医業経営の非営利性等に関する検討会(座長・田中滋慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)が7月22日開催され、2006年の医療法人制度改革の方向を示した報告書『医療法人制度改革の考え方〜医療提供体制の担い手の中心となる将来の医療法人の姿〜』をまとめた。
同報告書では、社会保障制度上の医療提供体制の担い手は民間非営利である医療法人が中心に担っていくことを改めて確認。その上で「医療法人をめぐる考え方」として(1)「営利を目的としない」法人の考え方、(2)公益性の高い医療サービスの明確化とそれを担う新たな医療法人制度の確立、(3)今後の医療法人と医療法人を監督する都道府県との関係の見直し―の3点を挙げ、これらを柱に改革を推進する必要があるとした。
今後の具体的な医療法人の形としては、持分のない「営利を目的としない」医療法人(いわゆる出資額限度法人)と、これにさらに公益性を追求した「公益性の高い医療サービスを担う新たな医療法人」の2類型を設定し、既存の持分ありの医療法人については経過措置という形で当面の間存続を認めることとした。
この中で、持分のない「営利を目的としない」医療法人については、剰余金の配当を禁止している医療法の現行規定を「変更すべきではないことは言うまでもない」と堅持することを表明。また医療法人の適正な運営に資する観点から、利益の原資が費用の形で流出することを防ぐため、「医療法人はその運営に著しく支障を来す経費の負担をしてはならないことを医療法に明確に規定することを検討すべき」とした。さらに、昭和32年12月の茨城県衛生部長宛て厚生省医政局総務課長の回答の「退社社員に対する払戻しは退社時当該医療法人が有する財産の総額基準を基準として、当該出資額に応じる金額でなしても差し支えないものとする」という通知については見解によっては、配当金禁止に抵触すると捉えることができるため、この通知を廃止し、今後のこのような疑念が起こらないようにするとして、医療法人は、医療法第54条に謳う「剰余金の配当をしてはならない」との本来の主旨に立ち返るべきとした。
また、解散時の残余財産に関しては、医療法第56条で「定款または寄附行為の定めるところにより、その帰属すべきものに帰属する」とあるところを「債権者や医療法人に財産を拠出した拠出者との関係を整理し、解散する医療法人の残余財産に関し、法制上の配慮を行う規定が必要」とした。さらに、残余財産は総社員の同意と都道府県知事の認可を受けた上で(財団医療法人は都道府県知事の認可のみ)、国や地方公共団体、または他の医療法人に帰属させることを医療法上で規定するよう求めた。ただし、すでに設立されている医療法人に配慮して、当分の間経過措置を設けるとしている。
さらに、医療法人における社員の資格については、医療法やほか関係法令において、医療法人の社員資格を明確に定めるとともに、少なくとも営利を目的とする法人が医療法人の社員となることはできないよう法令上措置するよう要請。社員の議決権についても、拠出額の額によらず1人1票と医療法などに明確に定めることを求めている。
また、拠出金については、社団医療法人の資金調達手段を確保するため、定款により拠出金制度を選択できるようにすべきともした。
■「公益性の高い医療サービスを提供する医療法人」に改称
一方、公益性の高い医療サービスを提供する医療法人については、これまでの「認定医療法人」という名称を改め「公益性の高い医療サービスを提供する医療法人」とし、「公益性の高い医療サービス」の定義については「通常提供される医療サービスと比較して、継続的な医療サービスの提供に困難を伴うものであるにもかかわらず、地域社会にとってなくてはならないサービス」とした。具体的な公益性の高いサービス内容として、▼休日夜間の救急医療、▼小児救急医療、▼へき地・離島医療、▼災害医療―などを例示。さらに、それら「公益性の高い医療サービス」について一層検討を深めるために、厚労省に対しては具体的な公益性の高い医療サービスの中身や客観的に評価できる指標の提示を求めるとともに、具体的なサービス内容はパブリックコメントを募集し国民の意見を聴いた上で法律上に位置づける、または都道府県知事が、一定の手続きを経て別途サービスを具体化することができるようにすることを求めた。
また、公益性の高い医療法人における役職員の報酬については、「不当に高額なものであることは望ましくない」としながらも、基準を一律に設けることは「効率的な医業経営の実施にきわめて支障が多く、医療サービスの提供や医業経営の実施の面から有能な役職員を確保する観点からみても問題が多い」とし、「公益性の高い医療サービス」を担う医療法人の自立性を尊重して、報酬などの支給規程を地域社会に情報を開示することで対応すべきであるとした。その際、現行の特定・特別医療法人で3600万円以下とされている役職員の給与制限は見直すべきとした。
医療法人の経営状況については、経営規模が一定以上になる場合は公認会計士や監査法人による財務諸表監査を受けることを義務づけ、財務諸表監査を受ける法人は現行の医療法人に対する自己資本比率は適用しないこととした。
■「ベストではないが、評価できる」
同報告書に対して、検討会では「現場で混乱を来す」などと危ぐする意見も挙がったが、豊田委員は「ベストではないが評価できる」と述べ、西澤委員も「これからの医療法人が国民の信頼を得るためには我々も少々痛みを伴わなければならない」と述べるなど、概ね評価し、了承した。同報告書は28日の社会保障審議会医療部会に提出後、医療法とその関連法とともに改正法案として2006年の通常国会に提出する予定だ。今後の焦点は「公益性の高い医療法人」などに対する軽減税率の適用などに移る。報告書でも厚労省に対して法人税制など医療法人にかかる税制上の優遇の検討など、公益性の高い医療サービスを安定的・継続的に提供することを可能とするための基盤整備が求められると明示されており、検討会でも豊田委員らは「現在の税制は社会福祉法人に比べ天地の差。規則ばかり厳しく裏付けとなる税制がないのでは(制度が浸透しない)。新しい医療法人には税制的な裏付けをお願いしたい」と要望。こうした意見に対し、岩尾医政局長は「今一番関心があるのは税制の問題と推測される。財務当局と十分詰めていきたい」と応じた。