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医療経営情報(2017年12月22日号)

◆「薬価制度の抜本改革」骨子が承認される 2021年度から毎年改定
市場規模350億円超の医薬品は年4回の保険収載時に引き下げ

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、12月20日の中央社会保険医療協議会総会で薬価制度抜本改革の骨子案を提出し、承認された。市場規模が350億円を超えた医薬品は、年4回行われる新薬の保険収載時に改定し、引き下げることで市場拡大を速やかに防ぐ。現在2年に1回実施されている薬価改定は、2021年度から毎年実施されることが正式に決定した。

 今回の薬価制度改革の端緒となったのが、高額がん治療薬「オプジーボ」にあることは明らかだ。当初は皮膚がんの一種である悪性黒色腫(メラノーマ)のみの承認だったため、対象患者数は数百人規模だったが、2015年末に非小細胞肺がんに対する追加承認を受けたことで数万人に急増。2016年には腎臓がんの一部でも承認を受けるなど対象患者数は増加の一途をたどっている。患者一人当たりの薬価は年間約3,500万円と試算されているため、10万人規模になると、オプジーボ単独で3兆円以上の医療費となるため、市場が拡大した医薬品についての対応が急務となっていた(オプジーボは今年の2月に50%の緊急引き下げを実施)。従来のように2年に1回の改定ペースだと2年近く価格が高止まりする可能性があるため、改定を年1回にすること、そして350億円超の医薬品を年4回引き下げる機会を設けることで、医療費の膨張を防ごうというわけである。

 毎年の薬価改定を2021年度から実施するのは、2019年度に消費税率の引き上げが予定されており、臨時に全品目の改定を行うのが理由。2018年度と2020年度は通常の改定を実施するため、事実上来年度から毎年改定となる。対象となる品目は、2020年度までの3年間で検討・決定する方針だ。

 焦点となっていた「新薬創出加算」は、製薬企業で構成される業界団体の猛反発を受けて当初よりも要件が緩やかになった。11月に提示された案では、新薬収載実績などを踏まえてポイント化した企業指標をもとに算出した「上位5%」の企業に高い加算がつく形だったが、「上位25%」となった。これにより、大半の企業が加算の適用を受けられるものと予想される。

 来年度の診療報酬改定では、本体が0.55%の引き上げとなったものの、薬価は1.65%の引き下げとなっている。医療界の反発や日本医師会と与党との関係を踏まえれば、次回の改定以降も本体部分の大幅な引き下げは考えにくいだけに、高額な薬価を引き下げることで医療費の抑制を図る構図が今後も続きそうだ。

◆費用対効果評価制度、来年度の制度化は見送り
13品目を対象とした試行導入は予定どおり実施へ

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会
費用対効果評価専門部会 薬価専門部会 保険医療材料専門部会合同部会
 厚生労働省は、12月20日に開かれた中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会・ 薬価専門部会・保険医療材料専門部会合同部会で、費用対効果評価制度を制度化することは来年度中に決める方針を明らかにした。予定されていた来年度からの導入が見送られた格好だ。13品目を対象とした試行導入は予定どおり来年度から実施する。

 費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたって適正な価格設定を行うために導入が検討されてきた仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待され、2012年5月から導入が検討されてきた。2016年度の診療報酬改定時に試行的導入が決定し、現在、すでに保険収載されている13品目(医薬品7、医療機器6)を対象として分析が進められている。

 しかし、本格的な制度化に必要な部分で、支払側と診療側の意見がまとまらず、重要な部分が先送りとされてきた。それが「支払い意思額調査」である。「支払い意思額調査」は、無作為に抽出した3000人以上に対して面接を実施し、「この治療法にはいくらまで支払えるか」を聞くというもの。医薬品や医療機器などの費用対効果を導き出すための「総合的評価(アプレイザル)」を行うために必要な基準値を決めるのに、「支払い意思額」を算出しなければならないため、欠かせない調査のひとつだ。
 ところが厚労省は、7月に提示した「支払い意思額調査」の調査票案に「公的医療保険から支払われる治療法の費用に応じて、あなたが負担する保険料は増加する可能性があります」と記載。医療保険の仕組みに詳しくない人が多いことや、面接対象者の年齢幅が広いことを考えれば、先入観を与えるおそれもあるとの指摘が相次ぎ、再検討を余儀なくされている。その後も意見はまとまらず、明確な実施時期が明示されないまま、今回の合同部会を迎えた。合同部会でも支払側と診療側で意見は真っ向から対立。このまま議論を続けたところで、先送りの繰り返しとなる懸念も出てきた。

 ひとまず厚労省は、先行して分析が進められている13品目の試行導入を行い、その結果を踏まえてアプレイザルの方法や支払い意思額調査の実施可否などを検討するとしている。とはいえ、体のいい棚上げであることは明らかで、本格導入を実現させるには相当な調整が必要になりそうだ。

◆2016年末時点の医師数、31万9,480人で過去最多を更新
糖尿病内科や精神科は増加、外科の減少傾向は止まらず

――厚生労働省
 厚生労働省は、12月14日に2016年の「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」を発表。2016年末現在で医師数は31万9,480人(男性25万1,987人、女性6万7,493人)と過去最多を更新したことがわかった。診療科別に見ていくと、糖尿病内科や精神科、整形外科が増加。一方で、内科や外科が減少していることも明らかとなった。

 「医師・歯科医師・薬剤師調査」は、1996年に開始以来2年に1回実施されている。前回分の2014年の結果と比べると医師数は8,257人増加。人口10万対医師数は251.7人であり、前回と比べると6.8人増加している。そのうえで診療科別に前回調査と比較すると、直近の医療界のトレンドが見えてくる。

 8,000人以上医師が増えたことで、概ねどの診療科も前回より医師数を増している。しかし、この調査で発表している40の診療科のうち、4つだけ前回よりも減らしたものがある。内科、外科、アレルギー科(前回185人、今回162人)、産科(前回510人、今回495人)だ。中でも深刻なのが外科。前回の15,383人に対して14,423人と960人も減っている。前々回の2012年調査では16,083人だったため、4年間で1,660人も減少したことになる。「当直明けで手術を執刀する」といった過酷な勤務状態と、それに見合わない待遇の低さがあることから、外科医が減少傾向にあることは以前から指摘されているが、それが数字で証明された格好だ。

 内科は、前回調査時が61,317人、今回が60,855人。しかし前々回の2012年調査では61,177人であり、減少傾向にあるとまでは言えない結果となっている。「総合内科専門医」の資格を持つ医師が依然として多いことを踏まえれば、「内科」に従事するのではなく、呼吸器内科や循環器内科、糖尿病内科など個々の専門分野に応じた診療科に従事する傾向が強まっていると見るべきではないか。とりわけ糖尿病内科は、前回調査時から443人増加(前回4,446人、今回4,889人)。生活習慣病予防のニーズが増していることに加え、人工透析に至らないよう医療政策として重症化予防に注力している影響があると思われる。

 そのほか特徴的なのが精神科の増加。前々回の2012年調査では14,733人、前回調査では15,187人、そして今回が15,609人と4年間で876人増加。ついに外科よりも多くなっており、精神疾患が増加していることを裏づけている。今後は高齢者数の増加に伴い、うつ病や神経症だけでなく認知症の治療ニーズも増えていくことが予想されるため、増加傾向は止まらないのではないだろうか。

◆医師偏在対策のため経済的なインセンティブを付与
医師派遣を支える医療機関を対象に 税制・補助金・診療報酬で

――厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会
 厚生労働省は12月18日に、「医療従事者の需給に関する検討会」と「医師需給分科会」で検討してきた医師偏在対策について、「第2次中間取りまとめ」の結果を発表した。医師派遣を支える医療機関に経済的なインセンティブを付与するべきとし、税制や補助金、診療報酬上の評価で対応したいとしている。

 医師が地域や診療科において偏在していることは、長らく課題となっていながら解消できていないのが現実だ。12月14日に発表された2016年の「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によれば、人口10万人対医師数は増加傾向にありながら、依然として地域格差がある現状が明らかとなった。具体的には、最大だった徳島県が315.9人だったのに対して最小の埼玉県が160.1人と2倍近い格差がある(※)。診療科も、外科医が減少傾向にあるほか産婦人科の増加幅が小さい状況となっている。医師数そのものは2年間で8,000人以上増えているが、地域格差や診療科格差を解消していかなければ、実効的な医師偏在対策がなされたとは言えない状況だ。

 そこで、医師が少ない地域での勤務を不安に感じさせる要素を取り除き、そこで勤務することが医師個人のインセンティブとなるような環境整備を進めていくため、11月の医師需給分科会では医師不足地域で勤務する医師を認定する制度を導入する方針が明らかになっている。臨床研修修了前や、新専門医制度の専門研修を修了して専門医資格を取得する前などに一定年数勤務した医師が対象。広告可能事項に付け加えることも検討されており、医師個人はもちろん医療機関にとって、医療モラルの高さをアピールすることができる仕組みにする。

 また、医学部でも「地域枠」を設けるなど、地元出身者が地域医療に従事しやすくする環境を整えるほか、臨床研修病院の募集定員算定方式の見直しも実施。都市部に臨床研修医が集中しすぎないよう、段階的に圧縮して2025年度に1.05倍とする方針も固めている。

※人口10万人対医師数でもっとも多いのは徳島県の315.9人、次いで京都府の314.9人、高知県306.0人。もっとも少ないのは埼玉県の160.1人、茨城県の180.4人、千葉県の189.9人。

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