軽度の高齢者のサービス制限に慎重論
〜介護保険部会
介護保険制度の見直しについて検討している社会保障審議会介護保険部会は1月26日、給付の在り方について引き続き議論を行なった。このなかで厚生労働省は、これまでの議論を踏まえ制度改正に向けた給付面での大きな課題の一つとして、「現行の要支援ら軽度の要介護者等へのサービスは介護予防に必ずしもつながっていないのではないか」とする考え方を改めて提示。軽度の要介護者等に対する給付は、今後、介護予防に重点をおくよう、改めるべきだと訴えた。一方で、委員からは緊縮財政を理由にしたサービス利用の制限は、行うべきではないとの声もあがっている。
まず、漆原彰委員(全国老人保健施設協会長)は、軽度の高齢者に対するサービス内容について「通所などによるリハビリを充実させるべき」と提案しながらも、「施設介護の給付を重度の要介護者に限定するのは適切ではない」と述べ、軽度の要介護者に対して利用制限を行うことのないよう釘を刺した。
また小川泰子委員(NPO法人湘南ふくしネットワークオンブズマン理事)は、財政問題が深刻化するのに伴って、サービスメニューを縮小する方向で議論が進んでいる点を懸念し、「財政問題については、サービスの切り捨てで解決を図るのではなく、福祉システム全体の中で対策を検討すべき」と提言。具体的には市町村の社会福祉協議会や福祉公社などの法人の見直しを求めた。
さらに京極高宣委員(日本社会事業大学長)は、「今後は高齢者にも、介護や支援が必要な状態にならないよう努力を求めるべきではないか」と述べ、自活を促す意味でも福祉用具の貸与サービスの活用を検討するべきだと提案。配食サービスなど介護保険外のサービスとの併用も考えるべきと呼びかけている。
■ユニットケアの2015年利用率は特養入所者全体の3割
同日の会議では介護保険施設における利用状況等についての報告がなされた。
それによると、特別養護老人ホームの個室は昭和60年代から増加の傾向にはあるが、2002年10月現在で介護老人福祉施設入所者の72.6%、介護老人保健施設入居者の75.6%が4人部屋を利用しているなど、普及するには至っていないことがわかった。また、施設入所者が罹患している傷病をみると、痴呆が多く、介護老人福祉施設で20.9%、介護老人保健施設で28.2%となっている(2001年調査)。さらに、介護老人福祉施設の平均利用期間については、死亡による退所の割合が高いため、全体としてやや長期化が見られ、2001年度は前年度比46.7日増の1,502.2日だった。
また、特別養護老人ホームにおいて個別ケアを実現するための手法として、在宅に近い居住環境の下で入居者一人ひとりの個性を尊重した介護を行なう「ユニットケア」の現況について報告。2003年の小規模生活単位型特養の施設数、費用額の推移では、介護報酬改定直後の4月の施設数42施設、費用額6.5億円に対し、9月には74施設、14億円に増えていることがわかった。今後新設する特養は「小規模生活単位型」を基本とし、その整備に対し国庫補助が受けられることになっている。しかし現状の勢いでは2015年時点での「小規模生活単位型」の利用者は全体の3割にとどまると見通した。
■ベッドからリビングへ、ユニットケアの効果みられる
また厚生労働省は、ユニットケア化による効果について事例を交えて解説。それによると、まず入居者には、(1)居場所の変化、(2)行為の変化、(3)食事場所の変化、(4)残飯の変化、(5)排せつの変化――がみられるとした。具体的には、生活の中心がベッドからリビングへと変わり、コミュニケーションや食事の時間が増えたほか、ポータブルトイレの設置数が減るなどの改善がみられる。それに伴い、スタッフの居場所・行動内容・運動量も変化、身体介助中心のケアから、余暇を過ごしたり、交流を図るケアへと変わってきたという。
さらに特養における地域展開への取り組みについて事例をあげて紹介。まず、施設の有する機能を地域の在宅高齢者に提供している事例として、地域の高齢者に24時間365日の訪問介護・看護、3食の配食、訪問入浴サービスを提供している長野県の「アザレアンさなだ」について報告を行なった。また、施設の入所者に対し、地域の中でケアを提供している事例としては、入所者の自宅を利用し、そこで数人の入所者が日中を過ごす逆デイサービスや、ボランティアとの交流活動を行なっている大分県の「いずみの園」が紹介されている。
高齢者リハビリ研究会が中間報告書を了承
〜厚労省
厚生労働省の「高齢者リハビリテーション研究会」は1月29日、「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」と題する中間報告書を了承した。同日は前回会合での指摘事項を踏まえ、事務局が中間報告書案を再度提出。基本的内容に変更はなかったものの、わが国における高齢者リハビリ提供体制の整備について「最も重点的に行なわれるべき急性期のリハ医療が十分に行われていない」と問題意識をより鮮明に表記した。その上で、高齢者の状態像に応じたリハビリを提供するために、これまでリハビリの中心とされてきた「脳卒中モデル」以外に、徐々に生活機能が低下する高齢者を対象にした「廃用症候群モデル」、痴呆症高齢者に対し生活機能向上に向けた取り組みを行う「痴呆高齢者モデル」といった新しいリハビリのモデルを確立させる必要性を指摘している。
一方、早期リハビリの必要性を強調しつつも、それに続くリハビリの提供体制として、「回復期リハ病棟」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「特別養護老人ホーム」をあげ、老健については、在宅復帰を目的とした「通過型」から、在宅の高齢者が徐々に生活機能が低下した際に、入所してリハビリを利用することで再度居宅に戻るのを支援する「往復型」としての位置付けも検討すべきとした。さらに特養については、「終の棲家」となっている現状から、施設が定めた日課に基づき訓練室内でリハビリを行なうのではなく、一人ひとりの日常の中で、実生活に近い居住環境を整え実施すべきと指摘。新たに制度化されたユニットケアは、こうした取り組みに最も適したものとの見解を示した。
居宅介護サービス事業者のためのリスクマネジメント研修
〜東社協
東京都社会福祉協議会はこのほど、居宅介護における事故の発生防止、さらには利用者へのサービスの質の向上につながるリスクマネジメントの基本的な考え方について、セミナーを開催する。参加費は2,000円(税込)、定員は400名。申込締切は2月10日(火)。
| ▼日時 |
2004年2月17日(火) 13:30〜16:30(受付13:00) |
| ▼会場 |
財団法人 津田塾会津田ホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24)
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| ▼講師 |
田淵公朗氏(株式会社インターリスク総研 社会・法務リスク部 主任研究員) |
| ▼内容 |
(1)介護分野におけるリスクマネジメントの動向、(2)介護サービス提供に関する事故と訴訟、(3)リスクマネジメント概論、(4)介護サービスにおけるリスクマネジメントの手法、(5)介護サービスにおけるリスクマネジメントの特性 |
| ▼問合せ |
東社協
東京都福祉人材センター研修室(担当:小野)
TEL:03-5800-3335
FAX:03-5800-0449
URL:http://www.tcsw.tvac.or.jp/
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在宅復帰支援実現のカギは「通所リハ」
〜やごろう苑施設長・田中氏
医療法人愛誠会やごろう苑(鹿児島県)施設長の田中優至氏はさきごろ都内で、「これからの老人保健施設の経営戦略――家庭復帰を図る」と題して講演し、厚労省の介護3施設における機能分化の方向を示した上で「老健には要介護1から5までさまざまな介護度の利用者が入所しており、あらゆるレベルの要介護者をリハビリテーション等によって確実に在宅復帰させてほしいという目的が見てとれる」と説明。地域の在宅介護センターとして、老健は継続的なリハビリの提供を目指すべきだと述べた。
さらに田中氏は、やごろう苑の現状から、通所リハビリについて「非常に大きな収入源」として老健経営のカギを握ると指摘。「通所リハビリは民間参入もあり飽和状態になってきている。生き残るためにはいかに差別化を図り、魅力ある通所リハビリを提供できるかが問題」と述べ、各施設において、特徴のあるサービスを検討することを求めた。さらに通所リハに関して、「個別リハ加算がとれなければ、通所介護単独と同様の収入。充実したリハビリを行なわなければ通所リハの収支は成り立たない」と指摘している。
事業運営上の工夫による財源確保を提案
〜厚労省・障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会
障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会は、1月22日、ホームヘルプサービスやグループホームを中心に地域生活支援の在り方を具体的に議論するため、(1)全身性障害者等長時間介護が必要な者、(2)視覚障害者・聴覚障害者、(3)知的障害者・障害児――の3つにわけてそれぞれ作業班を設置することを決定した。また、支援費の2004年度予算案ではホームヘルプサービスが前年より23%増の340億円に膨れ上がるなど、制度存続のために見直しが迫られている状況を説明。これに対処するために、ホームヘルプサービスやグループホームを中心に、(1)支援費の必要に応じたサービス内容を適切に評価する、(2)支援の必要度に関する客観性を確保する、(3)不合理な地域間格差を是正する、(4)適切な利用者負担を求める、(5)効率的なサービス提供を図る、(6)その他、公平性の確保や制度運営の合理化を図る――の6つの視点から、居宅生活支援サービスの事業運営上の工夫を求める案を提示した。
水の力を活かした健康づくりで高齢者に笑顔をもたらす
〜先駆的福祉経営事例
神奈川県藤沢市にある社会福祉法人八寿会特別養護老人ホーム「みどりの園」では、2002年5月に「水中体操プログラム」を導入、高齢者に、ADLの向上だけでなく、生活のハリと笑顔をもたらしている。
2001年8月にこの取り組みを提案した同施設主任生活相談員の牛島紀子氏は、「従来の施設でもADLの維持のために平行棒などの機能訓練を行なってきたが、重力のある陸上でのトレーニングには自ずと限界が出てくる。水中なら浮力による身体への負担が軽減されるため、高齢者に理想的な運動ができるのではないかと考えた」と説明する。
■要介護高齢者の利用に対する壁を乗り越え、企画を実現
この企画は見事採用され、試験的にスタートすることになったが、最初はプールの提供者がなかなか見つからなかったという。「電話帳に載っているプール施設等に片っ端からプール借用の依頼をしたが、介護を要する高齢者ということで、なかなか良い返事は得られなかった」と牛島氏は語る。要介護者によるプールの利用はリスクが高いと嫌煙されたためだ。しかし、牛島氏のひた向きな努力が実り、2001年12月、「藤沢YMCA」が引き受けてくれることになった。さらにYMCAでは、手すりの設置やトイレの改修などのバックアップを行なってくれたほか、プログラムの実施にあたっては、会員等がボランティアとして協力してくれることになった。
■身体的リハビリだけでなくメンタル面にも効果
現在、毎週1回につき45分間実施されるプログラムには、要支援から要介護4までの10名が参加しているという。プログラムは、水中歩行を中心に、一人ひとりの身体状況にあわせて組み立てられる。参加者1人に対し、1〜2人のボランティアが付き添い、この時間の触れ合いにより外部社会との交流という大きな効果を得ているという。実際、この取り組みを始めてみると、身体面よりもメンタル面での効果が大きいようだ。たとえ介護が必要になっても、健康のために、主体的に参加できる場を提供することは、利用者のニーズを捉えたサービスという点で、施設経営において重要な施策といえるだろう。
MMPG提供

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