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医療経営情報(2017年6月22日号)

2017/6/30

◆入院基本料、評価指標の見直しを 「在宅復帰率」も再定義
看護配置だけでなく患者の状態や診療の効率性も考慮

――厚生労働省
6月21日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会は「入院医療等の調査・評価分科会」を開き、来年度の診療報酬改定に向けて、一般病棟入院基本料の評価見直しを開始した。患者の状態や診療の効率性といった要素も考慮するべきとし、「在宅復帰率」を再定義する方針を明らかにした。また、13対1と15対1では、7対1と10対1に比べて患者の状態や医療処置の内容などが異なっていることも挙げ、評価見直しの対象とすることを示唆した。

現在の一般病棟入院基本料は、看護職員や医師の配置などをベースとして診療報酬の点数が設定されている。施設基準の届出用件としては、平均在院日数や重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率などが含まれており、7対1入院基本料における評価指標は、平均在院日数が18日以内、重症度、医療・看護必要度は2割5分以上(200床未満は2割3分以上)、在宅復帰率は8割以上となっている。

今回、主に見直しの対象となるのは在宅復帰率だ。実際は、回復期リハビリテーション病棟へ転院した患者数も含まれるなど、自宅に戻っていない患者も含めた計算式となっているため、厚労省は名称自体も問題視。内容を反映した名称に変更するべきと提言している。

さらに、在宅復帰率の要件自体も何を評価しようとしているかわかりにくいとして、目的に応じて再定義するべきとした。具体的には、「再入院率」を挙げており、急性期の入院医療の評価であることをより明確に打ち出したい意向を示している。

また、この日の会合では「入退院支援」についても言及。効率的・効果的な入退院支援を行うためには、入院中だけでなく入院前後の外来・在宅での働きかけや支援が重要であるとして、その評価のあり方を見直す方針も明らかにした。地域包括ケアシステムの構築を視野に入れ、地域連携での取り組みが重視されることになることが予想される。看護配置の要件見直しも含めて、今後どのような議論が展開されていくか、注視する必要があるだろう。

◆特定健診の実施率72.8%、指導実施率は15.2%
前回調査とほぼ変わらない結果 特定保健指導の推進が課題

――健康保険組合連合会
6月16日、健康保険組合連合会は「平成27年度 特定健診・特定保健指導の実施状況に関する調査分析」を発表。特定健診の実施率は72.8%、特定保健指導の実施率は15.2%だったことが明らかになった。前回の2014年度調査では特定健診が72.4%、特定保健指導がまったく同じ15.2%であり、ほぼ変わらない結果となった。

健康保険組合連合会は、全国1399(2016年4月1日現在)の健康保険組合で構成されており、被保険者とその家族を合わせると国民のおよそ4分の1にあたる約3,000万人が加入している計算となるため、その調査結果はある程度の指標となりうる。

特定健診および特定保健指導については、1月に厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」で運用見直しが議論された。とりわけ、特定保健指導の実施率を上げるため、ICTを活用した遠隔での初回面接を推進する方針が示されているほか、特定健診当日に初回面接を開始できるような運用も検討。受診者の利便性を向上させるのとともに、特定健診を受けたばかりという健康意識が高まっているタイミングを活用することで、指導効果を期待したいとしている。

そもそも、3月に行われた中央社会保険医療協議会の総会では、来年度の次期診療報酬改定で「生活習慣病の重症化予防」を重点的な議題にすることが確認されており、特定健診や特定保健指導に力を入れる方針も決められている。医療費削減のため、人工透析導入数を抑制することも課題となっているため、厚生労働省から「糖尿病透析予防指導管理料」「糖尿病合併症管理料」「慢性維持透析患者外来医学管理科」の算定対象となっている患者について、「医療機関からの情報提供を行った」との回答がそれぞれ1%未満であるとの指摘も出ており、医療機関の適切な告知が求められていた。

もちろん、特定健診の情報が診療所まで行き届いているとはいえない現状があるほか、保健師の絶対数が足りないことも、保健指導実施率の低さにつながっていることは否めない。とはいえ、今後は予防医療が診療報酬の評価対象として重きを置かれるようになることは間違いないだけに、医療機関側も積極的な情報収集が求められるのではないだろうか。

◆体外受精・顕微授精・人工授精の医療保険適用を
男性不妊治療も適用対象にするよう求める 九都県市首脳会議

――九都県市首脳会議
6月15日、九都県市首脳会議は塩崎恭久厚生労働相に、不妊治療の医療保険適用化についての要望書を提出。体外受精、顕微授精、人工授精のほか、男性不妊治療のうち精子を採取するための手術や精索静脈瘤結紮術について、医療保険の適用対象とすることを求めた。

九都県市首脳会議とは、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県の知事と横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の市長により構成されている会議。共同で首都圏の広域的課題に対し、積極的に取り組むことを目的としている。現在、座長を務めるのは相模原市の加山俊夫市長。

要望書では、国の活力を維持するためには少子化対策・次世代育成が喫緊の課題とし、不妊治療の経済的負担の軽減を図るべきだとした。実際、2004年度から体外受精や顕微授精に対する治療費の一部助成が開始。当初の助成件数は約18,000件だったものの、2012年度には135,000件と7.5倍になっており、不妊治療を受ける人が年々増えていることは明らかだ。

しかし、不妊治療にかかる費用は高額。1回30~60万円ほどかかるとされているが、現行の制度では初回治療が30万円、その後は1回の治療の上限額が15万円に設定されている。しかも、通算3~6回までという制限も設けられているため、経済的負担の軽減につながっているとは言いがたい。さらに、人工授精は体外受精や顕微授精を行う前に実施されることが多いのにもかかわらず助成の対象外であり、もちろん医療保険の適用外となっているため、実質的な支援につながっていないとも言える。

また、不妊の原因は女性だけでなく男性側にも約半分あるとされているが、男性不妊治療に対する助成は行われていない。男性、女性の双方に対して手厚い支援を行ってこそ、少子化対策につながることは明らかであり、その意味で今回の九都県市首脳会議の要望は正鵠を射ていると言えよう。この要望を受け、厚労省がどのような方針をとるのか、今後の審議会や検討会の議論を注目していきたい。

◆体外受精・顕微授精・人工授精の医療保険適用を
男性不妊治療も適用対象にするよう求める 九都県市首脳会議

66月20日、塩崎恭久厚生労働相は大臣記者会見で「受動喫煙対策の徹底に関する談話」を発表。できるだけ早期に法案を提出し、「原則屋内禁煙の実現」を目指すとした。

受動喫煙対策をめぐっては、今年1月に首相の施政方針演説で「受動喫煙対策の徹底」が打ち出されたことや、4月にWHO(世界保健機関)のマーガレット・チャン事務局長が屋内完全禁煙を要請したことなどから、18日に閉会した通常国会で法案を提出する方針を固めていた。しかし、自民党の調整が難航。法案提出を先送りした。7月2日に投開票が行われる都議会議員選挙で、受動喫煙対策に積極的な姿勢を見せている小池百合子東京都知事が率いる「都民ファーストの会」の優勢が予想されていることも背景にあったと見られる。

塩崎厚労相の談話では、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ人が国内で少なくとも年間約15,000人とされていることや、受動喫煙による超過医療費が年間3,000億円以上であることを指摘。また、間仕切りやエリア分けによる分煙は受動喫煙防止効果が乏しいことも挙げ、「原則屋内禁煙」を目指すとした。

自民党案との調整で難航した飲食店の処遇については、「例外措置の導入を全面的に否定するものではない」としながら、「広範な例外措置を恒久的に認めることは受動喫煙被害を助長・容認する結果になりかねない」とし、例外措置を認めるとしても対象とするのは小規模飲食店のみで、かつ「時限を明確にした激変緩和措置」として位置づけるとした。

厚労相の受動喫煙防止対策案によれば、医療機関はもっとも厳しい「敷地内禁煙」の対象。建物内外を問わず喫煙することができず、喫煙室の設置も認められない。罰則については、喫煙者だけでなく、施設管理者にも適用される案となっているため、監視体制の強化を含めた能動的な対策を行う必要がある。自民党との調整が引き続き難航することも予想されるが、WHOやIOC(国際オリンピック委員会)が「スモークフリーのオリンピック」で合意している以上、2020年の東京オリンピックまでに法整備をする必要がある。医療機関側としては、いずれにしても敷地内禁煙の対象となることは確定的なため、職員への周知徹底を含め、今から対策を練っておく必要があるだろう。

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