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介護情報(2018年9月28日号)

2018/10/15

◆厚労省、介護の外国人技能実習生の学習費用補助制度を新設する方針       日本語や介護の専門知識などの学習を支援 概算要求で13億円計上 

―厚生労働省
厚生労働省は、介護職種の外国人技能実習生を対象にした学習費用補助制度を新設する方針を固めた。「外国人介護人材受入環境整備事業」を創設し、日本語や介護の専門知識といった学習を支援する。来年度の概算要求において約13億円を計上しており、本腰を入れて外国人材受け入れの拡大を目指す。

介護分野での外国人材受け入れは、従来EPA(経済連携協定)によるもののみだった。介護施設や病院で就労・研修し、4年目に介護福祉士国家試験を受験する「就労コース」と、介護福祉士養成施設で2年以上学ぶ「就学コース」があり、2008年度からインドネシア、2009年度からフィリピン、2014年度からベトナムと連携先を増やしてきた。しかし、受け入れ人数は累計で約4,000名程度であり、深刻化する介護人材不足を補うレベルではなかった。

 危機感をつのらせた政府は、昨年9月に在留資格「介護」を創設したほか、昨年11月からは技能実習制度でも介護職種を追加。EPAルートの3カ国以外からも外国人材を受け入れられるようルールを整備してきた。とりわけ技能実習制度は、EPAルートや在留資格「介護」と異なり、介護福祉士資格取得を目的とせず、最大5年間の実習を経て当該人材の本国に技能を移転することを目的としている。いわば、即戦力を期待しての人材確保策というのが実質的なところだ。

しかし、介護は利用者とのコミュニケーションが不可欠な業務だ。技能実習制度で初となる対人サービスということもあり、技能実習制度本体の要件以外に、介護固有の要件を設定。入国段階で日本語能力試験の「N4」レベル(基本的な日本語を理解できる)を有していることを求め、2年目には「N3」レベル(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる)に達することを要件とした。それまでに日本語学習をしていない外国人にしてみれば厳しい要件であるため、より多くの外国人材を受け入れるため、学習費用の補助に踏み切ったというわけだ。

補助の対象としては、「日本語講師の受入施設への派遣費用」「日本語学校への通学費用」「学習支援に必要な備品購入費用」「日本語能力等の試験に必要な費用(教材、受験費用等)」を想定。なお、EPAルートでの受入支援事業の概算要求額が約8,800万円と10分の1以下であることからも、政府が技能実習制度で介護人材を呼び込むことに大きな力を入れていることがわかる。実習生を受け入れるには「外国人技能実習機構」に実習計画を申請して認定を受ける必要があるが、政府の本気度が窺えるだけに、現状様子見をしている事業所も前向きな検討を開始する可能性が高まってきたのではないか。

◆レセプト請求 2021年4月から「個人単位被保険者番号」に切り替え
介護DBと医療・保健データベースとの連結解析を踏まえて

―厚生労働省
医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議
厚生労働省は9月27日、「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」で、医療保険のレセプト請求を個人単位被保険者番号に切り替える方針を明らかにした。2020年度から保険証の切り替えを開始し、2021年4月から本格稼働させる。介護保険総合データベース(介護DB)と、医療保険および保健事業のデータベースであるレセプト情報・特定健診等データベース(NDB)の連結解析によって実現する「健康・医療・介護のビッグデータ」を効率的に活用するのが目的だ。

「健康・医療・介護のビッグデータ」は、社会保障給付費を効率化していくための施策。国民の健康管理および、自立支援などの効果が科学的に裏付けられた介護のために必要なデータを収集・分析する。

しかし、介護DBは介護保険法、NDBは高齢者医療確保法によって規定されているため、連結解析を実現するために解決するべき課題がいくつかある。まずは法的な部分だ。現状のままだと利活用ができないため、データの収集・利用目的に関する関連法を整備する方針がすでに固まっている。

また、技術的にも問題がある。現状は各データベースが保有しているハッシュIDを用いているが、連結するとそれを使うことはできない。同一の情報から同一のアルゴリズムで生成したハッシュIDを用いる必要があるため、新たな識別子を発行する案も出されていた。しかし、新たな識別子を発行・管理するシステムを構築しなければならず、現場である医療機関や介護施設でその識別子を管理できるようシステム改修を行う必要もある。莫大なコストがかかるうえに、セキュリティチェックには大規模テストも欠かせない。

そこで浮上してきたのが、被保険者番号を活用する案だ。既存のインフラとシステムをそのまま使えるため、早急に連結解析データの収集・分析を開始できる。ただし、現行の被保険者番号は世帯単位となっている。「国民の健康管理」「科学的な介護」を実現するためには、個人単位にしなければ意味がないため、マイナンバーと紐づける形で個人単位の被保険者番号を発行。マイナポータル(情報提供等記録開示システム)を活用することで、本人に特定健診データを提供することも可能となる。地域包括ケアシステムをより強固に構築するうえでも役立つことは明白だといえよう。

◆健保組合の介護納付金、8,218億円 861億円の大幅増加        総報酬割導入の影響 介護保険料率引き上げと準備金取り崩しで対応

―健康保険組合連合会
 健康保険組合連合会(健保連)は9月25日、「平成29年度健保組合決算見込の概要」を公表。介護納付金は8,218億円で、前年度比861億円増と大幅な増加となったことがわかった。増加率は11.7%。1人当たりの金額は9万2,808円で前年度比7,291増(+8.53%)。健保連は、増加分に対して介護保険料率を引き上げたほか、準備金を取り崩したと説明している。

平均介護保険料率(今年2月末)は1.465%で、前年度比0.044ポイント増加。また、介護保険料率を引き上げた組合は428組合あったことも明らかとなっている。今回公表されたデータは、今年3月末時点の1,394組合(被保険者数1,651万人)を対象としたものであるため、全体の30.7%にあたる組合が介護保険料を引き上げた計算となる。平均引き上げ料率は0.184%だった。逆に介護保険料率を引き下げたのは66組合で、全体の4.7%を占めており、平均引き下げ料率は0.212%。ちなみに、日本最大の保険者である全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は1.65%。これを上回ったのは306組合(全体の22.0%)あった。ちなみに、準備金を繰り入れた組合は全体の49.3%にあたる687組合。繰入額は332億円となり、前年度比で192億円とこちらも大幅な増加となった。増加率は137.14%。

 今回健保連の介護納付金が大幅に増加したのは、昨年8月に導入された総報酬割の影響がある。総報酬割は、各保険者の総報酬額に応じて介護保険料を負担する仕組み。要するに、財政力が豊かな保険者がより多く支払いを求められるため、大企業の社員やその家族が加入している健保連が煽りを食った格好だ。

 介護納付金だけではなく、高齢化が進んだこともあり、高齢者医療への拠出金の負担がかなり重くなっている実情も明らかとなっている。経常黒字は4割減となる1,346億円で、拠出金負担割合が50%を超えているのは全体の35.2%を占める490組合。赤字組合は39組合増加し、580組合となった。全体の4割以上が赤字という状況となる。

 健保連はこうした状況を受け、「現役世代の負担は限界に達している」とし、国民皆保険制度を維持するためには早急に負担構造改革に取り組むべきだと主張。実際、加入者数約51万人の人材派遣健保組合や同約16万4,000人の日生協健保組合が相次いで来年4月での解散を決定しているほか、昨年4月以降12組合がすでに解散。健保連は昨年、「2025年には全体の4分の1の組合が解散危機を迎える」と読み取れる試算を発表している。加藤勝信厚生労働相は9月25日の閣議後会見で財政支援を強化する考えを示したが、健保連が主張する通り、構造的な見直しが必要なフェーズを迎えているのではないか。

◆「高齢者は75歳以上に」長野市・松本市が共同提言 65歳以上の雇用促進を視野に 圏域での介護サービス提供の後押しにも

――長野市 松本市
 長野県の長野市と松本市は9月21日、「人生100年時代を見据えた新しい高齢者の定義についての共同提言」を発表。「75歳以上を『高齢者』と呼びましょう」と呼びかけるもので、現在65歳以上となっている高齢者の定義の見直しを促した。社会保障制度などの高齢者施策は変更しない。

 65歳以上を高齢者と定義するようになったのは、1956年の国際連合による報告書がきっかけだといわれている。当時は日本人の平均寿命も65歳前後であったため妥当なラインだったが、60年以上が経過した現在、平均寿命は男女ともに80歳を超えており、現状を反映した表現とは言い難い。共同提言では「長野県の平均寿命や高齢者就業率は全国トップレベル」とし、人生100年時代のモデルとなるべき立場にあるとの自負を明らかにしている。長野市は、来年度予算に65歳以上の求職者と企業をマッチングする事業を盛り込むことにしており、「高齢者」の雇用促進を視野に入れた提言であることが窺える。

 また、今回の提言が2つの市によって行われたことも興味深い点だ。総務省の自治体戦略2040構想研究会は、「医療・介護サービスの提供を現在の都道府県および市区町村単位から『圏域』単位にするべき」という提言を7月に行っており、自治体単体での医療・介護提供が今後困難になることを示唆。とりわけ介護の受け皿となる介護施設・事業所や、担い手となる介護人材は不足傾向にあり、複数の自治体が連携せざるを得ないフェーズに突入しつつあるともいえる。実際、今回の共同提言は両市の職員が連携して内容を検討。今後は県内の他市町村の賛同を募ったうえで県への提言も視野に入れているという。まさに「圏域」での医療・介護行政のロールモデルとなりうる取り組みであり、他の都道府県にも波及していく可能性があるといえよう。

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