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医療経営情報(2018年2月22日号)

◆「医師の働き方改革」の緊急取り組み案が固まる
予診や検査の説明、服薬指導などがタスク・シフティングの対象に

―厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会
「医師の働き方改革に関する検討会」は、2月16日に医師の働き方改革を進めるための緊急取り組み案を固めた。タスク・シフティングの対象としては、予診や検査の説明、服薬指導などが挙げられている。厚生労働省では、この取り組み案の内容を踏まえて早急な対応を医療機関に求めていく。

医師は応召義務があるため、政府が働き方改革関連法案を成立させたとしても、施行から5年間は「時間外労働の上限規制」の対象にはならない。しかし、「医師の働き方改革に関する検討会」では、医師一人ひとりの健康やワーク・ライフ・バランスを確保し、若手医師のキャリア形成を後押しできる勤務環境を整えていくため、自主的な取り組みを進めることが重要としている。つまり、この日固められた緊急取り組み案は、医師の働き方を変えるうえでのガイドラインとして位置づけられていると言えよう。

 取り組み案は、大きく分けて以下の6項目となっている。

(1)医師の労働時間管理の適正化に向けた取組
(2)36協定等の自己点検
(3)既存の産業保健の仕組みの活用
(4)タスク・シフティング(業務の移管)の推進
(5)女性医師等に対する支援
(6)医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取組

この中でとりわけ着目すべきなのは(1)、(4)、(5)、(6)だろう。(1)は正確かつ客観的に医師の在院時間を把握するのが目的。ICカードやタイムカードが導入されていなくても、上司が出退勤記録を確認するといった方法で取り組むべきだとしている。業務に区切りがつかず長時間労働を余儀なくされている医師がいないように、上司のマネジメントスキルを高める必要があるだろう。

(5)は、女性が出産・育児などのライフイベントでキャリア形成を妨げられないようにする措置。女性医師の比率が高い診療科もあるため、医療格差を生じさせないためにも必要な対策だと言える。(6)は、勤務間インターバルや完全休日の設定が注目されてきたが、「勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等の対応を行わないこと」や「当直明けの勤務負担の緩和」をしっかり盛り込んだことで、より柔軟なシフト制の確立が求められること必至。そもそも求人難で、医師数の十分な確保も困難となってきているため、果たして効力が発揮される取り組みなのか、疑問が残る。

 それよりも厳しそうなのがタスク・シフティングだ。「初療時の予診」「検査手順の説明や入院の説明」「薬の説明や服薬の指導」など9項目が挙げられ、原則として医師以外の職種に分担させて医師の負担を軽減するとしているが、それらを任せる人には相当なスキルが求められるだろう。取り組み内容は立派なものばかりだが、“絵に描いた餅”となりそうな危険性も感ぜざるを得ない。果たして現場からどのような反響が帰ってくるのか、引き続き注目していきたい。

◆厚労省、高齢者の医薬品適正使用に向けた初の指針案を提示
医師・薬剤師向け 多剤服用による副作用防止を目指して

―厚生労働省 高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成ワーキンググループ
 厚生労働省は、2月21日に「高齢者医薬品適正使用ガイドライン作成ワーキンググループ」で高齢者の医薬品適正使用に向けた初の指針案を提示した。医師・薬剤師向けで、多剤服用による副作用防止が目的。3月末までに正式決定し、全国の医療機関や薬局に周知していく方針だ。

 厚労省が問題視しているのは、患者が複数の医療機関を受診している場合に処方の全体像が把握しにくい点。指針案では医師に対し、サプリメントや健康食品を含めたすべての薬の服用状況を把握し、その必要性や安全性を確認するよう求めている。

 そのうえで、診断時に注意を払うべきこととして「老年症候群」を挙げた。薬剤に起因する「老年症候群」としては、ふらつき・転倒や記憶障害、せん妄、抑うつ、食欲低下、便秘、排尿障害、尿失禁などがあるが、薬との関係性は見過ごされがちだ。そこで、疑わしい症状があった場合はまず服薬状況をチェックし、中止・減量を考慮すべきだとした。それが困難な場合はより安全な薬剤へ切り替えることの検討を求めている。

 一方で、「ただの数合わせ」で処方薬の中止や減量は求めるべきでないとし、ポリファーマシーを回避する処方態度を心がけることが大切だとしている。なお、ポリファーマシーは「薬の多さ」と解釈されがちだが、指針案では「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と定義(アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)。つまり、患者とのコミュニケーションを怠らず、その患者に処方されている薬の全体像を常に把握して、的確な服薬指導を行うことを求めていると言える。

 指針案で示されたデータによれば、同一の保険薬局で調剤された薬が7種類以上あるのは75歳以上で24.8%。6種類以上の服薬で副作用を起こしやすいというデータもあり、ポリファーマシー回避のためには医療機関同士および薬局の連携が必要だと指摘。多剤服用による症状悪化に対し、新たな薬を処方することで起こる「処方カスケード」を防ぐ意味もある。

 ただし、医師の長時間労働是正のため、「医師の働き方改革に関する検討会」で服薬指導は医師から多職種に移管すべきと決めたばかり。対して、今回の指針案は医師の負担増を求めているのに等しいため、いかに整合性を保つのか、厚労省の動きに着目していく必要があるだろう。

◆全日病、どの診療科でも使える「フリーアドレス診察室」を奨励
医療の生産性向上のため 石川の恵寿総合病院の事例を挙げる

――生産性向上国民運動推進協議会
 2月15日、首相官邸で生産性向上国民運動推進協議会が開かれ、医療分野では全日本病院協会(全日病)が取り組み内容を報告。生産性向上のためには勤務環境改善が必要とし、どの診療科でも使える「フリーアドレス診察室」を導入している石川県七尾市の恵寿総合病院(426床)を事例として挙げた。今後の病院デザインのモデルケースとして注目を集めそうだ。

 全日病は、勤務環境改善や業務効率化といった課題に向け、医療機能の分化・連携の推進やチーム医療の推進、ICT活用などの取り組みを行ってきたと説明し、まず医療クラーク(医師事務作業補助者)を配置する必要性を指摘。ただし、四病院団体協議会の調べによれば、現在医療クラークが従事している業務は診断書や主治医意見書などの代筆や代行入力が中心で、横展開の余地が残されているとした。

 一方で、医療は保険診療が収益の中心であるため、単純に労働力を投入するだけでは生産性の変化が見えづらいとし、タスク・シフティングおよびタスク・シェアリングの普及、遠隔医療の導入などICTの活用が欠かせないとした。恵寿総合病院の事例はそうした主張を踏まえて紹介されている。

 恵寿総合病院は「ユニバーサル外来」を導入しているのが特徴。「ユニバーサル外来」とは、同病院によれば「『どの科でも使える診察室(フリーアドレス診察室)』と『電子カルテのクラウド化』により実現した、すべての人にやさしい外来」のこと。一般的な病院では各診療科の診察室を設けているためそれぞれのスペースと人員が必要になり、患者の移動動線が長くなることから、新病院建築時にユニバーサルデザインの視点で見直したという。

 診療科に紐付かない診察室を複数設け、電子カルテを持ち運び可能にすることで、1つの受付で複数の診療科をカバーできるほか、診察室の編成はその日の混み具合に応じて「今日は内科、明日は外科」といった形で弾力的に変更できるようにした。同病院には17の診療科があるが、1つの受付でカバーし、患者の誘導は電子掲示板の番号表示で行うようにした。

 その結果、受付スタッフは複数の診療科に精通するようになり、人員の省力化にも成功。1日800名の外来患者に対し、従来の29名から14名へと52%削減できたという(残り15名は他部署へ転籍)。待合スペースは全診療科共通となったが、番号表示で患者を誘導するため、知り合いが多い地域特性がありながら、何科に受診しているか知られることもなくなり、プライバシーの確保にもつながった。また、診察室をフリーアドレス化したことで、備品も統一でき、コスト削減効果も表れている。とりわけ中規模以上の病院では効果を発揮しそうな取り組み内容といえよう。

◆ターミナルケアについて「詳しく話し合っている」人はわずか2.8%ACPについては医師・看護師も約8割が「よく知らない」と回答

――厚生労働省 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会
 厚生労働省は、2月23日に「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」を公表。ターミナルケアについて「詳しく話し合っている」との回答は一般国民が2.8%、医師でも9.7%だった。一方、ターミナルケアについて家族や医療介護関係者とあらかじめ繰り返し話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について「よく知っている」と回答した医師は22.3%、看護師は19.9%に留まり、約8割が内容をあまり知らないことが判明している。

 ターミナルケアとは終末期の医療および看護のこと。認知症患者が急増している現在、自分が人生の残り時間をどのように過ごすか、どのような医療・看護を受けたいのかをあらかじめ決めておくことは非常に重要となってきている。同調査によれば、そうした現状は少なくとも医療従事者には広く理解されているようで、ターミナルケアについてこれまで考えたことがある人は医師88.8%、看護師81.4%となっている。しかし、家族や医療介護関係者との話し合いの経験となると、圧倒的に割合が落ちるのは前述のとおり。死について口にすることがタブー視されている現状が浮き彫りになったといえる。

 そうした現状を踏まえ、厚労省が普及・啓発を進めようとしているのがACPだ。ACP自体の考え方は概ね受け入れられていることが調査結果でも明らかになっており、「賛成」としているのは一般国民64.9%、医師75.8%、看護師76.5%。一方、「反対」としているのはそれぞれ2.2%、1.0%、0.6%とごくわずか(ちなみに看護職員は0.0%)。「わからない」との回答が2~3割程度と多いのは、認知度の低さを表しているともいえるため、今後はいかに啓発を進めるかがターミナルケアの充実を図るカギとなってくるのではないか。とりわけターミナルケアに携わる医療機関は、ACPに関する認知度の現状を把握したうえで、患者に対しても適切な働きかけを行っていく必要が出てくるだろう。3月中には終末期医療ガイドラインも固まる見込みのため、今のうちから準備を進めておいたほうが良さそうだ。

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