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医療経営情報(2017年8月17日号)

2017/8/23

◆ 療養病棟、DPCデータ提出の義務化を検討 有床診の「在宅復帰機能強化加算」は要件緩和を求める声も

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
8月4日、厚生労働省の入院医療等の調査・評価分科会が開かれ、療養病棟入院基本料や有床診療所入院基本料などについて議論を展開。療養病棟については、DPCデータの提出を施設基準の要件とすることが検討された。有床診療所入院基本料については、「在宅復帰機能強化加算」を見直すべきとの意見も出されている。

療養病棟入院基本料は、看護配置と医療区分、ADL区分などによって9段階の評価が設定されている。この日、提示されたデータによれば、医療区分が上がるほど状態が不安定な患者が増え、医療の提供頻度も高くなることがわかった。

しかし、患者の状態や提供される医療内容が重複するケースもある。現在、療養病棟入院基本料の届出病床のうち、データ提出加算を届けているのが約25%にとどまっていることもあり、厚生労働省はより詳細なデータ分析を目指し、DPCデータ提出を義務化させたい意向を示している。同省は「データ提出に係る医療機関の負担軽減にも配慮」するとしたが、とりわけ小規模な医療機関では大きな事務負担につながることは明白。この日の会合でも慎重論が出ており、具体的にどのような配慮がなされるのか、今後の議論にも注目が集まる。

有床診療所で検討課題にのぼった「在宅復帰機能強化加算」は、前回の2016年度診療報酬改定で新設されたばかり。しかし、施設基準の要件が厳しいこともあり(※)、昨年度は約1割程度しか届出がなかった(有床診療所入院基本料は10.9%、有床診療所療養病床入院基本料は8.3%)。

なお、施設基準のうち、届出が困難と感じる要件は「退棟患者の在宅生活の継続を確認・記録」することが挙げられている。対応するには相応の人員補充が必要であり、コスト面を考慮すれば簡単に解決できる問題ではない。実際、この日の会合では要件緩和を求める声もあがっている。医療費の削減を目指す政府としては、在宅復帰を促したいだけに、土の程度の要件緩和を次期改定で実現させるかが今後の焦点となるのではないだろうか。

※有床診療所在宅復帰機能強化加算の施設基準

[有床診療所入院基本料の場合]
・ 有床診療所入院基本料1、2又は3を届出ていること
・ 直近6カ月間の退院患者の在宅復帰率が7割以上
・ 退棟患者の在宅生活が1月以上継続することを確認
・ 平均在院日数60日以下

以上4つのすべてを満たす必要がある

[有床診療所療養病床入院基本料の場合]
・ 直近6カ月間の退院患者の在宅復帰率が5割以上
・ 退棟患者の在宅生活が1月以上継続することを確認
・ 平均在院日数365日以下

以上3つのすべてを満たす必要がある

 

◆ 費用対効果評価制度、「支払い意思額調査」は新規実施せず 過去のデータや諸外国の状況を踏まえた評価を行う方針

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会
8月9日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会が開かれ、実施を検討してきた「支払い意思額調査」は、行わないことが決定した。ひとまずは、過去に実施された同様の研究データや諸外国の状況を検討して評価を実施する方針だ。

「支払い意思額調査」は、来年度の次期診療報酬改定から本格導入を目指している費用対効果評価制度のキーポイントとなる調査だ。対象となる医薬品や医療機器を総合的に評価(アプレイザル)する際に用いられる。つまり、「支払い意思額調査」の結果次第で、医薬品や医療機器の評価が左右されるため、調査項目の内容が重要視されてきた。

労働省は、7月12日に調査票案を提示。「公的医療保険から支払われる治療法の費用に応じて、あなたが負担する保険料は増加する可能性があります」と記載。幅広い年齢の回答者がいることを踏まえれば、回答者によって医療費の自己負担割合が異なるのは明白であるため、恣意的な回答を誘導しかねない記載との指摘が相次いだ。当然、修正案の提示が期待されたが、7月26日の部会では議論の取りまとめが出されたのみだったため、さらに委員からの反発が続出していた。当初のスケジュールでは、夏までに結論を出す予定だったため、この日の部会で同省がどのような提案をするか注目されたが、結局は新規調査の実施を見送ることになったというわけだ。

先送りする代わりに、同省が提示したのが過去の研究データ4本と、イギリスの事例。イギリスを選んだのは、いち早く医療技術の費用対効果評価に取り組んだとされているのと、具体的な評価基準が公開されているのが理由。今後は、他国の情報も収集して評価の参考としたい方針だ。

議論が停滞したうえに、基準が一定していない過去の研究データや、状況が異なる外国の事例を参考にしなければならなくなった費用対効果評価制度。すでに昨年度から試行導入がはじまっており、現在は13品目の医薬品・医療機器が分析対象となっているが、果たして適正な対価を算出できるのか疑問が残るとともに、来年度からの本格導入に暗雲が立ち込める状況になったといえよう。

なお、費用対効果評価制度は、高度先進医療機器を用いる高額医療などを保険収載するにあたって適正な価格を設定することを目的とした仕組み。医療費を含む社会保障費を抑制する効果が期待されている。

 

◆ 中医協、次期診療報酬改定に向けた議論の第1ラウンドが終了 糖尿病重症化予防のアウトカム評価は第2ラウンドで検討

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
8月9日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、来年度の診療報酬改定に向けた議論の第1ラウンドが終了したことを確認。第2ラウンドでは、次期改定の柱として位置づけられている糖尿病重症化予防のアウトカム評価について検討を行う方針が示された。

来年度は、6年に一度となる診療報酬と介護報酬の同時改定が実施される。次次期の同時改定が実施されるのは2024年度であり、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となる2025年が目前となることを考慮すれば、来年度の同時改定は今後の医療・介護サービスを方向づける非常に重要なものとなる。

そうした状況を踏まえ、今回の同時改定のための議論は、医療・介護のスムーズな連携を促す視点で実施されている。とりわけ、「看取り」「訪問看護」「リハビリテーション」「関係者・関係機関間の連携・調整」については介護給付費分科会の委員との意見交換も行われた。

第1ラウンドで検討された内容も、介護との連携を意識したものとなっている。主要検討項目は「入院医療」「在宅医療」「外来医療」「横断的項目」「歯科医療」「調剤報酬」の6つ。「横断的項目」は、「かかりつけ医機能」および「診療報酬に係る事務の効率化・合理化及び診療報酬の情報の利活用等を見据えた対応」について検討された。

「入院医療」では対高齢者の医療ニーズの高まりを前提とし、一般病棟入院基本料以外に地域包括ケア病棟入院料や回復期リハビリテーション病棟入院料、療養病棟入院基本料、認知症治療病棟入院料について時間を費やした。「在宅医療」では、地域包括ケアシステムの構築推進のため、介護サービスとの連携が重要であることを改めて確認。また、ニーズが多様化しているため、看取りを含めた対応をいかに評価するかが焦点となった。

「外来医療」では、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の患者が約3割強を占めているとともに、外来医療費が増加していることを問題視。遠隔診療を評価して積極的な導入を促しつつ、重症化予防をいかに評価するかが論点となっている。第2ラウンドでは具体的な検討が進められるアウトカム評価が新たに導入される可能性は非常に高いが、どの程度の成果が評価されるかによって、経営体制の見直しも必要になるだけに大きな注目を集めることになるだろう。

「歯科医療」も、高齢の患者が増加していることが主要な論点となった。地域包括ケアシステムを推進していくうえで、今後ますます在宅医療を担う医療機関や介護施設との連携が深まっていくため、歯科医療の提供方法が多様化していくことが見込まれる。同時に重症化予防も重要になってくるため、それらに対して診療報酬をどのように評価していくかが今後の焦点となる。

「調剤報酬」については、いわゆる門前薬局の存在を問題視。特定の医療機関からの処方せんを集中して受け付けることで、患者のニーズに応えられないケースがあるとされている。クオールやアイセイ薬局が、処方せんの集中率を低下させることで調剤基本料の引き下げを免れようとする付け替え請求をしていることが問題となったばかりでもあり、薬局の機能に応じた評価が重視される可能性が高い。調剤医療費は2回連続でマイナス改定となっているが、果たして3回連続となってしまうのか、こちらも注目される。

 

◆ ジェネリックのシェア目標80%を速やかに達成する方針
長期収載品からの置き換えも積極的に促す 業界側は反発

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会
8月9日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会薬価専門部会が開かれ、薬価制度の抜本改革について議論を展開。厚生労働省は後発医薬品(ジェネリック医薬品)の数量シェア目標80%を速やかに達成するとともに、長期収載品は後発医薬品へと置き換えを進める方針を改めて明らかにした。それに対して製薬業界側は猛反発。新薬開発に莫大な投資を実施していることを資料とともに示し、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の制度化を求めた。

医療の高度化に伴い、高額な薬剤が増加したことも影響して調剤医療費は年々増加。2015年度の概算医療費でもっとも伸びが大きく、2014年度に比べて6,800億円増えている。なんとか社会保障費を抑制したい政府は、2014年度、2016年度の薬価改定で2回連続のマイナス改定を実施。厚生労働省は昨年末に、2年に1回だった改定を来年度から毎年実施する方針を打ち出している。

さらに、今年6月に発表された「経済財政運営と改革の基本方針2017」(いわゆる「骨太の方針2017」)の素案では、いったん後発医薬品の価格引き下げを検討することを明記。患者の負担増につながるとして、この部分は自民党や製薬業界から反発を受けて削除され閣議決定されたものの、後発医薬品の数量シェア80%を2020年9月までに目指すこと、そして、長期収載品の薬価引き下げは記載された。この日の部会で示された厚労省案はこれらの方針に沿ったものであり、製薬業界にとっては逆風に次ぐ逆風といった状況だ。

こうした状況に危機感を募らせている業界側は、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の制度化を求めた。制度化が必要な理由として、縮小傾向にある医薬品市場の現状や、新薬創出加算適用品目を持つ製薬企業72社を対象に行った開発費調査の結果などを提示。また、9~16年の時間を要し大手10社の開発コスト(基礎研究から臨床研究まで)が平均1,300億円かかっていることを示すとともに、リスクの高さも説明。自動車産業が周辺産業とリスク分散できるのに対し、医薬品産業は原則として1つの化合物からなる製品を製造販売するため、単独にならざるを得ない現状を訴えた。

確かに、医療費の削減は国家の重要課題ではあるが、高度化かつ多様化している医療ニーズを支えるためには創薬にも注力しなければならない。コスト削減だけに気を取られてしまえば、国家としての体力が衰えてしまうことにもなりかねないため、いかにバランスをとった施策とするかが問われているのではないか。

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