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医療経営情報(2017年11月16日号)

2017/11/28

◆訪問看護、「退院時共同指導加算」などを同一法人でも算定可能に
地域包括ケアシステム構築をスムーズに進めるための施策

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
11月15日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、在宅医療のあり方について議論が展開された。中でも注目は、これまで同一法人だと算定できなかった「退院時共同指導加算」などの訪問看護ステーションと医療機関の連携に関する加算を見直す方針が打ち出されたことだ。すでに訪問看護ステーションが傘下にある法人にとって朗報であることはもちろん、他の医療機関にとっても事業拡大しやすくなる可能性がある。

 訪問看護ステーションと医療機関との連携に関する加算としては、「退院時共同指導加算」「在宅患者連携指導加算」「在宅患者緊急時等カンファレンス加算」「精神科重症患者早期集中支援管理連携加算」がある。これらは、訪問看護ステーションと医療機関が同一法人である場合や、開設者が同じ人物もしくは親族である場合は算定することができなかった。同じ経営母体である場合、患者の移動を意図的に行うことで不正に診療報酬を受け取ることを防ぐことが目的だ。

 しかし、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年を目前に控え、充実した在宅ケアを提供できる施設の整備は急務となっている。地域包括ケアシステムの構築をスムーズに進める意味でも、病床の機能分化と連携強化は欠かせない。不正の防止に汲々とするよりも、組織の素性に関わらず適切な在宅ケアに対する評価を明確化することで、連携を推し進めることを優先しようという考えだ。

 厚労省にとっては苦肉の策とも言えるが、その背景にあるのは、回復期病棟が不足している状況。5月に開催された厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の会合では、2025年までに必要な病床数を回復期は37万5246床としているが、22016年の病床機能報告では13万9062床しかなかった。一方で、急性期は58万416床、高度急性期は17万254床あり、いずれも2025年の病床必要量予測より大幅に上回っている。回復期への機能転換が早急に求められていることは明らかなため、厚労省は“カンフル剤”の注入とも思える提案をしてきたのではないか。

◆訪問看護、24時間対応の評価を「24時間対応体制加算」に一本化
「複数名訪問看護加算」には算定回数の制限を設ける方針

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、11月15日の中央社会保険医療協議会総会で訪問看護の24時間対応の評価や、「複数名訪問看護加算」についての見直し案を提示。24時間対応については、評価を「24時間対応体制加算」に一本化する。「複数名訪問看護加算」は、これまで設けられていなかった算定回数の制限を設ける意向だ。

 訪問看護で、もっとも利用者に求められている24時間対応に対する評価は、「24時間対応体制加算」(5,400円)と「24時間連絡体制加算」(2,500円)がある。後者の「24時間連絡体制加算」は電話相談に常時対応できる体制を評価するもので、前者の「24時間対応体制加算」は、それに加えて緊急時訪問看護に対応できる体制を整えている訪問看護ステーションを評価している。

 いずれも利用者数は右肩上がりに増加しているものの、その9割以上は「24時間対応体制加算」。「24時間連絡体制加算」は8.3%と1割未満に過ぎず、訪問看護に求められているのが緊急時の訪問であることは明らかだ。医療費の削減を促すためにも在宅医療の推進は急務であるため、「24時間連絡体制加算」を廃止して「24時間対応体制加算」に一本化しようというのが厚労省の考えだろう。現時点でもほとんどの訪問看護ステーションが緊急時に訪問できる体制を整えていることから、会合に参加した委員からも反対意見はなく、厚労省提案のとおり見直される可能性が高い。

 「複数名訪問看護加算」が見直されるのは、看護補助者による算定が急激に増えていることが影響している。1カ月当たり400回以上算定しているレセプトが存在。休みなく毎日複数名で看護したとしても、1日13回ということになり、不正な請求である可能性すらあるため、厚労省は算定回数の制限を打ち出した。

これまで、末期がん患者や人工呼吸器装着患者などは「複数名訪問看護加算」の算定回数の制限がなかった。回数制限がない場合の加算額は1回3,000円のため、400回だと1か月120万円となる。全体の算定回数も急激に増えており、2013年には10,000回以上だったのが2015年には25,000回以上、そして今年は暫定値ながら45,000回以上となっている。算定回数の制限を設けることで、この伸びを抑制しようというわけだ。

 具体的な算定回数案は出されていないが、厚労省はレセプト1枚当たりの算定回数を表すグラフの中で、10回以内が7割以上という注釈を添えた資料を提示している。この10回を制限回数として提示してくる可能性が高いだろう。

◆「医療的ケア児」への評価引き上げへ
「長時間訪問看護加算」の対象拡充も検討

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、11月15日の中央社会保険医療協議会総会で、いわゆる「医療的ケア児」に対する診療をより手厚く評価する方針を明らかにした。「長時間訪問看護加算」の対象拡充も視野に入れている。

 「医療的ケア児」とは、NICU(新生児集中治療管理室)に長期入院後、引き続き人工呼吸器を使用したり、胃ろうなどの措置をしたりすることで、日常的にたん吸引や経管栄養などの医療的ケアが必要な障害児のことを指す。昨年の厚労省調査によれば、全国に約1万7,000人の医療的ケア児がいると推計されている。

 ただし、小児に対する訪問看護は、家族へのケア方法の指導や精神的なサポートが必要なほか、学校との調整も行う必要があり、通常の訪問看護よりも難易度が高いと言われている。実際、厚労省の調査によれば、小児の訪問看護が困難だと回答した訪問看護ステーションは約半数にのぼっており、小児看護の経験を持つスタッフが少ないことや、介護におけるケアマネージャーのようなコーディネーターがいないことなどがその理由として挙げられている。

 一方で、訪問看護ステーションによる訪問看護を受けている小児(15歳未満)の利用者数は年々増加。10年前の2007年には3,302人だったが、今年はすでに暫定値で1万4,415人と4倍以上に増えている。2年前の2015年からも4,000人以上増加と、まさに右肩上がりの様相を呈しており、重度な患者の割合も増している状況だ。

 小児の訪問看護に対する評価としては「長時間訪問看護加算」があり、対象は15歳未満の超重症児または準超重症児、悪性腫瘍患者、気管切開患者、特別訪問看護指示書が出ている場合などが該当する。しかし、加算できるのは週1回のみ(15歳未満の超重症児または準超重症児は週3回)、1回の訪問看護時間が90分以上の場合に限られている。厚労省は、この対象を拡充するとともに加算の回数を増やすことで「医療的ケア児」の診療報酬を手厚くしたい考えだ。とはいえ、人材不足も問題となっているため、小児看護のスペシャリストを育成するための手立てを講じる必要もあり、そのための方策をどうするかが今後の焦点となってくると思われる。

◆日病協、入院基本料の“大幅引き上げ”を強く要望
「大小を問わず病院の経営状況は急激に悪化」と訴える

――日本病院団体協議会
11月9日、日本病院団体協議会(日病協)は厚生労働省保険局長あてに「平成30年度診療報酬改定に係る要望書」を提出。多くの病院の経営状況が急激に悪化しているとして、すべての病院の病棟入院基本料の大幅引き上げが不可欠だと主張した。

 日病協が次期診療報酬改定に関して要望書を提出するのは、今年2回目。5月に提出した1回目の要望書には盛り込まれていなかった「大幅引き上げ」を強く要望したのは、「医師の働き方改革」を早急に実施しなければならない状況になったことが大きい。医師をはじめとする医療従事者が働きやすい環境を整えるためには、財源が必要だからだ。さらに、10月26日の経済財政諮問会議で、来年度の春季労使交渉(春闘)について安倍晋三首相が「3%の賃上げ実現を期待」と表明したことも影響している。賃金アップに見合った診療報酬の引き上げを求めるのは自然の流れだ。日本医師会も、日病協と同様に病院の経営状況が悪化していることを理由に、プラス改定を求めていく姿勢を崩していない。

 しかし、11月8日に公表された医療経済実態調査によれば、民間病院はプラス0.1%とわずかながら黒字となっており、赤字に苦しんでいるのは国公立病院が中心であることが明らかになっている。また、一般診療所はプラス13.8%となっており、医療業界全体で見れば好調と受け取れる結果だ。日病協は、ここまでの差が生じている理由を入院施設の有無に求めているのかもしれないが、民間病院が赤字でないことを踏まえると説得力に欠けると言わざるを得ない。

 財務省の財政制度等審議会も同様に考えているようで、赤字に苦しむ国公立病院で患者数が減少していることを挙げ、収益悪化は経営努力が足りないためだと指摘。病床機能の転換やダウンサイジングを図ることで経営改善を図るべきだとし、厚労省にマイナス改定を要求している。医療費が年々膨張していることもあり、全病棟の入院基本料引き上げが実現する可能性は低いのではないだろうか。

 なお、日病協は主に診療報酬に関する要望活動を実施している組織。今回提出された要望書には、以下の14の団体が署名している。

国立大学附属病院長会議
独立行政法人国立病院機構
一般社団法人公私病院連盟
公益社団法人全国自治体病院協議会
公益社団法人全日本病院協会
独立行政法人地域医療機能推進機構
一般社団法人日本医療法人協会
一般社団法人日本社会医療法人協議会
一般社団法人日本私立医科大学協会
公益社団法人日本精神科病院協会
一般社団法人日本病院会
一般社団法人日本慢性期医療協会
一般社団法人日本リハビリテーション病院・施設協会
独立行政法人労働者健康福祉機構

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