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医療経営情報(2018年6月14日号)

◆「費用対効果評価、「支払い意思額調査」は実施しないことに決定基準値は1人当たりGDPや諸外国の事例を参考にする方針

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会
費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会
6月13日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会は、来年度の制度化に向けて検討を進めている費用対効果評価について議論を展開。価格調整時の基準値を設定するうえで必要とされてきた「支払い意思額調査」は、実施しない方針を固めた。

費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたり、適正な価格設定を行うための仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待され、2012年5月から導入が検討され、2016年度に試行的導入が決定。すでに保険収載されている13品目を対象に分析を進めつつ、本格導入に向けた検討が進められてきた。当初は今年度から制度化される予定だったが、医薬品や医療機器などの費用対効果を導き出す「総合的評価(アプレイザル)」のために基準値を決めるうえで必要な「支払い意思額調査」が実施できず、昨年12月に先送りとなった経緯がある。

「支払い意思額調査」は、完全な健康状態を1年間継続するために「いくらまでなら支払えるか」を国民から調査するものだが、これまでの合同部会でも診療側の委員を中心に反対意見が続出。「命に値段をつける性格のもの」「専門家の中でも、支払い意思額調査の結果の信頼性が低いとの指摘がある」といった指摘が相次いでいた。実際、合同部会でも質問内容や提示額といった調査票の項目によって「結果が影響を受けやすい」ことを課題に挙げており、基準値の指標として用いるのに不適当だと認めている。また、そもそも基準値は社会・経済状況の変動に伴って見直すことも必要だが、2007年から2017年までの10年間で物価水準や賃金、GDPなどは大きく変化していないとして、「国として基準値の設定を目的とした新たな調査を実施する必要性は低い」と結論づけた。

では、何を基準値としていくのか。合同部会では、現在試行的導入で採用している基準値をそのまま使用する方針を明らかにしている。1人当たりGDPや諸外国の基準値を参考に、ICER(増分費用効果比)が500万円~1,000万円の場合、価格引き下げを行うこととなる。500万円以下の場合は価格引き下げを行わない。しかし、これに関しても部会では反対意見が出ており、今後はICERの基準額が争点となってきそうだ。

◆生活習慣病の医療費、全体の1割強 健保連の2016年度調査
総医療費は減少も生活習慣病分は105億円増加 透析の単価増える

―健康保険組合連合会
健康保険組合連合会(健保連)は、6月13日に「平成28年度 生活習慣病医療費の動向に関する調査分析」を発表。1,260組合の総医療費(医科+調剤)が約3兆4,324億円であるのに対し、生活習慣病10疾患(※)の医療費は約4,396億円で、全体の11.2%を占めていることがわかった。

2015年度の同調査では、総医療費が約3兆7,848億円だったため3,524億円減少したが、生活習慣病10疾患の医療費は4,291億円だったため、105億円増加した計算となる。増加した原因のひとつは、人工透析の単価増だろう。10疾患の医療費が高いのは、虚血性心疾患の1,042円、脳血管障害882円、糖尿病333円、高血圧症260円、人工透析198円の順だが、このうち単価が増えたのは人工透析のみ(26円増)。さらに、1日当たり医療費で見ると人工透析は33,086円と2番目に高くなっている。もっとも高いのは虚血性心疾患の43,321円だが、2015年度と比べると1,105円増。人工透析は2015年度に比べて2,375円増加している。

人工透析の基本報酬は、今年度の診療報酬改定で点数が減っており、4時間未満の場合は2,010点から1,980点に、4時間以上5時間未満の場合は2,175点から2,140点に、5時間以上の場合は2,310点から2,275点となっている。一方で、透析導入予防については医学管理料として評価されることとなっており、透析への移行数を減らそうという狙いは明らかだ。また、腹膜透析や腎移植への取り組みが評価されるようになり、腎代替療法実績加算も新設されている(1月100点)。今回、健保連が発表したデータが、こうした動きをさらに加速させることは間違いなく、次期診療報酬改定でさらに人工透析の基本報酬が削られる可能性が出てきたと言えよう。

なお、健保連加入者の生活習慣病10疾患別有病者割合によれば、もっとも高いのは高血圧症(5.1%)、次いで高脂血症(4.7%)、糖尿病(3.4%)となっており、人工透析は0.1%。生活習慣病管理料は、今年度の改定で「糖尿病患者の血糖値及びHbA1c」「高血圧症感謝の血圧値」の療養計画書への記載が義務付けられるなど、要件が厳しくなっているが、生活習慣病医療費の増加が明らかとなったため、次期改定でさらに厳格化される可能性が高いだろう。

※生活習慣病の対象となる10疾患は以下のとおり。
糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患、動脈閉塞、高血圧症、高尿酸血症、高脂血症、肝機能障害、高血圧性腎臓障害、人工透析

◆「総合診療専門医」研修プログラム へき地や離島での研修を条件   
  東京、神奈川、愛知、大阪、福岡は12カ月以上

――一般社団法人 日本専門医機構
 6月11日、一般社団法人日本専門医機構は、新専門医制度開始に伴って新設された「総合診療専門医」の一次審査基準を変更すると発表。「へき地・過疎地域、離島、医療資源の乏しい地域での研修」を条件とすることを決めた。これまでは「優先する」にとどめていたが、より審査基準を厳格化した格好だ。

 条件化した理由としては、地域医療への配慮を挙げている。地域によって研修期間が異なり、東京、神奈川、愛知、大阪、福岡の場合は12カ月以上の研修が必要。他府県は6カ月以上となっている。へき地・過疎地域とは、「総務省の指定する過疎地域」および「厚生労働省の指定するへき地」「都道府県が指定するへき地」としており、平成の合併によって過疎地域を合併した市町村については、「県庁所在市及び人口30万人以上の市」を除いて過疎地域とする。過疎地域として指定された町村を含む郡部も過疎地域とみなされる。

 離島は原則として離島振興法に指定されたところを指すが、自治体や医師会の意見も参考にして日本専門医機構が定めるとしている。「医療資源の乏しい地域」も同様に機構が定めるとしており、判断に迷う地域の場合は日本専門医機構に問い合わせて確認する必要がありそうだ。

 新専門医制度は、今年4月1日にスタート。基本19領域で合計8,378名の専攻医が採用されている。「総合診療専門医」は、プライマリ・ケアの充実を目指して新たに設置されたもので、外来・救急・病棟・在宅といった多様な総合診療の現場で遭遇する症候や疾患に対応する専門技能を有することが求められる。今回、半年から1年間とある程度の期間の研修を行うべきとしたのは、人口減少社会を迎え、今後は医療資源の乏しい地域が増加していくことを想定した結果と考えられよう。

◆ヒヤリ・ハット事例、2017年の再発・類似事例は19項目 「与薬時の患者取り違え」が最多 次いで「投与経路間違い」など

――公益財団法人 日本医療機能評価機構
 公益財団法人日本医療機能評価機構は、6月15日に「医療安全情報No.139」を公表。2014年から2016年に発表した医療事故やヒヤリ・ハット事例のうち、2017年にも発生した再発・類似事例が19項目にのぼることがわかった。最多は「与薬時の患者取り違え」で6件となっている。

「与薬時の患者取り違え」の一例として紹介されているのは、経腸栄養剤と抗けいれん薬の投与事例。看護師がリストバンドやベッドネームでの氏名確認を怠り、別の患者に投与した。別の看護師が病室に入ったとき、別の患者名が書かれた栄養剤のボトルが接続されていることに気づいたという。

次いで件数が多かったのは、「MRI検査室への磁性体(金属製品など)の持ち込み」、「胸腔ドレーン挿入時の左右の取り違え」、「薬剤の投与経路間違い」、「口頭指示の解釈間違い」、「誤った患者への輸血」、「中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症」でいずれも3件発生している。

「薬剤の投与経路間違い」では、右前胸部にCVポート、左前腕に末梢静脈ルートを留置している患者に対し、CVポートから投与するフルカリック3号輸液を調整する事例が紹介されている。2人の看護師が薬剤の内容と量を確認しながら、投与経路を確認せず、フルカリック3号輸液を末梢静脈ルートに接続してしまい、8時間後に患者が左前腕の痛みを訴え、発赤、腫脹、熱感を認めたという。

「誤った患者への輸血」は、医師による投与ミスが事例として挙げられている。B型の患者に濃厚血小板輸血の説明を、AB型の患者に濃厚血小板の輸血を行う予定で、B型患者の輸血同意書とAB型患者の濃厚血小板を同時に持ってB型患者の病室に行き、AB型患者用の濃厚血小板を投与してしまった。投与開始後、認証システムで実施入力をしたところエラーが出たため、異型輸血をしたことに気付き、投与を中止したという。

事例数はいずれも少ないが、忙しい日常業務の中で起こりうるヒヤリ・ハット事例なだけに、医療機関としてはこれらの事例を共有して類似事例を起こさないようスタッフ間の共有をはかる必要があるだろう。なお、日本医療機能評価機構では、2004年度から医療事故情報およびヒヤリ・ハット事例の収集・分析を行う「医療事故情報収集等事業」を実施している。

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