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介護経営情報(2017年6月30日号)

2017/7/10

◆保健医療分野のAI活用 重点領域の1つに「介護・認知症」を選定
排泄タイミング予測システムなどウェアラブル端末の導入も視野

 

――厚生労働省
6月27日、厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」(座長:間野博行国立がん研究センター研究所長)が報告書を発表。保健医療分野でAIを重点的に活用するべき6つの領域を選定し、その1つに「介護・認知症」を挙げた。

この懇談会は、今年1月から4回にわたって実施。今回の報告書は、その討議の内容を取りまとめたものだ。重点領域として挙げられたのは、「介護・認知症」のほか「ゲノム医療」「画像診断支援」「診療・治療支援」「医薬品開発」「手術支援」。これらの分野でAIを重点的に活用することで、全国どこでも最先端の医療・介護が受けられる環境の整備が期待でき、医療・介護従事者の負担軽減が実現できるとしている。

そもそもAIは、「第4次産業革命」(インダストリー4.0)とも呼ばれる技術変革の中核を担う技術。飛躍的に生産性を向上させ、新たな価値創造を実現することが期待されているが、その理由として挙げられているのが、ディープラーニングの登場だ。たとえば、自動運転もディープラーニングを取り入れることで精度が高まったとされるように、従来は専門的な技術や判断力が必要だったものが、それがなくても可能になってきている。

たとえば介護の場面での活用例として、報告書ではウェアラブル端末の活用を挙げている。ウェアラブル端末を通じて得たデータや画像を、AI解析することで効率的な在宅モニタリングや見守りが可能になるというわけだ。また、「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2017」(経済産業省主催)でグランプリを受賞したトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の排泄予知ウェアラブル「DFree」についても触れ、こうしたAIを活用した「生活リズム事前予測システム」を現場で活用することで介護業務の効率化が期待できるとしている。

報告書では、実用化に向けた工程表も公表。2020年までに生活リズムや認知症に関するデータ収集や、生活リズム予測に基づく生活アシスト機器などの設計を勧め、2021年までに試作機を開発し、できるだけ早期に実用化したいとしている。なお、介護ロボット全般を含め、技術重視で開発すると「介護現場のちょっとしたニーズの変化に対応できない場合がある」とし、現場のニーズを明確化しながら進めると明記。2018年度の介護報酬改定にどこまで具体的に反映されるかは不透明だが、その次の2021年度の改定時にはより明確な方針が固まっていることが予想される。

 

◆「老々介護」がさらに増加 65歳以上同士が半数以上
要介護3以上の介護時間は「ほとんど終日」が最多数

――厚生労働省
6月27日、厚生労働省は2016年度の「国民生活基礎調査」の結果を発表。高齢者が高齢者の介護を行う、いわゆる「老老介護」の割合がさらに増え、65歳以上同士の組み合わせは54.7%と半数以上にのぼった。60歳以上同士は70.3%、75歳以上同士も初めて3割を超える30.2%をマーク。いずれも過去最高の数値となった。

要介護度別の介護時間を見ていくと、「要支援1」から「要介護2」までは「必要なときに手をかす程度」がもっとも多いが、「要介護3」以上は「ほとんど終日」が最多数を占めている。「要介護2」は排泄や入浴のほか、歩行や起き上がりなどにも部分的な介護が必要な状態だが、「要介護3」は立ち上がりや歩行が自力でできず、排泄や入浴のほか、衣服の着脱にも全面的な介護が必要な状態。つまり、「要介護2」から「要介護3」に進行すると、介護者の負担が著しく増すということが調査結果にも表れていることがわかる。

しかし、裏を返せば「要介護2」までの状態は、自宅での介護でも負担が軽いと判断される材料になっていることに注目したい。というのは、掃除や洗濯、買い物、調理などを行う「生活援助」は介護保険の適用外となる可能性があるからだ。

「生活援助」は、「介護ヘルパーを家事代行に活用している」と指摘されることが多い。しかも、「生活援助」サービスの利用率が高いのは「要介護1」「要介護2」であり、社会保障費を抑制したい財務省は、再三にわたって「生活援助」を原則自己負担にするよう求めてきた。それに対して厚生労働省は、利用者の切り捨てや症状の重度化につながる恐れがあるとし、昨年10月の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護保険の対象として継続させる方針を示している。

しかし、見送りとなったのは、現在「要支援1」「要支援2」の訪問介護を今年度までに自治体の事業へと移行しているのが理由だ。来年度の介護報酬改定で、再度この問題が俎上に載せられる可能性は十分にあると言える。しかも、近い将来混合介護が解禁される方向性が固まりつつあるほか、自立支援促進と重度化防止が今後の介護の中心的な方針となっていくため、訪問介護のあり方が大幅に変わっていく可能性は高い。介護事業者側としては、早めに対応策を練っておく必要がありそうだ。

 

◆2016年度診療報酬改定の影響調査で維持期リハの実施状況を調査
来年度の同時改定に向けて 通所リハがより重視される可能性も

 

――厚生労働省
6月28日、厚生労働省で中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催された。会合では、2016年度診療報酬改定の結果検証のための調査票案を了承。7月から調査が開始され、結果は10月以降の中央社会保険医療協議会で報告される。

今回、調査は医薬品の適正使用や禁煙治療の効果、明細書の無料発行の実施状況など4点について実施。介護に大きく関わってくるのが、リハビリテーションの実施状況調査だ。

2016年度の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価と、目標設定支援等にかかわる評価、そして維持期から介護保険リハビリテーションへの移行に対する評価が新設されている。そのため、結果検証を行うのは自然の流れだが、維持期から介護への移行をより円滑化したい狙いがあることは明白。医療保険における維持期リハビリテーションを早期に取りやめたい意向も透けて見える。

一方で、通所リハビリテーションも、より効率的な運営を行うべきだという議論が展開されている。6月21日の社会保障審議会介護給付費分科会では、現在サービス提供時間で「6時間以上8時間未満」がもっとも多く算定されていることを問題視。ADL向上の平均値が利用時間区分別に見ても「有意な差が認められなかった」として、短時間サービスの提供を充実させるべきだとした。

また、前回の介護報酬改定で、医師による説明などを要件とした「リハビリテーションマネジメント加算(II)」が新設されたものの、その届出を行っている事業所が全体の4割弱に過ぎず、実際に算定しているのは全体の1割強にとどまっていることも指摘。通所リハビリテーションに、現状よりもしっかりと医師が関与するべきだとしている。

これらの議論と、今回の調査票の内容から見えてくるのは、医療機関に積極的な通所リハビリテーション事業への参画を求める姿勢だろう。実際、現在でも通所リハビリテーションの約半数は医療機関が運営しているが、「専従する人材や場所が確保できない」「利用者の送迎体制を整えられない」といった理由で参入に二の足を踏むところも少なくない。今後、短時間サービスが重視されることからも、厳しい運営となることが予測できるが、一方で「2025年問題」もあり、通所リハビリテーションが介護マーケット上で注目分野であることは間違いない。いわば、施設基準をクリアしながら通所リハビリテーションの開設をためらっている医療機関との提携はビジネスチャンスにつながるとも言える。中医協の調査結果次第では、次期改定で通所リハビリテーションの評価が総合的に引き上げられる可能性もあるため、そうした視点で中長期的な展望を描いておくべきではないだろうか。

 

◆災害等による介護保険料の減免 特別調整交付金の算定基準が変更
住宅の損害金額が、住宅価格の2割以上である場合などが対象

――厚生労働省
6月28日、厚生労働省の老健局介護保険計画課は「介護保険最新情報Vol.594」を発出。「災害等による介護保険の保険料の減免に伴う特別調整交付金の算定基準について」を一部改正すると通知した。

今回、特別調整交付金の算定基準を変更したのは、震災や風水害、火災などの災害を受けた場合に減免措置を迅速かつ適切に実施するのが目的。各市町村区の取り扱いの均衡を図る狙いもある。

減免の基準は4種類。ケースに応じて軽減割合は異なる。まず、「世帯の生計を主として維持する者」が死亡あるいは行方不明となった場合は、全額免除に、障害者となった場合は保険料の10分の9が軽減される。

複雑なのは、住宅が被害を受けた場合や、災害によって事業収入が減った場合だ。まず前者の住宅が損害を受けた場合は、損害金額が住宅価格の10分の2以上(2割以上)であるときに減免の対象となる。この損害金額は、保険金や損害賠償を控除した額が該当し、前年中の合計所得金額の区分によって軽減率が変わる。合計所得金額が基準所得金額未満で、損害程度が10分の2以上10分の5未満の場合は保険料の2分の1が軽減され、10分の5以上の場合は全額免除となる。合計所得金額が基準所得金額以上で、損害程度が10分の2以上10分の5未満の場合は軽減割合が4分の1に、10分の5以上の場合は2分の1となる。

事業収入が減った場合は、損失額の合計が、「平年における事業収入の額の10分の3以上」である場合。合計所得金額が基準所得金額未満のときは全額免除され、基準所得金額以上であれば10分の8が軽減される。しかし、これは事業所得以外の所得合計額が400万円以上ある場合、対象外となる。また、いずれのケースも、「合計所得金額」は、土地売買などで収益を得た場合の特別控除額を控除した額が対象となる。詳細は厚生労働省のサイトに情報が掲載されているので確認しておきたい。

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