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介護経営情報(2017年7月28日号)

2017/8/18

◆全国知事会 福祉人材の賃金底上のための環境整備を要望
外国人介護人材の円滑な受け入れ支援体制の整備にも言及

 

――全国知事会
7月27日、47都道府県の知事で組織されている全国知事会(会長:山田啓二京都府知事)は全国知事会議を開催し、「福祉人材確保のための特別決議」を採択。賃金底上げや、人材確保のための環境整備を政府に強く求めた。

特別決議は、「人材確保なくして社会保障の維持なし」をサブタイトルに掲げており、少子高齢化が進むことによって労働力人口が減少していることに強い危機感を示している。「福祉人材が不足した状態が続くと、我が国の福祉は確実に崩壊する」とまで言及。福祉人材の有効求人倍率が全職種平均に比べて極めて高い水準で推移していることも挙げ、施設の運営の必要な人材が確保できていない状況であるとしている。

そのうえで「労働環境の整備と処遇改善」「人材確保のための環境整備」「関連する予算の十分な確保」の3点について、ただちに断行することを要請。「労働環境の整備と処遇改善」については、今年度から月額1万円の引き上げがなされたことを評価しつつ、「将来の展望を持って業務に従事できるよう」さらなる賃金の底上げを求めている。また、福祉人材が仕事と育児・介護を両立できるように、業務負担の軽減に向けた取り組みへの支援や、休業・休暇制度の充実といった環境整備を行うべきだとした。さらに、雇用主である事業者側の理解促進を図る必要性についても言及している。

「人材確保のための環境整備」については、まず介護に対する正しい理解とイメージアップの取り組みを図るべきだとしている。そのうえで、外国人介護人材の円滑な受け入れを促すため、日本語学習や生活相談などの支援体制を整備するべきだとした。また、障害者や引退後も働き続ける「元気高齢者」を新たな介護の担い手とするべく、彼らが参入しやすい環境整備の推進も必要だとしている。

そして、福祉人材の育成・確保は長期間の取り組みになることを踏まえ、「関連する予算の十分な確保」を要望。短期的な予算確保にとどまらず、安定的な財源の確保を求めた。いずれも合理的かつ現在の課題に応じた要請であり、47都道府県の首長が一致して特別決議という形で打ち出した事実は重い。来年度の介護報酬改定に向け、政府および厚生労働省がどのように受け止め、議論に反映していくか注目される。

 

◆8月1日から介護保険料の「総報酬割」が導入
高額介護サービス費制度も一部の自己負担額が引き上げに

 

8月1日から社会保障の仕組みが変更となる。40歳から64歳が支払う介護保険料は新たに「総報酬割」が導入され、収入が高い人ほど負担額が増えることになる。また、高額介護サービス費制度は、これまで自己負担限度額が37,200円だった「一般区分」が44,400円に引き上げられる。

「総報酬割」は、収入によって負担が増減される仕組み。厚生労働省の試算によれば、中小企業の社員など約1,700万人は負担が減るが、公務員や大企業の社員など約1,300万人は負担が増える。急激な負担増を避けるため、段階的な導入を行っていく予定で、2020年度の全面実施を目指しており、8月1日から対象となるのは介護保険料の2分の1。具体的には、公務員の共済組合が月額657円増、大企業を中心とした健康保険組合で平均月額242円増、中小企業向けの協会けんぽは80円減となる。

高額介護サービス費制度で変更となるのは、いわゆる「一般区分」とされる住民税を課税されている世帯。単身なら年収383万円未満、2人以上ならば年収520万円未満が対象となる。なお、利用者負担が1割負担者のみの世帯の場合、3年間の時限措置としてこれまでの月額上限額の12カ月分(446,400円)を年間上限額とする。

なお、収入に応じて1カ月の医療費の自己負担額に上限を設けている「高額療養費制度」も改定された。70歳以上の医療費の自己負担限度額を引き上げることになる。年収370万円未満の場合の外来診察は月額12,000円から14,000円に、370万円以上の場合は月額44,400円から57,600円になる。住民税非課税の場合は8,000円のまま据え置きとなる。

いずれも、膨らみ続ける社会保障費の抑制を図るための措置。今後の人口減少や超高齢社会の進行を考慮すれば、一時的な措置にならざるを得ないのは明白であり、今後さらに自己負担額や現役世代の介護保険料が引き上げられていくことが予測される。

 

◆介護プロフェッショナルキャリア段位制度 7月新規認定者は99名
制度開始から5年目でレベル認定者の総数はわずか2,984名

――一般社団法人シルバーサービス振興会
7月25日、一般社団法人シルバーサービス振興会は7月に開催した「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」のレベル認定委員会で、新たに99名を認定したと発表。2013年度に同制度が開始されてから5年目で、レベル認定者の総数は2,984名となった。

「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」は、内閣府補助事業としてスタートした「実践キャリア・アップ戦略キャリア段位制度」が発展したもの。OJTを通じて介護人材の実践的な能力向上を促し、その能力を評価・認定しようとする厚生労働省の「介護職員資質向上促進事業」として実施されている。制度の運営を担っているシルバーサービス振興会は、旧厚生省のシルバーサービス振興指導室から発展して設立された団体。

このキャリア段位制度と介護福祉士などの国家資格は、実践的スキルを共通基準で評価している点で異なる。介護分野ではレベル4までを認定している。ちなみにレベル1は「職業準備教育を受けた段階」のエントリーレベルで、レベル2は「一定の指示のもとにある程度の仕事ができる」、レベル3は「指示等がなくても一人前の仕事ができる」、レベル4は「一人前の仕事ができることに加え、チーム内でリーダーシップを発揮できる」ことを認定する。

介護福祉士のような国家資格を受験するにはハードルが高いため、共通の基準による評価が得られることで、やりがいやスキルアップの目標が立てやすく、介護人材のモチベーション維持に役立てられることは確かだ。しかし、制度開始から5年目を迎えて3,000名弱の認定者しかいない状況を踏まえると、そもそも制度の認知度自体が低いと断ぜざるを得ない。当初内閣府は年間に2万人の認定者数を輩出することを目指していたことを考えても、事業としての体をなしていないとさえ言える。

しかも、今回レベル認定された99名のうち、レベル4はたったの12名。大半は「指示のもとにある程度の仕事ができる」レベル2であり、介護人材レベルの底上げにつながっているとは言い難いのが実情だ。シルバーサービス振興会によれば、現在レベル認定に取り組んでいる介護職員は約5,000人しかおらず、認知度拡大に向けた取り組みを行っているとも思えない状況となっている。質・量ともに介護人材の拡大を目指していくのは政府の命題ともいえるだけに、せっかくつくりあげた制度をもっと有効に活用していく必要があるのではないだろうか。

 

◆郵便局、「みまもり訪問サービス」を10月からスタート
月額2,500円、オプションで「駆けつけサービス」も

――日本郵便株式会社
7月27日、日本郵便株式会社は「郵便局のみまもりサービス」を10月から提供すると発表。8月7日から全国の直営郵便局で申込受付を開始する。「みまもり訪問サービス」は月額2,500円、オプションで「駆けつけサービス」も実施。

日本郵便が提供するのは「みまもり訪問サービス」と「みまもりでんわサービス」。「みまもり訪問サービス」は郵便局のスタッフが定期的に高齢者宅を訪問し、生活状況を確認して家族にメールで伝える。訪問するのは月1回、30分程度。「みまもりでんわサービス」は毎日電話で体調確認を行い、結果を家族にメールで知らせる。電話は自動音声で、利用料は固定電話の場合月額980円、携帯電話の場合月額1,180円。

「駆けつけサービス」は、「みまもり訪問サービス」「みまもりでんわサービス」のオプションとして提供。日本郵便が提携するセコムもしくは綜合警備保障が、「もしも」のときの依頼で駆けつける。利用料は家族向け月額800円、本人向けの場合は月額1,800~3,100円で駆けつけ料金は別途かかる仕組み。

日本郵便は全国に直営郵便局を2万局抱えており、そのスケールメリットを活かしたサービスとなる。全国津々浦々まで配達網を整備しているだけに、過疎地の高齢者宅の見守りなども可能であり、遠隔地に住む家族にとっては有効な選択肢となり得るだろう。

しかし気になるのは、当初の計画よりも大幅にスケールダウンしてのサービス提供となる点だ。昨年11月には、同じ日本郵政グループのかんぽ生命保険やNTTドコモ、日本IBMなどと8社で共同出資して新会社を設立し、買い物支援やタブレットを活用した健康支援など多角的なサービスに展開させると発表していた。結局、端末の導入コストなどがネックとなって新会社設立は頓挫。自社の経営資源を活用してのサービス提供に落ち着いている。月に1回程度と見守りの頻度としては低いのも、今後の懸念材料となってくるのではないだろうか。訪問介護などと連携することで介護の効率化につなげられる可能性は十分にあるが、2017年3月期には、郵政民営化以来初の赤字に転落しており、企業としての経営そのものに不安材料もあるだけに、まずは安定してサービスを提供できるかを注視する必要があるだろう。

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