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医療経営情報(2017年8月3日号)

2017/8/23

◆ 2015年度の社会保障給付費、114兆円超で過去最高更新 医療分野は37兆7,107億円増ともっとも伸びが大きく

――国立社会保障・人口問題研究所
8月1日、厚生労働省の施設等機関である国立社会保障・人口問題研究所は2015年度の「社会保障費用統計」を発表。社会保障給付費は総額114兆8,596億円と対前年比で2兆6,924億円増、2.4%の伸び率を記録。統計をはじめた1950年度から続く右肩上がりの傾向は変わらず、過去最高の数値を更新した。

社会保障給付費は、税金と社会保険料などの合計。自己負担額は含まないため、この金額をいかに抑制するかが政府の課題となっている。主に医療、年金、福祉その他に分けられており、もっとも多く占めているのが年金で54兆9,465億円。ただし、伸び率は前年度比1.1%増となっている。

もっとも伸び率が高かったのは医療だ。37兆7,107億円と3.8%伸びており、がん治療の新薬「オプジーボ」など高額な薬剤が保険収載されたことが背景にあると予測される。福祉その他は22兆2,024億円と3.3%の伸び。介護は9兆4,049億円と2.3%の伸びとなっている。

機能別に見ると、高齢者給付がもっとも多い55兆2,350億円。これは全体の48.1%と半分近くを占めているが、対前年度比で0.4%減のため、やはり高齢化が社会補償給付費増加の主要な原因となっているとは考えにくい。一方で、保健医療は36兆409億円と3.9%増えており、今後の予算審議で槍玉に挙げられそうだ。来年度の薬価改定や診療報酬改定の議論にも影響を与える可能性がある。

なお、国民1人あたりの社会保障給付費は90万3,700円で対前年度比2万2,200円の増加(2.5%増)。GDP(国内総生産)に対する社会保障給付費の割合は21.58%と対前年度比で0.08%下がっており、3年連続の低下を記録している。

 

◆ 「短期滞在手術等基本料3」、6日目以降の疑義解釈を発出 CT・MRI診断料の同一月算定や入金基本料等加算の同一入院時算定は不可

――厚生労働省保険局
7月28日、厚生労働省保険局医療課は「疑義解釈資料の送付について(その13)」と題した事務連絡を発出。「短期滞在手術等基本料3」を算定する患者について、6日目以降も入院が必要な場合の出来高算定について解釈を明らかにした。

「短期滞在手術等基本料3」(区分番号A400)は、入院して5日以内に手術もしくは検査を行う場合に算定される項目。終夜睡眠ポリグラフィーの携帯用装置や多点感圧センサーを有する睡眠評価装置を使用した場合は、必ずしも入院の必要がないため、急性冠症候群や急性脳血管障害などで緊急入院し、すぐに睡眠時無呼吸症候群の検査を実施する必要がある場合などのみ適用される。

しかし、当初5日以内の退院が予定していても、入院期間が延びるケースは当然ある。その場合、6日目以降は出来高での算定とされていたが、今回発出された事務連絡では、「検体検査判断料およびコンピューター断層診断などの判断料」「BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド、いわゆる心臓ホルモン)などの検査実施料」「入院基本料等加算」の3つに対して同一月中および同一入院中の算定はしないことを明示している。

そもそも「検体検査判断料およびコンピューター断層診断などの判断料」「BNPなどの検査実施料」は月1回に限り算定可能だが、たとえ入院が6日以上になっても加算評価はされないということだ。「入院基本料等加算」も、入院期間中の1回または退院時の1回のみ算定できるが、入院期間が6日目以上になっても加算できないため注意したい。

このほか、「他医療機関で撮影した内視鏡検査」についての診断を行った場合の点数は、初診料を算定した日に限って算定できるとしている。これは、コンピューター断層診断の留意事項通知に示されている取り扱いと同様である。

また、注射の薬剤料について、1つのバイアルを2名の患者に同時に調剤・使用する場合、2バイアル分の請求はできないことも明らかにしている。この場合は、各患者に対する使用料に応じて請求しなければならない。

疾患別リハビリテーション料についての疑義解釈も行っており、いわゆる「シーティング」を行った場合は算定ができるとしている。ただし、単なる離床目的で車イス上での座位をとった場合は該当しない。理学療法士などが患者の体幹機能や座位保持機能を評価したうえで調整した場合のみ「シーティング」と評価されるため、現場での正確な判断が求められると言えそうだ。

 

◆ 厚生労働大臣、新専門医制度の地域医療への影響を懸念来年度の本格スタート後も、状況次第で積極介入する姿勢を強調

――厚生労働省
8月2日、厚生労働省は「『新たな専門医制度』に対する厚生労働大臣談話」を発表。来年度から本格スタートを予定している新専門医制度について、地域医療への悪影響を及ぼすなどの懸念を明らかにした。塩崎恭久厚生労働相はこの日で大臣職を退任したため、大臣として最後の談話となった。

新専門医制度は、19領域を持つ「基本領域専門医」と29領域を持つ「サブスペシャリティ領域専門医」の2つに大別。専門医資格を希望する場合は、医学部を卒業後に2年間の臨床研修を受け、さらに3年以上の研修を受ける必要がある設計にしている。

塩崎厚労相は、こうしたこれまでにない仕組みであることを踏まえ、「指導医や専攻医が基幹病院に集中することで地域医療に悪影響が生じるのではないか」「専攻医がその意思に反し、望んでいる地域、内容での研修を行えなくなるのではないか」との懸念が完全に払拭できていないと表明。本格スタート後も、運用で問題があった場合は速やかに是正すべきとした。

さらに、新専門医制度の構築を進めている一般社団法人日本専門医機構と各関係学会に対して、「学会ごとの応募状況」「専攻医の配属状況」を厚生労働省に報告せよと求めた。その結果、もし地域医療に影響を与えていると同省が判断した場合は、「実効性ある対応を求める」としている。そのうえで、新専門医制度が地域医療や医師のキャリアプランに配慮したものを「強く期待」するとして、談話を締めくくっている。

新専門医制度をめぐっては、もともと今年度中のスタートを目指していたものの、昨年6月に日本医師会や四病院団体協議会からの要請もあって来年度のスタートに延期。2月には全国医系市長会が塩崎厚労相や菅義偉官房長官らに向けて新専門医制度の見直しを求める要望書を提出し、塩崎厚労相は「重く受け止める」としていた。3月の通常国会でも「必要に応じて抜本的対応を求める」としており、約3年にわたって務めた大臣職を退任するタイミングで談話を発表したことからも、拭い難い不信感があることが窺える。

なお、日本専門医機構は7月28日に「総合診療領域の専門研修プログラム」の申請受付締切日を8月21日と発表。来年4月の本格スタートに向けて着々と動きを進めており、この日の談話をいかに受け止め、今後の運用に活かしていくかが注目される。

 

◆ DPC病院、病床数が大幅に変わる場合は6カ月前までに要申請
200床以上の増減・2倍以上もしくは2分の1以下になる場合が対象

――厚生労働省保険局
7月28日、厚生労働省保険局は「DPC制度への参加等の手続きについて」と題した通知を発出。DPC対象病院の病床数が大幅に変更となる場合、6カ月前までに申請書を提出する必要があるとした。

より効率的な医療を目指して2003年に導入されたDPC制度(DPC/PDPS、診断群分類別包括支払い制度)は、看護配置10対1以上、病床比0.875以上(1カ月あたり)などの基準を満たした病院が参加できる。しかし、最近は民間企業の参入などによってM&Aによる病院の合併・統合・再編成が増えており、大規模な病床数の増減が起こりうるほか、機能自体も変わる可能性がある。そのため、継続してDPC制度に参加できるかを中央社会保険医療協議会で審査を行っている。その手続きの詳細について昨年4月1日に通知していたが、今回再度整理し、通知した形となる。

具体的な病床数については、「合計200床以上の増減」「対象病床数が2倍以上もしくは2分の1以下になる」予定がある場合、変更年月日の6カ月前までに地方厚生局(地方厚生支局)を経て厚生労働省保険局医療課長あてに申請書を提出しなければならないとしている。なお、複数のDPC対象病院を合併もしくは分割する予定がある場合は、病床数の増減にかかわらず申請書提出の必要があるので要注意。こちらも、予定年月日の6カ月前までに行わなければならない。

ちなみに、いったん申請が認められたとしても、直近1年間および合併や分割、病床数変更後6カ月以上のデータを提出していない場合は、その4カ月後からDPC制度の対象外となってしまうので、こちらも注意する必要がある。

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