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医療経営情報(2017年9月14日号)

2017/9/28

◆ 2015年度の国民医療費 42兆3,644億円 9年連続で過去最高を更新 薬局調剤費が影響 1人当たり医療費は33万3,300円

――厚生労働省政策統括官付参事官付保健統計室
9月13日、厚生労働省は「平成27年度 国民医療費の概況」を発表。2015年度の国民医療費が42兆3,644億円ということが明らかになった。9年連続で過去最高を更新する数値で、過去最高の伸びとなった薬局調剤医療費が大きく影響している。1人当たり医療費は33万3,300円とこちらも9年連続で過去最高を更新。前年度の32万1,100円に比べて1万2,200円の増加となっている。

国民医療費は、1年間で保険診療の対象となる病気やけがの治療で要した費用の総計。2014年度が40兆8,071億円だったため、1兆5,573億円増加した計算となる。増加率は3.8%で、この伸び率は過去5年間でもっとも高い。

診療種別に見ていくと、もっとも伸び率が高かったのは訪問看護医療費。18.2%増加しており、地域包括ケアシステム構築に向かって在宅医療を推進している結果が出た格好だ。ただし、金額は2014年度が1,256億円に対し、229億円増の1,485億円となっており、全体的な構成割合としては低い。国民医療費の伸びに影響を与えたというほどではなく、むしろより多くの医療機関での取り組みが求められるとも言える。

次に伸び率が高かったのが薬局調剤医療費。2014年度が7兆2,846億円だったのに対し、9.6%増の7兆9,831億円。金額にして6,985億円増であり、全体の伸びの44%以上を構成している。この原因となったのは、高額薬剤の出現だ。2014年7月に承認されたがん治療薬のオプジーボ、2015年7月に承認されたC型肝炎薬のハーボニーなどが、大幅な伸びを後押ししている。

ただし、高額薬剤をめぐっては、薬価が相次いで見直されている。厚労省は、来年度以降薬価改定を毎年実施する方針を明らかにしており、このまま薬局調剤医療費が伸び続ける可能性は低い。そうなると、今回の調査で訪問看護医療費、薬局調剤医療費についで伸び率が高かった病院の入院外医療費の抑制が課題になってくることは明白で、現在議論が進められている診療報酬改定の議論にも影響を及ぼしそうだ。

 

◆ ICTを利用した遠隔での死亡診断書交付が可能に 看護師が立ち会って代筆 事前に同意書の取得が必要

――厚生労働省医政局
9月12日、厚生労働省は「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を公表。テレビ電話などを活用する遠隔での死亡診断書交付が可能となった。看護師が立ち会って代筆することで対応する。なお、遺族の同意書を取得する必要もある。

死亡者の埋葬または火葬を行うには、死亡届を市町村長に提出して許可を得なければならないが、この際に死亡診断書の添付が求められる。死亡診断書は、医師が対面で診察しなければ交付できないため、医師不足の地域では遺体を保存して医師の死後観察を待たなければならない。そうした事情があることから、自宅での看取りを断念し、医療機関に入院するケースも増えている。そこで、昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」で遠隔での死亡診断書交付ができるよう規制の見直しを決めていた。

前述したように、死亡診断書作成は医師の対面による診察が法的に定められている。しかし厚生労働省は、遠隔診療も法に抵触していないとすでに判断していることから、同様の法解釈を死亡診断にも適用するとした。

なお、厚労省は、ICTを利用した死亡診断を行うには、5つの要件すべてを満たす必要があるとしている(※5つの要件については記事の最後に掲載)。そのうえで、死亡前に本人および家族が記入した同意書を取得しなければならない。死亡前に本人に確認をとる点については今後議論の対象になる可能性も考えられる。また、立ち会いおよび死亡診断書の代筆を行う看護師は、法医学に関する一定の教育を受ける必要があるともしている。今年度中に看護師に対する研修期間や受講期間を決めるなど、体制を整備していく方針だ。

[ICTを利用した死亡診断等を行う際の要件]
(a) 医師による直接対面での診療の経過から早晩死亡することが予測されていること
(b) 終末期の際の対応について事前の取決めがあるなど、医師と看護師と十分な連携が取れており、患者や家族の同意があること
(c) 医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること
(d) 法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め医師とあらかじめ決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること
(e) 看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等の ICT を活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること

 

◆ 支払い意思額調査の質問形式「よりバイアスが少ない」ものに     「提供回数が多いほど在宅復帰率が高い」データが提示される

――厚生労働省中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会
9月13日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会が開かれた。厚労省は、費用対効果評価制度の試行的導入で用いられる評価基準の設定方法や、支払い意思額調査の質問項目について提案。支払い意思額調査の質問形式は、よりバイアスが少ないものにすること、参考にする諸外国の評価基準については、医療体制や生活状況が日本と近い国を選びたい方針を示した。イギリスを参照対象としたい意向だ。

費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたり、適正な価格設定を行うための仕組み。現在は、来年度からの本格導入を目指して試行的導入が進められており、すでに保険収載されている13品目(医薬品7、医療機器6)を対象とした分析が行われている。しかし、評価の肝となる「総合的評価(アプレイザル)」についての検討が進まず、議論を積み重ねている段階だ。

焦点となっているのは、「総合的評価(アプレイザル)」の評価基準の設定方法。基準値を決めるには「支払い意思額(治療法に対して支払えると思う金額)」を調査する必要があるが、厚労省が7月に提示した調査票案に対して反対意見が続出。「公的医療保険から支払われる治療法の費用に応じて、あなたが負担する保険料は増加する可能性があります」と記載されているため、医療保険の仕組みに詳しくない人には先入観を与える恐れがあると指摘されていた。

そうした背景もあり、厚労省は「個人の自己負担ではなく社会としての負担を尋ねる調査」とすること、「バイアスが少ない質問形式」とすることを提案。質問形式については、特定の金額を提示して支払うべきと考えるかどうかを尋ねる「二段階二項選択法」を採用したいとした。

また、8月23日の同部会では、来年度の本格導入まで時間が残されていないため諸外国の状況を参考にしてアプレイザルを行うことを確認したが、今回、どの国を参考にするかを提示。「具体的な評価基準が公開されている」「できるだけ医療体制や生活の状況等が日本と近い国」を参考にするべきとした。費用対効果評価制度を導入していて、具体的な評価基準を公表している国としてイギリス、ポーランド、アイルランド、スロバキアを挙げているが、8月の部会では、いち早く費用対効果評価に取り組んだ国としてイギリスを挙げているため、そのままイギリスを参照国とする可能性が高い。

なお、同部会に提出された厚労省の資料には、諸外国の状況を示した表に注釈として「支払い意思額の調査を元に評価基準を設定したことが確認されている国はない」と記されている。来年度の本格導入時までに、支払い意思額調査の結果を評価基準に反映できないことのエクスキューズともとれる記載であり、裏を返せば来年度の導入を死守したい意向の表れともとれる。今回の部会に出席した委員からは、厚労省案をそのまま認められない旨の発言も出ており、議論が尽くされないまま見切り発車での制度スタートを迎えそうな状況となってきたのではないか。

 

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