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介護経営情報(2018年8月31日号)

2018/9/6

◆特養の6割以上が「人手不足」 うち1割は受け入れを制限 新卒採用者数は4年連続で減少 約6割は「内定者なし」

――独立行政法人福祉医療機構
  福祉医療機構は、7月27日に「平成29年度『介護人材』に関するアンケート調査の結果について」と題したレポートを公表。今年1月の時点で、特別養護老人ホーム(特養)の64.3%が「要員不足」と回答していることが明らかとなった。前回の調査で「要員不足」と回答していた施設は46.9%だったため、17.4ポイントも上昇したこととなる。介護業界は全体的に人材不足が深刻化しているが、特養も例外ではないことが顕在化した形だ。

 「要員不足」の施設では、平均3.79人が不足していると回答。約1割は利用者の受け入れ制限も行っており、利用率は平均85.3%で、1施設あたりの空床数は11.1%。また、受け入れ制限を実施している施設では6.25人不足しており、とりわけ夜勤や入浴介助などの業務で不足感を募らせている。「夜勤に入れないパート職員が多く、数の少ない正規職員に夜勤業務の負担が集中する」との声が多いものの、シフトの変更・調整で対応するしかない状況が浮き彫りとなった。

 では、採用状況はどうか。今年の新卒採用に関しては、56.8%が「内定者なし」と回答。平均新卒採用内定者数は1.12人で、2015年度調査の1.56人から4年連続で減少。少なくとも新卒採用に期待できる状況となっている。

 政府は来年4月に新たな在留資格制度を創設し、外国人材受け入れを拡大する方針を打ち出しているが、現在外国人材を雇用している施設は16.4%だった。雇用している施設の平均外国人職員数は2.61人。外国人材受け入れを「検討していない」と回答した施設は半数以上にのぼったが、一方で25.6%の施設は「技能実習生の受け入れを検討している」と回答しており、関心はあるものの状況を様子見している心理が透けて見える。

 アンケート調査は、今年2月11日から3月11日の間にウェブで行われた。対象となった特養3,304施設のうち、有効回答数は628だった。

◆厚労省、介護現場のセクハラ・パワハラの実態を調査 今年度中に事業者向けの対策マニュアルを作成

――厚生労働省
 厚生労働省は8月2日、介護職員が利用者やその家族から受けているセクシャルハラスメントやパワーハラスメント(セクハラ・パワハラ)の実態調査を開始することを明らかにした。介護現場でのハラスメント実態調査は初めての実施となる。調査は早急に行い、今年度中に事業者向けの対策マニュアルを作成する方針だ。

 今回、厚労省が実態調査に乗り出した背景には、介護職員で構成する労働組合「日本介護クラフトユニオン」が6月に発表した調査結果が影響している。それによれば、介護サービスの利用者やその家族からセクハラ・パワハラを受けたことがあると回答した人が、組合員の7割以上にものぼった。とりわけ、密室で2人きりになりやすい訪問介護・訪問看護などの訪問系サービスでその傾向が強く、厚労省の実態調査もそこを主要対象として行われる見込みだ。

 介護現場でのセクハラ・パワハラが深刻なのは、上司や同僚に相談しても解決につながっていない点にもある。「日本介護クラフトユニオン」の調査結果によれば、被害者の8割近くが相談したものの、約半数が「状況は変わらなかった」と回答。裏を返せば、セクハラ・パワハラを受けても泣き寝入りするしかないのが、今の介護現場の状況であることを示している。

 訪問系サービスの介護職員は女性の比率が高いため、男性利用者の介護を受け持つことになりやすい。さらに、厚労省の介護サービス運用基準では、正当な利用なく事業者がサービス提供を拒むことを禁じており、セクハラ・パワハラ常習の利用者であっても、訪問せざるを得ないのも問題だ。

 それでなくても、介護業界の人材不足は深刻化している。外国人材の受け入れ拡大のため、来年4月に新たな在留資格制度を設ける方針だが、外国人材へのセクハラ・パワハラが横行することになれば、国際問題にも発展しかねない。複数で訪問介護ができるように補助金を出すことを計画している自治体もあるが、自治体によって財政状況は大きく異なる。利用者側の認識を改めさせるためにも、国が舵取り役を担って制度面でのサポートを行うとともに、啓蒙を図っていく必要があるだろう。

◆介護福祉士の資格取得支援が手厚く 実務者研修の費用補助を拡大 雇用保険の教育訓練給付制度見直しで費用の7割支給へ

――厚生労働省 労働政策審議会人材開発分科会
 厚生労働省は、7月30日の労働政策審議会人材開発分科会で、介護福祉士の資格取得支援を手厚くする方針を明らかにした。介護福祉士の資格を取得するため受けなければならない「実務者研修」の費用補助を拡大する。来年4月から適用する方針だ。

 財源は雇用保険を充てる。教育訓練給付制度を見直し、現在2割となっている「実務者研修」の助成額割合を7割まで引き上げ、年間上限は56万円となる。

 教育訓練給付制度とは、能力開発への取り組みや中長期的なキャリア形成を支援するため「教育訓練」の受講費の一部を支給する仕組み。雇用の安定と再就職促進を目的とした雇用保険の給付制度だ。雇用保険料を3年以上納めた人が対象で、給付金はハローワークで受け取ることができる。

 介護福祉士は、2016年度の試験で受験者数が激減。最大450時間の受講が必要な「実務者研修」の修了が受験資格として義務付けられたことが要因もいわれているが、厚労省の調査によれば、受講費用を負担に考えている人が多数を占めていることがわかっている。「実務者研修」の費用は数万円から15万円程度と実施機関によって差があるが、給与水準が低い介護職員にとっては、決して簡単に出せる額ではないだろう。事業所が補助できる金額にも限りがある。

 また、人材不足が深刻化している介護業界だが、サービスの質向上も大きな課題となっている。介護のスペシャリストとして認められる国家資格である介護福祉士を増やすことは、サービス向上に欠かせない施策であり、キャリアアップを目指す介護職員のモチベーションをアップさせることにもつなげようというわけだ。

政府は、来年10月に予定している消費税増税分の使い道として、勤続10年以上という条件付きながら、介護福祉士の給与を月額平均8万円引き上げる方針も明らかにしている。高いスキルに見合う処遇が受けられる存在に介護福祉士の地位を押し上げるとともに、そこを目指しやすくする環境を整えようとしているといえよう。

◆介護医療院、6月末時点でわずか21施設 まだ必要な条例が制定されていない自治体も

――厚生労働省
 厚生労働省は、8月2日に「介護医療院の開設状況等(平成30年6月末)」を公表。まだ21施設しか解説されていないことが明らかとなった。新設された施設はなく、すべて転換によるもので、開設に必要な条例が制定されていない自治体も9つあることが明らかとなっている。

 介護医療院は、長期的な医療と介護を必要とする高齢者を対象とした施設。日常的な医学管理と看取り、ターミナルケアといった医療機能と、生活施設としての機能を兼ね備えている。昨年の介護保険法改正により創設が決定し、今年4月から開設できるようになった。

 介護医療院が創設されることになったきっかけは、2006年までさかのぼる。この年は診療報酬と介護報酬が同時改定されたタイミングで、医療保険を財源とする医療療養病床と介護保険を財源とする介護療養病床の実態調査が行われた。その結果、医療の必要性が高い患者と低い患者が同程度混在していることが判明。医療保険と介護保険の役割分担を明確化するため、介護療養病床を2011年度で廃止することが決まった。

 従来型の老人保健施設や特別養護老人ホームに加え、介護療養型老人保健施設を創設して転換を促してきたが、思うように進まなかった。そこで、転換期限を延長する一方で、療養病床のあり方を見直した。約4割が死亡退院することや、医療必要度が高い人が入院していること、特養や老健よりも高い要介護度を有している人が多いことなどから、医療機能を備えた生活施設として、介護医療院が創設されることとなった。

 しかし、そもそも介護療養病床にも医師・看護職員は配置されていた(医師は3名以上、48対1。看護職員は6対1)。それに生活施設としての機能をプラスしなければならないため、多額の設備投資も必要となる。依然として介護療養病床を存続している医療機関も多いため、今後スムーズに転換が進むかどうかは未知数だ。

また、保険者である自治体としても、介護医療院への転換が進むと介護費が増えて保険料が上がってしまうため、二の足を踏まざるを得ないだろう。そのため、転換に一定の制限をかけている自治体も多い。医療保険と介護保険をしっかり切り分けることは確かに必要だが、このままでは介護療養病床の二の舞となってしまう可能性が高いのではないか。

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