歯科衛生士のプロ意識
■衛生士と看護師の違い
先日、ある若手の歯科医師の先生とお話していると、その先生が「歯科衛生士にはプロ意識が少ない。」と言われた。以前ならよく聞いた言葉ではあるが、予防の分野で歯科衛生士が大活躍している今、このような言葉は正直なところ心外であった。このような場合、必ずといっていいほど言われるのが、「看護師との比較」である。今回も例に漏れず、その先生の口から出た言葉は「看護師に比べると衛生士は…」であった。「歯科衛生士はもっと全身との関わりを勉強すべきだ。」、と力説される先生のお話を聞きながら、私は色々な角度から衛生士と看護師の違いを比較していた。
ちなみに私の妹は、38歳になってから正看護師になった。彼女は私以上にハードで、子育てをしながら日勤、夜勤、準夜勤の仕事をこなしている。何かの疾患でわからないことがあれば、彼女に電話をするだけでまるで教科書のように的確に答えてくれるので、私としてはとても重宝している。さて、この妹を含め、私が病院看護師や訪問看護師に及ばないと思う点は、知識はもとより「記録」である。看護師の書く看護記録や看護計画書は、大変よく観察され、的確にかつ綺麗にわかり易くまとめてある。何より、それらを素早く書き上げる。それには、学生時代より驚く程の量と質の課題レポートを何度と書き上げてきた成果であろう。また、国家試験を目前に、看護感や研究文論などの卒論を仕上げるのだから、記録の的確さ文章力は学生時代に充分マスターできているということだろう。それにはやはり、「与えられる知識」でなく、「調べ上げる学習」が確立しているからではないかと推測する。
■看護師の看護記録
さて、その看護師が仕上げる看護計画はというと、まずは患者様をよく観察し(1)患者様の問題点を挙げ(2)それに対する観察項目を羅列する。次に(3)援助のための実施プランをたて、そして実際どのように指導していくかの(4)指導プランを作成する。そして、この計画を根拠に毎日の看護の中で援助がなされ、毎朝のカンファレンスでその日に関わるスタッフ間で援助方法を共有する。また、定期的に全体カンファレンスを行い、指導内容の見直しが成され、患者様の状態に応じて変更される。このように、看護計画を通してチームでもって患者様の看護にあたっている。また、記録はそれに留まらず、看護記録を毎日の記録として、一日の業務の終わりに患者様の状態を含め記入する。ハードな臨床の現場において、これだけの記録を行うのであるから、観察力の素晴らしさ、そしてその土台となる基礎知識は確実でなければならないであろう。そう考えると、その先生が言われたように、確かに歯科衛生士はまだまだプロ意識が足らないのかもしれない。しかし、だからといってここで私達が劣等感を感じるのでなく、何か一つでも盗むべきものを盗み、学べるべきものを学んでいけばいいと思うのである。
■量より質の記録
歯科衛生士の患者様に対する記録の義務は年々増えている。しかし大切なことは、量ではなく質である。自分のメモのような業務記録、義務的に書いているようなパターン化された内容。このような記録では、患者様の状態を皆で共有することができない。人の記録を見る機会が増えれば増えるほど、書く技術を学ぶいい機会になる。人に見られれば見られるほど、自分の記録内容や指導方法を検討するいい機会になる。このように、正しい記録はチームで働くスタッフ間においては、重要な役割を示す。患者様への個別対応が求められる現在、個別であってもチーム全体で関わっているという安心感を患者様に与えていかなければいけないのではないだろうか。