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医療経営情報(2018年9月27日号)

2018/10/15

◆かかりつけ医以外の受診に定額負担を 財務省提言        高額医療・医薬品を保険適用外にすることも求める 

――財務省 財政制度等審議会財政制度分科会
財務省は10月9日の財政制度等審議会財政制度分科会で、社会保障についての改革案を示した。医療分野に関しては、かかりつけ医以外を受診した場合、通常の自己負担に加えて定額負担を設けることや、「高度・高額な医療技術や医薬品」を保険適用外とすることも提言している。

かかりつけ医以外の受診に定額負担を導入するのは、かかりつけ医への誘導を促進するのが狙い。また、諸外国と比較すると日本の外来受診頻度は高いため、「限られた医療資源の中で医療保険制度を維持する」ため、一定の追加負担が必要だとしている。受診1回あたりの保険点数が500点未満と少額なのが約4割を占めていることも、定額負担を求める理由のひとつだ。1回1ユーロとなっているフランスの受診時定額負担制度をモデルと考えているため、実際に導入が決まれば100円台前半の金額からスタートすることになるだろう。

ただし、本当に導入が決定するかは未知数。なぜならば、財務省はこれまでも再三にわたって受診時定額負担の必要性を訴えているものの、厚生労働省からその都度却下されているからだ。とりわけ、診療側である日本医師会は強く反対してきており、今回も同様に反発することは間違いない。少額医療を軽視すれば重度化を助長するとの意見も根強いため、今回も同様に却下される可能性が高い。

むしろ、医療費削減を進めるための“駆け引き”として、同じ提言を持ち出しているきらいもあるのではないか。財務省は、医療費・介護費と雇用者報酬の推移を並べたグラフを提示したうえで「医療費・介護費の伸びを放置すれば、今後も保険料負担の増加は免れず、雇用者の実質賃金の伸びは抑制される」と断言。さらに、「増大し続ける医療費・介護費を予防医療によって抑制することはほぼ不可能」「予防医療は医療費を削減するのではなく、むしろ増加させる」との学者の意見を引き、これまで社会保障費抑制のために予防医療を促進すべきとしてきた政府方針を覆すような主張すら展開している。これらの提言が的を射ているかは別として、社会保障費を本気で抑制しようという財務省の姿勢を鮮明に示したことだけは間違いない。「2025年問題」を目前に控え、次期診療報酬改定をめぐる折衝は従来以上に厳しいものとなりそうだ。

◆糖尿病・高齢者虚弱・認知症予防のため自治体のインセンティブ強化へ
来年度の社会保障費の自然増は5,000億円以下に抑えるべきとの提言も

――未来投資会議
経済財政諮問会議
政府は10月5日、第4次安倍改造内閣発足後初となる未来投資会議を開催し、成長戦略の方向性を示した。「全世代型社会保障」を安倍内閣の最大のチャレンジと位置づけ、糖尿病・高齢者虚弱・認知症の予防に取り組むとともに、自治体など保険者へのインセンティブ措置を強化する方針を明らかにしている。同日に開催された経済財政諮問会議では、未来投資会議で示された内容を受け、年末までに中間とりまとめを行い、来年夏までに今後3年間の工程表を含めた実行計画をまとめることが確認されている。

経済財政諮問会議では、民間議員から来年度の社会保障費の自然増を5,000億円以下に抑制するべきとの提言も出された。この根拠となるのが、65歳以上の人口増加ペース。国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、65歳以上人口増加率は2016年度が2.1%、2017年度が1.7%と緩やかになってきている。2018年度は1.3%、そして2019年度は0.9%となる見込みであるため、「経済・物価動向を踏まえる必要がある」と前置きしつつ、「これまで以上の改革努力」を行うことで社会保障費の自然増を抑えられると主張。「全世代の安心を確保していくためにも、抑えるべきところは抑えるという取り組みが重要」と念押しもしており、来年度予算編成でタイトな折衝が行われることは間違いないだろう。

糖尿病予防に関しては、特定健診実施率の向上を推進するべきと提言。40~50歳代の実施率が特に低いことを受け、現役世代の受診率を上げるためにインセンティブを取り入れるべきだとした。具体例としてポイント制の導入を挙げている。別の民間議員は、健診を受けない加入者の保険料引き上げも検討すべきだとした。

65歳以上の患者数が2040年に800万人を超えると推計されている認知症については、「かなり深刻な状態」と言及し、「官民を挙げて取り組むべき重点プロジェクト」だと強調。民間資金を受け入れる仕組みを具体化すべきだとしている。

◆75歳以上の自己負担引き上げ、医療保険部会で本格議論開始       診療側は反発も、支払側は「限界」と早急な結論求める

――厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会
 10月10日、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会が開かれ、後期高齢者(75歳以上)の自己負担引き上げについて議論を展開。診療側委員は反発するも、支払側委員は現役世代の負担が限界に近づいているとして、早急に2割へと引き上げるべきだと求めた。

 現在、75歳以上となる後期高齢者の医療費自己負担割合は原則1割(現役並み所得者は3割)。6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018(骨太方針2018)」で原則2割へと引き上げることを検討することが明記され、財務省財政制度等審議会も同様の提言を行っている。

この背景にあるのは、いわゆる「2025年問題」だ。第一次ベビーブーマーである団塊の世代が2025年に全員75歳以上となるため、前年は2割負担だった当該層が一気に1割負担となってしまう。当然、現役世代の保険料負担が増すため、制度自体が崩壊することにもなりかねない。すでに、支払側委員が主張したように、現役世代の負担はかなり重くなっており、健康保険組合連合会(健保連)が9月25日に発表した決算見込みによれば、高齢者医療への拠出金負担割合が50%を超えている組合が35.2%を占めている。健保連は「2025年には全体の4分の1の組合が解散危機を迎える」との見方も示しており、すでに大規模な組合が相次いで解散。現役世代が高齢者を支えるという構図自体が成り立たなくなりつつある。政府や財務省が相次いで負担割合引き上げを求めている現状を踏まえれば、来年度はともかく近い将来の引き上げは避けられないだろう。ちなみに、70~74歳の前期高齢者は1割から2割へと段階的に引き上げられてきており、今年度中に完了。新たに70歳になった人も2割負担となる。

一方、診療側委員が主張するように、年金のみで生活する高齢者も多いため、負担割合を引き上げることはセーフティネットの崩壊につながる可能性もある。そうした部分も含め、厚労省が今後どのような舵取りをしていくのか注視していきたい

◆厚労省、「医療のかかり方ホームページ」開設へ 適切な受診の推進で医療機関の負担緩和につなげる狙いも

――厚生労働省
上手な医療のかかり方を広めるための懇談会
 厚生労働省は10月5日、「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」の第1回会合を開催。「医療のかかり方ホームページ」(仮称)を開設するなど、適切な受診を推進するための施策を検討していく。同懇談会の座長は、東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏。構成員には、アーティストのデーモン閣下や株式会社ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏、元電通で「さとなお」の通称でも知られる株式会社ツナグ代表の佐藤尚之氏など、幅広いメンバーを集めている。

 厚労省がこの懇談会を立ち上げたのは、安心して必要な医療を受けられる環境を整えるのが目的。現在、医師の働き方改革や医師確保対策といった医療提供者側の取り組みが進められているものの、患者側に「医療のかかり方に関する理解」が足りないと判断した。確かに、受診の必要性や医療機関を適切に見極める、いわば“医療リテラシー”を醸成できれば、大病院への患者集中といった事態は起きにくくなるだろう。結果的に、医療従事者の過度な負担を緩和することにもつながり、医療の質や安全性の確保が期待できるというわけだ。さらに一歩進めて考えれば、必要のない受診を減らすことは効率的な医療の実現に近づくため、医療費の適正化を図ることもできる。

 具体的な取り組みとしては、まず医療のかかり方に関する情報を収集・整理し、周知すべきコンテンツを整える。その成果を「医療のかかり方ホームページ」という形で示すとともに、わかりやすいリーフレットの作成も行う。また、効果的な広報のあり方も検討。ターゲットをセグメンテーションし、属性に応じたメッセージや広報ツール・手法を選択するという。さらに、検討会には総務省消防庁の参加も求める予定で、適切な救急医療の受け方についても周知を図るものと思われる。今後、懇談会は月1回のペースで開催。年末までに中間とりまとめを行い、「医師の働き方改革に関する検討会」にも報告する意向で、来年以降も普及啓発活動について議論を深めていきたいとしている。

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