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介護経営情報(2019年4月5日号)

2019/5/20

◆新たな処遇改善加算の算定要件が大筋で決まる すべてのベテラン職員に「月額平均8万円の賃上げ」は実現できず

――厚生労働省
社会保障審議会 介護給付費分科会
厚生労働省は、3月6日の社会保障審議会介護給付費分科会で、新たな処遇改善加算となる「介護職員等特定処遇改善加算」の算定要件を提示し、大筋で了承された。勤続年数10年以上の介護福祉士の賃金を月額平均8万円相当引き上げることが目玉となっていた処遇改善策だったが、あいまいな要件が多く、賃上げが適用されないベテラン職員が多数出てくる可能性も出てきた。

介護職員の処遇改善は、深刻化する人手不足解消策として政府が推進してきたもの。2017年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で、勤続年数10年以上の介護福祉士に月額平均8万円相当の賃上げを実施するとぶち上げ、1,000億円の公費を用意して処遇改善加算の見直しを図ってきた。

昨年12月に介護給付費分科会で取りまとめた「審議報告」によれば、今回の新たな処遇改善加算は、従来の介護職員処遇改善加算の算定区分I~IIIを算定している事業所が対象。しかし、勤続10年以上の職員に必ず月額8万円の賃上げが行われるわけではない。月額8万円の賃上げの対象となるのは、「サービス提供体制強化加算」「特定事業所加算」「日常生活継続支援加算」のいずれかを算定している事業所のみ。これらの算定実績がない事業所は、加算率が下がる算定率の対象となる。

また、事業所が処遇改善加算で得た金額の配分や基準は、事業所側に委ねられているが、「勤続10年以上の介護福祉士」「その他の介護職員」「介護職以外の職員」の3グループごとに一定割合を配分しなければならない。さらに、「勤続10年以上の介護福祉士」の中には「月額8万円賃上げ」もしくは「改善後に年収440万円以上」となる職員が1人以上いなければならないルールとなっている。

小規模事業所の場合、これらの条件を満たすことが困難なのは明白。そのため、介護給付費分科会では例外規定を盛り込んだ改定案を答申した。それに対し、6日に厚労省が提示した例外規定の対象は「事業所が小規模など、全体の加算額が少ない」「賃金水準が低い事業所など、月8万円または年収440万円以上の賃上げを直ちに行うことが難しい」「これまで以上に事業所内の役職や能力・処遇の明確化が必要となり、一定期間を要する」だったそのうえ、「経験や技能のある」については、勤続10年以上の介護福祉士を原則とするものの、「同一法人だけでなく他の法人や医療機関などの経験も通算可能」「10年に達していなくても業務内容などを勘案して対象に加えられる」とした。つまり、最終的には事業所の裁量に委ねる、という丸投げの形だ。処遇改善加算は算定しやすくなったものの、月額8万円の賃上げが確実とはいえない状態になっているのである。もっといえば、介護福祉士を多数抱える大手事業所はともかく、少数しかいない小規模事業所で月額8万円の賃上げを実現できる可能性は、極めて低くなったといえよう。

昨年4月に、財務省の財政制度等審議会が小規模介護事業者の統合を促すべきと提言し、厚労省は10月に立ち上げた「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」の会合で、社会福祉法人と医療法人の経営統合を推進する方針を示した。今回の新たな処遇改善加算の制度設計も、その流れを汲んだものと見ることも可能だ。小規模事業所は、処遇改善加算で大幅な賃上げが実現しないことのみならず、近い将来訪れるであろう経営統合の波をいかに受け止め、対処していくかを真剣に検討すべきフェーズに突入しているのではないか。

◆対要介護者の医療保険の維持期・生活期リハ、介護保険へ完全移行 3月末で経過措置終了 昨年5月時点で3万人以上の要介護者が該当

――厚生労働省
社中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、3月6日の中央社会保険医療協議会総会で、医療保険における要介護・要支援者に対する維持期・生活期の疾患別リハビリテーション料の経過措置を3月末で終了すると提案。総会で了承されたため、介護保険へ完全に移行することが決定した。ただし、2018年5月時点で、医療保険の維持期・生活期リハビリテーションを受けている要介護・要支援者は3万人以上存在しており、移行がスムーズに行われるか注目される。

リハビリテーションはその性質上、医療保険と介護保険の境界線が曖昧だった。「急性期」「回復期」は医療保険、「維持期・生活期」が介護保険と役割分担がなされているものの、患者にしてみれば「回復期」から「維持期・生活期」へ移行してもリハビリテーションは続く。しかし、医療保険から介護保険へと移行することで、リハビリテーションを受ける場所を変えなければならない。担当する理学療法士や作業療法士が変わることもあり、急な環境の変化を受け入れたがらない要介護者は多く、なかなか移行が進まないのが現実だった。

環境を変えなくても済むよう、医療機関でもリハビリテーションを提供することは可能ではある。しかし、施設基準など一定の要件を整えなければならないため、当初はそうした医療機関がなかなか増えなかった。そこで、2014年度の診療報酬改定で「介護保険リハビリテーション移行支援料」を創設したほか、介護保険の通所リハビリテーションを提供していない医療機関の疾患別リハビリテーション料を減算するなど、介護保険への移行を促してきた。

そんな中で、介護保険の通所リハビリテーションを提供できる医療機関は、2013年10月から2017年10月までの間に24.3%増加。さらに、昨年の診療報酬改定では、医療機関がリハビリテーションを一貫して提供できるように施設基準を緩和した。これらを踏まえ、厚労省は「維持期・生活期」のリハビリテーションを介護保険に移行できる見通しが立ったと判断。昨年の診療報酬改定で設けた経過措置の期限が今年3月末だったことから、延長せず介護保険に完全移行するとした次第だ。医療機関で「維持期・生活期」リハビリテーションを実施するには、介護保険事業所の指定を受けるほかケアプランの変更が必要となるが、届け出の簡素化やサービス担当者会議の省略などを容認する。医療機関以外の介護施設などでリハビリテーションを受ける場合は2カ月の移行期間を設け、その期間内は医療機関と介護施設の双方でリハビリテーション料を算定できる仕組みとする。

◆国家資格の旧姓使用範囲拡大へ 介護福祉士や保育士    認められれば登録証の書き換えが不要に 規制改革推進会議

―規制改革推進会議
 規制改革推進会議は2月26日、今期取り組む重点事項を決定。「働き方改革に資する規制・制度の改革」の一環として「各種国家資格における旧姓使用の範囲拡大」を挙げた。具体的な資格として介護福祉士や保育士が挙げられており、「女性の仕事の継続性の観点から」旧姓使用を認めるように働きかける方針だ。順調に審議が進めば、6月にまとめられる答申に盛り込まれる。

 現在、介護福祉士および社会福祉士は、登録証の記載内容に変更が生じた場合、社会福祉振興・試験センターへ速やかに書き換え交付の申請を行わなくてはならない。結婚や離婚で姓が変わったあと、旧姓を名乗るかどうか決める以前に、通常ならしなくても済む手続きを行わなければならないわけだ。「現場では旧姓のまま活動したい」と考える人はもちろん、「別にどちらでもいい」と考えている人も、同じように申請が義務付けられている。忙しい日常業務をこなす中で“余計な仕事”となることは間違いない。また、新姓に変わることで周辺や関係者にいちいち説明をしなければならない煩わしさもある。

実は、すでに旧姓使用を認めている国家資格は少なくない。医師や看護師、薬剤師のほか、弁護士や公認会計士、税理士などもそうだ。その中で、介護福祉士や社会福祉士、保育士といった女性が多い資格で未だに新姓への切り替えが義務付けられているのはおかしいとの見方もある。実際、同日の会合に出席した片山さつき内閣府特命大臣(地方創生、規制改革、男女共同参画担当)は、各種国家資格で旧姓使用が認められていない現状に対し「今どきと感じもする」と発言している。

とはいえ、規制改革推進会議としては、国家資格すべてで新姓書き換えの義務化を緩和させようという考えはないようだ。大田弘子議長(政策研究大学院大学教授)は会議後の記者会見で、「資格をとった後に、結婚する、あるいは離婚するといったことの中で、ビジネスネームとして継続して使えるようにしたいということですので、全部を統一で旧姓使用を義務づけるとか、そういうことは考えておりません」と明言。すべて統一化することによって生じる事務負担を慮ってのものと推察される。今後、個々の資格を精査して、適用していきたいとの考えも示しており、答申では介護福祉士、保育士のほか社会福祉士など具体的な資格名も盛り込まれることとなりそうだ。

◆小多機「定員29人」が安定経営の傾向あり GHは2ユニットが好調    「データポータビリティ」の実現で健康づくりを促進

―独立行政法人福祉医療機構
 規福祉医療機構は、2月27日に小規模多機能型居宅介護事業(小多機)、3月1日に特別養護老人ホーム(特養)、3月6日に認知症高齢者グループホーム(グループホーム、GH)の2017年度の経営状況についてのレポートを相次いで発表。小多機は「定員29人」の施設のほうが、「定員25人」の施設よりも経営が安定している傾向があり、特養は看取り体制の整備など専門的なケアを評価する加算を算定している施設のほうが、そうでない施設よりも利用率が高いことがわかった。グループホームは、2ユニットのほうが1ユニットよりも好調だった。

 小多機の収益は、前年度とほぼ横ばい。登録者1人1月あたりのサービス活動収益は5,238円増加した23万1,006円となったが、職員1人あたりの人件費が前年度から8万円増えた345万1,000円となっていることが影響している。赤字割合は約4割と前年度と同水準で、黒字施設との差が登録率にあることも変わらなかった(黒字施設の登録率が86.4%、赤字施設は74,7%)。しかし、定員別に見ると収益率には大きな差があり、定員25人が0.5%であるのに対して定員29人は8.4%。定員25人は前年度より1.3ポイント低下しており、赤字割合も定員25人が48.2%であるのに対し、定員29人は29.5%と少ない。福祉医療機構は、「29人定員はスケールを活かした柔軟なサービス提供が、効率的な従事者配置、各種加算の取得等につながり、経営の安定化につながっていると考えられる」と分析。収入単価や登録率を高めるためには、柔軟なサービス提供体制と、医療的ケアなど多様なニーズへの対応が求められるとしている。

 特養の利用率も前年度とほぼ横ばい。ただし、黒字施設と赤字施設を比較したところ、従来型・ユニット型ともに利用率と人件費率に差があった。とりわけユニット型では、施設のケア体制を評価する加算の算定状況に差があったため、福祉医療機構は「真の社会福祉ニーズにこたえることのできる専門性こそが、地域の中での特別養護老人ホームの立ち位置として期待されていることの証左にほかならない。そういったニーズに積極的に対応する姿勢こそが、地域から必要とされ、結果として経営上も望ましい効果を生んでいる」と分析している。

 グループホームの収益率は、前年度より0.5ポイント上昇した4.2%。ただし、1ユニットが1.7%、2ユニットが5.1%と大きく差がある。2ユニットが好調なのは、1日あたりサービス活動収益が高いのに加え、利用者10人あたりの従事者数が少ないことから人件費を抑えられることを挙げている。また、1ユニットは定員が少ないため、利用者数のわずかな増減が収益に与える影響が大きい。裏を返せば、リスクを負った経営にならざるをえないため、2ユニットが好調であるともいえる。福祉医療機構は、赤字改善策として「利用率を向上させることはもちろん、医療連携体制加算や看取り加算のように、比較的大きな増収につながりやすい加算を取得することで、経営を安定させていくことが求められる」と指摘している。

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