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医療経営情報(2018年7月26日号)

2018/8/14

◆厚労省、2014年度の消費税補填率で集計ミス 病院は約20%のマイナス 
全体でも補填不足が明らかに 「診療報酬での補填に限界」と日医会長

―厚生労働省 医療機関等における消費税負担に関する分科会
厚生労働省は、7月25日に開かれた「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で、前回消費税の増税が行われた2014年度の「控除対象外消費税の診療報酬による補てん状況」に誤りがあったことを明らかにした。2015年に公表されたデータによれば、病院の補填率は102.36%であり、診療報酬による充当がなされていた形だったが、再調査の結果によれば82.9%であり、20%近いマイナス値だった。診療所、歯科診療所、薬局まで含めた全体の補填率も、当時公表されていた102.07%ではなく92.5%だったことが判明している。

さらに、今回発表された2016年度の調査結果によれば、一般診療所こそ111.2%となっているが、病院85.0%、歯科診療所92.3%、保険薬局88.3%といずれもマイナス。病院の内訳を見ていくと、精神科病院のみは129.0%と十分な補填がなされた形となっているが、一般病院は85.4%、こども病院は71.6%、そして特定機能病院に至っては約40%近いマイナス値となる61.7%となっている。

なぜこのように杜撰な集計ミスが明らかになったのか。厚労省によれば、2014年度調査におけるDPC病院の包括部分の補填状況の把握に不正確な点があったことが判明したため、再調査を行ったとしている。前回調査では、NDBデータによる入院日数に、非DPC病院の補填点数を乗じて推計していたものの、NDBデータ抽出の際に複数月にまたがる入院の入院日数についても各月に重複してデータを抽出していたという。そこで今回は、NDBデータではなくDPCデータを用いて抽出対象となった個々の医療機関について、2014年4月に消費税増税によって上乗せされた点数と係数による収入から直接算出している。勘ぐった見方をすれば、再調査の方法も含めて意図的にすら感じられてしまうが、いずれにしても消費税増税分が診療報酬によって補填される、というのは言葉だけのものに終わった4年間になってしまった。

当然のことながら、この公表に対して診療側委員は猛反発。とりわけ日本医師会関係者は強く憤っており、横倉会長は8月1日の定例記者会見で「大変な怒りを感じている」とコメント。補填のあり方についても、「診療報酬では限界がある」との見方を示しており、来年10月の再増税時にどのような補填の方法で決着するか、今後の推移に注目が集まる。

◆カルテの開示請求費用、「合理的な範囲内に」と警告
「医師の立ち会い必須」は不適切と明示

―厚生労働省医政局
厚生労働省医政局は、7月20日に各都道府県衛生主管部長あてに「診療情報の提供等に関する指針について(周知)」と題した通知を発出。患者がカルテ開示を求めた場合に徴収できる費用について、「合理的と認められる範囲内の額」に留めるべきだとした。

これは、昨年9月に公表された「医療機関における診療録の開示に係る実態調査」の結果が大きく影響している。この調査は「診療録の開示に要する費用」、つまりカルテコピー代として患者に請求する金額と、「診療録の開示の際の医師の立ち会いの有無」などを調べたもので、全国87の特定機能病院および大学病院を対象に行われた。それによれば、カルテコピー代として5,000円以上を請求している病院が16%も存在。3,000~3,999円も15%を占めており、3,000円以上請求している病院が3割以上にのぼっている実態が明らかとなっている(4,000~4,999円および1,000円~1,999円は0%、2,000~2,999円は2%、999円以下は67%)。

カルテの開示については、2003年に策定された「診療情報の提供等に関する指針の策定について」において、「実費を勘案して合理的と認められる範囲内の額としなければならない」とされている。コピー1枚で3,000円以上も徴収しようとするのは明らかに不当であり、改めて警告を鳴らした形となった。

一方で、開示費用を一律に定めることは明確に否定。個々の申し立てによってカルテコピーにまつわる費用が変動しうることをその理由として挙げているが、数枚コピーが増えるからといってそこまで費用が上下動するとは考えられず、疑問の残る通知となっている。

また、本来カルテの開示に医師の立ち会いは必要がないが、実態調査によれば「必須」としていた病院が5%あり、「求めがあれば応じる」としている病院は57%にものぼった。これに関しては、医師が立ち会うことで「患者が診療記録の開示を受ける機会を不当に制限するおそれがある」として、不適切であると断じている。

あとは、開示までの日数がかかっている現状には首を傾げざるを得ない。2週間程度が38%、3週間程度が37%、4週間程度が25%となっており、いずれにしても即決せず院内で十分に検討する時間を確保してから開示している状況が透けて見える。たとえデジタル管理をしていないとしても、カルテは患者名ですぐ検出できるようになっているはずであり、開示できるのであれば即実行するべきではないだろうか。

◆平均寿命、男性が81.09歳で女性が87.26歳と過去最長を更新 心疾患の死亡確率は男女ともすべての年齢で上昇

―厚生労働省
 厚生労働省政策統括官付人口動態・保健社会統計室は、7月20日に「平成29年簡易生命表の概況」を発表。平均寿命は男性が81.09歳と前年より0.11歳上回り、女性が87.26歳と0.13年上回った。いずれも過去最長を更新する結果。国・地域別で見ると、男性は順位を1つ落として3位になったが、女性は前年に引き続き世界2位をキープしている。

 0歳、65歳、75歳、90歳の死因別死亡確率を見ると、がん(悪性新生物)および脳血管疾患、肺炎は前年よりもすべての年齢で低下。この3つの死因による死亡確率は男性の0歳および65歳で5割を超えているが、女性ではすべての年齢で5割を下回っている。この結果が、平均寿命の押し上げを担っていると考えて間違いなさそうだ。

一方で、心疾患(高血圧性を除く)の死亡確率は、男女ともにすべての年齢で上昇。いわゆる三大死因の一角である心疾患対策が、健康寿命延伸のカギを握ることになる。心疾患のリスクを高める生活習慣病への対応が、今後より重視されることとなるだろう。

 また、「特定死因を除去した場合の平均余命の延び」、つまり「がんを克服すれば、どのくらい生きられるか」という推計も出されている。着目したいのが、「がん、心疾患および脳血管疾患」を克服した場合の推計だ。0歳で男性6.81年、女性5.61年、65歳で男性5.52年、女性4.50年、75歳で男性4.12年、女性3.69年、90歳で男性1.71年、女性1.89年となっており、後期高齢者となる75歳であっても、死因トップ3を克服すればある程度余命が延びるという結果となった。

 厚生労働省では、日本の生命表として「完全生命表」と「簡易生命表」の2種を作成・公表している。「完全生命表」は国勢調査による人口や人口動態統計による死亡数、出生数(いずれも確定数)をもとに5年ごとに作成しており、前回は昨年3月に公表された。「簡易生命表」は人口や人口動態統計による死亡数、出生数(概数)をもとに毎年作成、公表されている。

◆保健・医療・介護の連結ビッグデータには新たな識別子を採用せず 「被保険者番号」を用いて既存のシステムを有効に活用する方針

――厚生労働省 医療等分野情報連携基盤検討会
 厚生労働省は、7月26日の医療等分野情報連携基盤検討会で、保健・医療・介護の連結ビッグデータに新たな識別子(医療ID)を採用しないとした。被保険者番号を使うことで、医療機関を含め既存のインフラやシステムを有効に活用する方針だ。

 日本は世界に先駆けて超高齢社会に突入しているため、政府は質の高いヘルスケアサービスの提供を重要課題と位置づけている。そのため、個人の健診・診療・投薬情報を医療機関などの間で共有できる全国的な保健医療情報ネットワークや、健康・医療・介護のデータベースを個人ごとに連結・分析できるようにする仕組みの構築を急いでいる。そのため、新たな識別子を導入するかどうかが議論の対象となっていた。

しかし、新たな識別子を発行すると、発行・管理するためのシステム構築が不可欠だ。さらに、医療機関側でもその識別子を管理できるようシステム改修を行わなければならない。工数もコストもかかるうえ、万全なセキュリティ対策を行うためには大規模なテストも必要になる。一方で、被保険者番号を活用するのであれば、既存のインフラとシステムをそのまま活用できるため、二重投資を回避することも可能だ。

 いずれも現実的な判断であり、連結ビッグデータを早急に活用するためには賢明な選択肢だといえるが、一方で構成員からは「連結ビッグデータの活用」によって得られるメリットを国民に向けてわかりやすく説明するべきとの意見も相次いだ。被保険者番号という「見える番号」を用いてまで、なぜ保健・医療・介護のデータを広く共有しなければならないのかということだ。「効率的な医療・介護のため」との一言ではわかりづらいことは確かで、地域包括ケアシステムの必要性を含め、そのシステムの中で連携的に動く専門職の姿をイメージできるような啓蒙が今後は必要になってくるのではないだろうか。

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