セミナー受講
先月ある歯科メーカーからの依頼で「スタッフ育成セミナー」を行った。セミナー会場に到着すると、100名を越える先生方とその医院のスタッフの方々がぞくぞくと集まって来られた。さてと、話は自己紹介から入り徐々に各論へと進んでいく。具体的な内容になると、だんだんと聴講者の「うなずき」が増えてくる。しかしながらおもしろいことに、受講者のうなずく場面や回数は人によって様々であり、私はいつもそのうなずきを見ながらその歯科医院を想像する。というのも、まだまだ診療の現場においてセミナーは、「行かされている。」という意識は強い。このような意識で受講しているスタッフは、患者さんへの応対や心配りなどの内容では頭は動かなくなり、自分個人に有益な情報の場面においては大きくうなずく。「先生とうまくいってないのかな。」「患者さんをみる余裕がないのかな。」私はそう思いながら彼女達のうなずきを見ている。
しかし実際、医院のためだけに時間を割いて意欲的にセミナーを聴ける人は少ない。医院のため、自分のため、と考えられるように、「セミナーの受けさせ方」も考えていかなければならない。実際セミナー受講は、休日を利用して参加する事が多く平日の診療を休ませてまで参加させる医院は少ない。結果、スタッフを時間外で拘束する事になる。その上、セミナーに参加する事で、その後に与えられた報告書の提出や、報告会での発表という業務も増える。そして、見えない圧が「院長の期待」として重くのしかかってくる。「お金を出して参加させたのに、結局何も生かされていない。」そう院長が感じてしまった時点で、スタッフのがんばりも生かされず、今回のセミナー参加は失敗だったという事になる。このように責められるぐらいなら、「行かない方が楽。」そう考える彼女たちを、私は一概に責めることは出来ないと思う。
そこで、スタッフの負担の一部分を取り除く姿勢を見せることで、彼女たちの中に「医院のために何かしたい。」と思わせる気持ちを揺さぶって欲しいと思うのである。
例えばそれは、医院のために彼女たちが使った「時間」代休として返す。もしくは次の日の午前中に休みを与えるなど、せめて彼女達の肉体的な疲労の回復時間を返してあげる。また、時間で返せない場合は、「出張手当」という形で、医院のために動いてくれた事に対しての報酬を与えるなど。私は以前大学に勤務していた時は、出張手当に代休は必ず頂けた。それだけに「大学のために何か残さねば。」という気持ちでセミナーを受講できたものであった。しかし、次に生じてきたのが「報告書」である。一生懸命書き上げた初めての出張報告書を教務主任の先生に提出し、「あなた一体何を聴いてきたの。」と言われた言葉は今でも強烈に頭に残っている。数枚にわたって書き上げられた私の報告書は完璧であったはずである。何を指摘されているのか理解できなかったが、よくよく考えてみると私の報告書はセミナーの内容をまとめた「レポート」であり、実際それがどのように生かせるのか、つまり「具体的な応用法」は全く書かれていなかった。そこで初めて出張報告書の書式が設定された。その書式に沿って書くことで、聴講のポイントも見えてきた。報告書のまとめ方に悩んだ私にとって救いの手であった。このように、各医院においても医院オリジナルの出張報告書を作成し、まとめるポイントを示してあげるとどうだろうか。
漠然としたままセミナー会場に集まる彼女たち。漠然とした気持ちで聴いた話は漠然と消えていく、私はいつもそれが残念でならないのである。