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介護経営情報(2017年8月25日号)

2017/9/1

◆厚労省 次期介護報酬改定での介護職員処遇改善加算拡充に消極的
「加算IV」「加算V」は撤廃も視野に見直す方向

 

――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
8月23日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、来年度の介護報酬改定に向けた議論は第1ラウンドが終了した。介護人材確保のための対策として注目される「介護職員処遇改善加算」について、厚労省は新たな拡充に対して消極的な姿勢を示した。しかし、自治体や介護現場の関係者からは追加加算を求める声が多くあがっており、社会保障費を抑制したい政府の意向と、人材確保に苦しむ現場との乖離が目立つ構図となっている。

介護職員の数自体は年々増えており、介護保険制度創設時は約55万人だったものの、2015年度には約183万人となっている。しかし、超高齢社会の到来により人手不足は深刻化しており、日本の第一次ベビーブーマーである団塊の世代が全員75歳以上となる2025年度(いわゆる2025年問題)には、約38万人が不足すると見込まれている。

介護人材の処遇改善は、そうした状況を踏まえて実施されてきており、今年4月には月額1万円相当の賃金引き上げを実施した。厚労省は、この引き上げ効果をまず把握、検証したうえで処遇改善加算のあり方を検討すべきだとしている。

しかし、効果の把握、検証のために行う「介護従事者処遇状況等調査」は10月から実施し、結果の公表は3月になる予定。次期介護報酬改定の議論には間に合わないスケジュールのため、次次期改定へと先送りしたい意図が透けて見える。8月1日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した2015年度の「社会保障費用統計」によれば、介護対策費の伸び率は過去最低に抑えられたものの、金額は9兆4,049億円と過去最高を更新しており、手綱をさらに引き締めたい意向が働いていると思われる。ただし、前回の2015年度介護報酬改定は9年ぶりのマイナス改定であり、2025年問題への具体策を固めるべき次期改定でさらなる引き下げを狙うのは厳しいだけに、できるだけ「出費を抑えたい」というのが本音だろう。

ただし、委員である栃木県知事や高松市長(全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)からは、賃金底上げを求める意見書が提出された。介護現場の関係者からも、追加加算を求める声は多いため、今後の分科会で折衷案が出される可能性もあるのではないだろうか。

一方で、この日の分科会では合理的な提案も行われた。介護職員処遇改善加算の「加算IV」と「加算V」について、撤廃を視野に検討を進める方針が示されたのだ。この2つは、キャリアパスや職場環境の加算要件を一切満たしていない、もしくは1つのみ満たしている場合に減額対象となる「減算区分」だが、昨年度(4月、10月、3月分)および今年度4月分で算定している事業者はいずれも1%以下となっている。事業者側としてみれば、減算区分を受けないための対策をするのは当然であり、算定事業者が少ないのは想定内の結果。いわば、無駄な区分のために事務作業が必要になっていたことを考慮すれば、有意義な提案だと言えるのではないか。

 

◆介護ロボット等の導入事業所に対する人員・設備基準の見直しを検討
見守りセンサーおよび移乗介助ロボット対象 委員からは反対意見続出

――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
8月23日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会では、介護ロボットを活用した場合の評価についても議論を展開。厚労省は、ロボットを活用している事業所に対する介護報酬引き上げや人員・設備基準の見直しを実行することで、活用を促進するべきだとしたが、人員・設備基準見直しについては出席した委員からは反対意見が続出した。

今回の厚労省案は、昨年12月の社会保障審議会介護保険部会で取りまとめられた「介護保険制度の見直しに関する意見」に基づくもの。「介護ロボットやICT化に関する実証事業の成果を十分に踏まえた上で、ロボット・ICT・センサーを活用している事業所に対する、介護報酬や人員・設備基準の見直し等を平成30年度介護報酬改定の際に検討することが適当である」としており、今年5月から8月まで、40の介護施設で実証事業を実施している。
今年6月に閣議決定された政府の成長戦略を明記している「未来投資戦略2017」でも同様の内容が反映されており、その方針に則った提案となっている。

確かに、介護ロボットには、利用者の生活の質を維持するとともに、介護者の負担軽減も期待されている。とりわけ、介護者の負担が大きい移乗介助に役立つ「装着型パワーアシスト」や、認知症患者の見守りに役立つ「見守りセンサー」の需要が高いため、現在実施されている実証事業でも移乗介助と見守りの2種が採用されている。

たとえば移乗介助は介護者2名で行うケースが多いが、「装着型パワーアシスト」を用いれば介護者1名でも可能となり、しかも腰などへの負担が軽くなる。「見守りセンサー」も、設置していなければ頻繁に様子を確認する必要があるが、設置することで人員を削減することは可能だ。

しかし、出席した委員の多くは、特に人員配置の見直しについて慎重な姿勢を崩さなかった。「もともと人員が少ないのを減らすべきではない」「ロボット・センサーを導入しても、新たに安全管理業務なども必要となるため、すぐ人員を減らすのはリスクがある」といった反対意見が出され、ロボットやセンサーを深刻な人手不足解消の“特効薬”とするのは不適当だという現場のスタンスが窺えた。とはいえ、自立支援の促進も含め、介護ロボットやセンサーの導入推進は今後の介護政策の目玉となってくるため、厚労省側は加算など何らかの形でインセンティブを盛り込みたい意向。そうした意味でも、今月で終了する実証事業の結果がどうなるかは重要なポイントとなるだろう。結果次第で提案の内容も変わってくることが予想されるため、どのような効果が検証されるのか注目される。

 

◆自立支援インセンティブ、評価方法が今後の焦点に
要介護度改善で介護報酬が下がる仕組みは見直される方針

――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
8月23日の社会保障審議会介護給付費分科会では、自立支援を促す取り組みを行っている事業者に対するインセンティブの評価方法、そして付与する方法についても議論を展開。「自立」の概念まで掘り下げ、適切な評価方法を模索した。具体案が固まるまでにはまだ時間がかかりそうだが、少なくとも「要介護度を改善したことで介護報酬が下がる」現状は見直す方針が明らかとなった。

自立支援を促すのは、そもそも介護保険制度の基本理念のひとつ。そこにインセンティブを導入するにあたって、厚労省は介護報酬上で評価することに難色を示した。その理由として、要介護度はさまざまな要因が複合的に関連しており、利用者個人の要因による影響も大きいとした。

その考えを裏付けるため、厚労省はまず「自立の概念」について確認。WHO(世界保健機関)の国際生活機能分類(ICF)を引いたうえで、「心身機能・身体構造」と「活動・参加」の両面からアプローチする必要があると説明。要介護度を改善することのみが自立支援ではないとのスタンスを明らかにした。

これについては、委員も同調。「身体機能だけに着目するのではなく、社会生活や尊厳の保持を含めて判断する必要がある」「介護状態になると元に戻るのは難しいため、どのような生活をしてどのような最期を迎えたいかといった希望に沿うことも自立支援」といった意見が出た。また、順次導入されてきているアウトカム評価についても、「事業者が改善の見込める高齢者だけを選別するクリームスキミング(いいところ取り)が起こる可能性がある」と懸念を示している。

ひとつの方法として提示したのは、要介護認定データと介護報酬明細書(レセプト)データを突合させ、データベースを構築したうえで評価手法を模索し、確立するやり方。迅速に実施するため、「データ提出加算」を設けるといった意見も委員からは出ている。

また、今回厚労省が提示した資料の中で興味深いのは、自治体の事例。要介護度が一段階改善すると2万円の報酬額が得られる東京都品川区の「要介護度改善ケア推奨事業」などを取り上げている。ここから読み取れるのは、加算の新設を含む介護報酬の引き上げではなく、自治体の事業である性格をより強め、介護報酬以外での評価とする考えだ。現段階ではいずれも深く検討する段階まで至っていないため、改定内容を確定させる年末までにどのような議論が展開されるのか、引き続き注視していきたい。

 

◆厚労省の概算要求、過去最大の31兆4,298億円
未経験者対象の入門研修制度創設や広報活動の拡充なども

――厚生労働省
8月25日、厚生労働省は2018年度予算の概算要求を公表。総額31兆4,298億円で、今年度当初の予算と比較すると約7,400億円の増額となる。2016年度から保育所の運営費など子育て関係予算の一部が内閣府に移管されているため、要求額は実質上過去最大規模となった。

介護や医療などの社会保障費が膨らみ続けている状況は、来年度も変わらなそうだ。高齢化に伴う自然増分は6,491億円と、増額分の約9割を占めている。自然増分は今年度予算と同じく、3年連続で5,000億円程度に圧縮する方針。今年度分よりも約190億円増えた1,490億円となっているため、厳しい舵取りが求められる。6年ぶりの同時改定となる診療報酬および介護報酬を引き下げることで対応したい考えなのは明らかだが、介護報酬は前回9年ぶりのマイナス改定に踏み切ったことで、介護対策費の伸び率を過去最低に抑えた実績もある。2025年問題を目前に控え、高齢者の数が右肩上がりに増えていく現状も踏まえ、どのような提案を出してくるか注目が集まる。

介護関係では、未経験者を対象とした新たな入門研修制度の創設予算も盛り込まれている。この入門研修制度は、仕事を離れた中高年世代や子育てが落ち着いて時間に余裕ができた女性がターゲット。現在の入門資格である「介護職員初任者研修」は130時間の研修が必要と受講負担が重いため、半分の65時間程度とし、既存のカリキュラムを見直したうえで内容の統廃合も行う方針。介護人材を広く確保するための取り組みとして期待される。

また、介護人材確保のための対策としては、イメージアップのための広報活動予算も新たに盛り込まれた。介護職の魅力や社会的評価の向上を促すことが目的。その他、介護ロボットの導入やICT化を支援するための予算や、認知症高齢者見守りのためのネットワーク強化といった項目も盛り込まれている。

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