私の表情
いろいろな人の表情に触れることで気分が良くなったり、また嫌な思いをすることはよくあることだ。たわいもない挨拶ひとつで瞬間的に心を奪われ、「この人ともっと話したい。」と感じる事が反面、人の表情のせいで一日気分を害されてしまう事もよくある。
以前子供会の総会で、役員のお母様方数名と顔を合わせた。これから一緒に子供達の為に色々企画し、行事を進めていく新しい仲間との初の出会いであったが、その中でどうも気になるお母さんがいた。というのも、人と話すときに目をみない、自分の横で人が話していても相づちのひとつも打たない。自分が話すときも視線をそらせて話す。「仲良くなりたい」そう感じさせる人ではなかった。そしてその後、共に業務を進めていくうちに、少しずつ考えていることが見え、その人との距離も近づいてきた。しかし、それには2年間という時間を費やした。彼女の事を理解するため、また自分をわかってもらうために費やした時間にすればもったいなすぎる、私はそう感じてならなかった。
人と人の出会いには必ず「自己紹介」なるものがあるとは限らない。相手がどこの誰だか、何をしている人か、またどのように考える人なのかはわからない。話していくうちにお互いの会話の中や、その雰囲気で少しずつその人を理解していく。自己紹介のない関係にとっては、相手を知るためにはより時間が必要となる。「どんな人だろう?何考えてるの?」そんな風に相手を探っているうちは、目の前の業務がスムーズに進んでいかない。ついつい、お互いの心の中を読む時間に気持ちが走ってしまう。それだけに、自己紹介という時間を与えられた時は、きちんと自分を理解してしまえるような言葉、「自分らしさ」が表現できるような言葉を、身につけておきたいと思う。
しかし、受付などで初めて顔を合わせる患者さんに、「こんにちわ、私は受付の○○です。」などと自己紹介ができるわけではない。自己紹介は自分を知ってもらうための近道ではあるが、自己紹介できない場面においては、「第一印象」が自己紹介の役割を担っている。つまり、最初に見たその印象が、「私はこのような人間です。」と伝えているのである。第一印象は最初の30秒でその人の80%を決めてしまうという。たった30秒。この30秒で自分のイメージを相手に植え付ける事が出来るのなら、ニコニコしていた方が間違いなく得である。そして好印象が与えることができれば、その後の患者教育もきっとスムーズに行われる事であろう。しかし診療室で一日中ニコニコと笑ってばかりもいられない。時にはほっと一息つくこともあるだろう、考え事をすることもあるだろう。このような気を緩めた時の表情は、冷たくもだらしなくも感じる。この表情を見た人は、「怖い人」「冷たい人」と思っているかもしれない。もちろん話し込めば、そうでないとわかってもらえるでろう。しかし、診療室においては話し込む時間はない。それだけに第一印象は大切にしておきたいと思う。
「第一印象=笑顔」そればかりに気を向けすぎている人は多い。だが、患者さんが一番目にする私たちの表情は笑顔ではなく、気を緩めた時の表情である。にもかかわらず、誰もが笑顔ばかりに気をとられ、自分の普段の顔が人にどのように映るのか見直すことはない。毎日鏡の前に立つと、ニッコリ笑ったりおすまししたり、自分を綺麗に見せる表情をばかりを見つめている。そうでなく、仕事に熱中しているときの顔、バキュームをしている時の顔、疲れたときの顔、このような表情をあえて映し出し、この表情を美しく見せることから変えていけば、笑顔はもっと素敵に見えるのではないだろうか。