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介護経営情報(2017年4月14日号)

2017/5/10

◆介護保険関連法改正案、衆院厚労委で可決
来年8月から自己負担割合を3割に引き上げ

 4月12日、衆議院の厚生労働委員会で介護保険関連法改正案が自民、公明、日本維新の会の各党による賛成多数で可決された。当初は14日に採決予定だったが、民進党が安倍晋三首相に「森友問題」について質問。それに対して与党側が、改正案と無関係な質問をしたとして「審議は尽くされた」と採決を強行した。与党は衆議院で絶対安定多数を確保しており、いずれにしても可決は濃厚だっただけに後味の悪い結末となった。

 今回可決された介護保険関連改正法案は、初めて自己負担割合が3割に引き上げられるのが大きな特徴。具体的には、65歳以上の単身者の場合年収340万円以上、65歳以上の夫婦の場合463万円以上の年収がある世帯が対象となる。利用対象者が全部で496万人いるのに対して、3割負担の対象者は約3%に該当する約12万人を見込んでいる。来年8月から実施される予定。

 また、40歳から64歳の人が支払う介護保険料は、それぞれの収入が高くなるにつれて負担額も増えていく「総報酬割」が今年8月から段階的に導入され、2020年度には全面導入される予定となっており、負担が増える人は約1,300万人にのぼる見込みだ。

 そのほか、自立支援や重度化防止へ積極的に取り組んだ場合に財政的インセンティブが付与できる規定を整備することや、今年度末までに廃止される介護療養病床の新たな受け皿として「介護医療院」が創設されることも決まった。「介護医療院」は、今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズに対応するためで、日常的な医療管理が可能な重介護者受け入れ施設として、看取り・ターミナル機能も兼ね備えた存在。法的には、介護保険法上の介護保険施設でありながら、医療法上は医療提供施設として位置づけられる。具体的な介護報酬や転換支援策は今後検討されるが、病院や診療所が転換した場合には転換前の名称を引き続き利用できることが決まっている。また、現行の介護療養病床の経過措置期間は当初の3年間から6年間に延長された。

 介護施設のあり方が時代に合わせて変化せざるを得ないのはともかく、自己負担割合の引き上げや総報酬割の導入は、社会保障費の抑制に対して躍起になっている政府の焦りが透けて見える。とりわけ、自己負担割合に関しては、そもそも原則1割だったものを2015年8月に2割へと引き上げられたばかり。今後も社会保障費は増え続けることが確定的なだけに、近い将来対象がさらに広がることが見込まれよう。「介護保険制度の持続可能性の確保」が今回の改正の目的となっているが、自己負担割合の引き上げによって利用できなくなる人が出てくるなど、今後の動き次第では介護保険のあり方そのものが変わってくる可能性も考えられる。介護事業所としては、そうした状況を予測したうえで今後の経営戦略を立てていくべきだろう。

◆ついに、厚労省も「混合介護」に対して前向きな姿勢を示す
「サービスの柔軟な組合せや価格の柔軟化」を積極的に推進へ

――厚生労働省
4月6日に厚生労働省は「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」を公表。医療だけでなく介護人材のキャリアについての検討結果を明らかにしたばかりか、「混合介護」を推進するべきとする提言がなされた。これまで同省は、「混合介護」について慎重な姿勢を崩さなかったが、この報告書をきっかけとして急速に介護サービスのスタイルが変わっていく可能性もある。

現在、介護報酬の対象とならない保険外サービスを、保険内サービスと同時に提供する「混合介護」は原則として禁止されている。介護サービス時に、利用者のペットの散歩を代行したり、本人以外の家族向けの食事の用意をしたりすることもできないため、現場での柔軟な対応が妨げられることが問題となっていた。また、利用者の10割負担となる保険外サービスは、介護報酬よりも高い料金に設定できないため、介護事業者側も積極的に取り組むことができなかった。

しかし、社会保障費をできるだけ削減しようとしている現在、介護報酬が劇的に上がる要素はまったくないと言っても過言ではない。つまり、介護人材の待遇改善やサービスの質を向上するための財源を確保するための手立てはなく、今後さらに多様化、複雑化していく介護ニーズに応えられなくなることは容易に想像できる状況だった。

そのため、昨年9月に公正取引委員会がサービス価格の自由化とともに「混合会議」の解禁を提言。同時期に開催された未来投資会議でも「介護は保険外サービスとの組み合わせが必要」と打ち出しており、規制改革推進会議では採算にわたって解禁の必要性が訴えられてきた。

より具体的な動きとして注目されたのが、昨年12月の国家戦略特別区域会議。小池百合子東京都知事が、東京の特区で「混合介護」の展開を検討すると表明し、今年2月に豊島区が来年度からモデル事業を開始すると発表。1時間500円程度の指名料を導入など、より具体的な実施案を検討しているところだ。

ところが、そうした動きに対しても厚労省の反応は鈍く、これまで否定的な見解を示し続けてきた。その理由として挙げてきたのは、「保険内サービスとの関係性が整理できていない」「保険外サービスを利用できない人が排除される懸念がある」の2点だったが、介護現場の人材不足が深刻化の一途を辿っている状況から、一転解禁の方向に舵を切ったものと思われる。

そのあたりの思いが込められているのが、同報告書にある「生じ得るデメリットを極小化する制度上の工夫を行うことにより、介護保険内・外のサービスの柔軟な組合せや価格の柔軟化を積極的に推し進めることが必要」という一文。さらに、「介護事業者や他産業の企業等での保険外サービスの拡大・発展が促され、ひいては介護保険の利用者や介護従事者の待遇改善を含めて、介護産業の活性化につながる重要な礎石となり得る」とまで言及しており、一気に混合介護解禁を促そうとする意図すらにじませている。介護事業者にとっては、間違いなく新たなビジネスチャンスであり、保険外サービスの戦略を練るべきタイミングが到来したと言えよう。

◆退職後の活躍を促す 医療・介護従事者シェアリング・バンク創設
スキルアップのための研修実施施設の増加も前向きに検討へ

――厚生労働省
4月6日に厚生労働省が発表した「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」では、退職した医療・介護従事者がその知識・経験を生かして活躍できるように「医療・介護従事者シェアリング・バンク」(仮称)を創設する意向も明らかにされた。介護福祉士や社会福祉士の資格を持ちながら退職した人を、比較的心身の負担が軽い業務に紹介・派遣できる仕組みを作り、地域の福祉人材不足解消につなげるのが狙いだ。

この検討会で介護人材についての検討がなされたのは、医療と介護の連携および融合が進んでいることが背景にある。また、同報告書には「ニーズが拡大・多様化する中、過重な負担、スキル形成の難しさ、人材・組織・事業マネジメントの未熟さが相まって、展望を描けずにいる介護従事者も少なくないという課題認識に立って検討の視野に含めた」との記載もあり、介護人材を育成するための土壌にも不足を感じていることが窺える。

さらに、地域包括ケアシステムを担う人材は、看護師やリハビリテーション職、介護福祉士、社会福祉士まで幅広い職種間の基礎教育内容を共通化し、単位互換を目指すべきだとしている。一例として、昨年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれた准看護師と介護福祉士の単位相互認定を推進していく方針を示した。これに関しては、介護福祉士の専門性やスキルの価値が曖昧になるとの懸念も当然生じるが、同報告書ではこれを否定。准看護師に限らず、より広い観点から医療・福祉人材の融合を進めていきたいとしている。

また、医療的ケアにおける介護従事者のスキルアップについても言及。今後、在宅介護においてさらに医療ニーズが増えることを踏まえ、たん吸引や経管栄養などの実施を着実に行えるように研修実施機関の数を拡大すべきとしている。そのためには「キャリア形成促進助成金の要件緩和や助成額の引上げ等を行うことが効果的」とまで踏み込んでおり、より高スキルな介護人材の育成を目指していきたい姿勢を明らかにした。

介護人材不足は慢性化しており、2025年には40万人近く不足することが見込まれている。今回の厚労省の提言には、そうした危機感がにじんでいる。介護事業所としては、安定して高スキルな人材を確保するため、こうした制度を上手に活用して医療との連携を図り、地域での存在感を高めていくのが生き残りのための策のひとつと言えるのではないだろうか。

◆医療・介護施設向けの高精度な「徘徊通知システム」
複雑な配線工事は不要で、軽量なコンパクトサイズ

――DXアンテナ株式会社
4月1日、セキュリティシステムの製造販売を行っているDXアンテナ株式会社は、医療・介護向けサポートシステム「徘徊通知システム」を発売した。認知症高齢者の徘徊行動を即座に検知・通知できるため、見守りや事故防止に役立てることができる。

同システムは、株式会社マトリックスが製造した。RFタグ(ICタグ、非接触タグ)を利用者に携行させ、検知ユニットと警報ユニット、表示灯を連動させて音と光でピンポイントでの検知を知らせる仕組みとなっている。タグは、検知ユニットが出力する磁界の中でしか電波を発信しないため、誤報が起こらないのが最大の特徴だ。もちろん、磁界にはIDを指定しているほか、表示灯は検知ユニットのデフォルト数である5つに対応した5色となっているため、施設内のオフィス入口に設けておけば色だけでもどの場所か一目でわかるようになっている。

施設内に認知症高齢者が多い場合は、赤外線センサと連携させ、RFタグを持っていない人を検知させることも可能。赤外線センサ部分を通過したとき、RFタグの電波を受診しなければ警報が作動するというわけだ。

RFタグは2種類あるが、重さはそれぞれ17.7gに7.3gと非常に軽量。胸ポケットにも入れられるほどコンパクトなため、違和感なく携行できる。発する電波は微弱なため、体や医療機器に悪影響を与えることもない。ワイヤレスタイプのため、面倒な配線工事が必要ないのも大きなメリット。

介護施設にとって、認知症高齢者の管理は非常に神経を使う業務のひとつ。徘徊を防止できずに利用者が死亡してしまった場合、施設側の責任が問われる可能性が高い。昨年9月には、施設側に2,870円の損害賠償の支払いを命じた例もあり、リスクヘッジのためにも徘徊防止対策システムを導入するメリットは十分にあると言える。逐次見守りが必要ないという意味では、介護スタッフの負担軽減にもつながるため、より高精度なシステムを常に比較・検討したいものだ。

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