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医療経営情報(2017年9月28日号)

2017/10/11

◆ 医療部会、次期診療報酬改定の主要検討テーマを確認 「効率化」「医師の働き方改革」が重要なキーワードに

――厚生労働省 社会保障審議会医療部会
9月15日、厚生労働省の社会保障審議会医療部会が開かれ、次期診療報酬改定の基本方針を策定するための主要検討テーマが確認された。今月6日に開かれた医療保険部会で示された内容とほぼ変わらないものの、「効率化」と「医師の働き方改革」が今回の改定で重要なキーワードとなっていることが改めて浮き彫りとなった。

主要検討テーマとして挙げられたのは、大きく分けて「地域の医療提供体制のあるべき姿(地域医療構想等)の推進」「医師の働き方改革について」「医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)の施行に関する事項について」「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)の施行に関する事項について」の4点。

「地域の医療提供体制のあるべき姿(地域医療構想等)の推進」では、医師偏在対策や専門医について検討を進めることが打ち出されており、「医療の支え手」である医療従事者をいかに効率的に配置し、的確な医療の提供につなげるかを重視しているかが窺える。

「医師の働き方改革について」では、2019年3月までを目処に時間外労働規制の具体的なあり方や、労働時間の短縮策について検討したいとした。これについては、8月に第1回検討会が開催された「医師の働き方改革に関する検討会」で議論される内容もリンクしてくるが、この日の会合では早くも委員間で意見の相違が見られた。「地域医療の提供体制が崩壊しないように」するには労働時間短縮は難しいとする意見と、「地域医療のために医師が犠牲になってはならない」との意見があり、短時間で意見の一致までたどり着けるか疑問を抱かせる状況となっている。タスクシフティングやタスクシェアリングといった対策についても、「つぎはぎ的」な負担軽減策になることを懸念する意見があがっており、どのように調整を行っていくのか注視していく必要があるだろう。

「医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)の施行に関する事項について」については、特定機能病院におけるガバナンス体制の強化や、医療に関する広告規制の見直しなどが俎上に載せられる。「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)の施行に関する事項について」は、来年4月に創設される介護医療院の要件について議論を進めていく予定だ。

診療報酬の改定は、社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で基本方針の策定を行う。そのための議論を12月頃まで展開し、取りまとめたうえで中央社会保険医療協議会の承認を得る流れとなっている。前回の改定時は、2015年12月7日に基本方針の策定を終えており、今回も同じタイミングでのスケジュール進行を計画している。

 

◆ 診療報酬請求書の記載要領を一部改正 医療療養病床の居住費引き上げで 「境界層該当者」の取り扱い

――厚生労働省保険局
9月20日、厚生労働省保険局は「『診療報酬請求書等の記載要領等について』の一部改正について」と題した通知を発出。医療療養病床入院患者の「境界層該当者」が審査支払機関に認識できるよう、診療報酬請求書の摘要欄に「境界層該当」または「(境)」と記載することを求めている。

医療療養病床に入院する65歳以上の患者の居住費負担額は、10月1日から変更となる。これまで、医療の必要性が低いとされる「医療区分I」は1日あたり320円、それ以外は0円だったが、10月1日から「医療区分I」は1日370円に、「医療区分IIおよびIII」(指定難病者以外)は1日200円に引き上げられる。(「医療区分IIおよびIII」も来年4月から「医療区分I」と同様、1日370円に引き上げられる予定)。ただし、指定難病者や老齢福祉年金受給者、そして「境界層該当者」は0円のままで変わらないため、審査支払機関がすぐ見分けられるようにするのが、今回の通知の目的だ。

指定難病者や老齢福祉年金受給者を特記することなく、「境界層該当者」だけを見分けられるようにするのは、生活保護との関係があるからである。「境界層該当者」とは、それを支払うと生活保護を受けなければならない所得層に該当する人のこと。今回で言えば、本来「医療区分I」に該当しているものの、1日370円払うべきところを0円にすると生活保護が必要なくなるのであれば、「境界層該当者」になるというわけだ。これまでならば、「医療区分I」とそれ以外で区別すればよかったのが、「医療区分IIおよびIII」も負担額を必要とするようになるため、審査支払機関の事務作業にかかわる負担を考慮しての措置だと思われる。

なお、「境界線該当者」の健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証、船員保険限度額適用・標準負担額減額認定証の適用区分欄には「オ」または「I」の記載に加え「(境)」と、国民健康保険限度額適用認定証には「オ(境)」、国民健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証の適用区分欄には「I(境)」、後期高齢者医療限度額適用・標準負担額減額認定証の適用区分欄には「区分I」に加えて「(境)」との記載がされているため、必ずチェックしたい。

 

◆ 医師の働き方改革、産科および救急科の時間外労働が重要テーマに     裁量労働制の検討も視野 応招義務のあり方も見直す方針

――厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会
99月21日、厚生労働省の「第2回医師の働き方改革に関する検討会」が開かれ、今後のスケジュールや主な論点が提示された。焦点となる時間外労働に関しては、産科や救急科の扱いが重要テーマとなることが確認されるとともに、裁量労働制が導入される可能性も示唆。応招義務のあり方も見直す方針も明らかとなった。

「医師の働き方改革」は、厚労省の来年度予算概算要求でも新たに項目が設けられているほか、次期期診療報酬改定の議論においても重点項目となっている。8月に開催された同検討会の第1回会合では、「極端な規制は地域医療を崩壊させる」として、正当な理由がなければ診療を拒むことができない「応招義務」を尊重すべきとの意見も出ているが、そこにもメスを入れて改革を進めたい意向を示している。

また、この日の会合では、昨年12月に行われたいわゆる「医師10万人調査」の結果も資料として提示。それによると、週60時間以上勤務している常勤医師は39%であり、そのほとんどが病院の常勤医師であることが明らかとなっている。また、法定労働時間である週40時間を超えると、待機時間の占める割合が大きくなることもわかっており、当直勤務のあり方も俎上に載せられることが予測される。

診療科によって勤務時間の格差が生じていることも、論点として提示された。週60時間以上の割合で見ると、産婦人科や救急科、外科系の半数程度の常勤医師の労働時間が長いことが明らかとなっている(産婦人科53.3%、救急科47.5%、外科系46.6%)。また、臨床研修医で週に60時間以上勤務している医師は48.0%を占めているのも見逃せない。臨床研修医が自殺する事件が相次いでいることも踏まえると、臨床研修のあり方も見直す方向と考えておいたほうが良いだろう。

同検討会は来年1月までに中間整理を行い、再来年2019年の3月までに報告書をとりまとめる予定。もちろん、それまでの議論の内容は診療報酬改定にも影響を与えることとなるため、この先提示される改革案には引き続き注目していく必要があるだろう。

 

◆ 糖尿病予備群、前回調査に比べて100万人減特定健診推進の成果か 「糖尿病疑いが強い」は前回より50万人増

――厚生労働省健康局
9月21日、厚生労働省健康局は「平成28年『国民健康・栄養調査』」の結果を発表。いわゆる糖尿病予備群(糖尿病の可能性を否定できない者)の人数が前回の2012年調査に比べて100万人減少し、約1,000万人と推計された。一方、糖尿病有病者(糖尿病が強く疑われる者)は前回調査から50万人増の約1,000万人と推計されている。

糖尿病有病者の数は、20年前の1997年から高齢化などの影響で年々増加。1997年には約690万人だったが、前回調査時には約950万人、そして今回調査では約1,000万人となっている。ただし、2002年調査時は約740万人、2007年調査時は約890万人と150万人も増えたのに比較すれば、約50~60万人増と伸びは緩やかになっている。

糖尿病予備群の数の推移を見ると、やはり2007年の調査が分岐点となっている。2002年調査時は約880万人だったのが、2007年は一気に伸びて約1,320万人に達した。その後、2012年調査時には約1,100万人、そして今回の2016年調査では約1,000万人と減少傾向にある。

この変化をもたらしたのが、2008年度からの特定健診(特定健康診査)の導入にあることは明らかだろう。6月に健康保険組合連合会が発表した「平成27年度 特定健診・特定保健指導の実施状況に関する調査分析」によれば、特定健診の実施率は72.8%。メタボリックシンドローム予防策として、一定の成果を挙げていることは間違いない。

しかし、同調査によれば、特定保健指導の実施率は15.2%。これは、特定健診の受診はするものの、医師や保健師による改善支援が実施されていないことを意味する。つまり、糖尿病予備群の減少には成果を挙げているものの、「糖尿病の疑いがある」人に対する支援が進んでいないということであり、今回の「国民健康・栄養調査」でそのことが裏づけられたと言える。

保健師の絶対数が足りないため、特定保健指導の実施が難しいという現状もあるが、次期診療報酬改定では「生活習慣病の重症化予防」が重点課題として挙げられており、該当項目の点数引き上げにつながる可能性もある。そうした状況を踏まえれば、医療機関としては、保健師の増員を図りながら特定保健指導の促進に力を入れることも視野に入れるべきではないだろうか。

 

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