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医療経営情報(2017年8月31日号)

◆ 厚労省の概算要求、過去最大に 医療従事者の勤務環境改善や 医師不足地域での若手医師キャリア形成支援などを新たに追加

――厚生労働省
8月25日、厚生労働省は来年度予算の概算要求を公表。総額は過去最高となる31兆4298億円となった。加藤勝信厚労相が大臣会見で「働き方改革につながる生産性の向上や人材投資などを非常に重視」した内容と発言したとおり、医療従事者の勤務環境改善や、医師不足地域での若手医師キャリア形成支援といった項目が新たに追加された。

医療従事者の勤務環境改善では、3億円の予算を要求。今年3月に策定された「働き方改革実行計画」で、医師も時間外労働規制(いわゆる残業規制)の対象となったことを受け、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターがより効率的・効果的な支援を行うとしている。

ただし、医師に対する残業規制の適用は、5年間の猶予が決まっている。医師には、正当な理由がなければ診療を拒むことができない「応招義務」があるからであり、8月2日に第1回会合が開かれた厚労省の「医師の働き方改革に関する検討会」では議論が紛糾。出席した医療関係者の委員からは「極端な規制は地域医療を崩壊させる」との意見も出ている。適切な医療を間断なく提供するためには、各分野の専門スキルを持った医師を適宜配置する必要があることは明らかであり、単なる人事ルールにとどまらない構造的な改革が求められるのではないだろうか。一方で、医療勤務環境改善支援センターは医療労務管理アドバイザーや医業経営アドバイザーによる支援が中心であり、個別対応でどの程度の効力を発揮できるのか注視していく必要があるだろう。

医師不足地域での若手医師キャリア形成支援には、8億円の予算を要求。「休日代替医師の派遣、複数医師によるグループ診療、テレビ電話等を活用した診療支援等をモデル的に実施し、派遣される医師のキャリア形成や勤務負担軽減を図る」としている。このうち、テレビ電話等を活用した診療支援はいわゆる遠隔診療。現在は診療報酬の算定項目に該当するものはないが、政府も推進を後押ししているため、来年度の次期診療報酬改定で算定項目に追加されることが確実視されている。若手医師のキャリア形成支援にとどまらず、地域医療の充実を促す施策となりうるため、どの程度の評価となるか注目が集まる。

なお、来年度予算の概算要求は、今年度当初の予算と比べて約7,400億円の増額となっており、そのうち高齢化に伴う自然増分は約6,490億円。自然増分は今年度予算と同様に5,000億円程度まで圧縮する方針を掲げているため、6年ぶりの同時改定となる診療報酬および介護報酬、そして薬価改定をなんとか引き下げたい意向であることは間違いない。どの分野でどの程度の引き下げが行われるのか、年末までの3カ月で決定されるため、医療機関にとっては、今後の経営方針を固めるためにも関連審議会の議論から目が離せない。

 

◆ 1人当たり医療費は53万7,000円 2015年度「医療費の地域差分析」 「西高東低」の傾向は変わらず 最高は福岡県、最低は新潟県

――厚生労働省保険局調査課
8月25日、厚生労働省保険局調査課は「平成27年度 医療費の地域差分析」を公表。1人当たり年齢調整後医療費(市町村国民保険+後期高齢者医療制度)は53万7,000円となった。都道府県別に見ると、もっとも高いのは福岡県で64万1,000円、もっとも低いのは新潟県で46万6,000円。全国10位以内は5位の北海道を除いてすべて西日本の県が占めており、40位台以降はすべて静岡県以東。「西高東低」の傾向が変わらず、上位5道県、下位5県も過去5年間変わっていないことが明らかとなった。

診療種別に見ていくと、もっとも大きく影響しているのが入院。年齢別に見ると、60歳以上および75歳以上89歳以下(後期高齢者医療制度)が大きく影響している。

地域別に見ると、入院で最大だったのは鹿児島県の18万6,000円、最小は愛知県の10万6,000円。両者の差は1.76倍となっており、この5年間で最高の数値となった。入院外+調剤は最大が香川県の21万2,000円で、最小は富山県の17万7,000円。両者の差は過去3年間変わらない1.20倍となっている。歯科は最大が大阪府の3.0万円、最小が沖縄の2.0万円。両者の差は1.54倍で、この5年間ほぼ横ばいの結果となった。

診療種別の地域差では、入院の差が大きく、入院外+調剤の差が小さいことが明らかとなっている。入院ではいわゆる「入院の三要素」の「1日当たり医療費、平均在院日数、新規入院発生率」別に見ると、入院医療費の高い県は1日当たり医療費がマイナス影響となっている。そのため、新規入院発生率の高さが平均在院日数を押し上げており、結果として入院医療費を高騰させていると分析できる。ただし、山口県は平均在院日数が大きく、大分県は新規入院発生率が大きななど、どの程度影響を与えるかは都道府県によって違いがある。

疾病別に見ると、後期高齢者医療制度では入院と入院外+調剤の双方で「循環器系の疾患」が、市町村国民健康保険では「精神及び行動の障害」での入院が大きく影響していることがわかった。現在でも心臓疾患など循環器系への対策には重きが置かれているが、さらに重視する方向に進むだろう。「精神及び行動の障害」はうつ病などのほかアルツハイマー病なども含まれ、2013年度から「医療計画」の疾病として精神疾患が追加されているが、こちらの対策もより充実させていくことになりそうだ。

 

◆ 多職種連携システムの平均年間運用費用は約190万円    

連携が深まった実感あるが、コスト改善効果が低い実態が明らかに

――日本医師会総合政策研究機構
8月30日、日本医師会総合政策研究機構は「ICTを利用した全国地域医療連携の概況(2016年版)」と題したワーキングペーパー(日医総研WP)を公表。医療・介護分野でのICTを利用した多職種連携に関するアンケート調査の結果が、地域医療連携のための多職種連携システムを構築するための平均導入費用は約2,900万円、平均年間運用費用は約190万円であることがわかった。

調査は、日医総研が「地域医療連携」を運営すると思われる組織に対して実施した2016年度「ICTを利用した地域医療連携アンケート調査」で「医療・介護等分野の多職種連携を実施中」と回答した組織を対象に実施。356箇所に回答を依頼し、有効回答数は183箇所だった。

まず、どのような多職種連携システムを導入しているかについては、独自開発のシステムよりも、ASPやクラウド、サーバ・クライアント方式といった市販のシステムのほうが約1.7倍多く利用されていることがわかった。用途については、6割近くが在宅医療・介護現場の連携ツールとして利用されており、介護関係者の事務負担軽減・効率化に利用されているのはわずか2%にとどまった。多職種連携に携わっている職種は医師と看護師が9割以上。次いで薬剤師、ケアマネージャーとなっており、ホームヘルパーやその他介護職の参加割合は低め。地域連携医療システムの運用が、医療機関主導となっている実態が浮き彫りとなった。

システムを利用するためのデバイスは、スマートフォンを中心に個人所有のものを活用しているケースが半数以上を占めた。医療機関や介護施設、そして地域医療連携の組織が業務用に購入することを考えるよりも、すでに各個人が持っているデバイスを活用する前提でシステムを導入していることがわかる。

導入効果を感じている組織は8割以上あり、具体的には「関係者の協力体制が深まりストレスが減った」との回答がもっとも多かった。次いで多かったのは「患者・利用者の安心感が向上した」、「専門多職種の連携により学習機会が増えた」だった。ただし、「業務のコストが軽減した」という回答は少ないため、在宅医療と介護現場の関係者間連携がどこまでスムーズになったのかについては疑問符がつく。

一方で、導入および運用コストは比較的高額となっている。導入コストは、平均額こそ約2,900万円で1億円以上となった組織もあるが、100万円未満の組織が多数派であるため、努力次第で低く抑えることが可能なことがわかる。しかし、運用コストは100万円以上300万円未満であるケースが多い。保守・運用コストで利益を確保するのがシステムベンダのビジネスモデルであるため、ある程度運用コストがかかるのは想定できるが、これが重荷となっている組織は多いようだ。実際、「運用経費の費用負担が大きい」との回答は多く、更新時の費用捻出を課題に挙げている組織も少なくない。地域包括ケアシステムを構築していくうえで、ICTを活用した多職種連携システムの必要性が叫ばれているが、現状はまだ黎明期と判断せざるを得ない状況。コスト構造やスムーズな連携を促す仕組みづくりなど、運用面での課題はまだ山積みのようだ。

 

◆ 緩和ケア病棟入院料 算定病院は全体の5.2% 外来緩和ケア管理料等は、ほぼ400床以上の病院が算定 

――株式会社日本アルトマーク
8月30日、医療データベース事業を手がける株式会社日本アルトマークは、緩和ケア提供体制の現状についての調査結果を発表。「緩和ケア病棟入院料」を算定している病院は、一般病院全体(7,383病院)のうち、わずか5.2%であることが明らかとなった。病床数平均は345床で、病床数による偏りはない。

一方、「緩和ケア診療加算」および「外来緩和ケア管理料」を算定している病院数はそれぞれ3.2%と3.0%で、300床未満の中小規模病院ではほぼ算定されていない。算定病院のほとんどは500床以上の大規模病院となっている。

そもそも緩和ケアに関する診療報酬を算定するには、人員基準など厳しい要件が求められる。とりわけ「緩和ケア診療加算」と「外来緩和ケア管理料」は、医師・看護師・薬剤師による専従の緩和ケアチームを設置しなければならないため、中小規模の病院で算定するのは困難。実際、同社の調査によれば、「緩和ケア病棟入院料」「緩和ケア診療加算」「外来緩和ケア管理料」の3項目とも算定している病院は54病院のみ。そのほとんどが400床以上であり、399床以下はわずか3病院となっている。

また、限られた病院しか緩和ケアが提供できない現状は、地域格差となって表れている。「緩和ケア診療加算」および「外来緩和ケア管理料」については、算定病院がない都道府県もあるのが現状。具体的には、今年6月時点で秋田県と富山県には「緩和ケア診療加算」および「外来緩和ケア管理料」の算定病院がなく、香川県では「外来緩和ケア管理料」の算定病院がないことが判明した。

がんによる苦痛をやわらげる支援を行う緩和ケアは、2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」で重点的に取り組むべき課題として位置づけられている。がん診療連携拠点病院を中心に提供体制の整備が行われているが、緩和ケアを望む患者に十分な支援を提供できる環境が整っていないのが現状と言えそうだ。

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