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医療経営情報(2018年9月6日号)

◆2016年度の社会保障給付費は116兆9,027億円 前年度比1.3%増     子育て支援の拡充等が影響 医療は0.6%増、介護は2.1%増と伸び率低め 

―国立社会保障・人口問題研究所
国立社会保障・人口問題研究所は8月31日、2016年度「社会保障費用統計」を発表。社会保障給付費は116兆9,027億円で過去最高を更新した。2015年度に比べて1兆5,020億円増で、伸び率は1.3%。1人あたりの社会保障給付費は92万1,000円とこれも過去最高となった。

社会保障給付費の中でもっとも多くを占めたのは「年金」。54兆3,770億円で、全体の46.5%を占めている。「医療」は全体の32.8%となる38兆3,965億円。「福祉その他」は20.6%で24兆1,291億円となっている。

全体に占める「医療」の割合は2015年度と変わらないが、伸び率はここ5年間でもっとも低い0.6%。2015年度の医療の伸び率は3.8%だったため、高齢化の影響で増加傾向は変わらないものの、かなり抑えられた結果となった。

その要因として考えられるのは、診療報酬改定だろう。2016年度の診療報酬改定では、診療報酬本体を0.49%引き上げたものの、薬価の通常改定と市場拡大再算定で合計1.52%を引き下げ、全体では0.84%のマイナス改定だった。また、改定率には反映されていないものの、C型肝炎の新薬「ソバルディ」と「ハーボニー」や、ジェネリック医薬品の薬価引き下げなど行われたため、実質的には1.43%の引き下げとなり、その前回の2014年度を上回るマイナス改定となっていた。

なお、もっとも伸び率が高かったのは「福祉その他」で4.2%増。子育て支援を拡充したことや、熊本地震に伴う災害救助費用などが要因とみられる。ただし、ここに含まれる「介護対策」の伸び率は過去最低となる2.1%。2015年度の介護報酬改定での引き下げが影響していることは間違いない。

これらの数字から見えてくるのは、医療費と介護費に対するタイトな政策。高齢化が進むことによる自然増は避けられないものの、可能な限り引き締めを行うことで伸び率を抑えようとした“成果”が出ている。一方で、高齢者を支える現役世代への支援を強化し、少子化対策を進めようとする姿勢が、「福祉その他」の伸びに表れているといえよう。今後も、こうした政策の方向性は変わらないことが予想される。

◆厚厚労省、約70年ぶりに「宿日直許可基準」を見直す方針
時間外労働の上限時間数は宿日直の実態を踏まえて設定

―厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会
厚生労働省は9月3日の「医師の働き方改革に関する検討会」で、約70年ぶりに医師・看護師の「宿日直許可基準」を見直す方針を明らかにした。医師の働き方改革で焦点となっている時間外労働の上限時間数は、宿日直の実態を踏まえて設定する。

6月に成立した働き方改革関連法案は、時間外労働の罰則付き上限規制を導入しているのが大きな特徴。医師も対象となるが、応召義務があることを理由に、同法の施行日から5年後をめどに適用されることとなっている。「医師の働き方改革に関する検討会」では、今年度中に上限時間数の設定をはじめ、タスク・シフティングの効率化や勤務環境改善の内容、応召義務のあり方などを整理し、方向性を定めていく予定だ。

なかでも焦点となってくるのが、時間外労働の上限数の設定。前述したとおり、医師には応召義務があるため、救急対応の有無などにより、宿日直での実質的な労働時間にどうしてもバラツキが生じてしまう。宿日直は時間外労働の対象外だが、労働密度がまばらでないとされれば宿日直として認められないため、時間外労働の時間が増えすぎてしまうことにもなりかねない。

そこで、厚労省が俎上に載せたのが「医師・看護師等の宿日直許可の基準」だ。現在の基準は1949年に定められたもので、約70年間変わっていない。当然、現代社会の実態に合っていない部分もあるため見直しを図ったうえで、上限数設定の議論を進めようというわけだ。

具体的な見直しのポイントとしては、「特殊の措置を必要としない軽度の、又は短時間の業務に限る」に該当する業務を洗い出す方針。厚労省は「病棟当直における要注意患者の状態変動への対応」や、「休日・夜間の少数の軽症外来患者への対応」を例に挙げており、今後の検討会の議論でこれらの項目に追加修正されるかどうかが注目される。

また、医師の場合は時間外労働の中で「自己研鑽」にあたる時間があることも指摘。たとえば診療ガイドラインや新たな治療法、新薬についての勉強や学会参加、業務時間外に任意で行う執筆活動などを挙げ、時間外労働と切り分けたい方針も示している。

◆入院患者の3割が「自宅での治療・療養を希望」 受療行動調査        満足度のトップは「医師以外の病院スタッフの対応」

―厚生労働省
 厚生労働省は9月4日、「平成29年受療行動調査(概数)」の結果を公表。入院患者の30.2%が、今後の治療・療養について「自宅から病院や診療所に通院しながら、治療・療養したい」と回答していることがわかった。前回の2014年調査に比べて4.9ポイント上昇している。

 少子高齢化への対策として、また、入院医療費の抑制を図るため、政府は在宅医療の推進を図っている。2012年度の診療報酬および介護報酬の同時改定で、在宅医療・介護を重点的に評価したことを皮切りに、その後の改定でも報酬を手厚くしてきた。今回の調査結果は、これらの取り組みが、在宅医療への認知度を上昇させた表れともいえよう。

 一方で、「完治するまでこの病院に入院していたい」との回答が依然としてもっとも多いのも見逃せない。とりわけ、療養病床を有する病院の患者は49.7%と半数近くがこのまま入院し続けることを希望しており、逆に自宅から通院したい患者は23.6%ともっとも少ない。この結果からは、自宅に戻ることで家族に負担をかけたくないといった心理が強く働いていることを窺わせる。厚労省の推計では、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に在宅医療受診者が100万人を超えるとされているが、それぞれの症状によって意識に差異があることを踏まえたケアが必要となってくるのではないか。

また、病院に対する満足度の調査項目で、外来の「満足」の割合がもっとも高かったのは「医師以外の病院スタッフの対応」で58.8%。次いで「医師との対話」(57.0%)、「医師による診療・治療内容」(55.3%)、「診察時のプライバシー保護の対応」(52.0%)となっており、医療機関側とのコミュニケーションが患者の満足度を左右することが浮き彫りとなっている。

「不満」の割合が高かったのは「診察までの待ち時間」で26.3%。調査対象が有床病院であり、診療所が含まれていないことも影響していると思われるが、人口減少社会へと向かっていることも考慮すれば、待ち時間対策の有無が経営にも影響してくることが予想される。

 3年ごとに実施する受療行動調査は、医療を受けたときの状況や満足度について調べるのが目的。医療行政の基礎資料として活用されている。今回の調査は、2017年10月に全国の一般病院490施設を利用する約18万7,000人の患者に対して実施。有効回答者数は約14万6,000人だった。

◆臨床研修医、大都市部以外の採用が過去最大に もっとも増えたのは新潟県で41,1%増

――厚生労働省
 厚生労働省は9月4日、今年度の臨床研修医の採用実績を公表。大都市部がある6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)を除く道県での採用実績が58.3%と過去最大をマークしたことが明らかとなった。もっとも増えたのは新潟県で、昨年度の90人から41.1%増となる127人だった。

 今年度の臨床研修医の採用人数は8,996人。これは、新たな臨床研修制度が生まれた2004年度以降で最大の人数となる。制度創設前の2003年度は、大都市部がある6都府県の採用割合が51.3%だったが、緩やかにその割合は減少してきた。昨年度はその他の道県が58.2%だったため、今年度は0.1ポイント増。わずかに過去最大を更新した形だ。

 対前年度比で採用人数が増えた上位5県は、新潟、愛媛、和歌山、静岡、福島。愛媛は71人から94人(32.4%増)、和歌山は85人から109人(28.2%増)、静岡は199人から249人(25.1%増)、福島は94人から117人(24.5%増)となっている。

 採用先は臨床研修病院が増加傾向にある。昨年度の5,057人に対し、今年度は5,498人と441人増えており、全体の6割以上を占めた。全体の採用人数が押し上げられたことから、大学病院の採用人数も増えているが、66人増と微増レベルにとどまっている。

 医師数の地域間格差を解消するため、臨床研修制度も随時見直しが行われてきた。2004年度に現行の制度が創設されたときも、研修医が都市部に集中していることが指摘されており、2010年度には研修医の募集定員を見直して都道府県別の上限設定を行っている。今年4月からスタートした新専門医制度でも、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)については、過去5年間の採用実績を超えないよう上限が定められた。6都府県以外の採用実績が、1.4%だった2008年度から増加を続けていることから、これらの施策がわずかながらも着実な効果を発揮してきたといえる。そのため、今後も地域の人口構造に応じて採用人数の調整が行われていくことになるだろう。

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