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医療経営情報(2017年9月7日号)

2017/9/20

◆ 厚労省、次期診療報酬改定の基本方針について叩き台を提示 「医師の働き方改革」が重点項目に 業務負担軽減や医療・介護連携推進も

――厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会
9月6日、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会が開かれ、次期診療報酬改定の基本方針について叩き台が示された。「医師の働き方改革」が重点項目となったほか、全体を通して「効率化」が重要なキーワードとなっている。また、来年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定が実施される節目の年。実質的には、いわゆる「2025年問題」対策のための最後の同時改定となるため、医療と介護の役割分担と連携も重要テーマに挙げている。

今回示された基本方針の叩き台で注目したいのは、「医療従事者の業務負担軽減」を重点項目に挙げたことだろう。これまでは、医療の効率化の副次的な産物として言及されるに過ぎず、4月の経済財政諮問会議でも重点項目に挙げられていなかった。6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針2017)」で、タスクシフティング、タスクシェアリングの推進および複数医師によるグループ診療、遠隔診療支援などで医師の柔軟な働き方を支援するとした程度だ。

にわかに「医師の働き方」が重視されるようになったのは、医師の過労が問題となっていることも影響している。研修医の過労死も繰り返され、過大な残業時間が横行しているのも問題視されてきた。奇しくも部会が開かれた6日に大阪の国立循環器病研究センターで月300時間、年2070時間までの残業を可能とする労使協定を勤務医と締結していることが判明。これは厚生労働省の「過労死ライン」は月80時間のため4倍近く。労働日数の上限は年間280日のため、単純計算で1日7時間以上残業することになる。

医師は理由なく診療を断れない「応招義務」があるため、3月に働き方改革実現会議で決定された「働き方改革実行計画」で残業規制の対象外となった。厚生労働省は9月下旬に招集される予定の臨時国会で、残業時間の罰則付き上限規制の法案を提出予定だが、医師への規制適用後は改正法施行5年後に適用される見込み。しかし、国立循環器病研究センターのような事例が今後も報じられれば、適用が前倒しされる可能性もあるだろう。

このほか、タスクシフティングについてはインセンティブ付与が、遠隔診療については評価の新設が確定的。いずれも、どのような要件が設けられるか注目される。

 

◆ 1DPCデータ、提出義務の対象拡大へ 回復期リハビリテーション病棟や療養病棟も提出義務化か

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会入院医療等の調査・評価分科会
9月6日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会入院医療等の調査・評価分科会が開かれ、DPCデータ提出の対象範囲について議論を展開。回復期リハビリテーション病棟や療養病棟にも提出を義務付ける可能性が高くなった。

DPCデータ提出義務の対象は、診療報酬改定が行われるごとに拡大してきている。2012年度の改定からDPC病棟以外でも提出が可能となったのを皮切りに、2014年度からは7対1病棟、地域包括ケア病棟が、2016年度からは10対1病棟でも義務化された。また、2016年度改定では、「データ提出加算」の算定対象が全病棟に拡大されている。

そもそも、医療に関するデータの収集や利活用については、年々重要視される度合いが高まってきている。効率的な医療を促すとともに、とりわけDPCデータに関しては診療報酬改定の議論において重んじられるようになってきた。医療費が膨らみ続けている現状を踏まえ、なんとか抑制するためのデータとして活用したいのがその理由だ。より多くの医療機関からデータを収集するため、データ提出加算も見直されており、2016年度診療報酬改定でも加算点数が引き上げられている(※)。

今回の分科会で特に取り上げられたのが、DPCデータ提出が義務付けられていない回復期リハビリテーション病棟および療養病棟。現在、回復期リハビリテーション病棟を有する病院の病床規模別にデータ提出の現状を見ると、200床未満の病院は56%、200床以上の病院は83%が提出済み。療養病棟を有する病院は、200床未満が24%、200床以上は40%が提出済みとなっている。この統計を踏まえ、分科会では義務付け範囲を拡大すべきという意見が多数を占めており、来年度の診療報酬改定時に義務付けられる可能性が極めて高い。今後は、データ提出加算の評価見直しが行われるかどうか、また、どの程度の経過措置が設けられるのかが焦点となってくるだろう。

◆2016年度診療報酬改定におけるデータ提出加算の評価見直し
データ提出加算1(200床以上) 100点→120点
データ提出加算1(200床未満) 150点→170点
データ提出加算2(200床以上) 110点→130点
データ提出加算2(200床未満) 160点→180点

 

◆ 療養病棟 リハビリは提供量よりも提供頻度を評価する方向      「提供回数が多いほど在宅復帰率が高い」データが提示される

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会入院医療等の調査・評価分科会
9月6日の中央社会保険医療協議会入院医療等の調査・評価分科会では、療養病棟入院基本料についても議論を展開。リハビリテーションについて、「提供回数が多いほど在宅復帰率が高い」データが示され、次期診療報酬改定で提供頻度を評価する方針が明らかとなった。

右肩上がりに増え続ける社会保障費を抑制するため、在宅復帰率を高めるのは政府の基本方針となっている。この日の分科会でも、厚生労働省は在宅復帰をいかに促すかを主眼においた資料を提示した。注目したいのは、リハビリテーションの「提供単位数(1回当たり)」と「提供回数(1週間当たり)」に関する統計。在宅復帰率を1回当たりの「提供単位数」で見ていくと、2単位未満で52.4%、2~4単位未満で50.6%。大きな差異はなく、むしろ提供回数が少ないほうが効果を発揮していることがわかる。

一方「提供回数」は、2回未満が50.7%、2~4回未満が49.0%なのに対し、4~6回未満が54.2%、6回以上が60.9%。明らかに回数が多いほうが、在宅復帰率が高まる傾向にある。この結果に対し、出席した委員からは「現場感覚に近い結果」との意見が出ており、1回当たりのリハビリテーション量は少なくても、頻度を高めるほうがADL(日常生活動作)改善につながりやすいと指摘する声もあがった。

しかし、リハビリテーションの頻度を高めるためには、提供体制を整備しなければならない。その点でも興味深かったのは、厚労省が理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の病棟配置と在宅復帰率の関係を示す統計を出した点だ。それによれば、1人未満の場合は在宅復帰率44.9%であるのに対し、1人以上配置は58.2%、2人以上配置は62.0%。提供頻度に対する評価とともに、理学療法士等の配置を細かく要件に反映させる可能性も出てきたと言えそうだ。

 

◆ 日看協 「重症度」「医療・看護必要度」改変に反対姿勢を打ち出す 次期診療報酬改定での拙速な改変を避け、中長期的な検討を要望

――公益社団法人日本看護協会
9月4日、一般社団法人日本病院会および公益社団法人前日本病院会、公益社団法人日本看護協会の3団体は厚生労働省に要望書を提出。診療報酬の入院基本料で主要な評価指標となっている「重症度」「医療・看護必要度」を改変することに反対の姿勢を明確にした。医療現場の混乱や負担増を避ける必要があることを理由に挙げ、来年度の診療報酬での「拙速な改変を避ける」ことを求めるとともに、それぞれのあり方を中長期的に検討し、関係団体の意見を十分に反映したうえで根拠に基づいた議論を行ってほしいとしている。

入院基本料をめぐっては、5月に財政制度審議会が麻生太郎財務相あてに提出した建議の中で、看護職員配置ではなく提供している医療の機能で評価すべきと提言。それを受けて、中央社会保険医療協議会入院医療等の調査・評価分科会で議論が展開されてきた。

現在、「重症度」「医療・看護必要度」は7対1と10対1で活用方法が異なる。しかし、8月24日の入院医療等の調査・評価分科会では、10対1と7対1で該当患者割合や平均在院日数がほとんど変わらないケースがあることを踏まえ、評価手法自体を見直すべきと厚生労働省が方針を示したばかり。看護職員配置にかかわらず一定の算定要件を設けることとなれば、該当患者割合に応じて「看護必要度加算」の算定が認められている10対1の要件が見直され、さらにカットオフ基準が低く設定される可能性もある。結果的に入院基本料引き下げにつながるだけに、危機感を募らせた3団体が今後の議論に向けて牽制をした格好となった。

なお、入院医療等の調査・評価分科会ではDPCデータとの置き換えを視野に入れた相関性の検証を行う方針が固められつつあるが、これに関して3団体は「医療の効率的な運用において有効と考えられる」と理解を示した。「重症度」「医療・看護必要度」は看護職員が毎日測定し、入力しているため、3カ月に1度のDPCデータ提出で済ませることができれば作業負担軽減につながることも、容認姿勢の背景にある。厚労省は、DPCデータ置き換えが可能かどうか検証する姿勢を明らかにしており、こちらに関してはスムーズに議論が進みそうだ。

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