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介護経営情報(2018年11月30日号)

2018/12/10

◆厚労省、特養への看護師短期派遣のニーズを調査 業界団体は「潜在看護師」の有効活用を主張

―規制改革推進会議 専門チーム会合
厚生労働省は、11月28日の規制改革推進会議専門チーム会合で、特別養護老人ホーム(特養)への看護師短期派遣のニーズを調査することを明らかにした。同会合に出席したNPO法人日本派遣看護師協会は、いわゆる「潜在看護師」が現在約70万人おり、彼らから短期派遣で働くことを希望する声が多く寄せられていると訴えている。

専門チーム会合は、「規制改革ホットライン」に寄せられた提案のうち、既存のワーキング・グループや行政手続部会で扱うことがないものの、ホットライン対策チームで重要と判断した事項を検討する場として設けられている。看護師の短期派遣については、今年5月に「労働者派遣法第35条の4第1項の政令で定める業務に『看護業務』を加え看護師の短期派遣を可能とすること」として提案され、厚労省からは「対応不可」と回答されていた。

「対応不可」の理由について、厚労省は以下のように回答している。
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看護師の業務については、現在、労働者派遣事業が認められている特別養護老人ホーム等において行われるものであっても、点滴、インスリン注射、服薬管理等の医療行為が発生しうることや、生命身体の保護に関わるものであるため、夜間における就業が定期的に求められる場合や緊急の業務が発生する場合があることなど安全衛生上の問題が発生しないよう留意する必要がある業務であり、適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないとは認められません。
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現在、看護師の派遣は原則として禁止されている。派遣労働者が、派遣元の都合で差し替えられる可能性があり、医療チーム内での意思疎通や能力把握が十分にできず、患者へ提供される医療に支障を及ぼす可能性があるからだ。

上記の厚労省回答にあるように、特養や障害者支援施設、保育所への派遣は例外として認められているが、日雇いなどの短期派遣は認められていない。現在、日雇派遣はソフトウェア開発やデモンストレーションといったいわゆる「17.5業務」以外は禁止されており、看護師も禁止対象職種となっているのが理由だ。

一方で、結婚や出産・育児などによって、勤務形態とライフスタイルが合わないことを理由に看護業務に携わっていない「潜在看護師」は、現在約70万人いるとされている。これは、看護師資格を持つ人材の約4割を占めており、国家資格を取得しているにもかかわらず、その能力を活かせていない。前述の日本派遣看護師協会によれば、「働きたくても働けない」人が多数であり、「出産・育児が一段落したら看護現場に復帰するため、スキルを落とさないように月に何日かでも看護に携わりたい」「看護師資格を持っているので、月に1回でも看護師として働き、社会の役に立ちたい」「家事に差し障りのない範囲で、週に1~2日程度は看護業務に従事し、副収入を得たい」といった声が寄せられているという。

では、特養側の看護師雇用はどのような状況なのか。日本派遣看護師協会は、複数の看護師派遣会社にヒアリングした結果として、「全国の介護系施設からの⾮常勤短期(日雇派遣)のニーズは、毎⽉述べ稼働人日で約9万コマ存在する」と推測している。また、介護施設での常勤を希望する看護師が少なく、恒常的に人手不足であることや、介護施設での業務量には濃淡があるため「必要な時に必要な人材を派遣や日々雇用で確保しているのが実情」と指摘。介護施設での非常勤短期業務に対するニーズが多いことを示唆している。

また、日本派遣看護師協会は、前述の厚労省の回答に対し、「夜勤や、点滴、注射等の診療の補助業務は、看護師にとってあたり前の⽇常業務であり、安全衛⽣管理上も特別留意する必要がある業務ではありません」と返答。さらに、長期派遣がすでに認められており、安全衛生管理がなされている福祉・介護分野の看護業務において、「短期派遣であるが故に安全衛⽣管理に特段の問題が発生するとは考えられません」としている。

これらの要望に対して厚労省が、慎重な姿勢は保ちながらもニーズ調査へと踏み切ったことは、短期派遣が認められる可能性を示したものといえる。地域包括ケアシステムを構築する観点からも、医療と介護の連携を進めることは必要であり、看護師の短期派遣を容認することはノウハウを持つ人材が両分野を行き来する環境整備につながると考えられよう。ニーズ調査の結果を受けて、規制改革推進会議でどのような議論が発展していくか、今後の推移を見守りたい。

◆介護予防、デイサービス事業者へのインセンティブを強化 全体的に利用者負担を引き上げ現役世代の負担を軽減する方向へ

―経済財政諮問会議、未来投資会議
まち・ひと・しごと創生会議、規制改革推進会議合同会議
政府は11月26日、経済財政諮問会議、未来投資会議、まち・ひと・しごと創生会議、規制改革推進会議合同会議で、今後の経済政策の方向性についての中間とりまとめを実施。介護予防については、デイサービス(通所介護)事業者へのインセンティブを強化するほか、保健事業との一体的な対策でフレイル(高齢者虚弱)予防や認知症予防への取り組みを充実させていく方針が盛り込まれた。

通所介護の利用者は毎年10万人以上増えている。現在は200万人以上となっており、介護保険サービスの中でも介護費抑制のターゲットとされている。介護費抑制の対策として、今年の介護報酬改定で新設されたのが「ADL維持等加算」だ。ADLとは「Activity of Daily Living」の頭文字をとった用語で、日常生活動作のこと。要介護度が進めばより介護費がかかるため、状態を回復させる、もしくは軽度な状態を維持させるためインセンティブを設定したというわけだ。

現在のADL維持等加算は月に3単位。評価期間が設けられており、1月から12月までの1年間に6カ月以上続けて利用した人全員が対象となる。利用期間中に、ADLを評価する指標であるBI(バーセルインデックス)が上昇すれば加算が取得できる。平たくいうと、その事業者の利用者の日常生活動作が改善すれば、報酬が各3単位ずつ上乗せされる仕組みだ。また、評価期間終了後もBIの測定・報告を続ければ、その対象利用者はさらに3単位加算できるため、計6単位の上乗せが見込める。今回、中間とりまとめとして発表された政府方針が実行されれば、この単位数がさらに上乗せされるか、要件を緩和する方向として反映される可能性が高い。

また、今回の中間とりまとめでは、「複数の医療法人・社会福祉法人の合併・経営統合」も盛り込まれた。これに関しては、10月に第1回会合が開かれた厚生労働省の「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」でも「医療・福祉サービス改革」のひとつとして掲げられたほか、財務省の財政制度等審議会でも小規模介護事業者の統合を促すべきと低減されてきた。財政制度等審議会では、人事・経営管理などの統合や連携事業への参加を指定・更新の要件にすることも考慮すべきとまで踏み込んでおり、医療法人との連携については、それぞれの人事交流や備品の一括購入をNPO法人に担わせるといったスキームまで示している。今回、政府方針として盛り込まれたことで、前述したスキームの中でも、介護保険サービス事業者の指定・更新の要件となる公算が強まったといえるのではないか。

◆医療・福祉の大卒初任給、前年比1.7%減     減少率は全産業中最高 大学院修了者は最低額

―厚生労働省
 厚生労働省は11月28日、「平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)」の結果を公表。「医療・福祉サービス業」の大卒初任給(男女計)は前年比1.7%減の20万1,500円で、減少率は同統計で取り上げられている12産業中最高値だった。高校卒、高専・短大卒、大学院修士課程修了者と他の学歴でも他産業より賃金水準は低く、とりわけ大学院修士課程修了者は全産業中最低額。少なくとも賃金面において、「医療・福祉サービス業」が魅力ある業界とはいえないことが浮き彫りになった格好だ。

 今回の調査結果によれば、大卒初任給は5年連続で過去最高を更新。平均額は20万6,700円であり、「医療・福祉サービス業」とは5,200円の開きがある。全産業で見ると、大卒のみならずすべての学歴で前年を上回っているが、「医療・福祉サービス業」は大卒、大学院修士課程修了者ともマイナス。高校卒、高専・短大卒はかろうじて前年より上回っているが、それぞれ0.1%、0.4%と微増レベルに留まっている。

 この調査では、細かい業界別のデータはわからないが、「医療・福祉サービス業」の賃金の減少傾向を後押ししているのが介護業界であることは明らかだ。今年2月に発表された2017年の「賃金構造基本統計調査」の結果によれば、全産業の平均月額賃金は30万4,300円。それに対して、介護業界の平均月額賃金は22万7,275円。中でも訪問介護員は19万8,486円と低く、全産業平均との格差は8~10万円程度と大きい。

全学歴において初任給が低水準である業界が、新卒の求職者にとって魅力的に映るはずはない。介護職員の処遇改善は約10年前の2009年度から順次行われており、合計で平均5万7,000円増加させてきた。また、来年10月の消費税増税に伴い、ベテラン介護福祉士の給与を月額8万円アップさせる方針も固まっているが、勤続10年以上が条件となっており、求職者にとっては給与アップの流れがわかりにくい状況だ。人手不足解消のためには、初任給を底上げすることや、昇給の流れを明確に伝えていくことも重要なのではないか。

◆ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称は「人生会議」     「いい看取り・看取られ」から11月30日を「人生会議の日」に

―厚生労働省
 厚生労働省は11月30日、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」に決定したと発表。また、11月30日に「いい看取り・看取られ」の語呂を当てて「人生会議の日」とし、人生の最終段階における医療・ケアについて考える日にしたいとした。

 ACPとは、人生の最終段階でどのような医療やケアを受けたいのか、事前に本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うプロセスのこと。望む医療やケアを受けるためには欠かせないため欧州では普及しているが、日本では死について事前に家族が話し合うことをタブー視している面もあることから定着していない。人生の最終段階に立ち会うことが多い介護従事者でもあまり知られておらず、2月に厚労省が公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」によれば、「よく知っている」と回答した介護職員はわずか7.6%。用語自体を知らない介護職員も51.7%と半数以上を占めていた。

こうした現状を危惧した厚労省は、まず3月に発表した「終末期医療ガイドライン」の改訂版で、ACPの重要性を強調。さらに啓蒙を進めるため、8月に愛称を一般公募した。愛称選定委員会には、座長に元NHKアナウンサーで国立成育医療研究センターもみじの家ハウスマネージャーの内田勝康氏、そのほか放送作家で映画「おくりびと」の脚本を担当したことでも知られる小山薫堂氏、タレントの小藪千豊氏、サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏など有名人を選定委員に指名して広報に務めていた。

「人生会議」に決定した理由としては、「意味が明確な単語の組み合わせにより、日常会話に浸透していくことが期待できる」「家族等、信頼できる人たちと輪を囲んで話し合う、というイメージが湧く」が挙げられた。この愛称を応募したのは、静岡県浜松市にある聖隷浜松病院の現役看護師、須藤麻友さん。応募総数は1073件だった。

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