- はじめに
- 新規開業においては、資金調達の重要性はいうまでもありません。しかし、いざ実際に調達するとなると、先生方個人の活動だけで必要資金の全額をご希望どうりに調達されるのは大変難しいのが現状ではないでしょうか。今回は、弊社の顧問先の約300件の開業事例の中から、上手な資金調達のポイントについてご紹介致します。
- 資金調達のポイント
- 総投資と借入を押さえる
まず、総投資と借入を押さえることの重要性についてご説明致します。
開業にあたっては、土地の購入、建物の建築及び内装工事、医療器械や備品の購入、医師会の入会金等様々な投資がかさむわけですが、それらの合計が総投資となり、その資金は自己資金と借入で賄うことになります。
総投資が大きくなれば、その回収に長期の期間を必要とし、総投資のうち、自己資金の不足分は借入で補うことになります。
借入金の割合が高くなると、経営の安定度が低くなり、元利金の増加により、先生の資金繰りや所得を圧迫することになります。
総投資を低く押さえる事例をいくつか挙げてみましょう。
- 保証金を返還なしとして低く設定してもらう方法もあります。
たとえば、600万円の保証金で200万円の敷引きの場合と300万円の保証金で返還金なしの場合を比較してみると、前者のほうが、敷引き100万円の差違分だけ有利なように見受けられますが、長期間寝かせる資金であるため、イニシャルコストを押さえるという意味では、後者のほうに軍配が上がるのではないでしょうか。
- 院長室・スタッフルーム等は賃料・保証金の安い上層階に設置しましょう。
直接診療にかかわるスペースについては多少コストがかさんでも低層階(できれば1F)を確保し、来院患者数の増加を図るべきですが、間接スペースについては、コストの低い上層階で十分ではないでしょうか。
- 中古機械の活用をしましょう。
医療機械については、デジタル化された最新鋭の機械の発売ラッシュの中で、一方で中古マーケットの普及等もあり、インターネット等を通じ、中古機械の売買も盛んに行われてきています。品質・機能性等に問題が無ければ、中古機械の活用も一考に値するのではないでしょうか。
- 保有不動産があれば売却し、または生命保険等を解約し、借入金を少なくします。
処分可能な金融資産・固定資産(不動産等)があれば、それを処分し、現金化することによって借入金額を押さえることができます。但し、売却に伴って譲渡益が発生することもあり、課税対象になる場合には税金に注意が必要です。
- 自動車は中古車でもよいのではないでしょうか。
中古機械と同じ考え方によるものです。
- 自己資本比率を高くする
次に自己資本比率についてご説明致します。資本とは、開業に必要な資金として調達された資本総額をいいますが、他人資本(借入金)と自己資本(自己資金)とに分かれます。すなわち、自己資本比率とは、開業に必要な資金の総額のうちの自己資金の割合をいいますが、この比率が高ければ高いほど診療所の経営の安定度は高まります。また、親族借り入れは他人資本(借入金)ではあるものの、自己資本(自己資金)に近い性格を持っていますので、重要視する必要があります。
- 土地の取得について
次に戸建て開業の場合の注意点についてご説明致します。戸建ての場合、親族の土地に建築するか、もしくは定期借地権を活用されるのが有効かと思われます。
たとえば、土地はご両親がご購入され、先生が借地されて建築される場合や地主に建物を建築してもらい、それを貸借される場合があります。
いずれにしても、土地の購入からはじめて建物まで建築されるのは投資コストがかさみ、回収が容易ではないからです。
- 住居併用建物の場合
また、住居併用建物の場合、自宅部分の割合を押さえるようにします。これはいうまでもなく、事業用の部分は収益を生むものの、住宅部分はそうではないという経営効率上の問題と住宅部分は減価償却の対象にならないため、事業用部分のように減価償却費として経費化できないからです。(但し、住宅取得控除の対象になります。)
- 投資対象と税金
また、投資額のうち、土地・保証金・自宅部分は減価償却・支払利息・関連経費において税務上不利なので注意が必要です。土地・保証金・自宅部分は減価償却の対象になりませんし、自宅部分の支払利息は経費化できません。更に土地・自宅部分の取得には、不動産の売買手数料・不動産取得税・登録免許税・固定資産税等の関連経費が発生しますし、その金額も大きいため無視できません。
- 借入期間の長期化と据置期間
次に、効率的な借入方法・返済方法についてご説明しましょう。
まず、借入期間と据置期間についてご説明致します。現在のような長短の金利差が小さい時期には、借入期間を長期に組むことが有利かと思われます。たとえば、3,000万円を5年間借り入れる場合と10年間借り入れる場合を比較してみますと、元金返済(元金均等返済の場合)について言えば、それぞれ50万円、25万円となり、返済額に大きな差違が出てきます。借入期間については公的金融機関の場合決まっており、融資期間の制限があります。都市銀行の場合には一般に10年が限度であり、戸建・長期の場合は地銀・信金等の地域金融機関がマッチするものと思われます。借入期間の目安としては、不動産15〜20年、設備資金10年、運転資金5年ぐらいではないでしょうか。
また、住居部分が50%以上であれば、都銀の住宅ローン最長35年または住宅金融公庫が利用できますが、住宅金融公庫については、今年の4月から年収により、借入限度額の制限が厳しくなりました。
返済方法の工夫として、据置期間を設定することができます。据置期間を設定すれば、元金の返済が据置かれ、その期間中(大体1年〜2年程度)は利息のみの返済となります。診療報酬の振込みは2ヶ月遅れであり、開業後1年くらいの期間は収入が少ないことを考慮すれば、有効
な手段といえるでしょう。
- 公的金融機関の有効活用
次に、借入金利のご説明を致します。この20年間の平均金利は大体5〜6%程度で推移していますが、この2〜3年は史上稀に見る低金利になっています。
このような低金利時代には、公的金融機関の固定レートを利用されるのが最も得策ではないでしょうか。平成14年10月10日現在の金利(期間10年)は@国民生活金融公庫が1.6%A社会福祉医療事業団新築資金が1.5%です。
- 融資の確認
このようにして資金調達の準備を進めていくわけですが、この場合に大切な事は、融資の感触を得てから、テナント契約・工事の着工をするという事です。
更に、融資の確認を役席者(融資課長・支店長)にとりつけることが重要であり、融資額が大きい場合・担保が乏しい場合には特に慎重につめる必要があります。不動産の売買契約等を結んで手付金を支払った後、資金調達が予定どおり行かず解約せざるを得なくなった場合、手付金は没収となる場合もありますので注意が必要です。
- 運転資金の確保
最後に、運転資金についてご説明を致します。先述しましたように開業当初1年間ぐらいの期間は十分な収入が見込めず、一方で人件費・家賃等の経常的な経費の支払は恒常的に発生します。このため、運転資金として最低、1,000万円ぐらいの手元資金が必要になると思われます。十分な運転資金を持ち、当初にシュミュレーションした患者数がすぐには見込めなくても対応できるような盤石な体制が必要ではないでしょうか。更に、診療所の運転資金以外に先生方の1年間分ぐらいの生活資金が別途必要なのはいうまでもありません。
もし先生が資金調達でお悩みの場合には、どんな事でもお気軽に弊社にお声掛けください。約300件の開業事例をヒントに、先生の開業資金の調達に有効なアドバイスができるのではないでしょうか。