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医療経営情報(2017年6月29日号)

2017/7/10

◆ 2016年度診療報酬改定の影響を調査 次期改定の検討素材に リハビリ実施状況や遠隔での禁煙治療なども 中医協

――厚生労働省
6月28日、厚生労働省で中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開かれ、2016年度診療報酬改定の結果検証のための調査票案が了承された。7月から調査が開始され、結果は10月以降の中央社会保険医療協議会で報告される。

今回、調査が行われるのは以下の4つ。

(1) 回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入の影響、維持期リハビリテーションの介護保険への移行状況等を含むリハビリテーションの実施状況調査
(2) 医薬品の適正使用のための残薬、重複・多剤投薬の実態調査並びにかかりつけ薬剤師・薬局の評価を含む調剤報酬改定の影響及び実施状況調査
(3) ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査
(4) 公費負担医療に係るものを含む明細書の無料発行の実施状況調査

このうち、特に注目を集めているのが(1)と(3)だ。まず(1)のリハビリ状況調査が行われるのは、2016年度の診療報酬改定で回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価と、目標設定支援等にかかわる評価が新設されたことが理由となっている。さらに、要介護者に対する維持期リハビリテーションは、介護保険への円滑な移行を促したいため、評価の新設によってどの程度の効果があったかを検証するというわけだ。つまり、調査の結果によっては報酬の引き下げにつながる可能性もあり、医療機関にとっては運営方針や体制整備に大きく影響してくると言えよう。

(3)のニコチン依存症管理料については、調査票の「5回の禁煙治療について途中の脱落を防ぐためにどのような工夫を行っていますか」の設問の回答選択肢に「テレビ電話等による遠隔診療を組み合わせて状況を確認する」が入っている点に注目したい。この回答が設けられたのには、少なくとも2つの理由がある。

まず1つは、禁煙治療を5回未満で修了した患者の禁煙成功率が低いことだ。7月1日からニコチン依存症管理料の算定基準に「平均継続回数が2回以上」であることを加えたのもそのため。医療費削減を促す意味でも、効率的に治療効果を出さなければならず、そのための手段として遠隔診療が効果的かどうかを調査する狙いがあるだろう。

遠隔診療の促進が次期診療報酬改定のポイントとなっているのも、理由のひとつだ。安倍晋三首相は4月の未来投資会議で遠隔診療を次期改定で評価すると明言し、6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」にもその旨が明記されたことから、具体的にどの程度評価するのかが今後の焦点となってくることは間違いない。そうした状況を踏まえると、診療報酬上の評価を受けられない現在の遠隔診療がどの程度の効果を挙げているのかを調査しようしているのは非常に興味深い。

また、遠隔診療は糖尿病など生活習慣病が主な対象となる見込みだったが、今回禁煙治療が調査の対象となったことで、遠隔診療の適用を受ける可能性が高まったと言えるだろう。その調査結果によっては高く評価される可能性もあるだけに、10月の中医協でどのような報告がなされるのか注目したい。

 

◆ 5万円以上の美容医療、クーリングオフの対象に
脱毛、シミ除去、脂肪溶解、ホワイトニングなど

 

6月27日、政府は「特定商取引に関する法律施行令の一部を改正する政令」を閣議決定した。これにより「美容医療」と呼ばれる医療サービスが、医療機関でもクーリングオフや中途解約の対象となる。施行は今年12月1日から。

対象となる医療サービスは、「脱毛」「にきび・シミ・ほくろ・入れ墨などの除去」「肌のシワ・たるみ取り」「脂肪溶解」「歯の漂白(ホワイトニング)」の5種。施術の期間が1カ月以上、料金が5万円以上となる契約が対象。契約後、一定期間は無条件で契約解除できるクーリングオフができるほか、たとえクーリングオフ期間が過ぎていても、中途解約することも可能となる。中途解約の場合、患者は受けた分の施術の料金を支払う必要がある。

また、医療機関側は、契約時に施術の内容や期間、料金を明記した書面を患者に渡すことも義務付けられる。強引な勧誘や誇大広告も禁じられ、違反すると行政処分の対象となってしまう。つまり、エステティックサロンと同様の規制が課せられるようになったというわけだ。

医療法では、契約の解除についてのルールが整備されていないため、これまで医療機関は規制の対象となっていなかった。しかし、美容医療にまつわる契約のトラブルは頻発しており、全国の消費生活センターには年間2,000件以上の相談が寄せられている。そのため、昨年1月に内閣府の消費者委員会が医療機関も規制対象とするよう答申を行っていた。

6月7日には改正医療法が成立し、医療機関のウェブサイトの表記にも規制が課せられることが決まったばかり。これも、美容医療の分野で健康被害や契約トラブルが続出していたことが原因だった。今回、対象とされた医療サービスを提供している場合はもちろん、美容医療分野の自由診療メニューを展開している医療機関は、患者への対応により一層配慮する必要がありそうだ。

 

◆ 保健医療分野でのAI活用 重点領域を選定 2021年までに実用化を
ゲノム医療、画像診断、医薬品開発、介護・認知症など6領域

――厚生労働省
6月27日、厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」(座長:間野博行国立がん研究センター研究所長)は、今年1月から4回にわたって実施してきた討議の内容を報告書として取りまとめ、発表した。AIを重点的に活用するべき6つの領域を選定し、実用化に向けた工程表も公開。2021年までに実用化させたい方針を示した。

重点領域として選定されたのは、「ゲノム医療」「画像診断支援」「診療・治療支援」「医薬品開発」「介護・認知症」「手術支援」の6分野。あえて選定した理由として、ディープラーニングの登場によってAIが新たな局面を迎え、「新たな診断方法や治療方法の創出」や、「全国どこでも最先端の医療が受けられる環境の整備」が期待できることを理由に挙げている。また、AIを活用することで、医療・介護従事者の負担軽減が実現できるとした。

しかし、今回挙げた6分野の中には、日本が遅れをとっているものもある。同懇談会は、「ゲノム医療」「診断・治療支援」「介護・認知症」「手術支援」の4分野を具体的に挙げた。「ゲノム医療」については、実用化にもっとも近いのは「がん」だとして、「がんゲノム医療推進コンソーシアム」でAI開発の実現に向けた推進体制構築を検討していくとしている。

「診断・治療支援」については、AI開発を促すために医師法や医薬品医療機器法でのAIの取り扱いを明確化しつつ、各種データベースを集約させて難病を幅広くカバーする情報基盤の構築も行いたいとしている。また、2000年以降に生命科学分野の論文が急増し、2016年には新たに125万本以上の論文が公表されていることを挙げ、日常業務で忙しい現場の医師が論文を読破できる状況にないことを指摘。AIを活用することで情報の解析や検索に要する時間・コストを削減させ、生産性を向上させることで医療従事者の負担軽減につなげたいとした。

「介護・認知症」についても、介護者の業務負担軽減を目指したいとしている。一例として挙げられているのが、AIを活用することで排泄のタイミングを予測するシステム。要介護者の尊厳を保持するとともに、介護業務の効率化も期待できるとした。

「手術支援」については、外科医の数が少ないことを指摘。とりわけ、40歳未満の若手外科医の数が減り続けていることを挙げ、負担軽減は喫緊の課題と警告を鳴らした。同時に、その解決にAIの活用が期待できるとし、手術時の心拍数や脳波、術野画像などのデジタルデータの相互連携が必要だとしている。そのために、関連データを連結できるインターフェースの標準化を実施することを目指す方針を明らかにした。2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定が目前だが、その次の診療報酬改定が2020年に迫っているため、少なくともその前に具体的な道筋をつけておきたいものと思われる。各分野のAI活用が、将来の診療報酬の評価につながっていくことは間違いないだけに、今後の推移からも目が離せないと言えよう。

 

◆ 新たに臨床検査1件と医療機器2点が保険適用に
EGFR遺伝子検査と経費経肝胆道拡張バルーンカテーテルなど

――厚生労働省
6月28日、厚生労働省で中央社会保険医療協議会の総会が開かれ、新たに臨床検査1件と医療機器2点が保険適用となることが決まった。臨床検査は7月から、医療機器は9月から収載される予定となっている。

新たに保険適用が決まった臨床検査は「EGFR遺伝子検査(血漿)」。測定方法はアレル特異的リアルタイムPCR法で、保険点数は2100点となる。医療機器は(株)東海メディカルプロダクツが手がける「TMP 経皮経肝胆道拡張バルーンカテーテル」(保険償還価格は65,300円)と、日本メドトロニック株式会社が手がける「InterStimII 仙骨神経刺激システム」(既存の機能区分で評価。184の仙骨神経刺激装置991,000円)。

「EGFR」は、がん細胞が増殖するためのスイッチのような役割を果たしているタンパク質。これを構成している遺伝子に変異があると、がん細胞を増殖させるスイッチがオンとなっている状態になってしまう。そのため世界肺癌学会は、進行非小細胞肺癌の診断の際、EGFR遺伝子検査を行うべきだと推奨している。

保険が算定されるのは、患者1人につき1回のみ。ただし、医学的な理由で「肺癌の組織を検体として、区分番号D004-2の悪性腫瘍組織検査(1)悪性腫瘍遺伝子検査の(イ)EGFR 遺伝子検査(リアルタイムPCR 法)又は(ロ)EGFR 遺伝子検査(リアルタイム PCR 法以外)を行うことが困難な場合」に限定される。検査を実施した場合は、「肺癌の組織を検体とした検査が実施困難である医学的な理由」を診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載しなければならない。

「TMP 経皮経肝胆道拡張バルーンカテーテル」は、良性胆道狭窄および胆道がん起因の胆道狭窄に用いられる。従来、経内視鏡的アプローチに用いるカテーテルを経皮的アプローチに用いた場合、180cmのうち有効長が40cm程度だったため、手技中にカテーテルが不潔になったり、折れたりするリスクがあった。その点、「TMP 経皮経肝胆道拡張バルーンカテーテル」は、40cm程度のカテーテルを用いるため、経内視鏡的アプローチで胆道拡張を行うことが困難な患者に対しても効率的かつ安全に施術できる。

「InterStimII 仙骨神経刺激システム」は、日本初の便失禁治療専用植込み型デバイス。過活動膀胱や便失禁の改善を図ることができる。過活動膀胱は、膀胱が自分の意に反して収縮する症状で、頻尿や尿もれを引き起こす。40歳以上で800万人以上、50歳以上の女性の8人に1人がかかっているとも言われる。便失禁は、本人の意思に反して便が漏れてしまう症状で、加齢だけでなく、出産時に肛門の筋肉が傷ついたり、直腸がんの手術で直腸を切除したりしたあとに発症するもので、国内に約500万人の患者がいると言われている。

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