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医療経営情報(2017年7月13日号)

2017/7/21

◆レセプトなど診療報酬関連データの利活用、秋頃までに具体案を
届出・報告の簡略化や添付書類の省略化は数値目標を定める方針

――厚生労働省
7月12日に厚生労働省の中央社会保険医療協議会の総会が開かれ、レセプトなど診療報酬に関する事務作業の効率化や、関連データの利活用をいかに推進するかについて議論を展開。厚生労働省は、データの利活用の推進について秋頃までに具体的な検討を進め、届出・報告の簡略化や添付書類の省略可について数値目標を定めたい方針を明らかにした。

診療報酬の算定項目数は、医療の高度化・多様化に伴って年々増加。現在、診療行為は加算項目を含めて約7,000項目、薬価は約16,000項目、特定保険医療材料は約1,000区分となっており、これらの事務手続きは医療機関にとって大きな負担となっている。レセプトデータに加えて診療実績に関するデータを提出する必要があるのも、負担を増している原因のひとつだ。

しかし、これらのデータが医療の効率化と質向上に貢献することは間違いない。現状でも、包括医療費支払い制度(DPC)を採用している医療機関の診療実績データは、医療の標準化を目指し厚生労働省が集計表として公表。DPC病院以外の医療機関にとっても、マネジメントに役立てることが可能となっている。また、疾患別にどのような医療が提供されているかを分析することで、アウトカム指標の開発にも役立っている。

事務作業の負担を減らす取り組みも、徐々に進めてきている。たとえば、重複した内容の届出を省略したり、記載項目を減らしたりといった対応をしているほか、施設基準の届出や報告・受理通知をオンライン化するためのシステム開発が進行中。オンライン化による事務作業軽減効果は、レセプトのオンライン請求ですでに実証済みだけに、早期の実用化が待たれる(レセプトは2008年よりオンライン請求の義務化が開始された。2015年5月の病院の請求分の99.9%がオンライン請求となっている。レセプト全体ではオンライン請求が73.0%、電子媒体請求が25.6%)。

ただ、レセプトや診療実績データには、その様式自体に課題が残されているのも事実。レセプトはフリーテキストによる記載欄や、症状詳記など別途資料添付が必要なものもあるため、見直しが急務となっている。訪問看護療養費のレセプトが電子化されていないのも問題だ。診療実績データも、未だ提出様式が急性期入院医療の評価を中心とした項目になっているため、療養病棟や外来診療の分析が困難なのが現状であり、改善が求められている。来年度の診療報酬改定には間に合わないものの、2020年度には社会保険診療報酬支払基金のシステム刷新が予定されているため、そこにこれらの改善を間に合わせたいというのが、厚生労働省の考え。本質的な意味で医療ビッグデータがいつ実現するのかを見極めるには、今後も進捗を注視していく必要があるだろう。

◆協会けんぽ、2016年度の黒字が過去最高額の4,987億円に
診療報酬のマイナス改定で医療給付費の伸びが鈍化したことが要因

――全国健康保険協会
7月7日、全国健康保険協会は2016年度の「協会けんぽ」の決算見込み(医療分)を発表。7期連続の黒字決算となる見込みで、黒字額は過去最高の4,987億円となった。2015年度の黒字額が2,453億円だったため、2,534億円の大幅な増加となったが、同協会は診療報酬のマイナス改定などの「一時的な要因」が重なった結果だとしている。

収入は2015年度から3,802億円増えて9兆6,220億円となった。収入が増えた主な要因は保険料収入だ。被保険者数が3.5%増加し、被保険者の賃金が1.1%増加したことがその背景にある。景気が回復したこともさることながら、日本年金機構がいわゆる「加入逃れ対策」を強化したことが功を奏したと言える。

支出は9兆1,233億円と、2015年度から1,268億円の増加にとどまった。2014年度から2015年度の支出増加は2,656億円だったため、1,388億円も減った格好となる。伸びが鈍化した理由は、支出の6割を占める保険給付費の数字を見れば明らかだ。2016年度の「協会けんぽ」加入者1人あたりの医療給付費の伸びは、2015年度が4.4%だったのに対し、2016年度は1.1%となっており、診療報酬のマイナス改定の影響があるのは確かだ。

また、支出の4割を占める高齢者医療の拠出金も、2015年度から494億円減少。総報酬割が1/2から2/3に拡大したほか、2014年度末に退職者医療制度の新規適用が終了したことが影響している。

大幅な黒字増により、保険給付費の支払いなどに備える準備金の残高は1兆8,086億円と2.6カ月分にまで膨らんだ。同協会は「こうした傾向が今後も継続するものではない」と予防線を張っているが、法定の1カ月分を大きく上回っているため、国庫補助割合や保険料率見直しの対象となる可能性もある。

「協会けんぽ」は、中小企業が主に加入している公的医療保険。2009年度に5,000億円近い赤字決算となったことから、国庫補助割合や保険料率の引き上げといった特別措置がとられ、翌2010年度から黒字に転換している。

◆看護師が2年間で約6万人、男性看護師は約1万人増加
訪問看護ステーションでの就業数は約6,000人増と微増レベル

――厚生労働省
7月13日、厚生労働省は「平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」を発表。看護師は114万9,397人で、前回調査時(2014年)に比べて約6万人増加。最近増加傾向にある男性看護師は2年間で約1万人増え、増減率は13.8%をマークした。女性看護師の増減率が5.2%であることを踏まえると、伸び率の高さが際立つ。

看護師が増えているのは、大学の看護学科が急激に増えたことが背景にある。1989年度にはわずか11大学にしか設置されていなかったが、2014年度には228大学と25年間で20倍以上にまで増加。准看護師の数が徐々に減っていることも考えれば、大卒看護師が今後も増えていくことは容易に予測できる。もちろん、男性看護師が増えた要因ともなっていることは間違いない。

注目したいのは、訪問看護ステーションで働く看護師(訪問看護師)の数が伸びていないことだ。前回調査時が36,446人だったのに対し、42,245人と増加したのは6,000人弱。実人員ベースが3.7%、常勤換算数ベースが3.3%といずれも0.3ポイントしか増えていない。2016年度の診療報酬改定で訪問看護の報酬が引き上げられたことを考えれば、むしろ伸び悩んでいるといえる状況だろう。

原因として考えられるのは、給与額。月給ベースで見れば、訪問看護師の給与は決して低額ではないが、夜勤がないため年収にすると相対的に低くなってしまう。新卒で一人暮らしであれば夜勤をむしろ歓迎する傾向もあり、訪問看護ステーションで勤務する人が増えない要因となってしまっている可能性もある。

いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となる2025年まで、あとわずか8年。訪問看護ステーションは、地域包括システムの重要なポジションを担うだけに、質の高い看護人材を集めなければならないことは言うまでもない。今回の調査結果を踏まえ、来年度の診療報酬・介護報酬同時改定において、訪問看護の報酬がさらに引き上げられる可能性も出てきた。夜勤が不要なのは、長く働きたい人材にとって魅力的なだけに、訪問看護ステーションを運営する事業者にとっては、給与ベースのアップを含めた待遇面の改善で他の事業者と差別化を図るチャンスではないだろうか。

◆費用対効果評価制度の本格導入前に「支払い意思額」調査を実施
厚労省は「保険からの支出」の観点を盛り込みたい意向を示す

――厚生労働省
7月12日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会が開かれ、来年度から本格的に導入される費用対効果評価制度に向けた議論が展開された。厚生労働省は、いわゆる高額医療の対価として「ある特定の金額を支払うことの是非」である「支払い意思額」の調査を実施する方針を明らかにした。

厚生労働省は、「支払い意思額」の調査票案も提示。費用対効果評価制度が、公的医療の立場から費用を分析した結果を公的医療保険からの支払いに反映する制度であることから、「保険からの支出」の観点で調査を行いたいとした。この案に対し、同部会に出席した委員からは反論が続出。保険料が増加することで支払い意思額も変わる可能性への指摘や、自己負担額で考慮しない理由を問う意見もあり、厚労省側は再検討する意向を示している。

費用対効果評価制度は、2016年度の診療報酬改定時から試行的に導入されており、次期改定が実施される来年度から本格的に導入される予定。高額医療が対象だが、指定難病や血友病、HIV感染症といった「治療法が十分に存在しない稀少な疾患」や、小児疾患の治療に用いられるもの、厚生労働省が開発養成したものや公募に応じて開発されたものなどは対象外となる見込み。また、複数の品目で同価格が設定されているジェネリック医薬品なども対象から除外される可能性が高い。

評価の結果は、価格調整にのみ活用される方向で、原則として保険償還の可否判断の材料とはならない方向。これは、保険給付の対象となる医薬品や医療技術が「有効性・安全性等が確立」していることが前提だからである。評価結果によるバイアスを生じさせないため、医薬品や医療機器は価格を設定してから保険適用し、その後に費用対効果評価の結果による価格調整を実施することになる。

この日の会合で議題となった「支払い意思額」は、対象品目の総合的評価(アプレイザル)をする際に用いられる。総合的評価を行うには、費用効果分析により算出された増分費用効果比(ICER)を評価する必要があり、その基準値を設定するため、効果の単位にあたるQALY(質調整生存年)にかかわる「支払い意思額」を算出しなければならないからだ。厚生労働省は、これまで同部会で「支払い意思額」を基本として国民1人あたりGDPも目安としたい考えを示しており、「支払い意思額」の調査結果は、費用対効果評価制度の重要な軸になる可能性が高い。そのため、回答の内容を左右しかねない調査票項目については、慎重な検討が求められよう。同部会は、8月を目処に中間取りまとめを行う方針を固めているため、次回の部会で厚生労働省がどのような修正案を提示してくるか注目される。

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