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医療経営情報(2017年7月6日号)

2017/7/12

◆ レセプト審査、2022年度までに9割の自動化を目指す コンピュータチェックに適したレセプト様式の見直しも随時実施

――厚生労働省
7月4日、厚生労働省は「支払基金業務効率化・高度化計画・工程表」を公表。5年後の2022年度までに、レセプト審査の9割程度をコンピュータチェックで完結させることを目指すとした。そのために審査基準の統一化や、レセプト様式の見直しも随時進めていく意向だ。

従来、レセプト審査におけるコンピュータチェックは、審査委員による人的な審査の下準備として行われてきた。しかし、年間で約20億件にのぼる分量の多さもさることながら、審査ルールが統一されていないため、地域差や審査員による審査結果の違いが発生。無駄な返戻が多いことも指摘されており、いかに効率化するかが課題となっていた。レセプト審査機関(社会保険診療報酬支払基金、以下支払基金)の運営費用が年間約800億円かかっていることも問題視されており、人件費を削るためにも効率的なシステム導入が求められている。

そこで、請求から審査、支払に至るまでの業務プロセスを全面的に見直すことを決定。とりわけ審査については、「考え方を180度転換」し、これまで審査の下準備だったコンピュータチェックを中心に据える。韓国の審査機関であるHIRA(健康保険審査評価院)がすでに9割を達成していることを例に挙げ、2022年度までにレセプトの9割程度をコンピュータチェックで完結させ、医療専門職を中心とした支払基金の職員によるチェックは1割程度にとどめる。

重点的に審査しなければならない分については、従来どおり医師が審査委員を務める審査委員会で対応するが、全体の1%以下とする方針だ。今まで、審査委員1人あたり月に約12時間をかけて審査を行ってきたが、厚労省は「(その時間を)これまで以上に地域医療活動や患者・住民との対話などに振り向けることが可能になる」としている。並行して支払基金の人員体制も800人程度減らすなどスリム化していく。

新たな審査システムは、2020年度に刷新される予定だが、先行して実施できる部分は、随時見直しを進めていく。まず、コンピュータチェックルールは今年度中に基準を策定。そして、返戻再請求・再審査請求を減少させるため、返戻査定理由を記載する対象レセプトの拡大や、記載内容の変更は今年度から実施していくとしている。

なお、今回の計画は支払基金が対象だが、国民健康保険連合会でも同様の改革を行うべく協議中。塩崎恭久厚生労働相は大臣会見で「将来、双方が統一的に高度化された審査を行う改革メリットは、保健医療の質の向上の面でも、国民負担の軽減の面でも、極めて大きい」と発言している。いずれにしても、医療機関にとってはレセプト業務の効率化が期待できることは間違いない。特に、レセプト様式は診療報酬改定ごとに大きく変更することが予測されるため、作業負担を減らせるように適宜対応する必要がありそうだ。

 

◆ 次期改定でのDPC制度見直し、3つの医療機関群は維持
機能評価係数II「後発医薬品係数」「重症度係数」は再整理の方向

――厚生労働省
7月5日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は診療報酬基本問題小委員会を開き、来年度の診療報酬改定に向けたDPC制度(DPC/PDPS、診断群分類別包括支払い制度)の検討状況について中間報告を実施。現行の3つの医療機関群を維持しつつ、より適切な名称に変更する方針が明らかにされた。また、DPC対象病院の「機能評価係数II」については、従来の6係数を維持するものの、導入後に追加された「後発医薬品係数」および「重症度係数」は再整理される。

3つの医療機関群の名称を見直すのは、各群の役割や機能がわかりにくいことが理由として挙げられている。特に、II群は「高機能な病院」と説明されていることから、III群が高機能ではないと受け止められる可能性があることを指摘。むしろ、DPC制度においてはもっとも多くの医療機関が該当するIII群が標準的な存在であるとして、「標準群」とする案が提示された。I群およびII群の名称については、「特定病院I」「特定病院II」とする案のほか、I群を「大学病院本院群」、II群を「特定病院群」とする案が出されている。

機能評価係数IIは、急性期入院医療の評価として導入された。現在「保険診療係数」「効率性係数」「複雑性係数」「カバー率係数」「救急医療係数」「地域医療係数」「後発医薬品係数」「重症度係数」の8項目から算出されている(「保険診療係数」は当初「データ提出係数」だったものが拡充され名称変更となった)。この係数が大きくなるほど1日あたりの診療報酬単価を高く請求できる仕組みだ。

しかし、そもそも機能評価係数IIはDPC制度導入時の激変緩和措置として導入されたため、とりわけ「重症度係数」については、趣旨が異なるとの指摘もある。また、複雑化しているため、医療機関が目標とできるような係数設定を目指すべきとの声があるのも、今回の見直しの背景にある。

そこで、重症度係数については、激変緩和措置の見直しと併せて再整理。機能評価係数IIとは別の手法での対応を行う見通しだ。後発医薬品係数については、すでに多くの医療機関で係数が上限値になっていることから、一定の役割を果たしているとして、機能評価係数Iでの評価に変更する方向。入院基本料等加算の中に、同様の基準の出来高点数が設定されていることも、見直しの理由として挙げられている。現状は中間報告だが、同委員会では大きな異論がなかったこともあり、これらの方針で見直しが進められる可能性は極めて高いのではないだろうか。

 

◆ 選定療養への追加要望、意見募集の結果を発表
「医科歯科の連携強化」「200床以外の新基準設定」などの意見が

――厚生労働省
7月5日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は総会を開き、今年3月から5月にかけて意見を募集した「選定療養に導入すべき事例等に関する提案・意見募集」についての結果を公表した。これをもとに今後、中央社会保険医療協議会で議論が展開される 。

選定療養は、差額ベッドや予約診療、時間外診療、大病院の初診・再診など10類型が定められている。2016年度の診療報酬改定の際にも同様の意見募集を行っており、今回も広く意見を求めたうえで、来年度の診療報酬改定に反映させたい意向だ。

意見の募集は、厚生労働省のホームページで3月15日から4月14日まで、関係学会・関係団体では3月15日から5月19日まで行われた。寄せられた意見は合計で82件あり、新たに選定療養に追加を要望する意見は56件。既存の選定療養の見直しに関しては26件が集まっている。

多分野にわたって意見が集まっているが、目についたのは医科と歯科の連携強化。たとえば禁煙指導は、現在医科と歯科で別々に実施されているが、成功率が低いため、医科での禁煙指導前後における歯科での支援を選定療養とすべきだとの意見がある。歯周病と糖尿病のスクリーニング検査も、医科と歯科が連携することで発症予防や重度化防止につながるほか、医療経済効果も非常に大きいとの意見が出されている。同様に、食・栄養指導支援体制を医科歯科連携で構築することで、患者の自立度を向上させ、糖尿病関連疾患の発症予防と重度化防止につなげたいとする意見もある。糖尿病などの生活習慣病関連では、効果が確認されている運動療法を選定療養に加えるべきとの意見もあり、医療費削減の観点からもこのあたりの施策が検討される可能性は高いのではないだろうか。

大病院の初診・再診に関しては、「200床以外の新基準を設定するべき」などの意見が出されている。その理由として、200床未満の医療機関でも大学病院並みの医療機能を持つところが多いことが挙げられており、保有する医療機器や、全身麻酔による手術件数などを指標とした基準を設定するべきだとしている。確かに、病床数と医療機能が必ずしも比例しないことは実態としてあるため、今後検討の材料として挙げられる可能性はあるだろう。もちろん、どの医療機器を基準とするかの問題もあるが、今後中央社会保険医療協議会でどのような議論が展開されるか、こちらも注目していきたいポイントだ。

 

◆ 肝細胞がんに対する陽子線治療、保険適用へ
「3cm超の病変ではより有望な治療選択肢」

――厚生労働省
7月5日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は総会を開き、肝細胞がんに対する陽子線治療を、「先進医療B」に追加することを了承。3cm超の病変では、放射線治療よりも有望な治療選択肢であるとした。

3cm超の単発肝細胞がんに対しては、外科的切除が標準治療だった。しかし、過去のデータを照合すると、5年生存割合は約55%。肝細胞がんは、治療後に新たな病変が発生する頻度が高いことがその背景にあり、術後2年で51.6%、術後5年で79.0%の患者に再発が生じると言われていることから、外科切除が「予後良好な対象とは言えない」ことを中医協も認めている。また、他のがんほど、局所治療の成否が生存期間に影響しないことから、低侵襲治療が望まれている状況だった。

低侵襲治療の選択肢としては、定位放射線治療や陽子線治療がある。定位放射線治療は5cm以下の肝細胞がんに保険が適用されるが、正常な肝臓に高線量が照射される可能性が高いというデメリットがある。その点、陽子線治療はより狭い範囲で適切な治療を行うことができるため、3cm超の病変でより有望な選択肢と判断された。

陽子線治療の5年生存割合が53.5%、と外科的切除に匹敵する成果を挙げているのも、今回「先進医療B」への追加が了承された理由。開腹を伴わないため外科的切除よりも安全性が高いことも期待されている。低侵襲治療を希望する患者が増えていることも、保険適用が認められた一因になっている。

なお、費用は肝門部型22回照射で算出した場合、総額1,946,814円。保険者負担額は241.202円で、被保険者負担は1,705,612円。被保険者負担の内訳は、先進医療にかかる費用が1,600,000円、保険外併用療養費の一部負担金が105,612円となっている。先進医療にかかる費用は、機器使用にかかる費用が1,525,590 円、光熱費等その他が1,299,174 円、人件費が135,916 円の計 2,961,000 円と算出されているが、既存治療と比較した結果、 1,600,000 円と算定された。

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