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医療経営情報(2018年10月20日号)

◆再生医療に対する監視体制を強化         来年4月施行予定 経過措置は1年 

――厚生労働省
厚生科学審議会 再生医療等評価部会
厚生労働省の厚生科学審議会再生医療等評価部会は、10月19日の会合で「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則及び臨床研究法施行規則の一部を改正する省令案」を了承。再生医療に対する監視体制を強化するなど、規制が厳しくなることが確定した。改正省令は11月中に公布し、来年4月1日に施行する予定。改正前に実施されている臨床研究および治療は、経過措置の対象となる。経過措置は1年。

具体的には、臨床研究が計画書に則って行われたかを確認する調査を医療機関に義務付けるとともに、研究の概要を厚労省に提出しなければならなくなる。提出された研究概要はデータベースに記録される。治療も、計画を審査する委員会の要件を厳格化。がん免疫療法が対象となる「第3種」は、医療機関と利害関係のない委員の出席数を現在の2人以上から過半数にし、審査が実施された計画と異なる治療が行われないよう監視体制を強化する。

「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」、いわゆる再生医療安全性確保法は2014年に施行された。きっかけとなったのは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の誕生。生みの親である京都大学の山中伸弥教授が2012年にノーベル賞を受賞したことで、がん免疫療法をはじめとした細胞を用いる再生医療の臨床研究および治療を発展させようという気運が高まった。その安全性を確保することで、患者の細胞を用いる根拠が曖昧な免疫療法や、美容医療を牽制する狙いがあったのも間違いない。

しかし、「第3種」に相当するがん免疫療法は、国の審査を受けなくても実施できるため、多くの民間クリニックが届出を行っている。受診している有名人が死亡に至った例があるほか、治療費が高額という指摘もあり、規制の必要性を求める声があがっていた。さらに、規制強化を後押ししたのは、がん免疫治療薬「オプジーボ」の登場だ。オプジーボ自体は、保険収載されていることもあり問題はないが、「がん免疫療法」という概念がひとり歩きしてしまう可能性もあるため、引き締めに動いた形だ。折しも、オプジーボの開発のもととなった研究を進めてきた京都大学の本庶佑特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したタイミングであり、厚労省にとって省令の改正を行うことは、再生医療に対する啓蒙を図る絶好の機会となる可能性があるだろう。

◆厚労省、医療法人・社会福祉法人の「大規模化・協働化」を推進
経営統合や運営共同化、多角化、連携などの方策を検討

――厚生労働省
2040年を展望した社会保障・働き方改革本部
厚生労働省は10月22日、根本匠厚生労働相を本部長とする「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」の第1回会合で、医療法人と社会福祉法人について「経営の大規模化・協働化」に向けた改革を推進していく方針を示した。経営統合や運営共同化、多角化、連携などの方策などを検討していく。

この厚労省方針は、財務省の思惑を反映したものであることは明らか。財務省は、4月の財政制度等審議会で、小規模介護サービス事業者の統合を促すべきと提言。人事・経営管理などの統合や連携事業への参加を指定・更新の要件にすることも考慮すべきとまで言及しており、まさに「大規模化・協働化」への流れを後押しするものだった。そのうえで、社会福祉法人だけでなく医療法人、そして人事交流や備品の一括購入をNPO法人に担わせたうえで、地域の介護サービスを一任する考えも示しており、地域包括ケアシステムの構築へとつながるロードマップを描いていた。

今回の会合ではそこまで言及されていないが、経営をスリム化させてリソースを必要な部分に集中させ、医療従事者および介護職員の待遇改善やキャリア形成に寄与させる狙いがあることは間違いない。当然、医療費・介護費の引き締めにつなげようとする意図もあるだろう。

ただし、医療も介護も、小規模な事業者が数多く存在することが「フリーアクセス」成立の要因となっている。経営統合を推進することで、フリーアクセスを制限する結果につながるリスクもあり、今後具体的にどのような方向性が打ち出されるのか注視する必要がある。

とはいえ、厚労省が財務省の提言に同調するスタンスを示したことで、経営統合を推し進める施策が講じられることは容易に想像できる。診療報酬も、統合した事業者にとって有利な加算などが取り入れられる可能性があり、事業者サイドとしてそういった事態に対応できる戦略を今から練っておくべきだといえよう。

なお、今回の改革本部では、「健康寿命延伸」「医療・福祉サービス改革」「高齢者雇用」「地域共生」の4つのタスクフォースを設置。部局横断的な政策課題に取り組み、来年夏を目処に改革プランを策定する予定だ。

◆医療機関ウェブサイトに体験談の掲載は不可       「医療広告ガイドライン」のQ&A改訂で明示

――厚生労働省医政局総務課
 厚生労働省医政局総務課は10月24日、「『医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)に関するQ&Aについて』の改訂について」と題した事務連絡を、各都道府県衛生主管部あてに発出。医療機関のウェブサイトに「治療等の内容又は効果に関する体験談」は掲載できないと明示した。

 医療広告は、昨年10月の改正医療法の成立に伴って新たにウェブサイトが規制対象となった。6月には新たな医療広告ガイドラインが施行されたが、それだけでは解釈しづらい部分も多いため、Q&Aの内容が注目を集めていた。6月末に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で、従来のものに35項目を追加する案が提示されたが、「体験談」に関する1項目のみが継続審議となっていた。

 継続審議となったのは、前出の検討会の構成員から「口コミには有用性もある」との指摘があったからだ。「危険な治療を提供している医療機関を口コミで知ることで、患者にとって利益になるだけでなく他の医療機関への抑止力にもなる」との主張で、どの程度体験談の掲載が緩和するか注目を集めていた。

 この日事務連絡に添えられたQ&Aの当該項目では、まず「誘引性がある場合は広告規制の対象となる」と前提。そのうえで、「医療機関が患者やその家族に肯定的な体験談の投稿を依頼した場合」は誘引性が生じると定義。その論でいけば、医療機関側が投稿を依頼しなければ体験談の掲載ができることになるが、Q&Aでは「ウェブサイトの運営者が体験談の内容を改変したり、否定的な体験談を削除したり、肯定的な体験談を優先的に上部に表示する」といった作為的な編集があるケースを指摘。仮に医療機関側の依頼で行われたものでないとしても、ウェブサイトの運営費を負担する場合は誘引性が生じると断じた。

 つまり、厚労省側は、治療効果を謳う内容の体験談は誘引性が生じると断定した形であり、ウェブサイトには体験談自体の掲載ができないと定義したことに等しい。一方で「医療機関の影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限り」、誘引性は生じないとしており、個人のブログやSNSでの体験談は対象外となっている。ただし、ブログやSNSでの投稿内容が医療機関のウェブサイトとリンクしている場合は、誘引性があると判断されるおそれもあり、たとえば医療機関が運営するツイッターでリツイートすることもグレーゾーンに相当する可能性は高いだろう。これまで体験談をウェブサイトに掲載している医療機関はもちろん、院長や医師の個人アカウントで運営するSNSとリンクさせるだけでも、広告規制の対象となるリスクがあるのではないか。

◆今後の医師偏在対策は2036年の医師数をベースに検討 入試の地域枠は「手上げ方式」を撤廃し「別枠方式」に統一へ

――厚生労働省
医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 
厚生労働省は10月24日、「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」で、今後の医師偏在対策は2036年の医師数をベースとして検討する方針を打ち出した。医学部入試の地域枠については、入試後に選抜する「手上げ方式」を撤廃し、「別枠方式」に統一することとなった。

「医師需給分科会」では、医師数が地域や診療科によって偏っている現状を解消するための方策を検討している。そのために行っているのが「医師偏在指標」の算出。複数の市町村から成る「二次医療圏」と基本的に都道府県単位となっている「三次医療圏」ごとに医師の偏在状況を客観的に示すため、地域ごとの医療ニーズや人口構成、医師の性年齢構成などを踏まえて国が算定式を提示している。

医師の数は、当然のことながら医学部の定員とリンクしている。医師不足や偏在化が問題となった2007年に「緊急医師確保対策」を制定し、各都道府県で5人ずつ定員を増やした。2009年度以降は毎年臨時の定員増が行われてきたため、医師数は急増すると見られており、2028年度には医師需給が均衡するとの推計結果が4月に公表されている。

そのため、医師偏在指標の見直しが必要となっており、定員数が変わるタイミングである2022年度以降の医学部定員について検討するには、地域偏在を解消するため設けられた「地域枠」の設定がカギを握ることになる。2022年度以降に地域枠で入学した「地域枠」の効果が出始めるのは2028年度以降。「地域枠」の義務年限は9年間である場合が多いため、そこを設定ポイントとすると、「地域枠」医師で満たされるのが2036年度以降という計算だ。そこで、2036年時点の「必要医師数」をベースに、各地域の医師需給推計とのギャップを解消していこうというわけである。

なお、「地域枠」については、「別枠方式」ではなく一般受験枠の合格者から千羽鶴「手上げ方式」を採用する医学部が存在していることが判明。2018年4月の募集状況では、地域枠1197名のうち474名が該当している。一方で、「手上げ方式」は奨学金貸与実績が60%(別枠方式は89%)、義務年限終了まで履行した人は82%(別枠方式は93%)しかいないこともわかった。厚労省は、離脱率が高いのは「地域枠の趣旨にも合致しない」と指摘しており、都道府県知事から大学に対して「別枠方式による地域枠」を要請することにすることを提案し、了承された。医学部入試をめぐっては不正が次々に明らかになっていることもあり、国や自治体側もこれまでになく強気で臨む姿勢を示すものと思われる。

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