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医療経営情報(2017年12月1日号)

2017/12/13

◆健保連や経団連など6団体、次期診療報酬のマイナス改定を要請
薬価改定や薬価制度改革の引き下げ分は「診療報酬に充当せず」

―財務省 財政制度等審議会
財政制度等審議会は、11月29日に「平成30年度予算の編成等に関する建議」を麻生太郎財務相に提出。来年度の診療報酬改定については、「2%半ば以上のマイナス改定が必要」とした。また、2025年問題を見据えた地域医療構想を実現するため、急性期から回復期・在宅医療への病床転換を急ぐべきだと提言。7対1入院基本料の算定要件を厳格化させるほか、看護配置によって評価する仕組み自体の見直しも求めている。

 建議では、まず診療報酬に対するスタンスを明記。医療機関にとっては「収入」である一方で国民から見れば「料金」だとして、医療機関の経営という側面だけではなく国民の負担を十分に考慮すべきであり、国民負担の増加を抑制するために診療報酬単価を抑制すべきとした。

医療費が過去10年、平均年2.5%ペースで増加していることについては、高齢化要因による増加は年1.2%程度と断じ、今後もマイナス改定を続けるべきとした。さらに、賃金や物価の水準と比べて診療報酬本体の水準が高いとして、本体のマイナス改定もするべきだとしている。

 7対1入院基本料については、これまで要件見直しをしながら「ごく緩やかな減少」にとどまり、10対1病棟などに転換する意向を示している医療機関がほとんどないことを指摘。また、いわゆる重症患者割合(重症度および医療看護必要度)が25%以上との要件についても、残り75%の患者の状態について問われていないことから、評価項目に一切当てはまらない患者が相当な割合で存在しているとし、急性期病棟として適正な存在であることを問うべきであり、算定要件の厳格化を行うべきだとした。そして、看護配置ではなく提供している医療の機能によって評価される診療報酬体系に見直すべきだと迫っている。

 財政制度等審議会は、財務相の諮問機関。東レ相談役で日本経済団体連合会会長でもある榊原定征氏が会長を務めている。財務相に提出される建議は、予算編成に大きな影響を与えるため、具体的な下げ幅を明記したマイナス改定を求めたことは重要な意味を持つ。とりわけ7対1を含めた入院基本料については、算定要件を含めた厳しい見直しが行われる可能性が高くなったと言えよう。

◆厚労省、一般病棟入院基本料の7対1と10対1を統合する方針
看護配置と診療実績を組み合わせた報酬体系と中間的評価の新設へ

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
 厚生労働省は、11月24日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、一般病棟入院基本料の7対1と10対1を統合する方針を明らかにした。評価手法としては、看護配置と診療実績を組み合わせたいとしている。また、7対1と10対1の中間的な評価を新たに設ける意向も示した。

 現在、一般病棟入院基本料は7対1(1,591点/1日)、10対1(1,332点/1日)、13対1(1,121点/1日)、15対1(960点/1日)の4種がある。もっとも点数が高い7対1と15対1では、1日あたり631点もの差があり、7対1と10対1でも259点の差があるため、7対1病棟の数は増える一方となっている。結果として医療費が膨張する要因となっているため、7対1から10対1への移行を進めたいというのが政府および厚労省の狙いだ。

 しかし、前述のとおり7対1と10対1の診療報酬は1日あたり259点の差があるため、医療機関にとって移行させるデメリットは大きい。まず収入が激減することは間違いなく、厚労省の試算によれば、200床の病院で年間約1億2,000万円の減収が推計されている。

 そこで厚労省は評価手法を見直すことで、「弾力的で円滑な」移行を可能としたい考えだ。具体的には、看護配置に応じた評価を基本とし、「診療実績」に応じて段階的な評価を導入していくとしている。これは、現在の7対1が重症患者割合25%以上という施設基準を満たす必要があるのに対し、10対1は重症患者割合に応じた「看護必要度加算」が設定されていることが背景にある。異なる要件を統合するために、重症患者割合を「診療実績」として評価しようというわけだ。当然、医療機関側としては25%以上という割合をキープしたいところだが、医療費を抑制したい支払側は30%に引き上げたい意向を示している。どのように調整を図るかが今後の焦点となるが、いずれにしても急性期病院にとっては厳しい改定になることが予想される。

◆DPCの「再入院ルール」、合併症も対象に
「短期滞在手術等基本料3」は原則としてD方式に適用

――厚生労働省 診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会
11月29日、厚生労働省の診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会が開かれ、DPC/PDS算定ルールの見直しについて議論を展開。不適切な診療報酬請求を防ぐための「再入院ルール」は、合併症も対象とする方向で意見が一致した。また、DPC病院での適用基準が曖昧との指摘があった「短期滞在手術等基本料3」については、DPCの点数設定方式D(D方式)に統一させて混乱を防ぐ方針も固められた。

 「再入院ルール」は、短期間に入退院を繰り返して入院日数をリセットすることで、より高額な診療報酬を得ようとすることを防ぐもの。以前は、DPC病院において同じ病名で3日以内に再入院した場合は一連の入院とみなしていたが、2014年度の診療報酬改定で「7日以内」に延長された。今回、合併症もルール適用の対象とすることで、医療費の適正化を図る。具体的には、合併症にかかる診断群分類に定義されるICDコードが「入院の契機となった傷病名」である場合、一連の入院とみなす。また、「医療資源を最も投入した傷病名」に対応する診断群分類番号の上6桁が同一の場合も同様にみなすこととする。

 「短期滞在手術等基本料3」は、日帰り手術や4泊5日までの入院による手術を行うにあたって必要な術前・術後の管理、検査、画像診断などを包括的に評価した診療報酬。2000年度に導入されたが、DPC/PDSで算定される患者は対象外となっている。しかし、「1入院あたりの点数設定」であるため、DPC/PDSで算定するべきか否か現場が混乱しているとの指摘があり、見直しが求められていた。

 そこで厚労省は、DPC病院においては「短期滞在手術等基本料3」を適用せず、基本的な報酬設定の考え方が同じであるD方式に統一すると提案。ただし、「入院期間I」の日数が5日以内で、一定の症例数があるなど一定の要件を満たした場合のみ適用し、それ以外は他の点数方式で設定する方針だ。

◆医療広告の新ガイドラインが決まる 「体験談」は禁止
ビフォーアフター写真は説明を添えれば広告可能に

――厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会
11月29日、厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で、医療広告の新ガイドライン案が承認された。今年度末までに関連省令を公布し、来年6月1日から施行する見通し。患者の体験談については禁止されることとなったが、術前術後のいわゆるビフォーアフター写真は詳細な説明を添えれば広告できることになった。

 医療広告をめぐっては、美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数が増加していることを受け、規制の強化が取り沙汰されてきた。特に、これまで「情報提供媒体」とみなされて規制対象外だったウェブサイトについての対策が急務とされ、2015年7月には内閣府の消費者委員会で「医療機関のホームページを医療法上の『広告』に含めて規制の対象とすること」が建議された。それを受けて今年6月に改正医療法が成立し、誇大な治療効果をウェブサイトで謳うことが禁じられた。「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」は、こうした流れの中で設置され、ウェブサイトの「定義」や、広告禁止事項について検討が進められてきた。

 中でも、広告禁止事項となるかどうかで注目を集めていたのがビフォーアフター写真だ。美容医療では、治療効果をアピールするため広告に用いるケースが多いが、個々の患者の状態や、広告を見る側の主観によって受け取り方が異なることから、誤認を生じさせるおそれがあるとして、これまでの検討会で禁止となる方針を示してきた。それが一転して、条件付きながら容認となったことは、とりわけ美容医療業界にとって朗報と言えよう。

 一方で、患者の体験談を広告することは禁止となるため、自院のウェブサイトで「患者の声」を掲載することもできなくなる。ビフォーアフター写真に詳細な説明を添えることを求めたことも併せて考えると、文章による誇大表現や有利誤認を招く表現に対する規制はますます厳しくなるだろう。裏をかえすと、写真は事実だからこそ容認されたと受け止められるため、医療広告にはエビデンスを示すことが重要だという考え方をより一層明確にさせたと捉えられるのではないか。

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