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介護経営情報(2018年3月22日号)

2018/4/11

◆ケアマネジャーの登録取消要件を緩和
 取消対象は「情状が特に重い場合」に限定

 政府は3月9日、介護支援専門員(ケアマネジャー)の登録取消要件を緩和する内容が盛り込まれた改正法案を閣議決定した。これまでは、介護支援専門員証(専門員証)の交付申請をしなかっただけでも取消の対象となったが、「情状が特に重い場合」の一文が加えられたことで、交付申請をしなかっただけでは取り消されることがなくなる。

 この改正法案は「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(第8次地方分権一括法案)。地方公共団体への事務・権限の移譲や、義務付け・枠付けの見直しが目的となっている。計15の法律を一括改正するもので、介護保険法もそのひとつに入っている。

 ケアマネジャーの登録取消要件の見直しに踏み切ったのは、介護分野の深刻な人手不足が背景にある。本来は、介護支援専門員実務研修を修了後、3カ月以内に都道府県知事へ登録申請を行い、その後専門員証の交付を申請しなければならない。つまり、ケアマネジャーとして受けるべき研修を修了しているにもかかわらず、専門員証の交付を受けなければ業務に携わることができないのが実状だ。十分に業務をこなせるスキルがあっても、携わることができない空白期間が生まれてしまうわけで、非合理的といわざるを得ない。

 当然、現場からも改善要望が出ており、それを受けて今回の改正法案が閣議決定された次第だ。今後は、研修終了後すぐに業務に従事できるようになるため、本人にとっても事業所にとってもメリットのある改正だといえる。なお、内閣府地方分権改革推進室が作成した資料によれば、「情状が特に重い場合」とは、「都道府県から介護支援専門員証の交付を受けるよう指示があっても業務を継続した場合など」としている。裏を返せば、都道府県から指示を受けなければ登録取消の対象とはならないため、業務を優先しつつそのケアマネジャーの都合に合わせて申請すればいいということになる。

 2018年度の介護報酬改正では、介護と医療の連携強化が大きなテーマとなった。そのため、自治体と介護サービス事業者との連絡調整役を担うケアマネジャーの果たすべき役割はますます重くなる。報酬面でもケアマネジャーを手厚く評価する方向となっており、質の高いケアマネジメントを担保するため特定事業所集中減算が見直されたほか、退院時加算の見直しや末期がん患者への頻回モニタリング実施でインセンティブが得られる「ターミナルケアマネジメント加算」(月400単位)も新設された。また、3月6日の全国介護保険・高齢者保険福祉担当課長会議では、成年被後見人を欠格事由から外す方針も明らかとなっている。今回、登録取消要件を緩和することで、さらにケアマネジャーの働きやすい環境づくりを進めたい厚労省の意向が明らかになったといえよう。

◆介護職員による高齢者虐待、過去最多の452件
4分の1は虐待で行政指導を受けた施設で発生

――厚生労働省 老健局高齢者支援課
 厚生労働省は、3月9日に2016年度の高齢者虐待状況を発表。介護職員による虐待は452件で、2015年度に比べて44件増加。調査開始から10年連続で過去最多を更新した。452件のうち、約4分の1にあたる117件は過去に虐待などの通報があって行政指導を受けた施設や事業所であることも明らかとなっている。

 これは「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づいた調査の結果。調査対象の介護施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの養介護施設のほか、訪問介護やデイサービスなどの居宅サービス事業所も含まれる。

 介護職員による虐待452件のうち、被虐待者が特定できなかった24件を除く428件の被害者は、合計で870人。そのうち65.5%にあたる570人が「身体的虐待」を受けていた。次いで「心理的虐待」を受けていたのが239人(27.5%)、「介護等放棄」が235人(27.0%)、経済的虐待が79人(9.1%)、性的虐待が24人(2.8%)となっている。また、虐待された被害者のうち、身体拘束を受けていた人は333人と4割弱。6割以上の537人は、身体拘束されていなかった。性別では、女性が70.6%と多く、弱者を狙った虐待が行われていることが窺える。

 また、虐待は5段階で深刻度を測っているが、もっとも軽い「1-生命・身体・生活への影響や本人意思の無視等」が489人と6割弱を占めている。このデータだけを見れば深刻なものではないと判断しがちだが、「3-生命・身体・生活に著しい影響」と判断されたのが224人と4分の1強を占めているほか、もっとも重い「5-生命・身体・生活に関する重大な危険」も10人おり、迅速に対策を行わなければならない問題であることがわかる。

 注目したいのは、虐待の発生要因。もっとも多いのが「教育・知識・介護技術等に関する問題」で66.9%。次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」が24.1%、「倫理観や理念の欠如」が12.5%、「虐待を行った職員の性格や資質の問題」が12.0%となっている。現在、介護業界の最大の問題とされているのは人手不足だが、「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」は8.8%であり、虐待を生む主原因ではないことが明らかとなった。むしろ、介護職員の質が虐待の要因となっていることが浮き彫りとなっており、質向上を目指した対策を打っていくことが求められる。利用者の安全・安心に関わる問題であり、その施設の信頼度に直接影響するだけに、国や自治体の施策を待つだけでなく事業者が独自に取り組んでいくことが必要ではないか。

◆厚労省、「終末期医療ガイドライン」の改訂版を発表
介護や在宅医療の現場での活用を踏まえて見直し

――厚生労働省 医政局地域医療計画課在宅医療推進室
 厚生労働省は、3月14日にいわゆる「終末期医療ガイドライン」の改訂版を発表。延命治療への対応のみならず、介護や在宅医療の現場で活用できるように見直された。同ガイドラインは、2007年に策定されてから初の大幅改訂となる。生命を短縮させるための「積極的安楽死」は、このガイドラインの対象としていない。

 ガイドラインの名称は、2007年に策定された当初「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」だったが、2015年に「人生の最終段階の決定プロセスに関するガイドライン」と変更。今回、さらに「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に変更され、医療・ケアチームの対象には介護従事者も含まれることを冒頭で明記している。チームでのケアを前提としているのは、地域包括ケアシステムの構築を念頭に置いているためだ。

 欧米で普及しているACP(アドバンス・ケア・プランニング)の重要性を強調しているのも大きな変更点だ。ACPとは、人生の最終段階でどのような医療やケアを受けたいのか、事前に本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うプロセスを指す。望む医療やケアを受けるためには欠かせないプロセスだが、日本では死について事前に家族が話し合うことをタブー視している面もあるため、定着していないのが現状。そのため、ACPの概念は医療・介護従事者の間でもあまり知られておらず、2月に厚労省が公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」によれば、「よく知っている」と回答した介護職員はわずか7.6%しかいなかった。用語自体を知らない介護職員も51.7%と半数以上にのぼっており、最終段階の医療・ケアを受けるための話し合いができる土壌づくりがなされていないことが明らかになっている。そうした現状を踏まえても、今回ガイドラインが改訂された意味は大きい。介護施設としては、構築される地域包括ケアシステムの中で優位なポジションを占めるためにも、ガイドラインの内容を職員間で共有し、意識を高めておくべきだろう。

◆通所・訪問リハ、データ提出の事業所に積極的なフィードバックを
 より効率的なリハビリマネジメントのために 2019年度中に実装

――厚生労働省 科学的裏付けに基づく介護にかかる検討会
 厚生労働省は、3月9日に開かれた「科学的裏付けに基づく介護にかかる検討会」で、通所リハビリテーションおよび訪問リハビリテーション(通所・訪問リハ)でデータ提出を行った事業所に対し、全国から収集したデータに基づくフィードバックを行う方針を明らかにした。より効果的なリハビリテーションマネジメントを後押しするのが目的。具体的なフィードバックの内容は、老人保健健康増進等事業で検討を行い、2019年度中に実装するとしている。

 介護分野の生産性向上を図るため、政府は「科学的介護」の推進に力を入れており、そのためデータベースの整備を進めている。現在、介護保険のレセプト情報や要介護認定情報を格納している「介護保険総合データベース」((介護DB ※1)と、通所・訪問リハの事業所からリハビリテーション計画書などの情報を収集した「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ」があり、それらを補完するものとして「CHASE」(Care, Health Status & Events)と名付けられたデータベースを構築する予定だ。

 「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業のデータ」は「VISIT」(※2)と称され、2016年度から運用を開始。2018年度介護報酬改定で、VISITへのデータ提出に関する評価が新設された。リハビリテーション計画書などのデータを提出すると、リハビリテーションマネジメント加算が適用されるようになったのである(6カ月以内ならば月1,220単位、6カ月以上経過してからの提出だと月900単位)。この加算が新設されたことで、VISITへ集まるデータが増えることが予想されるが、さらなるインセンティブとして、フィードバックを約束しようというわけだ。リハビリテーションの成果が上がれば、さまざまな評価が適用されるため、フィードバックの内容次第では経営的にも魅力のあるインセンティブだといえる。

 なお、補完的な役割を果たすこともあり、「CHASE」の具体像はまだ不明瞭だが、厚労省は目指すべき姿として「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護を実現するため、科学的分析に必要なデータを新たに収集する」と位置づけている。今年度中にデータベースの構築を開始して来年度には試行運用を行い、2020年度からの本格運用を目指す。

※1
介護DBは2013年度から運用を開始。2017年の介護保険法改正により、市町村から厚生労働省へのデータ提供が義務付けられている。

※2
VISITは「monitoring & evaluation for rehabilitation services for long-term care」からの造語。evaluationのv、rehabilitationのi、servicesのsとI、long-termのtを並べてVISITとしている。

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