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医療経営情報(2017年6月1日号)

2017/6/9

◆ レセプト審査ルールを統一して約400億円のコスト削減を 「官民データ活用推進基本計画」が閣議決定

――株式会社日立製作所
5月30日、「官民データ活用推進基本計画」が閣議決定された。現状は都道府県によって異なるレセプト審査のルールの統一を進め、医療保険業務の効率化を図る。不要な審査を排除することにより、約400億円のコスト削減を目指す。

「官民データ活用推進基本計画」は、閣議に先立って開催された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)と官民データ活用推進戦略会議の合同会議で策定された。レセプト審査ルールを統一させるため、全国共通の審査システムを2020年までに立ち上げ、各医療機関に審査ルールを公開する方針だ。併せて、レセプト審査機関である社会保険診療報酬支払基金の人件費も削減し、審査業務にかかるコストを圧縮していく。

現在、レセプト審査は年間で約20億件にのぼる。審査ルールが統一されていないため、地域差があるだけでなく、審査員によっても審査結果に違いが生じている。そのため、無駄な返戻が多いとの指摘が相次いでいた。差し戻しが増えれば、必然的に支払基金の作業量が嵩み、人件費が増えることにつながるわけで、効率化を図るためにも審査ルールの統一化が求められていた。

また、レセプトを医療ビッグデータとして活用するため、審査システムそのものをゼロベースで見直す方針がすでに決まっていることもあり、共通のシステムを立ち上げることになった次第だ。昨年12月には厚生労働省の「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」で提言が取りまとめられており、医療機関が事前にコンピュータチェックできるようになる見込みだ。社会保険診療報酬支払基金が一元的にシステムを構築し、各医療機関が活用できる仕組みにする方向のため、医療機関側が新たにシステム構築することにはならない。

レセプトの形式も、一元化したコンピュータチェックルールに適した内容へと見直される方向。具体的には、コンピュータチェックでエラーとなった請求項目のうち、詳細記述項目の内容をテキスト解析し、頻繁に記述される項目については、オプションとして選択式項目を用意する。医療行為を行った理由や対象部位などを選択して送付できるシステムとすることで、処理時間の短縮を図る。医療機関にとって、レセプト処理は時間と労力を必要とする作業のひとつだけに、実際にどのようなシステムが導入されるのか、レセプトの形式がどうなるかの動向は、今後も注視するべき事項のひとつと言えるだろう。
◆ 診療報酬改定影響調査「紹介状なし」の初診患者比率が低下
大病院の9割以上 紹介状なし受診の定額負担5千~6千円に設定

――厚生労働省
5月31日、中央社会保険医療協議会は総会を開催。昨年度の診療報酬改定による影響調査の結果、大病院に義務付けられた「紹介状なし」受診時の定額負担は5,000円以上6,000円未満に設定しているところが9割以上を占めていることがわかった。また、大病院に限らず「紹介状なし」による初診患者が少なくなったことも明らかとなっている。

昨年度の診療報酬改定では、「紹介状なし」の500床以上の病院(特定機能病院および一般病床500床以上の地域医療支援病院)の受診に定額負担を徴収する制度が導入された。徴収が義務化された昨年4月以降に初診時徴収金額を変更した500床以上病院は72.3%もあり、そのうち94.3%は5,000円未満だった金額を5,000円以上へと引き上げている。全体では、94.2%の500床以上病院が初診時徴収金額を5,000円以上6,000円未満としている。

今回の調査では、定額負担を徴収する義務のない500床未満の病院も、500床以上の病院と同様の対応をしているところが増えていることも判明している。調査は200床以上500床未満の病院に対して行われ、定額負担を徴収している病院は84.0%にのぼった。

わずかながらとはいえ、患者側もこうした状況を察知しているようだ。500床以上の病院だけでなく、200床以上500床未満の病院も、初診患者の数が減少。500床以上の病院での「紹介状なし」初診患者の比率は2015年10月で42.6%だったが、2016年10月には39.7%へと減っている(200床以上500床未満の病院では、2015年10月が60.3%、2016年10月が59.4%)。

定額負担徴収の義務化は、膨らみ続ける社会保障費を抑制する狙いもあって導入された制度。日本の外来受診の負担額は諸外国と比べても低いため、負担額を増やすことで医療費を抑えようという考えだ。しかし、大病院の減少比率はわずか3ポイント程度であり、期待された成果が出たとは言い難い。

そうした状況を踏まえ、5月23日の経済財政諮問会議では、「紹介状なし」受診での定額負担の対象拡大を検討すべきとの意見も出ている。これは、かかりつけ医以外の受診も定額負担徴収の対象にしたい狙いがあることは明らかであり、ゆくゆくは中小規模の病院や診療所も対象となる可能性があるだろう。そうした趨勢を踏まえ、中小規模の病院や診療所は、よりかかりつけ医機能を強化するとともに、定額負担が導入されたときにどう対応するかの検討を始めておくべきかもしれない。
◆ 日医、受診時定額負担の導入に反対の姿勢を示す
「かかりつけ医の普及に水を差し、医療提供に重大な影響」

――日本医師会
5月31日、日本医師会の横倉義武会長は、財務省の財政制度等審議会が取りまとめた「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」について日本医師会の考えを表明。受診時定額負担の導入には明確に反対の姿勢を示した。

「『経済・財政再生計画』の着実な実施に向けた建議」では、日本の財政状況が深刻であると冒頭に記したうえで、財政健全化が責務であると強調。取り組むべき事項の第一に社会保障を挙げ、診療報酬引き上げを牽制するとともに、薬価制度の抜本的な改革を求めている。そして、受診時定額負担については「病院・診療所の機能分化の観点から、現行の選定療養を見直し、保険財政の負担軽減につながる仕組みとしていく必要がある」としつつ、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担導入を検討すべきだとした。

これに対し、横倉会長はかかりつけ医の重要性について同調しながらも、まだかかりつけ医普及の制度的裏付けが始まったばかりだとして、「受診時定額負担が導入されれば、かかりつけ医の普及に水を差す」ことになると反発。今後の医療提供に重大な影響を及ぼす可能性にまで言及した。そのうえで、日医がかかりつけ医普及と定着に向けて努力している姿勢をアピール。5月28日に開催された「日医かかりつけ医機能研修制度 平成29年度応用研修会」には、7,000名以上の参加者があったことを明らかにしている(テレビ会議での参加含む)。

一方で、救急以外での大病院の直接受診は是正する必要があるとしており、医療機関へのフリーアクセスは守りつつ、大病院と中小規模病院、診療所の外来機能のあり方についてはより深く検討を進める意向を示した。

日医が受診時定額負担の導入に反対の姿勢を示すのは想定通りのこと。しかし現実的には、超高齢化が進むことを考慮すると、社会保障費が今後減少することはないため、受診時負担が増す方向にあることは間違いない。問題は、いつごろどのような形で負担額が増す、あるいは定額負担制が導入されるかであり、かかりつけ医機能のあり方がどのように変わっていくかによっても当然影響される。医療機関としては、制度の導入などによって医療経営が左右されることのないよう、随時情報収集して対策を練っておくことが肝要だと言えよう。

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