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「診療所買収のポイント」

平成16 年6 月10日(木)
上田公認会計士事務所
所長上田久之
  1. はじめに
    第4次医療法改正・診療報酬体系の見直しと医療機関を取り巻く環境が厳しさを増す中で、新規開業ニーズは、その衰えを見せません。そのような中で、最近、買収(承継)案件のご相談が少しずつ増えているようです。今回は、顧問先様からよく問い合わせのある診療所買収のポイントについて、考えてみたいと思います。

  2. 相談の事例Q&A
    Q、承継のパターンについて、教えてください。
    A、承継のパターンとしては、
    1. 戸建ての引継ぎ(不動産の買受け)
    2. 戸建ての引継ぎ(不動産の賃貸)
    3. テナントの引継ぎ
    の3通りがあり、それぞれで、その条件設定は大きく異なります。
    Q、承継の理由には、どんなものがありますか。
    A、死亡、病気、老齢化(継承者なし)、海外移住、業績不振、勤務医への引継ぎ等があり、その理由を正確に把握することが重要です。また、大阪市内の開業医の平均年齢は65歳ぐらいです。
    Q、承継開業のメリットについて、教えてください。
    A、1. イニシャルコストが低いため、投下資本が早く回収でき、多少収入が低くても経営が成立つ場合も考えられます。ビル開業では、回収までに通常10年ぐらい必要ですが、承継開業では5年ぐらいが目安です。
    2. 通常は目標患者数に到達するまで1〜2年かかりますが、患者が初めからついているため、承継月からたくさんの患者を抱えて立ち上げることができます。
    Q、承継する場合の注意点について、教えてください。
    A、1. 診療継続中か休診期間ができるだけ短い間に引き継ぐことが大切です。
    2. 譲渡理由が経営不振・患者の質が悪い等の場合は注意が必要です。
    3. 営業権の評価については、ベッド当り単価・カルテ当り単価・診療収入月数単価・相続税評価額等、様々な基準による評価がなされていますが、特に決まった計算式はなく、以前ほどは評価されなくなりましたし、譲渡者の事情によっても異なってきます。しかし、実質的には、立ち上がりの患者数が、一定レベルに達するまでの通常開業との診療収入の差額を評価したものであると考えられます。
    4. カルテまたはカルテの写し、患者名簿の入手ができるか、引継ぎの案内状を旧院長名で出してもらえるかどうかについても注意が必要です。
    5. 不動産付きの場合、通常の不動産購入の注意点についても配慮が必要です。
    Q、売却価額にはどのようなものが含まれますか?
    A、売却価額に含まれる内訳金額は、のれん代・医療機・内装一式・医薬品等があり、カルテ・患者名簿の入手の有無によってもその価額は変わってきます。
    Q、従業員を引き継ぐ場合、その処遇はどうしたらよいのでしょうか?
    A、そのまま引き継ぐ場合と再雇用する場合とでその取り扱いは大きく異なってきます。引き継ぐ場合には、退職金・賞与も引き継ぐことになりますし、雇用条件も同等ぐらいになる場合が多いようです。再雇用する場合には、個々のライセンス・能力・年齢等をベースに給与水準や厚生年金等の福利厚生を決めてゆきます。
    Q、売買契約書作成のポイントについて教えてください。
    A、通常の取引内容以外に次の項目についての取り決めの記載が必要になります。
    1. リース資産
    2. 物件リスト
    3. 除外物件リスト(持ち帰り分)
    4. 電話名義
    5. 患者の引継ぎ
    6. 医師会入会
    7. 瑕疵担保責任

    覚書として、
    1. カルテの閲覧および複写
    2. 違約金の記載

    特約として、
    1. 現状引渡
    2. 融資の白紙解除等が必要になる場合も考えられます。
    また、立会人もできればつけることをおすすめします。


  3. コンサルタントの視点
    診療所の買収(承継)は、資産買収を伴う新規開業であり、新規開業項目のチェックは欠かせませんが、一方で承継のメッリトを最大限に生かし、投資の効率性を高めることが重要なポイントになります。できるだけ多くの資料を収集し、承継物件の内容を分析することにより、その実態が正確に把握できることになります。
    収集する資料としては、
    1. 商業登記簿謄本
    2. 不動産登記簿謄本
    3. 3年分の確定申告書および直近の試算表
    4. 3年分の社保・国保支払合計表
    5. 償却資産の台帳
    等があり、
    それらにより、代表者・担保権・資産・負債・収入(保険・自費)・経費内訳(差し入れ保証金・賃料等の条件)等が把握できます。これらのデータを基に事業計画を立て採算性をシミュレーションすることになりますが、純粋な新規開業と異なり、その予測は比較的容易なものとなります。
    また、このような場合に外部のコンサルタントを活用して、事業計画を立てられれば鬼に金棒かと思われます。

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