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介護経営情報(2017年11月17日号)

2017/11/28

◆特養、看取りや夜間配置に関する評価を充実させる方針
厳格化した要件を満たせばインセンティブが得られる仕組みに

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省は、11月15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)の看取りや夜間配置に関する評価を充実させる方針を示した。新たに要件を設け、それを満たした場合に従来よりも手厚いインセンティブが得られる仕組みとする意向だ。

 特養では医師が配置されているが、厚労省の調査研究事業報告書によれば、配置医以外に訪問診療や往診を依頼できる医師がいる施設はごく少数。「訪問診療を依頼できる医師がいる」とした施設はわずか4.3%で、往診も12.6%にとどまっている。そして、配置医が対応困難なときに連携可能な医師がいないと回答している施設は41.6%にのぼっている。

 しかし、病院で死を迎えることを忌避する傾向が高まり、「自然死」「平穏死」が重んじられるようになっているうえに、2006年に「看取り介護加算」が新設されたこともあって、施設内での看取りは増えている。厚労省は、こうした看取りニーズに対応するため、医療提供体制を整備することを条件に、評価を手厚くしようと考えている。

 この日提示された医療提供体制の要件案は以下の4点。

◆曜日や時間ごとの医師との緊急時連絡方法や、診察を依頼するタイミングについて、医師と特養の間で具体的な取り決めをしていること
◆複数名の医師を配置、もしくは24時間対応できる体制を確保していること
◆上記2項目について、届出を行っていること
◆看護体制加算(II)を算定していること

 また、人材が少ない夜間の医療処置に対応できるようにするため「夜勤職員配置加算」も見直す。夜勤時間帯に「看護職員」もしくは「認定特定行為業務従事者(都道府県の登録が必要)」を配置している場合は、現在よりも評価を高くする。短期入所生活介護(ショートステイ)でも同様の要件を設けるとしている。いずれにしても、24時間いつでも看取り対応できるような体制を整えなければならないということであり、医療機関や医師との連携をこれまで以上に緊密化する必要がありそうだ。

◆小規模特養、来年度以降に新設される施設の基本報酬を引き下げ
既存の施設および地域密着型特養も経過措置後、同様の報酬額に

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省は、11月15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、定員30名の小規模介護福祉施設(小規模特養)について、来年度以降に新設された場合は基本報酬を引き下げ、通常の特養と同様の報酬額とする方針を明らかにした。既存の小規模特養や、2005年度以前に開設された定員26~29名の施設である地域密着型特養については、今後一定の経過措置を経て、やはり通常の特養と同じ基本報酬に統合する考えを示している。

 この厚労省の提案は、10月27日に発表された「平成29年度介護事業経営実態調査」が背景にある。小規模特養の収支差率は4.2%と比較的高い数字となっており、他の特養に比べて最大3.4ポイント、最小で1.5ポイントの差が出ている。とりわけ、地域密着型特養の収支差率は0.5%、通常の広域型特養でも31~50人および51~80人はいずれも0.8%と苦しい経営状態が伺えるため、小規模特養は利益が出ている介護事業形態だと判断されたのだろう。

 現在、小規模特養の基本報酬は通常の特養よりも高く設定されている。要介護度の段階によって報酬単位が異なり、要介護1の場合、小規模特養が700単位に対して通常の特養は547単位。要介護2の場合は小規模特養が763単位に対して通常の特養は614単位。要介護度3の場合、小規模特養が830単位に対して通常の特養は682単位。要介護度4の場合は小規模特養が893単位に対して通常の特養が749単位。要介護度5の場合は小規模特養が955単位に対して通常の特養は814単位となっている。

厚労省としては、小規模特養と特養で利益率に差が出ているのは、基本報酬に格差があるのが理由だとして、報酬の均衡化を図るのが狙いだ。本音では、一気にすべて横並びにしたいところだろうが、既存の施設の算定報酬をいきなり下げることによる反発を避けて段階的な措置を講じたというわけだ。既存の施設に対する経過措置がどの程度の期間になるかは未定だが、当該事業者は期間によって経営戦略の見直しを図らざるを得ないのではないか。

◆ショートステイの「看護体制加算」を充実の方向で見直し
新たに要介護3以上を一定数受け入れる事業所を評価

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省は、11月15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、短期入所生活介護(ショートステイ)の「看護体制加算」を充実させたい意向を示した。現在の要件に加え、新たに要介護3以上の高齢者を一定以上受け入れている事業所を評価する方針だ。

「看護体制加算」は(I)と(II)があり、(I)は看護師常勤1名以上、(II)はそれに加えて病院や診療所、訪問看護ステーションの看護職員と連携して24時間連絡体制を確保する必要がある。厚労省の提案どおりの改定となれば、新たに(III)を加えるなどして要介護3以上の受け入れ数ごとに単位を加算することになりそうだ。ちなみに、現在の介護報酬は(I)が1日4単位、(II)が1日8単位。厚労省は定員ごとに細かく単位数を設定する方針を掲げている。

 要介護3は「立ち上がりや歩行が自力ではできず、排泄や入浴、衣服の着脱などにもほぼ全面的な介護が必要」であり、要介護2よりもIADL(手段的日常生活動作)およびADL(日常生活動作)が著しく低下している状態と規定されている。そのため、要介護度3以上は中重度とされている。

 現在、要介護3以上の利用者の受け入れ先は少なくなってきており、ある新聞社がアンケート調査を行ったところ、特養の約2割が要介護度3以上の入所を見合わせているとの結果も出ている。受け入れ先の拡大が急務となっているため、要介護3以上の高齢者を7割以上受け入れている事業所が比較的多いショートステイに白羽の矢が立ったのではないか。

 厚労省の調べによれば、ショートステイで要介護3以上の利用者を70%以上受け入れている事業所は42.4%を占める。ただし、受け入れ割合が60%以上70%未満と回答している事業所が25.0%となっており、合わせれば67.4%と7割近い事業所が積極的に中重度の利用者を受け入れていると言える。現在、定員30人以下の事業所が95.7%と小規模な事業所が大半だが、加算の見直しの程度によっては定員数を増やす事業所が増えてくる可能性もある。地域によっては特養が「狭き門」となっているところもあり、今後高齢者の人口が増えていくに従って、ショートステイの重要性が増していくため、事業所が規模拡大に踏み切れるだけの見直しになるかどうか注目される。

◆グループホーム、看護体制を整備した事業所を評価
「医療連携体制加算」に対応した区分を新設

――厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会
 厚生労働省は、11月15日の社会保障審議会介護給付費分科会で、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の「医療連携体制加算」を見直す方針を明らかにした。入居者の状態に合わせた医療ニーズに対応するため、手厚い看護体制の事業所を評価する区分を新設する。

 グループホームでは、医師や看護師の配置が義務付けられていない。しかし、入居者の平均要介護度が3に近づいているなど重度化が進む傾向があり、医療ニーズへの対応が急務となっている。現場からは看取り対応ができる体制整備を求める声や、入居前からのかかりつけ医への通院にかかる対応を評価するべきとする声も上がっているほどだ。また、退居者が挙げる理由でもっとも多いのが「医療ニーズの増加」、ついで「長期入院」であり、医療ケアの必要性が高まっていることが浮き彫りとなっている。

 実際、現場での医療ニーズ対応は進んでおり、厚労省調査によれば80.6%の事業所が「医療連携体制加算」を取得している。ただし、現行の算定要件である看護師確保の手段は「常勤」がわずか13.1%。「非常勤」が30.8%ともっとも多く、ついで「訪問看護ステーション(同一・関連法人外)と契約」が19.1%と迅速な対応ができるとは言えない状況となっている。

 今回の厚労省の提案は、そうした現場の状況を冷静に判断し、迅速な処置が可能な医療体制を促したと見るべきだろう。その姿勢は、具体的な算定要件として「常勤看護師1名以上配置」、「たん吸引など医療的ケアを提供している実績がある」を挙げたところに表れている。たん吸引を挙げたのは、退居原因となる「事業所が対応できなかった医療ニーズ」として「喀痰吸引」が18.1%と多いことが背景にあり、介護現場に欠かせない医療ケアになっていることが改めて示された形だ。

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