手の表情
今日は息子の保育園の運動会。運動会ではどの親も我が子の演技に釘付けである。
私は今年、運動会において司会進行を頼まれ、本部席からその一部始終に目を向けていた。ちょうどその時、3歳児の園児達の「かけっこ」が始まった。まっすぐ走ることすら出来ない小さな体が、一生懸命目の前のテープをめがけて走っていく。まだまだ競争心のない彼らにとっては、「かけっこ」は「前を向いて走る」ことで精一杯であろう。その時その園児達を並ばせようと、必死で園児達の手を引く幼稚園の先生の姿が目に入った。なかなか思うように動いてくれない園児に先生も必死である。そんな園児の腕をつかみどんどんと線上に並ばせる。その先生の手つきを見ていると、「そんな引っ張らなくても。」思えてならなかった。なんだか、子供を扱っているというよりは何か物を動かしているような手つきである。まるで、先生の心の中の「忙しい」「大変だ」、そんな気持ちが伝わってくるようであった。
その時、以前私の母が歯科治療を受けた際言った言葉を思い出した。「歯の型を採るとき、片手で私の口を押さえてくれてるのはいいけど、もう片方の手で片付けをするので唇が引っ張られて痛い」。左手で口腔内のトレー保持をし、右手でブラケットの上やキャビネットの上の片づけをしていたので、そのたびに顔が右に右にひっぱられ不快感を覚えたという。この場合も、さっきの幼稚園の先生と同じで、その衛生士さんの心の中にある「早く片付けたい」「次に行かなきゃ」という気持ちが手に表れていたのだろう。
「手は心の表情である」ここまで言うと過言であろうか?
いや、このように気持ちの焦り、苛立ちなど感情は、「手の表情」に表れやすい。緊張感が増すと「手が震える」。怒りが大きくなると「握りこぶしを作る」。また、恐怖心は「手汗をかく」など、手が感情を表に出している場合は多い。
歯科医院に来院される患者さんは上を向いて目を閉じた状態で治療を受ける。自分の体に触れているのはドクターの手や、補助につくアシスタントの手である。つまり、治療中に触れる私たちの手や指先にはかなり敏感である。例えば口唇を排除する指、その爪が伸びていて痛い思いをさせているかもしれない。その手が冷たすぎることで、ドキッとさせたかもしれない。また、私たちの中の「めんどくさいな」「うっとおしいな」といったマイナスの感情が手を通して伝わっているかもしれない。そう考えると、いくら顔で笑ってみせても、そのマイナスの感情は患者さんに丸見え?、だとすると怖いことである。
そこで患者さんが心地よく感じる、「プラスの手の表情」を考えてみる。人の指からは、パワーが出ているといわれている。指先で何かを強調したいときは指を1本にする、つまり人差し指で指すことで示したいものが強調される。反対に、指を数本に広げるとそのパワーを分散され、手の表情は優しく感じられる。例えば、口唇を引っ張る指を1本から2本にする。1本の時よりも力が分散されるので優しく感じる。また、患者さんを誘導する時の手も「こちらへどうぞ」と、5本の指先をを綺麗に並べて示す。そうすることで暖かさが伝わる。また、「指先」を使うとその表情はきつく感じるが「指の腹」を使うと優しく感じる。口唇を排除する際「指の腹」を使う、また小児を抑圧するときの手も「指の腹」もしくは「手の平」を使う。このようなちょっとした手の使い方で、患者さんに「優しい手の表情」を与えることができる。このような「手の表情」、そんなところから患者さんの心を和ませてみてはどうだろうか?