から介護報酬改定後の2015年度への変化を見ていくと、特養・老健・介護療養病床の介護保険3施設に加え、訪問介護、通所介護、グループホームなど16種のサービスで収益が悪化。改定後に収益が伸びたのは、プラス8.5%と大きく伸ばした定期巡回・随時対応型訪問介護看護をはじめ、福祉用具貸与、看護小規模多機能型居宅介護など5種のみとなっている。

一方、給与費の割合については、17種のサービスで介護報酬改定後に上昇。介護職員に対する処遇改善加算が拡充されたためだと見られる。収支差率を伸ばした定期巡回・随時対応型訪問介護看護、福祉用具貸与、看護小規模多機能型居宅介護では給与費割合が低下しているが、プラスの収益とのバランスを考慮すれば適正と言えるのではないだろうか。厚生労働省は、次回調査を今年5月に実施し、10月の介護事業経営調査委員会で結果を公表する予定。今回と次回の結果が、2018年度の介護報酬改定に大きく影響するため、次回の調査結果にはより注目が集まることとなる。
◆人材派遣大手のパソナ、「あいち介護サポーターバンク」を運営開始
高齢者に無料研修を行い、介護事業所とのマッチングを実施

――株式会社パソナ
昨年12月26日、人材派遣大手の株式会社パソナは、「あいち介護サポーターバンク」を同日から開始すると発表した。愛知県内の社会参加や地域貢献に意欲を持つ人材に、介護に関する基礎知識が習得できる無料研修を同県内の5エリアで計10回実施。修了者は「あいち介護サポーターバンク」に登録することができ、3月1日から介護事業所の人材ニーズとのマッチングサービスをスタートさせる。介護業界の人手不足解消につなげるとともに、高齢者の活躍の場を創出することで、地域の活性化に貢献することを目指すという。

「あいち介護サポーターバンク」は、パソナが愛知県から受託した事業。同県がこの事業を推進した背景には、年齢的には高齢者であっても現役並みに健康を維持し、社会参加や地域貢献に意欲を持つ人が増えている現状がある。
一方、業界全体的に慢性的な人手不足に悩まされている介護事業者側は、職員の急な休みや退職に対応するのが非常に困難だった。そのため、臨時に短期間だけ就業させる人材ニーズが潜在的に存在していたと言える。

また、「あいち介護サポーターバンク」は、パソナのメイン事業である人材派遣とは異なり、アルバイトでの就業の場合は、労働契約を登録者が直接介護事業者側と結ぶことになっている。ボランティアとして無償で活動することも可能で、登録者の希望に沿ってパソナがマッチングを行っていく。就業期間も最長1カ月と短期間に限定しているため、より多くの登録者が実際の介護業務に貢献できる仕組みだ。

2日間とはいえ、基礎知識を習得できる研修を必ず受けることで、最低限の介護業務がこなせる人材を多数輩出できるのが、「あいち介護サポーターバンク」の特徴でもある。2月末までに行う計10回の研修は、各回100名の定員を設けているため、最大で1000名の介護人材を生み出すことができる計算となる。介護事業者にとっては、突発的な人手不足の事態を乗り切るための手段として活用できるうえに、人材派遣業者のマージンを必要としない直接契約のため、通常の派遣サービスに比べて格段に人材コストが抑えられるのも魅力と言えよう。

高齢者を登録者のメインターゲットとしていることで、いわゆる「老老介護」がイメージされ、ネガティブに受け止められるリスクも確かにあるが、逆にこのサービスが円滑に運営されれば、「新たな老老介護のモデルケース」となる可能性も高い。そうなれば、愛知県だけでなく、他の地方自治体も同様の事業をバックアップする動きが生まれてくるだろう。そうした意味でも、パソナがいかに運営していくかが注目される。意欲的な高齢者を盛り立てつつ、介護事業者の人手不足を解消できる、双方をWin-Winの関係に導くサービスとなっていくことをぜひ期待したい。
◆法人向け家事代行サービス「ショコラ」に介護メニューが追加
企業の福利厚生に組み込むことで、介護離職の積極的な防止策

――パーソルテクノロジースタッフ株式会社
昨年12月15日、総合人材サービスを手がける株式会社インテリジェンスは、1月から同社の法人向け家事代行サービス「ショコラ」のメニューを大幅に拡充すると発表。家事だけでなく、国内・海外旅行やスポーツ、ショッピング、子育て、介護まで約20万種以上におよぶサービスを展開する。同時に、「ショコラ」を人材派遣大手・テンプスタッフ株式会社の100%子会社であるパーソルテクノロジースタッフ株式会社に移管するとした。

「ショコラ」は、単に家事を代行してくれるスタッフを派遣するのではなく、企業に社員向けの福利厚生として提供しているのが大きな特徴。一般的に、家事代行サービスは割高感があるとの認識があり、ある程度の収入がないと利用できない傾向があるが、企業が福利厚生として無償あるいは料金の助成を行うことで、社員満足度を向上させることができるというわけだ。
結果的に、所属企業に対するロイヤルティを高め、組織を強めることにつながるため、企業側のメリットも大きい。従来、家事代行サービスはBtoC向けに設計されたものがほとんどだったが、「ショコラ」が企業力向上に役立てる福利厚生特化型にしたことで、BtoBの可能性が大きく広がったことは間違いない。

そんな「ショコラ」が、介護をメニューに取り入れたことは、介護業界にとっても大きな影響を与えそうだ。その理由のひとつとして、政府が重要課題のひとつに掲げている「介護離職」の防止策となり得ることが挙げられる。
高齢者が身内にいれば、誰もが直面する可能性がある「介護離職」は、年間10万人以上いるとされており、厚生労働省の雇用動向調査によれば、特に30~40代の男女、50代の男性が急増しているという。働き盛りの年代であるため、企業の中核を担う人材が多くを占めていることは疑いようがなく、企業にとっても重要な戦力を失う可能性があるため、対策を講じなければならない問題だ。
しかも、介護は突然やってくるもの。事前に準備をすることができないため、予防策が非常に重要であり、「ショコラ」が介護に参入してきたことは大きな意味を持つ。要介護度が低ければ、家事代行と併用してサービスを利用することもできるため、企業が福利厚生の一環として支援すれば、介護離職を減らすことにもつながる。
訪問介護事業を展開する介護事業者にとっては脅威的な存在にもなりかねない「ショコラ」の介護参入。派遣スタッフのスキマ時間を活用できるサービスでもあるため、他の派遣大手が参入を検討することも十分に想定でき、一気に介護市場の一大勢力となる可能性すらある。東京都の特区では混合介護の解禁が検討されていることも踏まえると、従来型の介護サービスから脱却した戦略を構築するべき段階に突入しているのかもしれない。
◆日本老年学会、高齢者の定義「75歳以上」へ引上げ提言
医療・介護制度の設計に影響を与える可能性も

――日本老年学会
老化と老人問題、サービスに関わる研究を取り上げる学際的な学会である日本老年学会は、1月5日に高齢者の定義についての提言を発表。現在、高齢者の定義は一般的に「65歳以上」とされているが、「75歳以上」に引き上げるべきだとした。また、65歳から74歳を新たに「准高齢者」と定義し、就労やボランティアなど、社会参加を促す取り組みを行うべきだとしている。

心身ともに健康で元気な高齢者が年々増加していることから、同学会は2013年より高齢者の定義見直しを検討してきた。1990年代以降の高齢者の身体や知的能力、健康状態などのデータを分析した結果、10~20年前に比べて全体的に5~10歳程度若返っていることが判明。「75歳以上」を高齢者と定義付ける根拠としている。

現在、高齢者の年齢は法的に定められてはいない。医療・介護制度や人口統計上の区分などでは、65歳以上を高齢者としているが、これは1956年の国連の報告書に端を発する者とされている。
一方、日本は世界トップクラスの長寿国でもある。昨年5月に世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計2016」によれば、2015年の男女平均寿命世界一は日本で、83.7歳だった。男性の平均寿命は80.5歳で世界6位だが、女性の平均寿命は86.8歳でやはり世界一となっている。そうしたデータを踏まえれば、世界水準で高齢者の年齢を定義するのではなく、日本独自の基準を設けるのもひとつの見識と言えよう。65歳以上の人たちの社会参加への意欲を削がないためにも、改めて高齢者の年齢を定義付けるのは意義深いことだと考えられる。

しかし、高齢者の定義を引き上げるのであれば、医療・介護制度などの設計にも影響が出てくるのは避けられない。同学会は、今回の提言を社会保障制度と直接結びつけることのないよう警鐘を鳴らしているが、就労年齢が引き上げられれば、それに応じて医療・介護費の自己負担額割合の変更や、年金の支給年齢引き上げの検討につながるのは自然の流れ。介護費の自己負担割合については、高齢者であっても現役並みの所得があれば2018年8月から3割負担に引き上げられることが決定しているが、今回の提言が「現役並み所得」の条件を外す契機になる可能性もあるのではないだろうか。

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