患者さんの期待に応えよう。
この季節になると「学校検診」の紙を持って来院する小中学生が増える。我が子の通う小学校においては「この用紙を持ってこないと、プールに入れませんよ。」などと脅しをかけられており、子供達は大嫌いな歯科医院に行かなければならない。しかし子供は歯医者さんに行くのは嫌である。小さな時から悪いことをしていると「歯医者さんに連れて行くわよ。」などと、脅しの材料にされてきたせいか、かなり痛い思いをしたせいか。とにかく嫌がる我が子を歯科医院に連れて行くのは、母親にとってかなりの労力である。
このようにならないように、と小さな子供を持つ母親は最初の「歯科医院選び」に一生懸命になる。最初が肝心、子供の中に悪い印象が残らないようにと、色々な歯科医院についての情報を集める。しかしなかなか歯科医院の情報収集は難しい。特に女性の場合、結婚と同時に自分の育った街と全く違う場所で子育てする事が多いため、近隣の歯科医院の情報がインプットされていない。また、子供が小さいうちは近隣とのつきあいも少なく、たくさんの情報を入手するのは難しい。一体、わが子をどの歯科医院に連れていけばいいのか。どこの歯科医院は子供を診てもらえるのか?先生は優しい?待ち時間は短い?など、母親にとって心配事は山積みだ。
そのようなお母さんにとって「小児歯科」と書かれた看板は、大きな意味をなす。小児歯科なら、子供を連れていっても診てもらえる、多少うるさくても大丈夫、きっと子供の扱いに慣れているはず。と母親は判断し歯科医院を選ぶ。しかし現状はそうであろうか。小児歯科と掲げられていても小児専門とは限らず、納得のいく小児歯科治療や小児の応対が受けられるとは限らない。「小児歯科」の看板の意味は、「子供の歯は任せてください。」と伝えているのか、「子供の歯も診ます。」と伝えているのか。どちらの意味であっても、患者さんにとっては「子供の歯は任せてください。」としか伝わっていない。結果、母親は安心感をもって来院する。
そこで、その看板を見て来院したお母さんの期待に、歯科医院側がどれだけ応えているだろうか。来院したものの小児に対する特別な扱いもなく、先生も困った顔をして治療を行う。その上、子供が泣こうものなら母親は来院したことを後悔するだろう。これでは患者さんの医院に対する不信感は募るばかりである。小児歯科という看板が掲げてある以上、それに応えられるだけの応対を考えて欲しいと思う。
そこで、「私子供苦手なんです。」と避けてしまわずに、きちんと子供に接してみよう。それには、治療の時間でなくその前後の時間などをうまく利用してみる。「診療を受ける」、という怖い空間である診療室のイメージを変えるため、診療室内にもおもちゃを用意し、遊ばせてあげる。その際、横でおもちゃを一つずつ手渡す。また、塗り絵を用意しクレパスの色を一緒に選んであげる。このように、遊ぶことを難しく考えずに、側にいてあげるだけ子供は落ち着く。
「そんな些細なこと?」、と思うかもしれない。しかし、患者さんはそんな些細な応対に気を遣ってくれる歯科医院を今は望んでいる。