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医療経営情報(2019年6月20日号)

2019/7/29

◆凍結されている「妊婦加算」、今秋から再検討へ        名称変更も含め全面的に見直し 加算要件は厳格化の方向

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会 総会
厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は、6月12日の総会で、現在凍結されている「妊婦加算」について、今秋から改めて検討することを決めた。再開するかどうかの取り扱いを含め、名称や加算の要件、診療報酬の点数なども議論される見込み。2018年度に導入されたのと同様の形で再開するのは「適当ではない」としており、単に妊婦を診療したのみで加算が取得できる設計とはならなそうだ。

「妊婦加算」は、昨年4月の診療報酬改定で新設された。妊娠中の女性が医療機関を受診した場合、初診料・再診料が上乗せされる仕組みで、初診の場合は75点、再診の場合は38点。自己負担割合が3割の場合、初診で約230円、再診で約110円増えた。このことが、「妊婦だけが自己負担額が増える」として、昨秋頃からSNSで不満の声が頻発。少子化対策に逆行しているといった批判へと高まり、マスメディアでも報道されるに至った。

これに、今夏の参議院議員選挙への影響を懸念した自由民主党が反応。厚生労働部会で「今後廃止すべき」と総意を取りまとめ、12月には根本厚労相が凍結すると明言。安倍晋三首相が悲願とする憲法改正の実現に向け、参院選の議席維持は至上命題となっているため、ある種の“得点稼ぎ”の意味も込めて凍結へと動いた次第だ。中医協総会で了承された答申書に「凍結との諮問が行われたことは極めて異例」としたうえで「特別な事情に基づき実施」とまで記されていることからも、政治的な意図が働いていることや、厚生労働省および中医協にとって本意ではない決定だったことが窺える。

だからこそ、厚労省は凍結からわずか2カ月後に「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」を立ち上げ、「妊婦加算」の見直しに着手する環境を整えた。そこまでするのは、妊婦および産婦の診療には通常よりもきめ細かい配慮が求められるからだ。しかも、近年は出産年齢が上昇傾向にあり、高齢出産の場合は産前産後のケアにより慎重な対応が必要となる。そのため、今回の中医協総会で報告された「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」の「議論の取りまとめ」には、「妊産婦の診療において、質の高い診療やこれまで十分に行われてこなかった取組を評価・推進することは必要」と記されている。そのうえで、妊産婦が医療機関を受診するときの自己負担が、「これから子どもがほしいと思う人にとって、ディスインセンティブとならないようにすることが必要」と明記。加算要件の厳格化は確実視されるものの、妊産婦への診療を手厚く評価する加算が改めて導入されることは間違いないだろう。

◆「旧7対1」から急性期2・3への移行はわずか3.1%
移行の理由は「看護必要度の基準が満たせない」が半数

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会
入院医療等の調査・評価分科会
厚生労働省は、6月7日の中央社会保険医療協議会「入院医療等の調査・評価分科会」で、「平成30年度入院医療等の調査」の結果を報告。いわゆる旧7対1(7対1一般病棟入院基本料)から急性期一般病棟入院料2へ移行したのが2.6%、急性期一般病棟入院料3へ移行したのが0.5%だったことがわかった。

昨年の診療報酬改定の目玉でもあった入院基本料の再編・統合。もっとも高い入院料が得られる旧7対1を解体しようとしたのは、超高齢社会および人口減少社会に突入したことで、実際のニーズよりも過剰な医療資源が投入されることへの危惧からだった。もちろん、その先には医療費の抑制を見据えており、旧7対1に偏りがちな医療機関を分散させようとの意図もあった。7段階と入院料の種別を細分化したのは、急激な入院料の落ち込みによって医療機関の経営を圧迫するとの懸念もあったからだ。

しかし、昨年11月に発表された福祉医療機構のアンケート調査結果では、旧7対1を算定していた医療機関の95.5%が移行を望んでいないことがわかっている。今回発表された調査結果でも、旧7対1と同様の評価が得られる急性期一般病棟入院料1の届出を行ったのは96.5%であり、ほとんどの医療機関が移行を望んでいないということが改めて浮き彫りとなった。

入院料移行を拒むのは、減収を恐れてのことだ。昨年の診療報酬改定で新設された急性期一般病棟入院料1は、旧7対1と同じ1,591点。厚労省は、移行を促すため急性期一般病棟入院料2を1,561点と30点しか差をつけなかったが、急性期病院はある程度の病床数があるため、全体では大きな減収につながることは明らかであり、進んで移行に応じるところがわずかだったのも納得できる。

では、わずか3%程度とはいえ、旧7対1から急性期2・3に転換した医療機関は、なぜ移行を決意したのだろうか。厚労省はその理由も調査しており、50.0%は「重症度、医療・看護必要度の基準を満たすことが困難」と回答。これは、従来が該当患者割合25%だったのを30%に引き上げたことが響いているものと思われる。次に多い理由として「看護師の確保が困難」(26.9%)があがっているのも、それを裏付けているといえよう。

政府・厚労省にしてみれば、この結果は期待はずれだろう。ただ、人口減少が進む中で、重症患者割合が下がっていくことは間違いなく、地域によってはすでに“無理をして”重症患者割合を維持している医療機関があると推定される。今回の調査結果だけであれば、入院基本料の再編・統合は失敗ともいえるが、もう少し長いスパンで経緯を見ていく必要があるだろう。

◆6割以上が「オンライン診療のニーズが少ない」と回答
手間やコストに見合わないと判断する医師も半数以上

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、6月12日の中央社会保険医療協議会総会で、「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」の結果を公表。昨年の診療報酬改定で全面的に解禁されたオンライン診療(遠隔診療)について、6割以上が「ニーズが少ない」と回答していることがわかった。「オンライン診療を行うメリットが手間やコストに見合わない」との回答も約6割と半数以上を占めており、医療機関の現場で“期待外れ感”があることが明らかとなった。ただし、オンライン診療のみでの緊急避妊薬処方が認められる方向となっていることや、政府の成長戦略で重点項目とされていることも踏まえると、医療機関にとっては運用の方法で差別化を図るチャンスともいえる。

今回の調査結果を細かく見ていくと、より興味深い現状が浮かび上がってくる。調査は「オンライン診療料の届出あり」「(うち)オンライン診療の実績あり」「オンライン診療料の届出なし」の3層に分けて行っており、回答数は順に77、12、429。母数が少ないため一概にはいえないが、オンライン診療料の届出をしている医療機関が15%程度しかなく、しかも実際にオンライン診療を行っているのはそのうちの15%程度。つまり、本格的にオンライン診療に取り組んでいる医療機関は2%程度しかないということになる。

オンライン診療の実績がある2%のうち、「ニーズが少ない」と回答しているのが63.6%。「届出あり」が40.5%、「届出なし」が43.6%であることを勘案すると、まだオンライン診療が患者に受け入れられていない、あるいは認知度が低いことがわかるが、むしろ36.4%が「そう思わない」と回答していることに注目したい。患者へ積極的に働きかけている医療機関は、収益向上につながると判断しているとも読み取れるからだ。

一方で課題もまだまだあるようだ。「オンライン診療を行うメリットが手間やコストに見合わない」との項目に対し、実績がある2%の医療機関の実に66.6%が「そう思う」と回答。患者側がオンライン端末の操作や、コミュニケーションに慣れていない現状が類推される。ただ、今後はデジタルネイティブ世代の数が右肩上がりに増えていくため、オンラインでのスムーズなやりとりが通常になることは想像に難くない。ガイドライン見直しが今後も定期的に行われるであろうことや、対象疾患が変動する可能性もあるため、注力しすぎることのリスクも高いが、ブルーオーシャンである今こそ、この分野での優位性を確保する絶好機であることは間違いないのではないか。あとは、どの診療分野で伸びていくかを見極めることが肝要となってくるだろう。

◆医療従事者向けAI教育プログラムを構築 2020年までを目標に
インシデントレポートを活用した「医療安全アラート」の開発も検討

――厚生労働省
保健医療分野AI開発加速コンソーシアム
厚生労働省は、6月6日に開催した「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」で、医療従事者向けのAI教育プログラムを2020年までに構築する方針を示した。また、インシデントレポートから必要な情報を吸い上げ、アラートを鳴らす仕組みを開発することで医療事故防止につなげたい考えも明らかにしている。

厚労省では、2016年6月に「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」の報告書を取りまとめ、AI開発の「重点6領域(ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援)」を選定した。しかし、諸外国でAI開発が急速に進んでいることから、早急に課題や利活用促進策について検討するべく、昨年7月に「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」を設置。今回の会合では、これまで7回の会合で進められてきた議論を整理し、今後の対応方針を示している。

とりわけ注目したいのは、人材育成についてだろう。開発がいくら進んだところで、現場で活用できなければ意味がないからだ。同コンソーシアムでも、有識者から「医師に対して診療支援AIについての適切な教育を行うべき」「AIを診療現場で活用するにあたっては、チーム医療のプレーヤーにAIの専門家を入れ、一緒に医療の現場を作っていくことが必要」といった意見が上がっている。そこで、現場の医療従事者が正しく安全に使用するための教育を整備しようというわけだ。具体的には、今年度中にAIを活用した教育内容を固め、来年度中に医療従事者向けAI教育プログラムの枠組みを構築したいとしている。

また、「重点6領域」以外に、AI活用によって医療安全向上が期待されるとして、前述したようにアラートを鳴らす仕組みの開発などを検討すべきとしている。ただ、インシデントレポートはフリーテキスト形式のものが多く、同じような特徴を持つインシデントが複数あるのが現実。全症例をレビューするのは現実的ではないため、実用化に向けたモデル開発に取り組むべきだとした。

医療安全については、まだ道筋が見えていない状態と言わざるを得ないが、多少の時間を要しても今後実用化されるのは確定的といえる。こうした状況が表しているのは、AI活用を目的化するのではなくツールとして使いこなす「AIリテラシー」が医療現場にも求められるようになるということだ。今後、AI教育プログラムが資格化していくかどうかは未知数だが、医師だけでなく事務職・管理職も受講を視野に入れて今から基礎知識を

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