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介護経営情報(2017年9月29日号)

◆安倍首相、介護職員のさらなる処遇改善を公約
2020年代初頭までに50万人分の「介護の受け皿」を整備

 

9月25日、安倍晋三首相は衆議院の解散に踏み切ることを表明した首相官邸での会見で、介護職員のさらなる処遇改善を進めると明言。他の産業との賃金格差を解消し、2020年代初頭までに50万人分の「介護の受け皿」を整備したいとした。

安倍首相は、介護と子育てを「現役世代が直面する2つの大きな不安」と位置づけ、その解消のため2兆円規模の政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと転換すると宣言。そのための財源として、2019年10月の消費税率引き上げを決行するとした。消費税を現在の8%から2%引き上げて10%とすることによって税収は5兆円強になるとし、その5分の1を社会保障の充実に回したいとしている。

実際、これまで安倍政権は月額約4万7,000円の処遇改善を実現させてきた実績がある。今年も約300億円の予算を組んで臨時に介護報酬改定を行い、月額平均約1万円を上乗せした。それでも全産業平均の賃金と比べると、10万円以上の差があるのが現状であり、どの程度の賃金引き上げをどのタイミングで行うかが注目される。

ただし、消費税率引き上げを予定どおり実施したとしても、それまでの約2年間でどのような対策を打つのか、その財源はどこから確保するのかは不透明なままだ。衆議院総選挙の結果次第では自民党が政権を担えない可能性もあり、今回の公約が「空手形」に終わってしまう懸念もある。とはいえ、いわゆる2025年問題を目前にして、介護人材が圧倒的に不足しているのは確かであり、その状態を放置しておくと日本の社会保障が崩壊するおそれもあるため、首相自ら危機感を吐露したと見るべきだろう。

また、加藤勝信厚労相も9月26日の大臣会見で介護職員の処遇改善に意欲を見せた。しかし、同時に言及した介護報酬改定については、「介護のそれぞれの事業体の経営実態などを踏まえながら」「必要な財源を確保し、どう効率化を進めるかという視点にも立って」議論をしていくと述べるにとどまった。すでに介護報酬改定をめぐっての議論が第2ラウンドに入っていることもあるが、衆議院解散が決まったことでもうすぐ大臣でなくなることが確定的になったことによる“やる気のなさ”がにじみ出ているようにも見える。この消極性が介護報酬改定の議論に水をささないか、懸念されるところだ。

 

◆有料老人ホームは1,919施設増 居宅介護事業は前年比2.3%増
在所率は83.5%と前年比0.8%増 2016年社会福祉施設等調査

――厚生労働省 社会統計室
9月27日、厚生労働省は2016年の「社会福祉施設等調査」の結果を公表。有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅以外)は前年に比べて1,919施設、18.0%増加という結果となった。在所率は83.5%となっている。居宅介護事業は前年に比べて514事業所、2.3%増という結果になった。

昨年発表された2015年の同調査の結果と比較すると、事業種別でもっとも多い居宅介護事業が若干伸び悩んだことがわかる。2015年調査では、居宅介護事業は22,429事業所。その前年に比べて762事業所増加していた。つまり、2015年に比べて2016年は参入した事業所が248も減ったということになる。参入しやすい一方で倒産件数が多いのも居宅介護事業の特徴だが、参入数自体も減っていることが浮き彫りにされたというわけだ。

一方、有料老人ホームの増加数は、2015年調査に比べてほぼ倍増。2015年調査での増加数は1,019施設(全体で10,651施設)、2016年調査では1,919施設(全体で12,570施設)となっている。これは、人員配置基準が特に設けられていない住宅型有料老人ホームの増加が主な要因と考えられる。在所者数を定員で割った在所率がわずかながら向上したのも、その成果だろう。

同調査の「経営主体別施設数」を見ると、有料老人ホームがビジネスとしても有望と見られていることもわかる。有料老人ホーム以外の種別では、社会福祉法人の割合が高いが、有料老人ホームは「営利法人(会社)」が82.7%を占めているからだ。2015年調査では83.5%だったため若干減ってはいるが、倍近く増えていることを踏まえれば、民間企業の参入意欲が削がれたとまでは言えない。むしろ、民間企業の介護業界への参入でもっとも注目されているのが有料老人ホームであることは間違いないと言える。ただし、前述したように住宅型有料老人ホームには人員配置基準がないため、適切な介護が受けられる保証がないのも事実。「入居者の要介護度が進んだときは介護型有料老人ホームに移ってもらえばいい」と考えられているのが一般的であり、本質的な意味での介護施設となっていないのが問題だ。今後、このあたりのケアも課題となってくることが予想されるため、今のうちに対策を打っておく必要があるのではないだろうか。

 

◆介護保険外付けサービスの活用チェックリストを公開 高住連
住宅型有料老人ホームやサ高住を運営する事業者向けに

――高齢者住まい事業者団体連合会
9月21日、高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)は「高齢者向け住まい事業者の外付けサービスの適正な活用チェックリスト」をウェブ上で公開した(URLを記事末尾に記載)。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を運営する事業者向けで、コンプライアンス上注意するべきポイントを整理している。

高住連がチェックリストを作成した背景にあるのは、今年2月に大阪府が公表した報告書。サ高住や住宅型老人ホームで、個々のひと月の支給限度額に占める実際の介護費の割合はサ高住が平均86.0%、住宅型老人ホームが同90.7%となっており、要介護3以上の1人あたりの介護費がいずれも特養の入所者より高くなっていた。この要因となっているのが、“囲い込み”と呼ばれる介護保険の外付けサービスの過剰な提供だ。

この大阪府の動きを受け、財務省は4月の審議会で「実態調査を行ったうえで適正化に向けた対応を検討するべき」と厚労省に要求。厚労省は同月の社会保障審議会介護給付費分科会で対策強化を検討していく方針を示し、8月28日に事務連絡でサ高住事業者に警告を発した。今後状況が変わらなければ「登録基準を強化」する可能性も示唆している。慌てた事業者団体が、業界内を統制するための策としてチェックリストを作成したというわけだ。

とはいえ、このチェックリストは細かく丁寧につくられている。「介護保険サービスの自由な選択の確保」「介護保険サービスの適正な利用」「(通所介護)アセスメント・入居者の希望による利用」「(通所介護)正しい職員配置(デイと住まい)」「(訪問介護)アセスメントに基づくケアプラン、ケアプランに基づくサービス」「(訪問介護)訪問介護は一対一 別に高齢者向け住まい職員」「(訪問介護)入居者の状態像にあった、入居者ごとのケアプラン」「(小規模多機能・定期巡回型)自由な選択の確保」の項目で構成され、それぞれNG例も盛り込まれているためわかりやすい。今後、参入を計画している事業者にとっても参考となる内容で、社員向けの研修資料としても使用できそうだ。

●高齢者向け住まい事業者の外付けサービスの適正な活用チェックリスト/高住連作成
http://www.yurokyo.or.jp/news/pdf/20170921_01.pdf

 

◆現場リーダー育成のため、介護福祉士の養成カリキュラム見直しを
介護人材の裾野拡大のため、入門資格の来年度導入が確定的に

――厚生労働省 社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会
9月26日、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会が開かれ、昨年10月からの議論の内容を取りまとめた報告書を発表。介護福祉士の養成カリキュラムを見直すことや、介護職員初任者研修の手前として位置づける介護人材の入門資格を来年度から導入することを確認した。

取りまとめた報告書のタイトルは「介護人材に求められる機能の明確化とキャリアパスの実現に向けて」。同委員会では、団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年に介護人材が約38万人不足すると推計されていることを踏まえ、介護人材の確保を喫緊の課題と捉えて検討を進めてきた。

検討の方向性として示されてきたのは、介護人材の構造転換。これまでの専門性が不明確で役割が混在し、キャリアパスが描きづらい状況を「まんじゅう型」と規定し、専門性の高い人材がキャリアアップしていき、中高年を中心とした人材が介護業務に携われるよう裾野を拡大する「富士山型」へ変えていくとしていた。

その方針にそって議論されてきた中で、ポイントとなるのが「介護職員のリーダー育成」および「入門資格」である。リーダーに必要なのは「観察力、判断力、業務遂行力、多職種連携力、人材及びサービスのマネジメント力など多様な能力」とし、理論的な知識・技術を修得している介護福祉士が担うのが適当だと結論づけてきた。しかし、現行の介護福祉士養成カリキュラムではリーダーシップやフォロワーシップを十分に学ぶことができないため、カリキュラムの見直しを図るべきだというわけだ。それに伴い、養成課程における教材開発や教員側の養成も必要だとしている。

「入門資格」については、130時間を要する介護職員初任者研修よりも受講しやすいものにすることが確認された。内容については、「基本的」であるとともに、「介護未経験者が介護分野への参入の障壁となっていることを払拭できる」ものとすることを重視。介護保険等の制度や、トイレへの誘導や衣服の着脱といった基本的な技術、認知症に関する理解、緊急時の対応などを挙げている。また、入門資格からステップアップしやすいよう、介護職員初任者研修や実務者研修の受講科目の読み替えが可能となるような配慮も行う予定となっている。いずれにしても、介護事業者のみならずスクール業界にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、今年度中に固められるカリキュラムや資格の要件がどうなっていくのか、今後の議論から目が離せない状況が続く。

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