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医療経営情報(2018年3月22日号)

◆厚労省、オンライン診療の指針案を提示
「患者からの求め」が前提 アクセスログの記録を推奨

―厚生労働省 情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会
 厚生労働省は、3月9日に開かれた「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」で「オンライン診療の適切な実施に関する指針(案)」を提示。オンライン診療は医師側の都合で行うものではなく、患者からの求めがなければ実施すべきでないとした。また、医師と患者が1対1で診療を行っていることを確認するために、診療の開始時刻と終了時刻をアクセスログとして記録できるシステムの導入を推奨している。

 指針案は、「医師、患者及び関係者が安心できる適切なオンライン診療の普及を推進するため」に策定された。オンライン診療で最低限遵守する事項や推奨される事項と、その考え方が示されている。また、今後さらなる技術革新がなされ、情報通信機器の進化も予測されることから、定期的に内容を見直すとしている。

 これまでも都度確認されてきたことだが、原則として初診は対面診療で行うことも改めて明記。初診後も「同一医師による対面診療を適切に組み合わせて行う」べきだとしており、そこまで言及されてはいないものの、オンライン診療は診療所などのかかりつけ医が行うものだと暗に示している。また、「患者側からの求めがあってはじめて成立」する診療スタイルであることを明記するなど、あくまで利便性を求める規制緩和であることを強調。医療機関側は、患者が希望する旨を「明示的に確認」しなければならないとしている点に留意しなければならない。

 そのほか、「医師免許を保有していることを患者が確認できる環境」を整えるべきとしていることにも注意したい。初診で対面診療を行った場合は証明する必要がないとも付記されているが、念のためウェブカメラで映り込む範囲に医師免許証やHPKIカード(医師資格証)を配置しておくべきだろう。患者側にも、保険証や運転免許証の提示を求めているが、これも医師と同様に対面診療を経ている場合は提示の必要はないとしている。

 この日は同検討会の2回目の会合。2月に行われた第1回会合では、これまで「遠隔診療」と呼んできたビデオチャットなどを活用した診療を、へき地や離島のみならず近隣の患者に対して実施することも多いことから、「オンライン診療」と呼称することに決定。厚労省が提示した指針案では、「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果を伝達する等の診療行為を、リアルタイムで行う行為」と定義されている。オンライン診療の導入を本格検討している医療機関は、今のうちにチェックしておくべきだ。

 なお、2018年度の診療報酬改定でオンライン診療が初めて評価の対象となった。「オンライン診療料」(1月につき70点)、「オンライン医学管理料」(1月につき100点)、「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」(1月につき100点)、「精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料」(1月につき100点)が新たに設けられている。

◆2016年度の国保赤字、1,354億円減少
高齢者の増加が要因 医療費圧縮の効果も

―厚生労働省 保険局国民健康保険課
 3月9日、厚生労働省保険局国民健康保険課は2016年度の国民健康保険(市町村)の財政状況を公表(速報値)。赤字額は1,468億円となり、2015年度に比べて1,354億円の減少に成功した。高齢者の増加によって国民健康保険加入者が減ったことが大きな要因となっている。

 国民健康保険の加入者は3,013万人と、2015年度に比べれば170万人減少。収入額にもその影響は如実に表れており、15兆7,030億円と2015年度に比べて2,817億円減少している。一方で、支出額は15兆5,542億円と2015年度に比べて4,873億円も減少。これは、ソバルティやハーボニーといった高額なC型肝炎治療新薬が2015年度に登場した影響が大きい。2016年度はその反動で結果的に医療費が圧縮された形となった。

 保険料の収納率は91.92%で、7年連続上昇中。滞納世帯数は2011年の約414万世帯から約289万世帯と順調に減っており(割合は20.0%から15.3%に)、裏を返せば、それでも1,500億円近い赤字があるわけで、構造上の問題があることは明白だ。赤字額は市町村が税金で補填しており、国民にとっては事実上保険料が上乗せされている形となっている。2018年度からは、運営主体が市町村から都道府県に移るとともに、公費を1,700億円追加投入。1人当たりの給付費の増加は避けられない状況だ。診療報酬と介護報酬の同時改定が行われるとともに、新たな医療計画もスタートするなど節目の年となるが、慢性的な赤字解消への道のりは険しい。

 世界でも珍しい日本の国民皆保険制度だが、このまま慢性的な赤字が続けば、自己負担割合が3割からさらに上がるなど、負担の大きな制度になってしまう可能性もある。そうなると必然的に制度の維持も苦しくなってくるだろう。防止策として期待されるのがICT化だ。人工知能(AI)などを活用することで、保険者である自治体や審査支払機関の事務コスト削減が期待できる。導入にはある程度のコストが必要となるだろうが、人工が現在よりも減少すると、より1人当たり負担も増えてくるため、ドラスティックなアプローチで積極的な導入を急ぐべきではないだろうか。

◆「医師確保計画」の策定を都道府県に義務付け
医師偏在対策として 医師の確保数や方策も盛り込む

――???
 政府は、3月13日に都道府県に「医師確保計画」の策定を義務付ける内容を盛り込んだ「医療法及び医師法の一部を改正する法律案」を閣議決定した。同計画には、医師偏在解消対策として、具体的な医師の確保数や方策なども明記する。現在開会中の通常国会での成立を目指し、2019年4月から施行したい考え。

 閣議決定された改正法案は、医師少数区域での勤務経験を認定する制度の創設も盛り込まれたが、全体的に都道府県のマネジメントを要する内容が多い。たとえば医師確保対策の体制整備では、都道府県の事務が担うべき役割として、キャリア形成プログラムの策定や医師少数区域への医師派遣などを追加。大学医学部に「地域枠」「地元出身者枠」の創設・増加を要請するのも都道府県知事だ。臨床研修病院の指定・定員設定の権限も厚生労働大臣から都道府県知事へと移譲する。

 これは、一部の県で地域医療対策協議会が開催されていないほか、医師派遣時に都道府県と大学との連携が不十分であることが背景にある。また、医師は自らが研修を受けた地域で定着する傾向があることから、医師確保計画の策定だけでなく臨床研修に関することまで、都道府県に委ねることとなった。

 これは、国が医療行政を都道府県に丸投げしようという動きでもある。実際、3月9日に開催された厚生労働省の全国医政関係主管課長会議では、同省医政局長が「これからは都道府県が医療行政の主軸を担う時代になる」と発言。地域医療対策協議会の積極的な開催を促したほか、いわゆる36協定の締結を推進するよう要請。さらに、医療広告規制についても協力を呼びかけ、都道府県の役割が重くなっていくことを示唆した。まさに、地域医療構想を都道府県主導で進めるべきだという強力な“メッセージ”だといえる。ある意味では中央集権から地方分権への動きが加速していることの表れでもあるが、都道府県の財政状況によっては、格差が広がる可能性もあるだろう。そのあたりのバランスを、法整備を含めてどのようにコントロールしていくのか、厚労省の舵取り手腕がより問われていくことになるのではないか。

◆医療機関での死亡事故、2017年の報告件数は307件
前年より減少 想定の2割程度と大幅に少ない状況

―― 一般社団法人日本医療安全調査機構
 医療法で定められた医療事故・支援センターである一般社団法人日本医療安全調査機構は、3月15日に「医療事故調査・支援センター 平成29年(2017)年報<事業報告>」を発表。同センターで集積した医療事故報告の情報を公開した。それによれば、2017年に医療機関で起こった死亡事故の報告件数は370件。2016年の406件に比べ、36件減少している。

 医療事故調査制度は2015年10月にスタート。予期しない死亡・死産事故が調査対象で、医療機関は事故が発生したら日本医療安全調査機構に報告する義務がある。制度開始当初は、毎年1,000~2,000件程度の報告件数があるとの見込みだった。しかし、スタートした2015年の報告件数は81件。10月スタートだったため3カ月しかなく、少なくなるのは想定内だが、2016年、2017年の報告件数は前述のとおり。想定の2割程度しか報告されていない状況が続いていることとなる。

 想定よりも報告件数が少ない理由として考えられるのは、「予期しない死亡事故」と医療機関が判断していないケースだ。患者が死亡してから日本医療安全調査機構に報告するまでの平均日数は57.2日。2016年の36.2日よりも伸びており、最長は657日となっている。ここまで長引いたのは、医療機関側が事故となかなか認めず、遺族からの強い要請で重い腰を上げたと考えるのが自然だろう。それを裏付けるように、事故と判断されない不満を相談する遺族は増えており、日本医療安全調査機構に寄せられた相談件数は814件となった。2016年に比べて25.2%増えており、「医療事故報告対象の判断」が全体の約6割を占める487件となっている。

 それに対し、義務付けられている院内調査の動きは鈍い。2017年の報告件数は321件と、死亡事故報告件数の370件と数が合致せず、詳細な原因を分析する画像診断は191件と少ない。医療機関側の消極的な姿勢が透けて見える状況だといえよう。また、「遺族からの求めに応じて医療機関へ伝達した件数」は病院19件、診療所2件のわずか21件。日本医療安全調査機構の運営姿勢も問われるべき事態ではないだろうか。

 なお、日本医療安全調査機構は日本医学会連合、全国医学部長病院長会議、日本薬剤師会、日本看護協会のほか日本内科学会、日本外科学会など各学会が社員として加盟。国庫から毎年約1億2,000万円の補助金を受けて運営されている。

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